はじめに
「Z世代向けにSNS施策を打ちたいけれど、どのプラットフォームを選べば良いかわからない」 「TikTokやInstagramに予算を投じているが、本当にZ世代に届いているのか不安」 「世代間のギャップが大きすぎて、上の世代と同じアプローチでは通用しない」
マーケティング担当者の皆さん、こんな悩みを抱えていませんか?
2025年12月、サイバーエージェント次世代生活研究所が発表した「2025年Z世代のSNS利用率調査」は、2,884名を対象とした大規模調査です。この調査から、Z世代(17〜28歳)と上世代(29〜60歳)の間には最大22.0ポイントもの利用率の差があるSNSが存在することが明らかになりました。
本記事では、この最新データを徹底分析し、明日から使える実践的なマーケティング戦略をお届けします。単なる数字の羅列ではなく、「なぜそのSNSが選ばれるのか」「どう活用すべきか」まで、Who/What/Howの観点から深掘りしていきます。
調査データから見る2025年のSNS勢力図
Z世代が最も使うSNSトップ5
まず、全体像を把握するために、Z世代の利用率トップ5を見ていきましょう。
| 順位 | SNS | Z世代利用率 | 上世代利用率 | 世代間差 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | YouTube | 86.1% | 86.3% | +0.2pt | 全世代型の国民的プラットフォーム |
| 2位 | LINE | 85.8% | 85.6% | +0.2pt | コミュニケーションインフラ |
| 3位 | 71.6% | 54.6% | +17.0pt | ビジュアル重視・Z世代優位 | |
| 4位 | X(旧Twitter) | 66.8% | 53.4% | +13.4pt | リアルタイム情報収集 |
| 5位 | TikTok | 52.8% | 30.9% | +21.9pt | 短尺動画・エンタメ特化 |

重要な発見: 上位2つ(YouTube・LINE)は世代間差がほぼゼロで、全世代に浸透しています。一方、3位以下は明確なジェネレーションギャップが存在します。
世代間ギャップが最も大きいSNSトップ5
Z世代マーケティングで真に重要なのは、この「差分」です。
| 順位 | SNS | Z世代利用率 | 上世代利用率 | 世代間差 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | BeReal. | 22.8% | 0.8% | 22.0pt |
| 2位 | TikTok | 52.8% | 30.9% | 21.9pt |
| 3位 | 71.6% | 54.6% | 17.0pt | |
| 4位 | 19.9% | 6.4% | 13.5pt | |
| 5位 | X | 66.8% | 53.4% | 13.4pt |
注目すべきポイント: BeReal.はZ世代の約4人に1人が利用する一方、上世代ではわずか0.8%。この22.0ポイント差は、マーケターにとって「Z世代を狙うなら避けて通れないプラットフォーム」であることを示しています。
逆転現象: 上世代が優位なSNS
| SNS | Z世代利用率 | 上世代利用率 | 世代間差 |
|---|---|---|---|
| 9.0% | 19.6% | -10.6pt |
Facebookは唯一、上世代の利用率がZ世代を大きく上回るプラットフォームです。Z世代向けマーケティングでFacebook広告に多額の予算を投じている場合、再考の余地があります。
過去3年間の推移から読み解くトレンド
Z世代: BeReal.だけが成長中

| SNS | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 増減トレンド |
|---|---|---|---|---|
| YouTube | - | 86.3% | 86.1% | → 横ばい |
| TikTok | 51.9% | 54.8% | 52.8% | → 横ばい |
| BeReal. | 13.2% | 21.4% | 22.8% | ↗ 成長中 |
主要SNSが成熟期に入り横ばいとなる中、BeReal.のみが3年間で+9.6ポイントの成長を見せています。これは「リアルな瞬間を共有したい」というZ世代特有のニーズを捉えた結果です。
上世代: TikTokとThreadsが伸長

| SNS | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 増減トレンド |
|---|---|---|---|---|
| TikTok | 20.4% | 28.2% | 30.9% | ↗ 成長中 |
| Threads | 5.9% | 9.5% | 15.2% | ↗ 急成長 |
| 51.3% | 53.1% | 54.6% | → 緩やかな成長 |
上世代ではTikTokが3年で+10.5ポイント、Threadsが+9.3ポイントと大きく成長。「短尺動画」と「テキストベースのつながり」が、上世代にも浸透し始めています。
Who/What/How分析: SNS別顧客理解
ここからは、主要SNSごとにWho/What/How分析を行い、マーケティング施策に落とし込んでみます。
BeReal. の分析

Who(誰・どんなJOB)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| どんな人 | 17-25歳のZ世代、大学生・若手社会人 |
| きっかけ | 「加工された完璧なSNS」への疲れ、本当の友達とつながりたい欲求 |
| 欲求 | ありのままの自分を見せたい、友人のリアルな日常を知りたい |
| 抑圧 | Instagram疲れ、「いいね」獲得競争からの解放願望 |
| 報酬 | 心理的安全性、親密な友人関係の構築 |
What(便益・独自性)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 便益 | 加工なしのリアルタイム共有、狭く深いつながり |
| 独自性 | 1日1回のランダム通知、2分以内に撮影・投稿必須の仕組み |
| RTB | 2020年フランス発、Z世代の「反インスタ」ニーズに応答 |
How(施策)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| プロダクト施策 | 加工機能を排除、前後カメラ同時撮影でリアリティ担保 |
| コミュニケーション | 「盛らない文化」の醸成、限定的な友人グループでの利用促進 |
| 価格 | 完全無料(広告なし)、親密性重視のビジネスモデル |
マーケティング示唆: BeReal.は広告プラットフォームとしては未成熟ですが、ブランドの「リアルさ」「透明性」を訴求する際のインスピレーション源として活用できます。例えば、Instagram Stories で「BeReal風」の加工なし投稿を行うことで、Z世代の共感を得られます。
TikTok の分析

Who(誰・どんなJOB)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| どんな人 | 17-28歳のZ世代全般、エンタメ・トレンド好き |
| きっかけ | 暇つぶし、新しい音楽・ダンス・トレンドの発見 |
| 欲求 | 楽しみたい、自己表現したい、バズりたい |
| 抑圧 | 制作スキルの不足、アルゴリズムへの理解不足 |
| 報酬 | 承認欲求の充足、新しい発見、コミュニティ形成 |
What(便益・独自性)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 便益 | 無限スクロールの中毒性、パーソナライズされたコンテンツ |
| 独自性 | 高精度レコメンドアルゴリズム、音楽と動画の融合 |
| RTB | 世界10億ユーザー超、Z世代のトレンド発信源 |
How(施策)

マーケティング示唆: TikTokは「バズ」を生み出す最強のプラットフォーム。ただし、Z世代では52.8%→横ばいで成長鈍化。一方、上世代が20.4%→30.9%と拡大中なため、全世代向けプラットフォームへの移行期と捉えるべきか今後も注視が必要です。
Instagram の分析

Who(誰・どんなJOB)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| どんな人 | 17-35歳の美容・ファッション・ライフスタイル関心層 |
| きっかけ | 憧れのライフスタイル発見、商品リサーチ |
| 欲求 | 美しいものを見たい、自分の世界観を表現したい |
| 抑圧 | コンテンツ制作の手間、フォロワー数へのプレッシャー |
| 報酬 | 美的満足感、ブランド構築、購買行動への影響 |
What(便益・独自性)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 便益 | ビジュアル重視のキュレーション、ショッピング機能統合 |
| 独自性 | Stories・Reels・投稿の3形式、高いエンゲージメント率 |
| RTB | Z世代利用率71.6%、ビジュアル商材との相性抜群 |
マーケティング示唆: Z世代71.6% vs 上世代54.6%の17.0pt差は、「ビジュアルコミュニケーションへの親和性の世代差」を示しています。Z世代向けには動画(Reels)、上世代向けには静止画投稿と、コンテンツ形式を使い分けましょう。
認知率データから読み解く「知られているが使われていないSNS」
認知率データも見ていきます。

先述した利用率と認知率のギャップは、ポテンシャルの高さを示します。
認知率トップ5(Z世代)
| 順位 | SNS | 認知率 | 利用率 | ギャップ |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | YouTube | 97.5% | 86.1% | 11.4pt |
| 2位 | LINE | 97.2% | 85.8% | 11.4pt |
| 3位 | 95.6% | 71.6% | 24.0pt | |
| 4位 | X | 92.8% | 66.8% | 26.0pt |
| 5位 | TikTok | 94.9% | 52.8% | 42.1pt |
戦略的示唆: TikTokは認知率94.9%に対し利用率52.8%。つまり、Z世代の約42%が「知っているけど使っていない」状態です。この層をアクティベートする施策(例: 初回投稿キャンペーン)が有効です。
認知率の世代間ギャップトップ5
| 順位 | SNS | Z世代認知率 | 上世代認知率 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | BeReal. | 79.4% | 30.6% | 48.8pt |
| 2位 | Discord | 62.4% | 29.5% | 32.9pt |
| 3位 | Whoo | 39.9% | 9.6% | 30.3pt |
| 4位 | 58.5% | 35.1% | 23.4pt | |
| 5位 | Twitch | 58.4% | 36.0% | 22.4pt |
発見: グローバルで先行流行したアプリ(BeReal.、Discord、Twitch)は、Z世代の情報感度の高さを反映して認知率が高い一方、上世代ではほぼ無名です。Z世代限定でリーチしたい場合、これらのプラットフォームが有効です。
実践的マーケティング戦略: 3つのパターン別アプローチ
上記データから、各世代向けのブランドはSNSを活かしてどうコミュニケーションをとっていけばいいのでしょうか。3パターンをまとめてみました。
パターン1: Z世代特化型ブランド
| 要素 | 戦略 |
|---|---|
| WHO | 17-25歳のアーリーアダプター |
| WHAT | トレンド最先端、リアルで親密なコミュニケーション |
| HOW | BeReal. + TikTok + Instagram Reels の3本柱 |
| 予算配分例 | TikTok 50% / Instagram 30% / BeReal風UGC施策 20% |
| KPI | UGC投稿数、ハッシュタグ到達率、エンゲージメント率 |
具体的施策例:
- TikTokでハッシュタグチャレンジを実施
- Instagram Reelsで「裏側」を見せる加工なしコンテンツ
- BeReal.の思想を取り入れた「リアルキャンペーン」(例: 加工なし投稿で割引)
パターン2: 全世代向けブランド
| 要素 | 戦略 |
|---|---|
| WHO | 17-60歳の幅広い層 |
| WHAT | 信頼性と親しみやすさの両立 |
| HOW | YouTube + LINE + Instagram のクロスメディア展開 |
| 予算配分例 | YouTube 40% / LINE 30% / Instagram 20% / X 10% |
| KPI | リーチ数、ブランド認知率、CVR |
具体的施策例:
- YouTubeで商品説明動画(長尺・詳細)
- LINE公式アカウントでクーポン配信
- Instagramで世代別クリエイティブ(Z世代向けはReels、上世代向けは投稿)
パターン3: 上世代特化型ブランド
| 要素 | 戦略 |
|---|---|
| WHO | 40-60歳のミドル・シニア層 |
| WHAT | 信頼性、わかりやすさ、安心感 |
| HOW | Facebook + YouTube + LINE |
| 予算配分例 | Facebook 40% / YouTube 35% / LINE 25% |
| KPI | CPM、クリック率、問い合わせ数 |
注意点: Z世代狙いでFacebookに投資するのは非効率。ただし、上世代の19.6%は依然としてアクティブユーザーなため、ターゲットが明確なら有効です。
失敗パターンと対策: よくある3つの落とし穴
❌ 失敗パターン1: 「とりあえずTikTok」思考
症状: Z世代=TikTokと短絡的に考え、商材との相性を考えず参入
結果: エンゲージメント率が低く、炎上リスクだけ高まる
✅ 対策: まず自社商材のジョブを明確化しましょう。
| 商材タイプ | 相性の良いSNS | 理由 |
|---|---|---|
| エンタメ・ファッション | TikTok、Instagram | ビジュアル訴求力が高い |
| B2B・専門サービス | X、LinkedIn | 情報収集目的の利用が多い |
| 日用品・食品 | YouTube、Instagram | レシピ・使い方動画との相性○ |
| コミュニティ形成 | Discord、LINE | クローズドな関係構築に適す |
❌ 失敗パターン2: 世代間ギャップの無視
症状: Z世代向けクリエイティブを上世代にも流用
結果: 上世代からの反応が薄く、ブランド毀損リスク
✅ 対策: 同じ商品でも、世代別に訴求ポイントを変える
例: 健康食品の訴求
| 世代 | 訴求ポイント | 使用SNS | クリエイティブ |
|---|---|---|---|
| Z世代 | 「SNS映え」「自己投資」 | Instagram Reels | 短尺・音楽付き・ダイナミック |
| 上世代 | 「科学的根拠」「安心感」 | YouTube、Facebook | 長尺・専門家インタビュー・静的 |
❌ 失敗パターン3: 認知率と利用率の混同
症状: 「認知率が高いから」という理由で広告出稿
結果: 認知はされているが使われていないプラットフォームに予算浪費
✅ 対策: 利用率×エンゲージメント率で優先順位を決める
優先度マトリクス:
高利用率 × 高エンゲージメント = 最優先(例: Instagram、YouTube)
高利用率 × 低エンゲージメント = 認知施策向き(例: LINE)
低利用率 × 高エンゲージメント = ニッチ攻略(例: BeReal.)
低利用率 × 低エンゲージメント = 撤退検討(例: Z世代向けFacebook)
セルフ診断: あなたのSNS戦略は正しいか?
以下のチェックリストで、自社のSNS戦略を診断してみましょう。
| No | チェック項目 | Yes/No |
|---|---|---|
| 1 | ターゲット世代(Z世代 or 上世代 or 全世代)を明確に定義している | □ |
| 2 | 各SNSの利用率データを基に、プラットフォームを選定している | □ |
| 3 | 世代別に異なるクリエイティブを用意している | □ |
| 4 | 認知率と利用率のギャップを理解し、活用している | □ |
| 5 | BeReal.などの新興SNSの動向をウォッチしている | □ |
| 6 | TikTokが「Z世代専用」ではなくなりつつあることを認識している | □ |
| 7 | Instagram・X・TikTokでの世代間差(13〜22pt)を施策に反映している | □ |
| 8 | YouTube・LINEの「全世代リーチ力」を活用している | □ |
| 9 | 四半期ごとにSNS利用トレンドをチェックしている | □ |
| 10 | 各SNSのWho/What/Howを言語化できる | □ |
診断結果:
- 8〜10個Yes: 素晴らしい! データドリブンな戦略を実行中です
- 5〜7個Yes: 改善の余地あり。本記事の施策を1つ実行してみましょう
- 0〜4個Yes: 要改善。まずはターゲット世代の明確化から始めましょう
まとめ: Key Takeaways
| 項目 | 内容 | すぐできるアクション |
|---|---|---|
| データの読み方 | Z世代と上世代の利用率差が13pt以上あるSNS(Instagram、X、TikTok、BeReal.)が真の「Z世代向けSNS」 | 自社の広告出稿先を見直し、世代間差の大きいSNSに予算をシフト |
| 成長プラットフォーム | Z世代ではBeReal.のみ成長中(+9.6pt/3年)、上世代ではTikTok・Threadsが伸長 | BeReal.の思想(リアル・加工なし)を自社SNS施策に取り入れる |
| 全世代リーチ | YouTube・LINEは世代間差0.2ptで全世代にリーチ可能な最強インフラ | 認知拡大施策はYouTube、CRM施策はLINEを軸に |
| 失敗回避 | 「Z世代=TikTok」は短絡的。商材のジョブ×SNS特性のマッチングが必須 | 自社商材のジョブを8要素(定義→収集→準備→確認→実行→観察→修正→完了)で分解し、各フェーズに適したSNSを選定 |
| 認知率活用 | TikTokは認知率94.9% vs 利用率52.8%(ギャップ42.1pt)。この「知っているが使っていない層」が獲得チャンス | 初回投稿キャンペーンなど、アクティベーション施策を実施 |
Next Action: 明日から始める3ステップ
ステップ1: ターゲット世代の再定義(所要時間: 30分)
□ 自社商品の主要顧客が「Z世代」「上世代」「全世代」のどれかを決定
□ サブターゲット(例: Z世代内でも17-22歳の大学生層)まで具体化
□ 競合他社のターゲティングを調査し、差別化ポイントを見出す
ステップ2: SNS利用率データと自社の出稿先を照合(所要時間: 1時間)
| 現在の出稿先 | ターゲット世代の利用率 | 継続 or 見直し |
|---|---|---|
| Z世代71.6% / 上世代54.6% | ||
| TikTok | Z世代52.8% / 上世代30.9% | |
| X | Z世代66.8% / 上世代53.4% | |
| Z世代9.0% / 上世代19.6% | ||
| YouTube | Z世代86.1% / 上世代86.3% |
ステップ3: 1つのSNSでWho/What/How分析を実行(所要時間: 2時間)
本記事のBeReal.・TikTok・Instagramの分析を参考に、自社の最優先SNSについてWho/What/How分析を作成してください。特に「どんなJOB(欲求)に応えるのか」を明確化することが、刺さるコンテンツ制作の第一歩です。
最後に: データは武器、解釈は戦略
サイバーエージェントの2,884名調査が示したのは、「Z世代は一枚岩ではない」という事実です。BeReal.に熱狂する層もいれば、TikTokを使わない層も半数近く存在します。
重要なのは、平均値に惑わされず、自社商品のジョブを理解した上で、最適なSNS×クリエイティブの組み合わせを見つけることです。
明日から、まずは1つのSNSで「加工なし投稿」を試してみませんか? Z世代が求める「リアルさ」は、完璧なビジュアルではなく、ブランドの誠実さから生まれます。


