なぜWEBサイトリニューアルは75%が失敗するのか?根本原因と踏むべき3フェーズを徹底解説 - 勝手にマーケティング分析
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なぜWEBサイトリニューアルは75%が失敗するのか?根本原因と踏むべき3フェーズを徹底解説

なぜWEBサイトリニューアルは75%が失敗するのか マーケの応用を学ぶ
この記事は約28分で読めます。

はじめに

あなたの会社でも、こんな会話が交わされたことはありませんか?

「新しいマーケティング部長が着任したから、WEBサイトを刷新しよう」
「競合のサイトがおしゃれになったから、うちもデザインを変えないと」
「事業責任者が変わったので、サイトのコンセプトも一新したい」

WEBサイトリニューアルは、多くの企業で定期的に検討される重要なプロジェクトです。数百万円から数千万円の予算を投じ、数ヶ月の時間をかけて取り組む一大プロジェクト。しかし、実はこのリニューアルプロジェクトの75%が失敗に終わっているという衝撃的なデータがあります。

株式会社WACULの調査によると、WEBサイトをリニューアルした企業のうち、WEB経由の反響が増えた企業はわずか25%。横ばいが15%、そして減少したのが60%という結果でした。莫大な投資をしたにもかかわらず、むしろ売上を毀損してしまうケースが大半なのです。

本記事では、なぜWEBサイトリニューアルがこれほど高い確率で失敗するのか、その根本原因を解き明かし、失敗を回避するための具体的な解決策をお伝えします。特に「担当者が変わるたびにリニューアルする」という日本企業特有の問題に焦点を当て、本質的な改善方法を提示していきます。

この記事で得られること:

  • WEBサイトリニューアル失敗の統計データと実態把握
  • 担当者交代時に陥りがちな5つの失敗パターン
  • Who/What/Howフレームワークを活用した成功への道筋
  • 明日から使える実践的なチェックリスト

WEBサイトの重要性を再確認する

リニューアルの失敗原因を掘り下げる前に、そもそもなぜ企業にとってWEBサイトが重要なのかを改めて整理しましょう。

現代ビジネスにおけるWEBサイトの5つの役割

役割具体的な機能ビジネスインパクト
デジタルマーケティングの母艦広告・SNS・SEOなどあらゆる露出経路の受け皿となる潜在顧客との最初の接点、24時間365日稼働する営業ツール
信頼性の証明企業情報、実績、専門性の発信BtoB商談では「営業担当者に会う前に購買プロセスの57%が完了」(データ分析会社CEBとGoogleの研究
BtoBの情報収集は「会社のHP40%以上(日経リサーチ
ブランディングの中核企業の世界観、ミッション、価値観の体現Nielsen調査で「企業WEBサイト」は信頼される宣伝媒体の上位
リード獲得の装置問い合わせ、資料請求、メルマガ登録などのCVポイント営業時間外の問い合わせが30%増加した事例も
採用力の強化企業文化、社員の顔、ビジョンの発信求職者の90%以上が応募前に企業WEBサイトを確認(HRサービスのカケハシ スカイソリューションズの調査

WEBサイトは単なる「電子パンフレット」ではありません。それは企業の顔であり、営業担当であり、ブランドの体現者であり、そして何よりビジネス成長のエンジンなのです。

だからこそ、WEBサイトリニューアルは慎重に、戦略的に進めなければなりません。ところが現実には、多くの企業がこの重要性を理解しながらも、致命的な失敗を繰り返しています。


WEBサイトリニューアルを検討する「よくあるタイミング」

パターン1: 人事異動・担当者交代時の「個人視点リニューアル」

これが最も多く、最も危険なパターンです。

新マーケティング部長着任

「前任者のサイトは古い。自分のビジョンに合わせて刷新しよう」

個人の美的感覚や好みでデザイン変更

ユーザーニーズやデータ分析は後回し

成果が出ず、次の担当者がまた変更...

なぜこれが起こるのか:

  • 新任者が「成果を出した」実績を作りたい
  • 前任者の仕事を否定することで自分の存在意義を示したい
  • WEBサイトは目に見えやすい「わかりやすい変更対象」
  • リニューアル = 改善と短絡的に考えている

この「個人の視点」でのリニューアルこそが、失敗の最大要因です。筆者の経験としてもこれが最も多い失敗パターンと考えています。

その他のよくあるタイミング

タイミング動機リスク
創立記念・周年事業「せっかくだから新しくしたい」目的が曖昧、イベント終了後の運用が放置される
競合のリニューアル「あそこがやったから、うちも」競合の真似で差別化できず、自社課題は未解決
システムのEOL(サポート終了)CMSやサーバーの更新必須技術的な更新だけで終わり、ビジネス価値向上なし
デザイントレンドの変化「今どきのデザインにしたい」見た目だけ変わって本質的な改善なし

WEBサイトリニューアルが失敗する5つの根本原因

原因1: 明確な目的とKGI/KPIの欠如

失敗率75%の最大要因がこれです。

多くの企業が「なんとなく」「そろそろ」「前任者のサイトが気に入らない」という理由でリニューアルに着手します。

良くある曖昧な目的の例:

  • 「サイトを新しくしたい」
  • 「おしゃれなデザインにしたい」
  • 「競合に負けないサイトにしたい」
  • 「ブランドイメージを向上させたい」

これらはすべて測定不可能で、成否を判断できません。

明確な目的とKPI設定の例:

曖昧な目的明確な目的測定可能なKPI
サイトを新しくしたい問い合わせ数を増やす月間問い合わせ数を20件→35件(+75%)
おしゃれにしたい直帰率を下げる直帰率を65%→45%に改善
ブランド向上ブランド想起率を高める指名検索数を月間500→800に増加

失敗した企業の多くが、目的設定をしていなかった、あるいはKGI/KPIとして具体的な数値を設定していません

原因2: デザインのみの刷新という本質的課題の放置

「見た目を変えれば成果が出る」という幻想に取り憑かれたリニューアルです。

デザインのみリニューアルの特徴:

  • トップページのビジュアルに議論の8割を費やす
  • フォントや色の選定に何週間もかける
  • 機能改善やコンテンツ戦略は後回し
  • ユーザー導線の最適化は検討されない

ある大手電機メーカーの失敗事例: 新しい中期経営計画に合わせて、サイトを「今風」のデザインに刷新。しかし、もともと多数のユーザーが訪れていたページを一括削除してしまい、全体の訪問者数が激減。莫大なコストをかけて売上を毀損する結果となりました。

ユーザーがWEBサイトに求めているのは:

  1. 自分の悩みや疑問を解決してくれるコンテンツ
  2. ストレスなく情報にたどり着ける使いやすさ

「高いデザイン性」ではありません。

原因3: SEO対策の不足と検索順位の低下

リニューアル後に検索順位が下がる原因は以下のとおりです:

原因具体的な失敗例影響
URL構造の変更リダイレクト設定なしでURL変更蓄積したドメインパワーが消失
コンテンツの削除「古いから」と価値あるページを削除流入キーワードの喪失
内部リンク構造の崩壊サイト構造変更で孤立ページ発生クロール効率の低下
メタデータの未設定title/descriptionを再設定忘れCTR(クリック率)の低下

つまり、アクセス数が減れば、それだけでコンバージョンは激減します。SEOを軽視したリニューアルは自殺行為と言えるでしょう。

原因4: ユーザビリティの低下

「新しいデザイン」に興奮するのは制作側だけ。既存ユーザーは使い慣れたサイトの急な変化に戸惑います。

ユーザビリティが低下する典型パターン:

変更内容ユーザーへの影響結果
ナビゲーション構造の大幅変更目的のページにたどり着けない直帰率↑、滞在時間↓
フォーム項目の増加入力の手間が増えるCV率が30%低下
CTAボタンの位置変更アクションポイントが見つからないCVRが急落
階層の深化クリック数が2回→5回に途中離脱率が上昇

あるBtoB Saasの失敗事例: リニューアルで「価格が見つけられなくなった」と話題に。デザイン性を重視しすぎて、ユーザーが最も知りたい情報へのアクセスが困難になりました。

原因5: リニューアル後の運用体制の不備

「リニューアルすれば終わり」という考えが失敗を招きます。

運用が回らない典型的な状況:

  • 更新する人がいない(または更新方法がわからない)
  • CMSが複雑で現場担当者が使えない
  • KGI/KPIの設定がないため振り返りや効果測定できない
  • PDCAを回す体制がない
  • 制作会社と運用会社の連携不足

WEBサイトは完成した後も更新を続け、メンテナンスしていくことで価値のあるサイトへと成長します。また、リニューアルの結果、どの数字がどう動いたのかを振り返らなければ投資が全て無駄になります。


成功へのロードマップ: 3フェーズで進める実践ガイド

WEBサイトリニューアルを成功させるには、「要件定義→制作→改善」という3つのフェーズを確実に踏むことが重要です。多くの失敗事例では、要件定義を飛ばしていきなり制作に入るか、制作後の改善を怠っています。

全体像とタイムライン

フェーズ主な目的期間目安主要成果物
フェーズ1: 要件定義何をなぜ作るかを明確化6-8週間要件定義書、KPI設定、予算計画
フェーズ2: 制作・実装要件を形にする10-14週間新WEBサイト
フェーズ3: 運用・改善継続的に成果を最大化継続改善レポート、施策リスト

フェーズ1: 要件定義フェーズ(6-8週間)

このフェーズの目的: リニューアルの「Why(なぜ)」「What(何を)」「How(どう)」を明確にし、プロジェクトの羅針盤を作る

Step 1-1: 現状分析と課題の特定(2週間)

「今のWEBサイトの目的と、何が問題なのか?」を徹底的に洗い出します。

実施すべき調査

調査項目具体的な方法得られるもの所要時間
アクセス解析GA4での過去6ヶ月のデータ分析流入元、CV率、離脱ページ特定3日
ヒートマップ分析主要10ページの行動分析ユーザーの実際の動き、クリック傾向2日
ユーザーインタビュー既存顧客5-10名への聞き取りサイトの使いにくさ、欲しい情報1週間
競合サイト分析主要3-5社の詳細調査ベンチマーク、差別化ポイント3日
社内ヒアリング営業・CS・商品企画への聞き取り顧客からのフィードバック、FAQ1週間

アウトプット

目的の明文化:

良い例:

「中小企業経営者からの問い合わせ数を増やし、営業効率を向上させることで、6ヶ月後に売上を前年比120%にする」

悪い例:

「おしゃれなサイトにして、ブランドイメージを向上させる」(測定不可能)

現状課題リスト(優先順位付き):

課題影響度根拠データ優先度
問い合わせページまでの導線が複雑CV率30%低下の要因ヒートマップ、離脱率データ
スマホ表示が最適化されていないモバイル直帰率75%GA4データ
商品情報が古く更新されていない営業から月10件の指摘社内ヒアリング

重要な判断ポイント:

この段階で、全面リニューアルが本当に必要かを判断します。

部分改修で済む場合の例:

  • 特定のCV導線のみ改善が必要
  • デザインは問題なくコンテンツ追加のみ
  • フォームの項目削減で解決

→ 予算を数十万円〜100万円程度に抑え、1-2ヶ月で完了可能です。


Step 1-2: 戦略立案とWho/What/Howの明確化(2週間)

「自社の商品・サービスは、誰に、何を、どう提供しているのか?」を言語化します。多くの失敗事例では、「誰に何を売っているのか」が曖昧なまま、見た目だけ刷新しています。

よくある失敗パターン:

  • 「当社は幅広いお客様に対応しています」→ 誰にも刺さらない
  • 「高品質なサービスを提供」→ 競合も同じことを言っている
  • 「お客様第一主義」→ 抽象的で差別化できない

Who/What/Howを明確にすると:

  • WEBサイトで何を伝えるべきかが明確になる
  • 必要なコンテンツが自然と決まる
  • ターゲットに刺さるメッセージが作れる
  • 競合と明確に差別化できる

Who(誰に)の定義: ターゲット顧客と課題の明確化

「誰が、どんな状況で、どんな課題を抱えているのか?」

Whoを理解するための4要素:

要素質問具体例
どんな人属性(年齢、職業、役職、企業規模等)30代の中小企業経営者、従業員20-50名規模
きっかけなぜその課題が生まれたのか?コロナ禍で対面営業が困難に、新規顧客が減少
欲求何を達成したいのか?WEB経由で新規顧客を月10件獲得したい
抑圧何が実現を妨げているのか?WEB知識がない、予算が限られる、時間がない

ペルソナシート例(BtoB商材の場合):

項目セグメントA(優先度:高)セグメントB(優先度:中)
基本属性30-40代の中小製造業の経営者・事業責任者40-50代の大企業の購買部長・調達担当
企業規模従業員20-100名、年商3-10億円従業員500名以上、年商100億円以上
きっかけ人手不足で既存営業手法が限界コスト削減圧力、サプライヤー統廃合
欲求少人数で効率的に新規開拓したい安定供給と価格競争力の両立
抑圧デジタルツールの知識不足、予算制約社内稟議プロセスが複雑、切り替えリスク
報酬(得られる価値)営業工数30%削減、新規顧客月5社獲得調達コスト10%削減、供給安定化
情報収集行動Google検索「中小企業 営業効率化」、業界紙専門誌、展示会、既存取引先からの紹介
意思決定基準費用対効果、導入の簡単さ、サポート体制実績、品質保証体制、BCP対応

What(何を)の定義: 提供価値と独自性の明確化

「あなたの商品・サービスは、顧客にどんな価値を提供し、競合とどう違うのか?」

① 便益(Benefit)の3つの視点:

便益のタイプ説明具体例
機能的便益商品・サービスの機能で得られる価値「受注管理システムで発注ミスが90%削減」
情緒的便益使用時の感情的な満足「担当者の不安がなくなり、安心して業務に集中できる」
社会的便益他者からの評価、社会的意義「業界大手100社が導入する信頼のシステム」

② 独自性(POD: Point of Difference)の特定:

差別化要素チェックリスト:

要素質問
競合にない強み競合3社と比べて唯一持っている要素は?中小企業専門のコンサル型サポート
トレードオフ何かを犠牲にして得た強みか?大企業向けを捨て、中小企業に特化
顧客ニーズとの合致その違いは顧客が求めているか?中小企業は「手厚いサポート」を最重視
模倣困難性競合が簡単に真似できないか?10年の中小企業支援ノウハウ

③ RTB(Reason To Believe: 信じられる理由):

便益と独自性を裏付ける根拠:

RTBの種類
実績数値導入企業300社、顧客継続率95%、平均ROI 280%
第三者評価○○賞受賞、ISO認証取得、業界団体推奨
技術的根拠特許技術3件、独自開発のAIエンジン搭載
専門性業界歴20年のコンサルタント10名在籍
保証制度効果が出なければ全額返金、無料トライアル60日

What定義シート例:

【便益】
・機能的便益: 営業活動を30%効率化、受注率を1.5倍に向上
・情緒的便益: 営業担当者の負担が減り、本来の提案業務に集中できる
・社会的便益: 業界をリードする企業が導入している実績

【独自性(POD)】
・中小企業専門の営業効率化コンサルティング付きツール
(大手ツールは機能提供のみ、当社は導入から活用まで伴走)

【RTB(根拠)】
・中小企業導入実績300社、平均導入3ヶ月でCV率2.3倍
・中小企業診断士資格保有コンサルタント5名常駐
・導入企業の95%が1年後も継続利用


How(どう)の設計: 提供方法の最適化

「どのような方法で、その価値を顧客に届けるのか?」

4P(マーケティングミックス)で整理:

① Product(プロダクト): 商品・サービスの特徴

要素内容
基本機能CRM、商談管理、見積作成、売上分析
付加サービス月2回の活用コンサルティング、導入研修3回
品質保証稼働率99.9%、24時間サポート対応
カスタマイズ業種別テンプレート30種、APIで既存システム連携

② Price(価格): 価格戦略

項目内容競合比較
初期費用10万円A社:50万円、B社:30万円
月額費用3万円/5ユーザーA社:5万円、B社:2万円(機能少)
価格設定の根拠中小企業が導入しやすい価格帯に設定
価格体系ユーザー数に応じた段階制

③ Place(流通・場所): 提供チャネル

チャネル役割重要度
自社WEBサイト情報提供、問い合わせ獲得★★★★★
オンライン商談全国対応、移動コスト削減★★★★★
代理店地方エリアのカバー★★★☆☆
展示会リード獲得★★★☆☆

④ Promotion(コミュニケーション): 認知獲得の方法

施策目的予算配分
SEO/コンテンツマーケ潜在顧客の流入40%
リスティング広告顕在顧客の刈り取り30%
ウェビナーリード育成20%
SNS(LinkedIn)ブランド認知10%

WEBサイトへの落とし込み: Who/What/Howを伝える設計

WEBサイトのコンテンツにおいては「どう届けるか」の部分が該当しますが、それを考える上で「誰に、何を」が決まっていないとコンテンツの解像度が上がりません。商品・サービスのWho/What/Howが明確になったら、それをWEBサイトでどう表現するかを考えます。

コンテンツ戦略マップ:

Who/What/Howの要素WEBサイトで必要なコンテンツページ例
Who(課題)ターゲットの課題に共感し、解決策を示す「こんなお悩みありませんか?」ページ
What(便益)3つの便益を具体的に説明「選ばれる3つの理由」ページ
What(独自性)競合との違いを明示「他社との比較」ページ
What(RTB)実績・事例で証明導入事例10件、数値データ
How(Product)機能詳細、デモ動画「機能紹介」「使い方ガイド」
How(Price)料金プラン、見積シミュレーター「料金プラン」ページ
How(Place)導入の流れ、サポート体制「導入までの流れ」ページ

メッセージ階層の設計:

【トップページのメインメッセージ】
Who+What の訴求:
「中小企業の営業を変える。たった3ヶ月で受注率2倍へ」

【サブメッセージ】
How の訴求:
「導入企業300社、専任コンサルが成果まで伴走します」

【ボディコピー】
便益の具体化:
「営業活動の30%を自動化。本当に価値ある提案業務に集中できます」


Step 1-2完了時の成果物

このステップを終えた時点で、以下が完成している必要があります:

成果物チェックリスト:

  • [ ] Who定義シート(ターゲット2-3セグメント、優先順位付き)
  • [ ] What定義シート(便益・独自性・RTB)
  • [ ] How定義シート(4P整理)
  • [ ] WEBサイトコンテンツマップ(Who/What/Howから導出)
  • [ ] 主要ページのメッセージ案

このステップを飛ばすと:

  • 誰に何を伝えるべきか不明確なまま制作開始
  • 競合と差別化できない「よくあるサイト」になる
  • ターゲットに刺さらず、問い合わせが増えない

Step 1-3: 必要機能と要件の洗い出し(1週間)

前述の課題調査とWho/What/Howの明確化で得た情報から「どんなページや機能が必要か?」を具体的にリストアップします。

機能要件リスト例

カテゴリ機能必須/任意理由
ページ競合他社との比較ページ必須比較して優位性を示し、信頼を提供
フォーム3ステップの段階式フォーム必須離脱率を下げるため
フォーム自動返信メール機能必須即座の安心感提供
コンテンツ管理CMS(WordPress/Movable Type等)必須社内で更新できる体制
SEO構造化データマークアップ必須検索結果での優位性
分析GA4/Search Console連携必須効果測定
マーケティングMA(HubSpot等)連携任意将来的な自動化
セキュリティSSL化、WAF導入必須信頼性担保
アクセシビリティWCAG 2.1 AA準拠任意法令対応とUX向上

非機能要件

項目要件
ページ表示速度モバイルで3秒以内、デスクトップで2秒以内
対応ブラウザChrome/Safari/Edge/Firefox 最新2バージョン
対応デバイスPC/タブレット/スマートフォン(レスポンシブ)
同時アクセス1,000ユーザー/秒まで対応
サーバーダウンタイム月間99.9%の稼働率

Step 1-4: 予算とスケジュールの策定(1週間)

まとめた機能を「いくらかけて、いつまでに完成できるか」を決定します。

予算配分の例(総額500万円の場合)

項目金額割合内訳
要件定義・戦略設計100万円20%現状分析、戦略策定、要件定義
情報設計50万円10%サイトマップ、ワイヤーフレーム
デザイン100万円20%ビジュアルデザイン、UIデザイン
開発・実装150万円30%コーディング、CMS構築、機能実装
コンテンツ制作50万円10%ライティング、撮影、素材制作
テスト・検証30万円6%QA、ユーザビリティテスト
予備費20万円4%想定外の追加対応

注意: この要件定義だけ社内で、制作段階で制作のプロにお任せするという分け方はあまりお勧めしません。理由は要件定義をまとめたのは制作のプロではないため、具現化することが難しくなるためです。よって、可能であれば要件定義の段階からプロの制作会社に入ってもらうことをお勧めします。

スケジュール策定

全体スケジュール(全20週間の例):

フェーズ週数主なマイルストーン
フェーズ1: 要件定義1-6週要件定義書完成、承認
フェーズ2: 制作7-18週サイト完成、テスト完了
フェーズ3: 運用開始19週〜リリース、初期改善

詳細スケジュール:

Step 1-5: 目標設定とKPI策定(0.5週間)

「成功とは何か?」を数値で定義します。これは闇雲に定めるのではなく、先に明確化したWEBサイトの目的、課題、そして理想像から

KGI/KPI設定シート

レベル指標現状値目標値期限測定方法
KGI(最終目標)月間問い合わせ数20件35件(+75%)6ヶ月後GA4 CV計測
KPI(プロセス)オーガニック流入5,000セッション/月8,000セッション/月3ヶ月後GA4
KPI直帰率65%45%3ヶ月後GA4
KPIフォーム到達率5%10%3ヶ月後GA4ファネル分析
KPIフォーム完了率30%50%1ヶ月後フォーム分析ツール
KPI平均ページ滞在時間45秒90秒3ヶ月後GA4

ROI/ROAS試算

投資対効果の事前シミュレーション:

項目金額
リニューアル総費用500万円
問い合わせ増加数(月)+15件
成約率20%
増加成約数(月)3件
平均受注単価100万円
月間売上増300万円
回収期間1.7ヶ月
年間ROI620%

重要: この試算で投資回収が見込めない場合、この時点で戦略自体を見直すべきです。

要件定義フェーズのゴール

このフェーズを終える時点で、以下が完成している必要があります:

成果物チェックリスト:

  • [ ] 要件定義書(数ページ)
  • [ ] Who/What/Howシート
  • [ ] KGI/KPI設定シート
  • [ ] 機能要件リスト
  • [ ] 予算計画書
  • [ ] プロジェクトスケジュール
  • [ ] ステークホルダー合意書(承認サイン入り)

このフェーズを蔑ろにして次の制作・実装フェーズに入ると、75%の失敗プロジェクトの仲間入りです。


フェーズ2: 制作・実装フェーズ(10-14週間)

このフェーズの目的: フェーズ1で定めた要件を形にし、テストを経てリリースする

Step 2-1: 情報設計(2週間)

「どんなページ構成で、どんな導線にするか」を設計図化します。

サイトマップの作成

Before(現状)とAfter(新規)の比較:

前述した要件定義の中でもサイトマップは作成しますが、より詳細なbefore afterがわかるように作成していきましょう。

ページカテゴリ現状新規変更理由
トップページ1ページ1ページ構成を全面刷新
サービス紹介1ページにまとめ3ページに分割セグメント別訴求
事例紹介なし新規10ページ信頼性向上のため
お役立ちコンテンツ5記事20記事SEO強化
会社概要1ページ3ページ採用情報を分離

サイト全体のページ数: 現状15ページ → 新規45ページ

ワイヤーフレームの作成

主要ページのレイアウト設計:

各ページで以下を明確化:

  • ヘッダー/フッターの共通要素
  • コンテンツブロックの配置
  • CTAボタンの位置と文言
  • ナビゲーション構造
  • レスポンシブ時の表示変化

重要: デザインの見た目ではなく、情報の配置と導線に集中します。

Step 2-2: デザイン制作(3週間)

「ブランドイメージを体現し、使いやすいデザイン」を作ります。

デザインプロセス

段階成果物レビュー回数所要時間
デザインコンセプト策定ムードボード、方向性資料1回3日
トップページデザインPC/SPデザインカンプ2回まで1週間
下層ページデザイン主要5ページのデザイン1回1週間
デザインシステム構築UI部品集、スタイルガイド-3日

重要ポイント:

  • デザインレビューは最大2回までに制限
  • 「好き/嫌い」ではなく「ターゲットに響くか」で判断
  • フィードバックは1週間以内に完結

NG行動:

  • 経営層の好みで何度も作り直す
  • 細かい色の違いに何時間もかける
  • デザイナーへの指示が曖昧

Step 2-3: 開発・実装(4週間)

「デザインを動くWEBサイトにする」工程です。

開発タスク

工程内容所要時間
フロントエンド開発HTML/CSS/JavaScript実装2週間
CMS構築WordPress等のセットアップ、カスタマイズ1週間
バックエンド開発フォーム処理、データベース連携1週間
外部ツール連携GA4/Search Console/MA等3日

開発環境

環境用途URL例
開発環境開発者の作業環境dev.example.com
ステージング環境クライアント確認用stg.example.com
本番環境一般公開用www.example.com

進捗管理:

  • 週次で進捗報告(完了率、遅延リスク)
  • 機能要件の後出しは厳禁
  • 仕様変更は影響範囲とコスト試算が必須

Step 2-4: コンテンツ制作(3週間、開発と並行)

「ユーザーに届ける情報」を作ります。

コンテンツ制作タスク

コンテンツ種別ボリューム担当所要時間
会社紹介文2,000文字社内1週間
サービス説明各3,000文字×3ページライター2週間
事例記事各2,000文字×10件ライター3週間
SEO記事各5,000文字×5本外部ライター3週間
写真撮影オフィス・商品等30カットカメラマン1日

コンテンツ品質チェック:

  • [ ] Who/What/Howに沿った訴求か
  • [ ] ターゲットの課題に答えているか
  • [ ] SEOキーワードが自然に含まれているか
  • [ ] 事実に基づき、誇大表現がないか
  • [ ] 読みやすさ(中学生でも理解できるか)

Step 2-5: テスト・検証(2週間)

「バグや使いにくさを公開前に潰す」最重要工程です。

テストチェックリスト

テスト種別確認項目担当完了
機能テスト全リンクの動作確認、フォーム送信QA担当
ブラウザテストChrome/Safari/Edge/Firefox表示QA担当
デバイステストPC/タブレット/スマホ(各OS)QA担当
表示速度PageSpeed Insights 90点以上エンジニア
SEOメタデータ、構造化データ、内部リンクSEO担当
アクセシビリティWCAG 2.1 AA基準クリア専門家
セキュリティSSL設定、脆弱性診断エンジニア
ユーザビリティ5名のユーザーテストUX担当
コンテンツ校正誤字脱字、事実確認編集者

ユーザビリティテストの実施

テストシナリオ例:

タスク成功基準実測値
「サービス料金を知る」3分以内に到達平均1分45秒
「問い合わせフォームを送信」5分以内に完了平均3分20秒
「事例記事を3つ読む」離脱せずに完了5名中4名成功

不合格なら改善して再テスト。

Step 2-6: リリース準備とカットオーバー(1週間)

「旧サイトから新サイトへ切り替える」最終工程です。

リリースチェックリスト

公開1週間前:

  • [ ] 全ステークホルダーの最終承認取得
  • [ ] 301リダイレクト設定完了
  • [ ] Search Consoleにサイトマップ送信
  • [ ] GA4設定・動作確認完了
  • [ ] バックアップ体制確認

公開前日:

  • [ ] 最終動作確認(本番環境)
  • [ ] DNSの切り替え手順確認
  • [ ] 緊急連絡体制の確認
  • [ ] ロールバック手順の準備

公開当日:

  • [ ] DNS切り替え実施
  • [ ] 全ページ表示確認
  • [ ] フォーム送信テスト
  • [ ] アクセス解析動作確認
  • [ ] 関係者への公開連絡

以上のフェーズでようやくリリースまで辿り着きました。しかしこれからが本番です。数字の変化が出てくるのはこれからです。

フェーズ3: 運用・改善フェーズ(継続)

このフェーズの目的: データに基づいて継続的に改善し、KGI達成を目指す

重要: リニューアルは「完成」ではなく「スタート」です。

Step 3-1: 初期モニタリング(公開後1ヶ月)

「公開直後の問題を速攻で潰す」集中監視期間です。

モニタリングスケジュール

時期確認項目頻度担当
公開直後〜3日エラー監視、フォーム動作、ユーザーフィードバック毎日3回全員
4日〜2週間アクセス数、CV数、直帰率、表示速度毎日1回Web担当
3週〜1ヶ月詳細分析、ユーザー行動、ヒートマップ週2回Web担当

初期によくある問題と対処

問題原因対処法優先度
アクセス数激減301リダイレクト未設定即座に設定追加最高
フォーム送信できないメール設定ミスサーバー設定見直し最高
ページ表示が遅い画像最適化不足圧縮・WebP変換
スマホで崩れるCSS不具合緊急修正

Step 3-2: 効果測定とデータ分析(毎月)

「KPI達成状況を可視化し、次の打ち手を決める」定例作業です。

月次レポートの構成

1. KPI達成状況サマリー

KPI目標実績達成率前月比評価
オーガニック流入8,000/月6,500/月81%+15%
直帰率45%52%86%-3pt
フォーム到達率10%8%80%+1pt
CV数35件28件80%+5件

2. ユーザー行動分析

  • 流入元内訳(オーガニック/SNS/広告/直接)
  • 人気ページTOP10
  • 離脱率の高いページTOP5
  • CV経路分析

3. 課題と仮説

課題仮説検証方法
直帰率が目標未達スマホでファーストビューが弱いヒートマップ分析
フォーム到達率が低いCTAが目立たないA/Bテスト

Step 3-3: 改善施策の立案と実施(継続)

「PDCAサイクルを回し続ける」運用の核心です。

改善のプロセス

改善施策の優先順位付け

インパクト×工数マトリクス:

施策期待効果工数優先度
フォーム項目を10→5に削減CV率+20%1日最優先
トップページCTA追加CV+10%3日
事例ページ10本追加流入+15%2週間
チャットボット導入CV+5%1ヶ月

基本ルール: インパクト大×工数小を最優先で実施

A/Bテストの実施例

仮説: フォーム完了率を50%に改善したい(現状30%)

テスト項目パターンA(現状)パターンB(改善案)結果
入力項目数10項目5項目B勝利(完了率48%)
送信ボタン文言「送信する」「無料で相談する」B勝利(+12%)
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Step 3-4: 定期的な大規模改善(四半期ごと)

「3ヶ月分のデータを総括し、戦略調整する」定期レビューです。

四半期レビューの議題

アジェンダ内容所要時間
KGI達成状況最終目標への進捗確認30分
ユーザーフィードバックインタビュー、アンケート結果30分
競合分析競合の動向変化20分
Who/What/How見直し戦略の微調整40分
次四半期の施策計画優先施策の決定30分

継続的改善のための体制

運用チーム体制例:

役割担当者工数主な業務
Web責任者マーケティング部長週2時間意思決定、予算承認
Web担当者専任1名週20時間データ分析、施策実施、外注管理
コンテンツ担当兼任1名週5時間記事更新、ニュース投稿
外部パートナー制作会社月10時間技術サポート、改善提案

予算: 月額10-30万円(保守費用、小規模改善費用)


3フェーズ成功のためのチェックリスト

フェーズ1完了時の必須確認事項

  • [ ] 現状分析が定量データで裏付けされている
  • [ ] Who/What/Howが全員で合意されている
  • [ ] KGI/KPIが測定可能な数値で設定されている
  • [ ] ROI試算で投資回収が見込める
  • [ ] 予算とスケジュールがステークホルダー承認済み
  • [ ] 要件定義書に全員が署名している

1つでも未完了なら、次のフェーズに進んではいけません。

フェーズ2完了時の必須確認事項

  • [ ] 全テストをパスしている
  • [ ] ユーザビリティテストで80%以上が成功
  • [ ] ページ表示速度が基準クリア
  • [ ] 301リダイレクトが完璧に設定されている
  • [ ] バックアップとロールバック手順が確認済み
  • [ ] 全ステークホルダーが最終版を承認

フェーズ3で継続すべき習慣

  • [ ] 週次でアクセス解析を確認
  • [ ] 月次でKPIレポートを作成
  • [ ] 四半期で戦略レビューを実施
  • [ ] 半年に1回、ユーザーインタビューを実施
  • [ ] 年に1回、大規模な競合分析を実施

最後に: リニューアルは「完璧な100点のサイト」を作るプロジェクトではありません。「仮説を検証し、継続的に改善し続ける仕組み」を作るプロジェクトです。

3フェーズすべてを真剣に実行すれば、あなたのWEBサイトリニューアルは「成功する25%」の側に入るでしょう。


よくある質問と回答

Q1: リニューアルではなく、部分改善ではダメなのか?

A: 多くの場合、部分改善(インクリメンタル改善)の方が効果的です。

全面リニューアルすべきケース:

  • サイト全体の構造に根本的な問題がある
  • 技術的な制約で部分改善が不可能
  • ブランド刷新など全社的な大きな変更がある

部分改善で十分なケース:

  • 特定ページの課題が明確
  • CV率向上が主目的
  • リスクを最小化したい

判断基準: リスクとコストを比較し、段階的改善で目標達成できるなら、それを選ぶべきです。

Q2: 制作会社の選び方は?

A: 以下の基準で評価してください:

評価項目チェックポイント重要度
戦略力データ分析、課題発見、戦略立案能力★★★★★
実績同業界・類似規模の成功事例★★★★☆
体制専任PM、各領域の専門家配置★★★★☆
コミュニケーションレスポンス速度、提案力★★★★☆
運用サポート公開後のサポート体制★★★☆☆

危険信号:

  • デザイン提案が最初から出てくる
  • 課題のヒアリングや調査が少ない
  • 根拠のない提案が多い
  • 「とにかくリニューアルしましょう」と勧める
  • 成果保証をしない

Q3: 社内リソースが限られている場合は?

A: スコープを絞り、優先順位をつけて段階的に実施しましょう。

ミニマムスタート戦略:

フェーズ実施内容期間予算目安
Phase 1トップページ+主要5ページのみ改善2ヶ月150万円
Phase 2SEOコンテンツ拡充3ヶ月100万円
Phase 3残りページの段階的改善6ヶ月200万円

効果を見ながら投資を増やす方が、一気に大規模リニューアルするよりリスクが低いです。


まとめ

WEBサイトリニューアルで75%が失敗するという現実は、けっして避けられない運命ではありません。失敗の根本原因は明確です:

  1. 担当者個人の「気分」や「好み」による意思決定
  2. 目的とKPI設定の欠如
  3. デザイン偏重で本質的課題の放置
  4. ユーザー視点の欠如
  5. データ分析と戦略設計の軽視

これらを回避し、現状の課題の洗い出しWho/What/Howフレームワークに基づいた戦略的アプローチを取れば、リニューアルの成功確率は格段に上がります。

そして、WEBサイトは「作って終わり」ではありません。 それはビジネスを成長させる継続的なプロセスです。担当者が変わっても、組織として一貫した戦略とガバナンスを持ち続けることが、真の成功への道です。

本記事で紹介したフレームワークとチェックリストを活用し、あなたの会社のWEBサイトを「失敗する75%」ではなく「成功する25%」の側に導いてください。

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この記事を書いた人
tomihey

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