はじめに
「Z世代って何を考えているの?」「インスタのエンゲージメントが下がっているけど、何が原因?」「若者向けのキャンペーンを企画しているけど、何が刺さるのか分からない...」
若手マーケターのあなたは、こんな悩みを抱えていませんか?
2025年11月、SHIBUYA109 lab.が発表した「トレンド大賞2025」は、around20(15〜24歳)の女性619人を対象に実施した調査結果をもとに、Z世代のリアルな消費行動と価値観を映し出しています。
本記事では、この調査結果を詳細に分析し、Who/What/How思考やオルタネイトモデルといった実践的なマーケティングフレームワークを使って、「Z世代がなぜそれを選ぶのか」を紐解きます。さらに、あなたが明日から実務で使える具体的なマーケティング戦略まで提示していきます。
この記事を読むことで、Z世代の本質的なニーズを理解し、効果的なマーケティング施策を設計できるようになるでしょう。
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025の全体像
調査の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査実施 | SHIBUYA109 lab.(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント) |
| 調査期間 | 2025年9〜10月 |
| 調査対象 | around20(15〜24歳)女性 |
| 有効回答数 | 619人 |
| 調査方法 | WEBアンケート調査 |
| ノミネート選出 | SHIBUYA109 lab. MATE所属の高校生・大学生10名による選考委員会 |
| 公式URL | SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025 |
2025年の9つの部門
今年は以下の9部門が設置されました。昨年との大きな違いは、キャラクター部門が新設された点です。これは「ぬい活」などキャラクターコンテンツの盛り上がりが顕著だったことを反映しています。
| 部門 | 大賞 | 特徴 |
|---|---|---|
| カフェ・グルメ | 麻辣湯 | ヘルシーアジアフードとパリもちフード |
| ヒト | 長浜広奈 | ショート動画で切り抜かれる個性 |
| アーティスト | HANA | 令和ソングで自己肯定、平成ソングでチアアップ |
| コンテンツ | 映画『国宝』 | 映画鑑賞前後で作品の世界観を満喫 |
| キャラクター(新設) | LABUBU | ぬい活でキャラクター戦国時代へ |
| SNSミーム | 今これ界隈(中国ダンス) | AIで作るミームが話題 |
| ビューティー | くるみちゃんヘアー | 血色感やツヤを重視したやさしい雰囲気 |
| ファッション | 耳つぼジュエリー | クワイエット・アゲなアイテム |
| 体験 | めじるしアクセサリー | 個性の表現も共感も「小さく狭く」 |
2025年のZ世代トレンドを貫く3つのキーワード
SHIBUYA109 lab.所長のコメントから、2025年のZ世代消費を理解する上で重要な3つのキーワードが浮かび上がります。
1. 「小さく狭く」のコミュニティ意識
Z世代は、不特定多数とのつながりや過度なアテンションを避ける傾向が強まっています。BeReal.やInstagramのストーリーズを中心に、クローズドかつエフェメラル(一時的)な空間でのコミュニケーションが活発化しています。
マーケティングへの示唆:
- 大規模なキャンペーンよりも、小さなコミュニティ内で深く共感されるコンテンツが重要
- 一時的で親密な体験の提供が求められる
- 「バズらせる」よりも「深く刺さる」ことを目指す
2. 「heal & cheer up」な消費ムード
SNSを中心としたコミュニケーションの「量」と「範囲」に疲れを感じる傾向が顕著です。そのため、自分をチアアップしてくれるアイテム・コンテンツを通じて、「ありのままの自分」を肯定しながら、明るく自虐し、互いに励まし合うコミュニケーションムードが特徴的です。
マーケティングへの示唆:
- ポジティブで癒やしを提供する商品やサービスが求められる
- 自己肯定感を高めるメッセージングが効果的
- 完璧主義ではなく、等身大の共感を重視
3. 「ポジティブに病む」キャラクターや「明るく自虐」するミーム
現代社会の「病み」などのネガティブなテーマを、ポジティブに昇華した文脈のキャラクターやミームが話題になりました。これは、辛い現実を直視しつつも、それを明るく共有することで乗り越えようとする姿勢の表れです。
マーケティングへの示唆:
- ネガティブな感情をポジティブに転換するコンテンツが共感を呼ぶ
- 「完璧でなくていい」というメッセージングが効果的
- ユーモアを交えた自虐的なコミュニケーションが受け入れられる
部門別トレンド詳細分析とマーケティング戦略
カフェ・グルメ部門:「見る・聞く・探すを楽しむ食」
トレンド概要
| 順位 | 商品名 | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 麻辣湯 | 中国・四川発祥のスープ料理 | ヘルシーで罪悪感がない、トッピング選びがSNS映え |
| 2位 | もっちゅりん | ミスタードーナツ55周年記念商品 | 新しい食感、売り切れ続出で「探す楽しみ」 |
| 3位 | ドバイチョコレート | ピスタチオペースト×カダイフ | ASMR動画でザクザク食感が話題 |
Who/What/How分析:麻辣湯を例に

Who(誰のどんなJOBに対して)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ターゲット | 15〜24歳の女性、特に健康意識が高く、SNSで情報発信をする層 |
| きっかけ | SNSのショート動画で麻辣湯の投稿を見た、友達と一緒にトレンドフードを試したい |
| 欲求 | 美味しくてヘルシーな食事、SNS映えする体験、自分らしい選択をしたい |
| 抑圧 | カロリーが気になる、高価すぎる、どこで食べられるか分からない |
| 報酬 | 罪悪感なく満足できる食事、SNSでシェアできる体験、自分で選んだ達成感 |
What(どんな便益と独自性を)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 便益 | 食べ応えがありながらヘルシー、自分好みにカスタマイズできる、SNS映えする見た目 |
| 独自性 | 花椒のしびれと唐辛子の辛さが特徴的、トッピングを自分で選ぶ過程が楽しい |
| RTB | ショート動画での人気、実際に食べた人の高評価、売り切れ続出の話題性 |
How(どのように提供するのか)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| プロダクト | カスタマイズ可能なトッピング、視覚的に魅力的な提供方法 |
| コミュニケーション | TikTokやInstagramのショート動画、インフルエンサーの投稿 |
| 場所 | 都市部の飲食店、アクセスしやすい立地 |
| 価格 | 1,000〜1,500円程度の手頃な価格帯 |
カフェ・グルメ部門のマーケティング戦略
1. 体験価値の最大化
食べること自体だけでなく、「見る・聞く・探す」という過程も商品価値の一部として設計しましょう。

2. 「罪悪感フリー」のメッセージング
Z世代は健康意識が高い一方で、我慢したくないという欲求も強く持っています。「ヘルシーだけど美味しい」「罪悪感なく楽しめる」というメッセージングが効果的です。
3. ショート動画最適化
TikTokやInstagramのリール、YouTubeショーツを前提としたコンテンツ設計を行いましょう。
| ポイント | 具体的施策 |
|---|---|
| ASMR要素 | 食感や音を強調した動画 |
| カスタマイズ過程 | トッピング選びの様子を撮影 |
| ビフォー・アフター | 調理前後の変化を見せる |
| 15秒以内 | 最初の3秒で引きつける |
ヒト部門:「ショート動画」で切り抜かれる個性
トレンド概要
| 順位 | 人物 | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長浜広奈 | 『今日、好きになりました。』出演 | 「おひなさま語録」がSNSで話題、ブレない自己肯定感 |
| 2位 | MONTA(もんた) | 現役高校生アーティスト | 独自のビジュアル、「もんた界隈」の創出 |
| 3位 | 希空 | 辻希美さんの娘、インフルエンサー | 顔出し解禁、『今日、好きになりました。』出演 |

「切り抜きたくなる個性」の本質
今年のヒト部門で注目すべきは、「切り抜きショート動画を視聴している若者も多く、『切り抜きたくなる個性』を持っていることが共通点」という指摘です。
これは、コンテンツ消費の形が変化していることを示しています。Z世代は長尺の動画を最初から最後まで見るのではなく、印象的なシーンを切り抜いたショート動画で消費することが多くなっています。
マーケティングへの応用
1. 「切り抜かれやすさ」を設計する
| 要素 | 具体例 | 効果 |
|---|---|---|
| 印象的なキャッチフレーズ | 「おひなさま語録」のような独特の言い回し | 記憶に残りやすい、SNSで引用されやすい |
| 独自のビジュアル | MONTAの机の上に足を上げるスタイル | 真似したくなる、「〇〇界隈」の創出 |
| ブレない姿勢 | 長浜広奈の自己肯定感溢れる発言 | 共感を呼ぶ、応援したくなる |
2. インフルエンサーマーケティングの新基準
従来のインフルエンサーマーケティングは「フォロワー数」を重視していましたが、Z世代マーケティングでは「切り抜かれる力」が重要になります。
| 従来の基準 | 新しい基準 |
|---|---|
| フォロワー数 | 切り抜き動画の再生数 |
| エンゲージメント率 | 二次創作(真似、パロディ)の数 |
| 投稿頻度 | バイラルモーメントの創出力 |
3. ブランドパーソナリティの確立
人だけでなく、ブランド自体も「切り抜かれる個性」を持つことが重要です。

アーティスト部門:令和ソングで自己肯定、平成ソングでチアアップされる
トレンド概要
| 順位 | アーティスト | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | HANA | ちゃんみなプロデュースのオーディション番組『No No Girls』から誕生 | メンバーの成長過程、スキルの高さ |
| 2位 | CUTIE STREET | 8人組女性アイドルグループ | 『かわいいだけじゃだめですか?』がSNSで人気 |
| 3位 | 超ときめき♡宣伝部 | 6人組女性アイドルグループ | 『超最強』が推し活ソングとして話題 |

アーティスト部門の重要トレンド
1. プロデューサーの個性と思いが色濃く反映されているグループ
今年はメンバーだけでなく、プロデューサーの個性や思いが色濃く表現されているグループが人気となりました。これは、Z世代が「誰が作ったか」「どんな思いで作られたか」というストーリーを重視していることを示しています。
2. ポジティブで自己肯定感を上げてくれる楽曲
令和ソングは、ポジティブで自己肯定感を上げてくれるような楽曲がトレンドです。「かわいいだけじゃだめですか?」というフレーズは、Z世代の「ありのままの自分でいいんだ」という欲求を代弁しています。
3. 平成リバイバル:エネルギッシュな楽曲に鼓舞される
平成を代表するアーティストの楽曲も人気です。これは単なる懐かしさだけでなく、エネルギッシュな楽曲に鼓舞されることが魅力です。
マーケティング戦略:自己肯定感マーケティング
1. 「ありのまま」を肯定するメッセージング
| メッセージ例 | 効果 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 「〇〇だけじゃダメ?」 | 多様性の肯定、自己受容 | ブランドスローガン、キャンペーンメッセージ |
| 「そのままのあなたで十分」 | 自己肯定感の向上 | 商品説明、コミュニケーション |
| 「完璧じゃなくていい」 | プレッシャーからの解放 | SNS投稿、広告コピー |
2. ストーリーテリングの重視
商品やサービスの「機能」だけでなく、「なぜ作ったのか」「誰が作ったのか」というストーリーを伝えることが重要です。

3. 「チアアップ」コンテンツの提供
Z世代は疲れています。彼らを元気づける「チアアップ」コンテンツを提供しましょう。
| コンテンツタイプ | 具体例 | 効果 |
|---|---|---|
| モチベーション系 | 「今日も頑張ったね」メッセージ | 自己肯定感向上 |
| 共感系 | 「わかる〜!」と思える投稿 | コミュニティ感の醸成 |
| ポジティブ系 | 明るく前向きなコンテンツ | 気分転換、ブランドイメージ向上 |
コンテンツ部門:映画鑑賞前後で作品の世界観を満喫
トレンド概要
| 順位 | 作品 | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 映画『国宝』 | 歌舞伎の世界を描いた実写映画 | 内容の称賛、「国宝界隈」の誕生 |
| 2位 | 映画『8番出口』 | ゲーム『8番出口』を元にした実写映画 | 予測不能な展開、ホラー×SF |
| 3位 | 映画『366日』 | HYの楽曲に着想を得た恋愛映画 | 切ないストーリー、赤楚衛二主演 |

コンテンツ消費の新しい形
1. 鑑賞前後の「世界観体験」
Z世代は映画を「見る」だけでなく、作品の世界観に合わせたコーディネートで映画館に行く、劇中キャラクターのキーホルダーやぬいぐるみを持参して、映画館でフード・ドリンクと一緒に撮影するなど、鑑賞前後で作品の要素を楽しむ実態が見られています。
2. 「〇〇界隈」の創出
SNSでは「国宝界隈」という、映画『国宝』のワンシーンを真似するSNSミームも誕生しました。これは、コンテンツが単なる消費対象ではなく、コミュニティ形成のきっかけになっていることを示しています。
マーケティング戦略:没入体験の設計
1. コンテンツ周辺の体験設計
| フェーズ | 体験内容 | マーケティング施策 |
|---|---|---|
| 認知 | 予告編、SNSでのバズ | ティザー動画、インフルエンサー施策 |
| 興味 | 世界観の理解 | 特設サイト、キャラクター紹介 |
| 検討 | 友達を誘う、コーデを考える | グループ割引、コーデ提案 |
| 購入 | チケット購入 | 限定グッズ、早期割引 |
| 消費 | 映画鑑賞 | フォトスポット、AR体験 |
| 共有 | SNS投稿 | ハッシュタグキャンペーン |
| 継続 | 関連商品購入、リピート | グッズ販売、関連コンテンツ |
2. 「真似したくなる」要素の組み込み

3. グッズ展開の戦略
単なる記念品ではなく、日常で使える、SNS映えする、持ち歩きたくなるグッズを開発しましょう。
| グッズタイプ | 特徴 | Z世代に刺さる理由 |
|---|---|---|
| ぬいぐるみ | 「ぬい活」に対応 | 一緒に写真を撮れる |
| キーホルダー | 小さくてかわいい | カバンにつけて個性を表現 |
| アクリルスタンド | 飾れる、撮影できる | 推し活グッズとして |
キャラクター部門:ぬい活でキャラクター戦国時代へ
トレンド概要
| 順位 | キャラクター | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | LABUBU | 中国のアートトイブランド「POPMART」 | BLACKPINKリサ着用、品切れ状態 |
| 2位 | ミャクミャク | 大阪・関西万博の公式キャラクター | コラボ商品の発売 |
| 3位 | えもじの子(仮) | LINEのデフォルト絵文字 | シュールなかわいさ |

キャラクター部門新設の背景
今年新設されたキャラクター部門は、「ぬい活」などキャラクター消費が活発な要因を反映しています。
「ぬい活」とは: 「ぬいぐるみ活動」の略。推しのぬいぐるみやお気に入りのぬいぐるみと一緒にお出かけしたり、ぬいのコスチューム作りなどを楽しむこと。
「ポジティブに病む」キャラクターの台頭
平成リバイバルキャラクターや「教育番組」など、現代社会の"病み"などのネガティブなテーマをポジティブに昇華した文脈のキャラクターが話題となりました。
マーケティング戦略:キャラクター活用術
1. 「ぬい活」を前提としたキャラクター開発
| 設計ポイント | 具体的内容 | 効果 |
|---|---|---|
| サイズ | 持ち運びやすい10〜20cm程度 | 外出に連れて行きやすい |
| 素材 | 写真映えする質感 | SNSでの拡散 |
| ポージング | 自立する、ポーズが取れる | 撮影しやすい |
| 着せ替え | コスチュームの展開 | 継続的な購買 |
2. キャラクターの世界観設計
単なる「かわいい」だけでなく、キャラクターに込められたメッセージや世界観が重要です。

3. コラボレーション戦略
ミャクミャクが示すように、人気キャラクターとのコラボは認知拡大に効果的です。
| コラボ相手 | 効果 | 具体例 |
|---|---|---|
| 既存人気キャラクター | 両方のファン層にアプローチ | サンリオキャラクターズ、たまごっち |
| ブランド | 商品価値の向上 | アパレル、コスメ |
| イベント | 話題性の創出 | 万博、展覧会 |
SNSミーム部門:AIで作るミームが話題、「明るく自虐ミーム」で今を共有
トレンド概要
| 順位 | ミーム | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 今これ界隈(中国ダンス) | 中国の伝統舞踊「科目三」×「今これ構文」 | コミカルな動き、日常あるあるとの融合 |
| 2位 | 〇〇すぎてしぬ | 感情の高まりを誇張して表現 | AI音声との組み合わせ、日常で使いやすい |
| 3位 | 今日ビジュイイじゃん | 『M!LK』の楽曲「イイじゃん」のセリフ | 褒め言葉として使いやすい、真似しやすい振り付け |
SNSミーム部門の重要トレンド
1. AI音声やAI動画生成を活用したショート動画ミーム
今年はAI音声やAI動画生成を活用したショート動画ミームが数多くノミネートされました。テクノロジーの民主化により、誰でも簡単にミームを作成・拡散できるようになっています。
2. 「明るく自虐」するミームトレンド
キャラクター同様、ネガティブな文脈をポジティブに共有したり、明るく自虐するミームトレンドが特徴的です。これは、辛い現実を直視しつつも、それをユーモアで乗り越えようとするZ世代の姿勢を表しています。
オルタネイトモデルで分析:「〇〇すぎてしぬ」
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| きっかけ | 感情の高まり(嬉しい、楽しい、辛い、疲れた) |
| 欲求 | その感情を友達と共有したい、共感してほしい |
| 抑圧 | 大げさに言うと引かれそう、真面目すぎると重い |
| 報酬 | ユーモアを交えて共有できる、友達も笑ってくれる、「わかる!」と共感される |
マーケティング戦略:ミームマーケティング
1. ミームを活用したコミュニケーション
| 活用方法 | 具体例 | 効果 |
|---|---|---|
| ブランドアカウントでのミーム使用 | 「〇〇すぎてしぬ」を商品紹介に使用 | 親近感、Z世代との距離感縮小 |
| ユーザー参加型キャンペーン | 「#〇〇界隈」でのUGC創出 | エンゲージメント向上、拡散 |
| トレンドへの迅速な対応 | 流行中のミームをタイムリーに活用 | 話題性、Z世代への理解を示す |
2. 「明るく自虐」のトーン&マナー
Z世代には、完璧主義ではなく、等身大で親しみやすいブランドコミュニケーションが効果的です。
| 従来型コミュニケーション | Z世代向けコミュニケーション |
|---|---|
| 「最高品質をお届けします」 | 「頑張って作りました!」 |
| 「業界No.1の実績」 | 「みんなのおかげでここまで来れました」 |
| 「完璧なサービスを提供」 | 「まだまだですが、日々改善しています」 |
3. UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進
ミームはユーザーが作り、拡散することで成立します。ブランド側は「種」を撒き、ユーザーの創造性に委ねましょう。

ビューティー部門:キーワードは「ハッピーオーラ」
トレンド概要
| 順位 | トレンド | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | くるみちゃんヘアー | 漫画『君に届け』のキャラクター髪型 | K-POPアイドルが採用、かわいい |
| 2位 | 多幸感メイク | ピンク・コーラルカラーの血色感メイク | 柔らかい雰囲気、好印象 |
| 3位 | CLIO エッセンシャル リップチーク タップ | バーム状のリップ&チーク | 自然なツヤ感・血色感 |
ビューティー部門の重要トレンド
キーワードは「ハッピーオーラ」
今年のビューティートレンドは、血色の良さや透明感・ツヤ感を重視し、柔らかい雰囲気のあるハッピーオーラの演出がキーワードとなりました。
チークアイテムが多数ノミネートされており、「なりたい雰囲気」を演出するメイクがトレンドです。
マーケティング戦略:「雰囲気」を売る
1. 機能ではなく「雰囲気」を訴求
| 従来の訴求 | Z世代向け訴求 |
|---|---|
| 「高保湿成分配合」 | 「使うとハッピーオーラが出る」 |
| 「24時間持続」 | 「一日中幸せそうな顔でいられる」 |
| 「SPF50+」 | 「透明感のある肌を守る」 |
2. ビフォー・アフターの「印象」変化を示す
単なる肌の質感ではなく、「どんな雰囲気になれるか」を視覚化しましょう。
| 訴求内容 | ビジュアル例 | 効果 |
|---|---|---|
| 多幸感メイク | 笑顔の女性、柔らかい光 | 「こんな雰囲気になりたい」という憧れ |
| くるみちゃんヘアー | K-POPアイドル、漫画キャラクター | 「あの人みたいになりたい」という模倣欲求 |
| ツヤ感 | 光を受けて輝く肌 | 「健康的で美しい」という印象 |
3. SNS時代の「血色感」の重要性
スマートフォンのカメラやSNSのフィルターが普及した今、「画面越しでも映える」血色感が求められています。
ファッション部門:「クワイエット・アゲ」なアイテムで調和と個性を両立
トレンド概要
| 順位 | アイテム | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 耳つぼジュエリー | 耳のつぼにシールを貼る美容アイテム | 健康効果、ピアスのようなおしゃれ |
| 2位 | ボディジュエリー | 肌に直接ラメやラインストーンを貼る | キラキラ感、コーデのワンポイント |
| 3位 | ナップサック | 肩に背負える巾着型バッグ | Y2Kリバイバル、抜け感 |
ファッション部門の重要トレンド
「クワイエット・アゲ」なアイテム
平成中期のY2Kファッションや、キーモチーフ・キーアイテムを中心に楽しむ「〇〇コア」がトレンド。耳つぼジュエリー・ボディジュエリーなど、周りとの調和を乱さず、さりげなくギラギラできる「クワイエット・アゲ」なアイテムが多数ランクインしています。
Who/What/How分析:耳つぼジュエリー
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Who | 15〜24歳の女性、ピアスを開けていない・開けられない人、さりげないおしゃれを楽しみたい人 |
| JOB | 個性を表現したい、でも目立ちすぎたくない、健康や美容にも興味がある |
| What(便益) | ピアスのようなおしゃれができる、健康・美容効果、手軽に付け外しできる |
| What(独自性) | 健康効果とファッション性の両立、ピアスホール不要 |
| How | SNSでの情報拡散、美容サロンでの施術、ECでの購入 |
マーケティング戦略:「さりげなさ」の価値
1. 「主張しすぎない個性」の提案
Z世代は、派手に目立つよりも、さりげなく個性を表現することを好みます。
| ポイント | 具体的施策 |
|---|---|
| 小さくて繊細 | 近くで見ると分かる程度のサイズ感 |
| 複数使い | 組み合わせて自分らしさを表現 |
| 取り外し可能 | TPOに合わせて調整できる |
2. 機能×ファッションの融合
耳つぼジュエリーが示すように、機能的価値とファッション性の両立が重要です。
| 商品カテゴリ | 機能的価値 | ファッション性 |
|---|---|---|
| 耳つぼジュエリー | 健康・美容効果 | ピアスのようなおしゃれ |
| ボディジュエリー | 一時的で気分転換 | キラキラ感、特別な日の演出 |
| ナップサック | 両手が空く、軽量 | Y2Kリバイバル、抜け感 |
3. Y2Kリバイバルの活用
平成中期(2000年代前半)のファッションがリバイバルしています。この世代にとっては「懐かしい」ではなく「新鮮」です。
体験部門:個性の表現も共感も「小さく狭く」
トレンド概要
| 順位 | 体験 | 特徴 | 人気の理由 |
|---|---|---|---|
| 1位 | めじるしアクセサリー | 小さいラバーリングが付いたチャーム | 傘の柄やリップにつけて個性表現 |
| 2位 | ぬい活 | ぬいぐるみと一緒にお出かけ | 推し活、コスチューム作り |
| 3位 | シール帳 | お気に入りシールをコレクション | 友達とシール交換、平成懐かしさ |
体験部門の重要トレンド
「小さく狭く」の体験価値
めじるしアクセサリーやブレスレット、メガネチャームなど、小さいチャームで自分の個性や好きを楽しむ体験がトレンドとなりました。また、編み物やシール帳など、ひとりもしくは少人数で楽しむものも多く、共感半径が狭い体験を求めていることがわかります。
オルタネイトモデル分析:めじるしアクセサリー
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| きっかけ | ガチャガチャで偶然見つけた、友達がつけているのを見た |
| 欲求 | 自分だけの目印がほしい、でも派手すぎるのは嫌、手軽に個性を表現したい |
| 抑圧 | 大きなアクセサリーは学校や職場でNG、高価なものは買えない |
| 報酬 | 自分のものが一目で分かる、「それかわいいね」と言われる、気軽に付け替えられる |
マーケティング戦略:「小さな個性」の尊重
1. マイクロインフルエンサー戦略
大規模なキャンペーンよりも、小さなコミュニティ内で影響力を持つマイクロインフルエンサーを活用しましょう。
| フォロワー規模 | 特徴 | 活用方法 |
|---|---|---|
| 1,000〜10,000人 | 特定分野に詳しい、エンゲージメント率が高い | ニッチな商品の紹介 |
| 10,000〜50,000人 | コミュニティとの距離が近い | レビュー、使用感の共有 |
| 一般ユーザー | リアルな声、信頼性が高い | UGCの促進 |
2. コレクション性・交換性の設計
シール帳が示すように、集める楽しさ、交換する楽しさを商品設計に組み込みましょう。

3. 「ひとりでも楽しい」体験の提供
Z世代は、大人数でワイワイするよりも、ひとりや少人数でじっくり楽しむことを好む傾向があります。
| 体験タイプ | 具体例 | マーケティング施策 |
|---|---|---|
| ひとり時間 | 編み物、塗り絵、ジャーナリング | 「おうち時間を豊かに」訴求 |
| 少人数 | シール交換、ぬい活の撮影会 | 「友達と楽しむ」コンテンツ |
| オンライン | 同じ趣味の人とのゆるいつながり | コミュニティ機能の提供 |
2025年のZ世代マーケティング:5つの実践戦略
ここまでの分析を踏まえ、Z世代向けマーケティングで実践すべき5つの戦略をまとめます。
戦略1:「小さく深く」のコミュニティマーケティング
従来型マーケティングとの違い
| 項目 | 従来型マーケティング | Z世代マーケティング |
|---|---|---|
| ターゲット | マスマーケット | ニッチコミュニティ |
| 目標 | 認知度最大化 | エンゲージメント深化 |
| KPI | リーチ数、インプレッション | コミュニティ内シェア率、UGC数 |
| コミュニケーション | 一方向的 | 双方向的、対話重視 |
実践ステップ
| ステップ | 具体的アクション | 期待効果 |
|---|---|---|
| 1. コミュニティ特定 | 自社商品に関心を持つ小さなコミュニティを発見 | ターゲットの明確化 |
| 2. インサイト収集 | コミュニティ内の会話、ニーズを深く理解 | 共感ポイントの発見 |
| 3. 価値提供 | コミュニティが本当に求める価値を提供 | 信頼関係の構築 |
| 4. アンバサダー育成 | コミュニティ内の影響力ある人をサポート | 自然な拡散 |
| 5. 拡大 | 成功モデルを他のコミュニティへ横展開 | スケーラブルな成長 |
戦略2:「heal & cheer up」のメッセージング戦略
Z世代は疲れています。彼らを癒やし、元気づけるメッセージングが効果的です。
メッセージングフレームワーク
| 要素 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 共感 | Z世代の悩みや疲れに寄り添う | 「毎日お疲れ様」「頑張りすぎなくていいよ」 |
| 肯定 | ありのままを肯定する | 「そのままのあなたで十分」「完璧じゃなくていい」 |
| 励まし | 前向きに背中を押す | 「明日もきっと良い日になる」「一歩ずつ進もう」 |
| ユーモア | 明るく自虐的なトーン | 「頑張ったけどダメだった!笑」「これでいいのだ」 |
戦略3:ショート動画最適化戦略
ショート動画の黄金フォーマット
| 要素 | ポイント | 具体的手法 |
|---|---|---|
| 最初の3秒 | 視聴者を引きつける | 驚き、疑問、共感を即座に提示 |
| 15秒以内 | 完結する内容 | 1メッセージ1動画の原則 |
| ASMR要素 | 音の心地よさ | 食感、開封音、自然音 |
| 視覚的インパクト | 目を引くビジュアル | カラフル、ビフォーアフター、変化 |
| 真似しやすさ | ユーザーが再現可能 | シンプルな動き、わかりやすい手順 |
切り抜かれやすいコンテンツ設計

戦略4:「ポジティブに病む」トーン&マナー戦略
完璧主義からの脱却
| 従来のブランドイメージ | Z世代向けブランドイメージ |
|---|---|
| 完璧、プロフェッショナル | 等身大、親しみやすい |
| 常に正しい | 時々失敗もする |
| 距離感がある | 友達のような近さ |
| 一方的に教える | 一緒に学ぶ |
「明るい自虐」の活用例
| シーン | メッセージ例 |
|---|---|
| 商品開発の裏話 | 「試作品100個作ってやっとできました!笑」 |
| キャンペーン告知 | 「頑張って企画したので見てください...!(小声)」 |
| エラー・不具合 | 「ごめんなさい、頑張ったんですがバグってました」 |
戦略5:体験価値最大化戦略
商品・サービスそのものだけでなく、その前後の体験全体を設計しましょう。
カスタマージャーニー全体の体験設計
| フェーズ | 体験価値 | 具体的施策 |
|---|---|---|
| 認知 | 発見の喜び | SNSでの偶然の出会い演出 |
| 興味 | ワクワク感 | ティザー、予告 |
| 検討 | 共感 | ユーザーレビュー、UGC |
| 購入 | 特別感 | 限定パッケージ、メッセージカード |
| 使用 | 満足感 | 期待を超える品質 |
| 共有 | 自己表現 | SNS映え、ストーリー性 |
| 継続 | コミュニティ感 | ユーザー同士の交流の場 |
マーケターが明日から実践できる5つのアクション
アクション1:自社商品のWho/What/Howを再定義する
ワークシート
| 項目 | 現状 | Z世代向け再定義 |
|---|---|---|
| Who(誰) | ||
| Who(JOB) | ||
| What(便益) | ||
| What(独自性) | ||
| How(コミュニケーション) | ||
| How(プロダクト) | ||
| How(場所) | ||
| How(価格) |
アクション2:「小さく深く」のコミュニティを見つける
発見方法
- SNSでのハッシュタグ調査:自社商品に関連する小さなハッシュタグを探す
- UGCの分析:ユーザーがどんな文脈で商品を語っているか
- コメント欄の観察:ユーザー同士の会話から共通の関心事を発見
アクション3:ショート動画コンテンツを1本作る
最初の1本のテーマ例
- 商品の開封動画(ASMR要素)
- Before/After(使用前後の変化)
- 裏側公開(製造過程、オフィスの様子)
- ユーザーの声(インタビュー、レビュー)
アクション4:メッセージトーンを見直す
チェックリスト
- [ ] 完璧主義的な表現を使っていないか
- [ ] ユーザーと対等な目線で語っているか
- [ ] 失敗や試行錯誤のストーリーを共有しているか
- [ ] ユーモアを交えているか
アクション5:1つのマイクロインフルエンサーと関係を築く
ステップ
- 自社商品に合ったマイクロインフルエンサーを3人リストアップ
- 彼らのコンテンツを1週間観察し、理解を深める
- DMでコンタクト(押し売りではなく、共感と興味を伝える)
- サンプル提供、コラボレーション提案
- 長期的な関係構築
まとめ
Key Takeaways
| ポイント | 内容 | 実践方法 |
|---|---|---|
| 「小さく狭く」の時代 | Z世代は大規模なコミュニティより小さく深いつながりを求める | ニッチコミュニティに特化したマーケティング、マイクロインフルエンサー活用 |
| 「heal & cheer up」消費 | 疲れたZ世代を癒やし、元気づける商品・サービスが求められる | 自己肯定感を高めるメッセージング、ポジティブなブランド体験 |
| ショート動画最適化 | 15秒以内で完結、切り抜かれやすいコンテンツが重要 | ASMR要素、真似しやすさ、印象的なモーメント設計 |
| 「ポジティブに病む」トーン | 完璧主義ではなく等身大、明るく自虐的なコミュニケーション | ブランドの人間味を出す、失敗談の共有、ユーモアの活用 |
| 体験価値の重視 | 商品そのものだけでなく、購入前後の体験全体が価値 | カスタマージャーニー全体の設計、「探す」「共有する」楽しさの提供 |
Next Action:明日から始める3つのステップ
ステップ1:自社商品のターゲットをZ世代の小さなコミュニティで再定義する(Who/What/How分析)
ステップ2:ショート動画を1本制作し、TikTokかInstagramリールに投稿する
ステップ3:ブランドのコミュニケーショントーンを見直し、「明るく自虐的」な投稿を1つ試す
おわりに
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2025は、単なる流行の羅列ではなく、Z世代の価値観と消費行動の本質を映し出しています。
「小さく狭く」「heal & cheer up」「ポジティブに病む」というキーワードは、コミュニケーションの量と範囲に疲れ、自分らしさを大切にしながらも、小さなコミュニティで深いつながりを求めるZ世代の姿を表しています。
マーケターとして重要なのは、この変化を単なる「若者の気まぐれ」として片付けるのではなく、社会の構造的変化として理解し、戦略に反映させることです。
SNSの普及により、誰もが情報発信者になれる時代。しかしそれは同時に、「常に見られている」「評価される」プレッシャーも生み出しました。Z世代は、そのプレッシャーから逃れるために、クローズドで一時的な空間を求めています。
このインサイトを理解し、「小さく深く」のアプローチでZ世代と向き合うことが、2025年以降のマーケティング成功の鍵となるでしょう。
本記事で紹介したフレームワークと戦略を、ぜひあなたの実務で試してみてください。そして、その結果をもとにPDCAを回し、継続的に改善していくことで、Z世代から選ばれるブランドを作り上げることができるはずです。
参考資料:



