SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025から読み解くZ世代マーケティング戦略|「小さく狭く」の時代を勝ち抜く方法 - 勝手にマーケティング分析
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SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025から読み解くZ世代マーケティング戦略|「小さく狭く」の時代を勝ち抜く方法

SHIBUYA109 lab. トレンド大賞2025を読み解く 商品を勝手に分析
この記事は約24分で読めます。

はじめに

「Z世代って何を考えているの?」「インスタのエンゲージメントが下がっているけど、何が原因?」「若者向けのキャンペーンを企画しているけど、何が刺さるのか分からない...」

若手マーケターのあなたは、こんな悩みを抱えていませんか?

2025年11月、SHIBUYA109 lab.が発表した「トレンド大賞2025」は、around20(15〜24歳)の女性619人を対象に実施した調査結果をもとに、Z世代のリアルな消費行動と価値観を映し出しています。

本記事では、この調査結果を詳細に分析し、Who/What/How思考オルタネイトモデルといった実践的なマーケティングフレームワークを使って、「Z世代がなぜそれを選ぶのか」を紐解きます。さらに、あなたが明日から実務で使える具体的なマーケティング戦略まで提示していきます。

この記事を読むことで、Z世代の本質的なニーズを理解し、効果的なマーケティング施策を設計できるようになるでしょう。


SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025の全体像

調査の基本情報

項目内容
調査実施SHIBUYA109 lab.(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント)
調査期間2025年9〜10月
調査対象around20(15〜24歳)女性
有効回答数619人
調査方法WEBアンケート調査
ノミネート選出SHIBUYA109 lab. MATE所属の高校生・大学生10名による選考委員会
公式URLSHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025

2025年の9つの部門

今年は以下の9部門が設置されました。昨年との大きな違いは、キャラクター部門が新設された点です。これは「ぬい活」などキャラクターコンテンツの盛り上がりが顕著だったことを反映しています。

部門大賞特徴
カフェ・グルメ麻辣湯ヘルシーアジアフードとパリもちフード
ヒト長浜広奈ショート動画で切り抜かれる個性
アーティストHANA令和ソングで自己肯定、平成ソングでチアアップ
コンテンツ映画『国宝』映画鑑賞前後で作品の世界観を満喫
キャラクター(新設)LABUBUぬい活でキャラクター戦国時代へ
SNSミーム今これ界隈(中国ダンス)AIで作るミームが話題
ビューティーくるみちゃんヘアー血色感やツヤを重視したやさしい雰囲気
ファッション耳つぼジュエリークワイエット・アゲなアイテム
体験めじるしアクセサリー個性の表現も共感も「小さく狭く」

2025年のZ世代トレンドを貫く3つのキーワード

SHIBUYA109 lab.所長のコメントから、2025年のZ世代消費を理解する上で重要な3つのキーワードが浮かび上がります。

1. 「小さく狭く」のコミュニティ意識

Z世代は、不特定多数とのつながりや過度なアテンションを避ける傾向が強まっています。BeReal.やInstagramのストーリーズを中心に、クローズドかつエフェメラル(一時的)な空間でのコミュニケーションが活発化しています。

マーケティングへの示唆:

  • 大規模なキャンペーンよりも、小さなコミュニティ内で深く共感されるコンテンツが重要
  • 一時的で親密な体験の提供が求められる
  • 「バズらせる」よりも「深く刺さる」ことを目指す

2. 「heal & cheer up」な消費ムード

SNSを中心としたコミュニケーションの「量」と「範囲」に疲れを感じる傾向が顕著です。そのため、自分をチアアップしてくれるアイテム・コンテンツを通じて、「ありのままの自分」を肯定しながら、明るく自虐し、互いに励まし合うコミュニケーションムードが特徴的です。

マーケティングへの示唆:

  • ポジティブで癒やしを提供する商品やサービスが求められる
  • 自己肯定感を高めるメッセージングが効果的
  • 完璧主義ではなく、等身大の共感を重視

3. 「ポジティブに病む」キャラクターや「明るく自虐」するミーム

現代社会の「病み」などのネガティブなテーマを、ポジティブに昇華した文脈のキャラクターやミームが話題になりました。これは、辛い現実を直視しつつも、それを明るく共有することで乗り越えようとする姿勢の表れです。

マーケティングへの示唆:

  • ネガティブな感情をポジティブに転換するコンテンツが共感を呼ぶ
  • 「完璧でなくていい」というメッセージングが効果的
  • ユーモアを交えた自虐的なコミュニケーションが受け入れられる

部門別トレンド詳細分析とマーケティング戦略

カフェ・グルメ部門:「見る・聞く・探すを楽しむ食」

トレンド概要

順位商品名特徴人気の理由
1位麻辣湯中国・四川発祥のスープ料理ヘルシーで罪悪感がない、トッピング選びがSNS映え
2位もっちゅりんミスタードーナツ55周年記念商品新しい食感、売り切れ続出で「探す楽しみ」
3位ドバイチョコレートピスタチオペースト×カダイフASMR動画でザクザク食感が話題

Who/What/How分析:麻辣湯を例に

Who(誰のどんなJOBに対して)

要素内容
ターゲット15〜24歳の女性、特に健康意識が高く、SNSで情報発信をする層
きっかけSNSのショート動画で麻辣湯の投稿を見た、友達と一緒にトレンドフードを試したい
欲求美味しくてヘルシーな食事、SNS映えする体験、自分らしい選択をしたい
抑圧カロリーが気になる、高価すぎる、どこで食べられるか分からない
報酬罪悪感なく満足できる食事、SNSでシェアできる体験、自分で選んだ達成感

What(どんな便益と独自性を)

要素内容
便益食べ応えがありながらヘルシー、自分好みにカスタマイズできる、SNS映えする見た目
独自性花椒のしびれと唐辛子の辛さが特徴的、トッピングを自分で選ぶ過程が楽しい
RTBショート動画での人気、実際に食べた人の高評価、売り切れ続出の話題性

How(どのように提供するのか)

要素内容
プロダクトカスタマイズ可能なトッピング、視覚的に魅力的な提供方法
コミュニケーションTikTokやInstagramのショート動画、インフルエンサーの投稿
場所都市部の飲食店、アクセスしやすい立地
価格1,000〜1,500円程度の手頃な価格帯

カフェ・グルメ部門のマーケティング戦略

1. 体験価値の最大化

食べること自体だけでなく、「見る・聞く・探す」という過程も商品価値の一部として設計しましょう。

2. 「罪悪感フリー」のメッセージング

Z世代は健康意識が高い一方で、我慢したくないという欲求も強く持っています。「ヘルシーだけど美味しい」「罪悪感なく楽しめる」というメッセージングが効果的です。

3. ショート動画最適化

TikTokやInstagramのリール、YouTubeショーツを前提としたコンテンツ設計を行いましょう。

ポイント具体的施策
ASMR要素食感や音を強調した動画
カスタマイズ過程トッピング選びの様子を撮影
ビフォー・アフター調理前後の変化を見せる
15秒以内最初の3秒で引きつける

ヒト部門:「ショート動画」で切り抜かれる個性

トレンド概要

順位人物特徴人気の理由
1位長浜広奈『今日、好きになりました。』出演「おひなさま語録」がSNSで話題、ブレない自己肯定感
2位MONTA(もんた)現役高校生アーティスト独自のビジュアル、「もんた界隈」の創出
3位希空辻希美さんの娘、インフルエンサー顔出し解禁、『今日、好きになりました。』出演
SEJUより

「切り抜きたくなる個性」の本質

今年のヒト部門で注目すべきは、「切り抜きショート動画を視聴している若者も多く、『切り抜きたくなる個性』を持っていることが共通点」という指摘です。

これは、コンテンツ消費の形が変化していることを示しています。Z世代は長尺の動画を最初から最後まで見るのではなく、印象的なシーンを切り抜いたショート動画で消費することが多くなっています。

マーケティングへの応用

1. 「切り抜かれやすさ」を設計する

要素具体例効果
印象的なキャッチフレーズ「おひなさま語録」のような独特の言い回し記憶に残りやすい、SNSで引用されやすい
独自のビジュアルMONTAの机の上に足を上げるスタイル真似したくなる、「〇〇界隈」の創出
ブレない姿勢長浜広奈の自己肯定感溢れる発言共感を呼ぶ、応援したくなる

2. インフルエンサーマーケティングの新基準

従来のインフルエンサーマーケティングは「フォロワー数」を重視していましたが、Z世代マーケティングでは「切り抜かれる力」が重要になります。

従来の基準新しい基準
フォロワー数切り抜き動画の再生数
エンゲージメント率二次創作(真似、パロディ)の数
投稿頻度バイラルモーメントの創出力

3. ブランドパーソナリティの確立

人だけでなく、ブランド自体も「切り抜かれる個性」を持つことが重要です。


アーティスト部門:令和ソングで自己肯定、平成ソングでチアアップされる

トレンド概要

順位アーティスト特徴人気の理由
1位HANAちゃんみなプロデュースのオーディション番組『No No Girls』から誕生メンバーの成長過程、スキルの高さ
2位CUTIE STREET8人組女性アイドルグループ『かわいいだけじゃだめですか?』がSNSで人気
3位超ときめき♡宣伝部6人組女性アイドルグループ『超最強』が推し活ソングとして話題
HANAより

アーティスト部門の重要トレンド

1. プロデューサーの個性と思いが色濃く反映されているグループ

今年はメンバーだけでなく、プロデューサーの個性や思いが色濃く表現されているグループが人気となりました。これは、Z世代が「誰が作ったか」「どんな思いで作られたか」というストーリーを重視していることを示しています。

2. ポジティブで自己肯定感を上げてくれる楽曲

令和ソングは、ポジティブで自己肯定感を上げてくれるような楽曲がトレンドです。「かわいいだけじゃだめですか?」というフレーズは、Z世代の「ありのままの自分でいいんだ」という欲求を代弁しています。

3. 平成リバイバル:エネルギッシュな楽曲に鼓舞される

平成を代表するアーティストの楽曲も人気です。これは単なる懐かしさだけでなく、エネルギッシュな楽曲に鼓舞されることが魅力です。

マーケティング戦略:自己肯定感マーケティング

1. 「ありのまま」を肯定するメッセージング

メッセージ例効果活用シーン
「〇〇だけじゃダメ?」多様性の肯定、自己受容ブランドスローガン、キャンペーンメッセージ
「そのままのあなたで十分」自己肯定感の向上商品説明、コミュニケーション
「完璧じゃなくていい」プレッシャーからの解放SNS投稿、広告コピー

2. ストーリーテリングの重視

商品やサービスの「機能」だけでなく、「なぜ作ったのか」「誰が作ったのか」というストーリーを伝えることが重要です。

3. 「チアアップ」コンテンツの提供

Z世代は疲れています。彼らを元気づける「チアアップ」コンテンツを提供しましょう。

コンテンツタイプ具体例効果
モチベーション系「今日も頑張ったね」メッセージ自己肯定感向上
共感系「わかる〜!」と思える投稿コミュニティ感の醸成
ポジティブ系明るく前向きなコンテンツ気分転換、ブランドイメージ向上

コンテンツ部門:映画鑑賞前後で作品の世界観を満喫

トレンド概要

順位作品特徴人気の理由
1位映画『国宝』歌舞伎の世界を描いた実写映画内容の称賛、「国宝界隈」の誕生
2位映画『8番出口』ゲーム『8番出口』を元にした実写映画予測不能な展開、ホラー×SF
3位映画『366日』HYの楽曲に着想を得た恋愛映画切ないストーリー、赤楚衛二主演
国宝より

コンテンツ消費の新しい形

1. 鑑賞前後の「世界観体験」

Z世代は映画を「見る」だけでなく、作品の世界観に合わせたコーディネートで映画館に行く劇中キャラクターのキーホルダーやぬいぐるみを持参して、映画館でフード・ドリンクと一緒に撮影するなど、鑑賞前後で作品の要素を楽しむ実態が見られています。

2. 「〇〇界隈」の創出

SNSでは「国宝界隈」という、映画『国宝』のワンシーンを真似するSNSミームも誕生しました。これは、コンテンツが単なる消費対象ではなく、コミュニティ形成のきっかけになっていることを示しています。

マーケティング戦略:没入体験の設計

1. コンテンツ周辺の体験設計

フェーズ体験内容マーケティング施策
認知予告編、SNSでのバズティザー動画、インフルエンサー施策
興味世界観の理解特設サイト、キャラクター紹介
検討友達を誘う、コーデを考えるグループ割引、コーデ提案
購入チケット購入限定グッズ、早期割引
消費映画鑑賞フォトスポット、AR体験
共有SNS投稿ハッシュタグキャンペーン
継続関連商品購入、リピートグッズ販売、関連コンテンツ

2. 「真似したくなる」要素の組み込み

3. グッズ展開の戦略

単なる記念品ではなく、日常で使える、SNS映えする、持ち歩きたくなるグッズを開発しましょう。

グッズタイプ特徴Z世代に刺さる理由
ぬいぐるみ「ぬい活」に対応一緒に写真を撮れる
キーホルダー小さくてかわいいカバンにつけて個性を表現
アクリルスタンド飾れる、撮影できる推し活グッズとして

キャラクター部門:ぬい活でキャラクター戦国時代へ

トレンド概要

順位キャラクター特徴人気の理由
1位LABUBU中国のアートトイブランド「POPMART」BLACKPINKリサ着用、品切れ状態
2位ミャクミャク大阪・関西万博の公式キャラクターコラボ商品の発売
3位えもじの子(仮)LINEのデフォルト絵文字シュールなかわいさ
Wikipediaより

キャラクター部門新設の背景

今年新設されたキャラクター部門は、「ぬい活」などキャラクター消費が活発な要因を反映しています。

「ぬい活」とは: 「ぬいぐるみ活動」の略。推しのぬいぐるみやお気に入りのぬいぐるみと一緒にお出かけしたり、ぬいのコスチューム作りなどを楽しむこと。

「ポジティブに病む」キャラクターの台頭

平成リバイバルキャラクターや「教育番組」など、現代社会の"病み"などのネガティブなテーマをポジティブに昇華した文脈のキャラクターが話題となりました。

マーケティング戦略:キャラクター活用術

1. 「ぬい活」を前提としたキャラクター開発

設計ポイント具体的内容効果
サイズ持ち運びやすい10〜20cm程度外出に連れて行きやすい
素材写真映えする質感SNSでの拡散
ポージング自立する、ポーズが取れる撮影しやすい
着せ替えコスチュームの展開継続的な購買

2. キャラクターの世界観設計

単なる「かわいい」だけでなく、キャラクターに込められたメッセージや世界観が重要です。

3. コラボレーション戦略

ミャクミャクが示すように、人気キャラクターとのコラボは認知拡大に効果的です。

コラボ相手効果具体例
既存人気キャラクター両方のファン層にアプローチサンリオキャラクターズ、たまごっち
ブランド商品価値の向上アパレル、コスメ
イベント話題性の創出万博、展覧会

SNSミーム部門:AIで作るミームが話題、「明るく自虐ミーム」で今を共有

トレンド概要

順位ミーム特徴人気の理由
1位今これ界隈(中国ダンス)中国の伝統舞踊「科目三」×「今これ構文」コミカルな動き、日常あるあるとの融合
2位〇〇すぎてしぬ感情の高まりを誇張して表現AI音声との組み合わせ、日常で使いやすい
3位今日ビジュイイじゃん『M!LK』の楽曲「イイじゃん」のセリフ褒め言葉として使いやすい、真似しやすい振り付け

SNSミーム部門の重要トレンド

1. AI音声やAI動画生成を活用したショート動画ミーム

今年はAI音声やAI動画生成を活用したショート動画ミームが数多くノミネートされました。テクノロジーの民主化により、誰でも簡単にミームを作成・拡散できるようになっています。

2. 「明るく自虐」するミームトレンド

キャラクター同様、ネガティブな文脈をポジティブに共有したり、明るく自虐するミームトレンドが特徴的です。これは、辛い現実を直視しつつも、それをユーモアで乗り越えようとするZ世代の姿勢を表しています。

オルタネイトモデルで分析:「〇〇すぎてしぬ」

要素内容
きっかけ感情の高まり(嬉しい、楽しい、辛い、疲れた)
欲求その感情を友達と共有したい、共感してほしい
抑圧大げさに言うと引かれそう、真面目すぎると重い
報酬ユーモアを交えて共有できる、友達も笑ってくれる、「わかる!」と共感される

マーケティング戦略:ミームマーケティング

1. ミームを活用したコミュニケーション

活用方法具体例効果
ブランドアカウントでのミーム使用「〇〇すぎてしぬ」を商品紹介に使用親近感、Z世代との距離感縮小
ユーザー参加型キャンペーン「#〇〇界隈」でのUGC創出エンゲージメント向上、拡散
トレンドへの迅速な対応流行中のミームをタイムリーに活用話題性、Z世代への理解を示す

2. 「明るく自虐」のトーン&マナー

Z世代には、完璧主義ではなく、等身大で親しみやすいブランドコミュニケーションが効果的です。

従来型コミュニケーションZ世代向けコミュニケーション
「最高品質をお届けします」「頑張って作りました!」
「業界No.1の実績」「みんなのおかげでここまで来れました」
「完璧なサービスを提供」「まだまだですが、日々改善しています」

3. UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進

ミームはユーザーが作り、拡散することで成立します。ブランド側は「種」を撒き、ユーザーの創造性に委ねましょう。


ビューティー部門:キーワードは「ハッピーオーラ」

トレンド概要

順位トレンド特徴人気の理由
1位くるみちゃんヘアー漫画『君に届け』のキャラクター髪型K-POPアイドルが採用、かわいい
2位多幸感メイクピンク・コーラルカラーの血色感メイク柔らかい雰囲気、好印象
3位CLIO エッセンシャル リップチーク タップバーム状のリップ&チーク自然なツヤ感・血色感
@krm.__.mrk

流行りのくるみちゃんヘアやってみた✌🏻🤍 最初は太めのゴムを使ってあとは100均とかにあるちびゴムを使ってます♩ 同じくるみでうれしいな👩🏼‍❤️‍💋‍👩🏼💭 #君に届け#くるみちゃんヘア#ヘアアレンジ#ロングヘア#アレンジ

♬ Kimini Todoke - Miyakawakun

ビューティー部門の重要トレンド

キーワードは「ハッピーオーラ」

今年のビューティートレンドは、血色の良さや透明感・ツヤ感を重視し、柔らかい雰囲気のあるハッピーオーラの演出がキーワードとなりました。

チークアイテムが多数ノミネートされており、「なりたい雰囲気」を演出するメイクがトレンドです。

マーケティング戦略:「雰囲気」を売る

1. 機能ではなく「雰囲気」を訴求

従来の訴求Z世代向け訴求
「高保湿成分配合」「使うとハッピーオーラが出る」
「24時間持続」「一日中幸せそうな顔でいられる」
「SPF50+」「透明感のある肌を守る」

2. ビフォー・アフターの「印象」変化を示す

単なる肌の質感ではなく、「どんな雰囲気になれるか」を視覚化しましょう。

訴求内容ビジュアル例効果
多幸感メイク笑顔の女性、柔らかい光「こんな雰囲気になりたい」という憧れ
くるみちゃんヘアーK-POPアイドル、漫画キャラクター「あの人みたいになりたい」という模倣欲求
ツヤ感光を受けて輝く肌「健康的で美しい」という印象

3. SNS時代の「血色感」の重要性

スマートフォンのカメラやSNSのフィルターが普及した今、「画面越しでも映える」血色感が求められています。


ファッション部門:「クワイエット・アゲ」なアイテムで調和と個性を両立

トレンド概要

順位アイテム特徴人気の理由
1位耳つぼジュエリー耳のつぼにシールを貼る美容アイテム健康効果、ピアスのようなおしゃれ
2位ボディジュエリー肌に直接ラメやラインストーンを貼るキラキラ感、コーデのワンポイント
3位ナップサック肩に背負える巾着型バッグY2Kリバイバル、抜け感
https://kireibizmedia.jp/wp-content/uploads/2025/07/image1-1-1536x1024.jpg

ファッション部門の重要トレンド

「クワイエット・アゲ」なアイテム

平成中期のY2Kファッションや、キーモチーフ・キーアイテムを中心に楽しむ「〇〇コア」がトレンド。耳つぼジュエリー・ボディジュエリーなど、周りとの調和を乱さず、さりげなくギラギラできる「クワイエット・アゲ」なアイテムが多数ランクインしています。

Who/What/How分析:耳つぼジュエリー

要素内容
Who15〜24歳の女性、ピアスを開けていない・開けられない人、さりげないおしゃれを楽しみたい人
JOB個性を表現したい、でも目立ちすぎたくない、健康や美容にも興味がある
What(便益)ピアスのようなおしゃれができる、健康・美容効果、手軽に付け外しできる
What(独自性)健康効果とファッション性の両立、ピアスホール不要
HowSNSでの情報拡散、美容サロンでの施術、ECでの購入

マーケティング戦略:「さりげなさ」の価値

1. 「主張しすぎない個性」の提案

Z世代は、派手に目立つよりも、さりげなく個性を表現することを好みます。

ポイント具体的施策
小さくて繊細近くで見ると分かる程度のサイズ感
複数使い組み合わせて自分らしさを表現
取り外し可能TPOに合わせて調整できる

2. 機能×ファッションの融合

耳つぼジュエリーが示すように、機能的価値とファッション性の両立が重要です。

商品カテゴリ機能的価値ファッション性
耳つぼジュエリー健康・美容効果ピアスのようなおしゃれ
ボディジュエリー一時的で気分転換キラキラ感、特別な日の演出
ナップサック両手が空く、軽量Y2Kリバイバル、抜け感

3. Y2Kリバイバルの活用

平成中期(2000年代前半)のファッションがリバイバルしています。この世代にとっては「懐かしい」ではなく「新鮮」です。


体験部門:個性の表現も共感も「小さく狭く」

トレンド概要

順位体験特徴人気の理由
1位めじるしアクセサリー小さいラバーリングが付いたチャーム傘の柄やリップにつけて個性表現
2位ぬい活ぬいぐるみと一緒にお出かけ推し活、コスチューム作り
3位シール帳お気に入りシールをコレクション友達とシール交換、平成懐かしさ
https://parks2.bandainamco-am.co.jp/client_info/BNAM_LBC_EC/itemimage/ITEM_4549660953036/01.jpg

体験部門の重要トレンド

「小さく狭く」の体験価値

めじるしアクセサリーやブレスレット、メガネチャームなど、小さいチャームで自分の個性や好きを楽しむ体験がトレンドとなりました。また、編み物やシール帳など、ひとりもしくは少人数で楽しむものも多く、共感半径が狭い体験を求めていることがわかります。

オルタネイトモデル分析:めじるしアクセサリー

要素内容
きっかけガチャガチャで偶然見つけた、友達がつけているのを見た
欲求自分だけの目印がほしい、でも派手すぎるのは嫌、手軽に個性を表現したい
抑圧大きなアクセサリーは学校や職場でNG、高価なものは買えない
報酬自分のものが一目で分かる、「それかわいいね」と言われる、気軽に付け替えられる

マーケティング戦略:「小さな個性」の尊重

1. マイクロインフルエンサー戦略

大規模なキャンペーンよりも、小さなコミュニティ内で影響力を持つマイクロインフルエンサーを活用しましょう。

フォロワー規模特徴活用方法
1,000〜10,000人特定分野に詳しい、エンゲージメント率が高いニッチな商品の紹介
10,000〜50,000人コミュニティとの距離が近いレビュー、使用感の共有
一般ユーザーリアルな声、信頼性が高いUGCの促進

2. コレクション性・交換性の設計

シール帳が示すように、集める楽しさ、交換する楽しさを商品設計に組み込みましょう。

3. 「ひとりでも楽しい」体験の提供

Z世代は、大人数でワイワイするよりも、ひとりや少人数でじっくり楽しむことを好む傾向があります。

体験タイプ具体例マーケティング施策
ひとり時間編み物、塗り絵、ジャーナリング「おうち時間を豊かに」訴求
少人数シール交換、ぬい活の撮影会「友達と楽しむ」コンテンツ
オンライン同じ趣味の人とのゆるいつながりコミュニティ機能の提供

2025年のZ世代マーケティング:5つの実践戦略

ここまでの分析を踏まえ、Z世代向けマーケティングで実践すべき5つの戦略をまとめます。

戦略1:「小さく深く」のコミュニティマーケティング

従来型マーケティングとの違い

項目従来型マーケティングZ世代マーケティング
ターゲットマスマーケットニッチコミュニティ
目標認知度最大化エンゲージメント深化
KPIリーチ数、インプレッションコミュニティ内シェア率、UGC数
コミュニケーション一方向的双方向的、対話重視

実践ステップ

ステップ具体的アクション期待効果
1. コミュニティ特定自社商品に関心を持つ小さなコミュニティを発見ターゲットの明確化
2. インサイト収集コミュニティ内の会話、ニーズを深く理解共感ポイントの発見
3. 価値提供コミュニティが本当に求める価値を提供信頼関係の構築
4. アンバサダー育成コミュニティ内の影響力ある人をサポート自然な拡散
5. 拡大成功モデルを他のコミュニティへ横展開スケーラブルな成長

戦略2:「heal & cheer up」のメッセージング戦略

Z世代は疲れています。彼らを癒やし、元気づけるメッセージングが効果的です。

メッセージングフレームワーク

要素内容具体例
共感Z世代の悩みや疲れに寄り添う「毎日お疲れ様」「頑張りすぎなくていいよ」
肯定ありのままを肯定する「そのままのあなたで十分」「完璧じゃなくていい」
励まし前向きに背中を押す「明日もきっと良い日になる」「一歩ずつ進もう」
ユーモア明るく自虐的なトーン「頑張ったけどダメだった!笑」「これでいいのだ」

戦略3:ショート動画最適化戦略

ショート動画の黄金フォーマット

要素ポイント具体的手法
最初の3秒視聴者を引きつける驚き、疑問、共感を即座に提示
15秒以内完結する内容1メッセージ1動画の原則
ASMR要素音の心地よさ食感、開封音、自然音
視覚的インパクト目を引くビジュアルカラフル、ビフォーアフター、変化
真似しやすさユーザーが再現可能シンプルな動き、わかりやすい手順

切り抜かれやすいコンテンツ設計

戦略4:「ポジティブに病む」トーン&マナー戦略

完璧主義からの脱却

従来のブランドイメージZ世代向けブランドイメージ
完璧、プロフェッショナル等身大、親しみやすい
常に正しい時々失敗もする
距離感がある友達のような近さ
一方的に教える一緒に学ぶ

「明るい自虐」の活用例

シーンメッセージ例
商品開発の裏話「試作品100個作ってやっとできました!笑」
キャンペーン告知「頑張って企画したので見てください...!(小声)」
エラー・不具合「ごめんなさい、頑張ったんですがバグってました」

戦略5:体験価値最大化戦略

商品・サービスそのものだけでなく、その前後の体験全体を設計しましょう。

カスタマージャーニー全体の体験設計

フェーズ体験価値具体的施策
認知発見の喜びSNSでの偶然の出会い演出
興味ワクワク感ティザー、予告
検討共感ユーザーレビュー、UGC
購入特別感限定パッケージ、メッセージカード
使用満足感期待を超える品質
共有自己表現SNS映え、ストーリー性
継続コミュニティ感ユーザー同士の交流の場

マーケターが明日から実践できる5つのアクション

アクション1:自社商品のWho/What/Howを再定義する

ワークシート

項目現状Z世代向け再定義
Who(誰)
Who(JOB)
What(便益)
What(独自性)
How(コミュニケーション)
How(プロダクト)
How(場所)
How(価格)

アクション2:「小さく深く」のコミュニティを見つける

発見方法

  1. SNSでのハッシュタグ調査:自社商品に関連する小さなハッシュタグを探す
  2. UGCの分析:ユーザーがどんな文脈で商品を語っているか
  3. コメント欄の観察:ユーザー同士の会話から共通の関心事を発見

アクション3:ショート動画コンテンツを1本作る

最初の1本のテーマ例

  • 商品の開封動画(ASMR要素)
  • Before/After(使用前後の変化)
  • 裏側公開(製造過程、オフィスの様子)
  • ユーザーの声(インタビュー、レビュー)

アクション4:メッセージトーンを見直す

チェックリスト

  • [ ] 完璧主義的な表現を使っていないか
  • [ ] ユーザーと対等な目線で語っているか
  • [ ] 失敗や試行錯誤のストーリーを共有しているか
  • [ ] ユーモアを交えているか

アクション5:1つのマイクロインフルエンサーと関係を築く

ステップ

  1. 自社商品に合ったマイクロインフルエンサーを3人リストアップ
  2. 彼らのコンテンツを1週間観察し、理解を深める
  3. DMでコンタクト(押し売りではなく、共感と興味を伝える)
  4. サンプル提供、コラボレーション提案
  5. 長期的な関係構築

まとめ

Key Takeaways

ポイント内容実践方法
「小さく狭く」の時代Z世代は大規模なコミュニティより小さく深いつながりを求めるニッチコミュニティに特化したマーケティング、マイクロインフルエンサー活用
「heal & cheer up」消費疲れたZ世代を癒やし、元気づける商品・サービスが求められる自己肯定感を高めるメッセージング、ポジティブなブランド体験
ショート動画最適化15秒以内で完結、切り抜かれやすいコンテンツが重要ASMR要素、真似しやすさ、印象的なモーメント設計
「ポジティブに病む」トーン完璧主義ではなく等身大、明るく自虐的なコミュニケーションブランドの人間味を出す、失敗談の共有、ユーモアの活用
体験価値の重視商品そのものだけでなく、購入前後の体験全体が価値カスタマージャーニー全体の設計、「探す」「共有する」楽しさの提供

Next Action:明日から始める3つのステップ

ステップ1:自社商品のターゲットをZ世代の小さなコミュニティで再定義する(Who/What/How分析)

ステップ2:ショート動画を1本制作し、TikTokかInstagramリールに投稿する

ステップ3:ブランドのコミュニケーショントーンを見直し、「明るく自虐的」な投稿を1つ試す


おわりに

SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025は、単なる流行の羅列ではなく、Z世代の価値観と消費行動の本質を映し出しています。

「小さく狭く」「heal & cheer up」「ポジティブに病む」というキーワードは、コミュニケーションの量と範囲に疲れ、自分らしさを大切にしながらも、小さなコミュニティで深いつながりを求めるZ世代の姿を表しています。

マーケターとして重要なのは、この変化を単なる「若者の気まぐれ」として片付けるのではなく、社会の構造的変化として理解し、戦略に反映させることです。

SNSの普及により、誰もが情報発信者になれる時代。しかしそれは同時に、「常に見られている」「評価される」プレッシャーも生み出しました。Z世代は、そのプレッシャーから逃れるために、クローズドで一時的な空間を求めています。

このインサイトを理解し、「小さく深く」のアプローチでZ世代と向き合うことが、2025年以降のマーケティング成功の鍵となるでしょう。

本記事で紹介したフレームワークと戦略を、ぜひあなたの実務で試してみてください。そして、その結果をもとにPDCAを回し、継続的に改善していくことで、Z世代から選ばれるブランドを作り上げることができるはずです。


参考資料:

WhoWhatHowテンプレバナー (800 x 300 px)
この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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