はじめに
「リードは増えているのに契約に繋がらない」「営業が顧客フォローまで手が回らず、解約が増えている」「部門間で情報が分断されて、機会損失が発生している」
SaaSビジネスを展開する企業の多くが、こうした組織課題に直面しています。売上を伸ばすためには営業人員を増やせば良いのでしょうか。それとも、マーケティング予算を拡大すべきでしょうか。
答えは、組織の「仕組み」にあります。
THE MODEL(ザ・モデル)は、Salesforceが実践し、多くのSaaS企業が成果を上げている営業組織のフレームワークです。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門が連携し、顧客のライフサイクル全体を最適化します。
本記事では、THE MODELの基本概念から実践的な組織構築方法、成功事例と失敗パターン、そして明日から使えるKPI設計まで、実務で即活用できる知識を体系的に解説します。
THE MODELとは何か
THE MODELの定義

THE MODELとは、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つの専門部門に分業し、各部門が連携して顧客のライフサイクル全体を最適化する組織体制です。
従来の営業スタイルでは、1人の営業担当者が見込み客の発掘から契約、そして契約後のサポートまでを一貫して担当している組織が多い状況でした。しかしSaaSビジネスでは、顧客との接点が長期化し、求められる専門性も多様化しています。THE MODELは、この複雑化した営業プロセスを効率化し、スケーラブルな組織を実現するフレームワークです。
THE MODELが生まれた背景
THE MODELが注目される背景には、3つの大きな環境変化があります。
| 環境変化 | 詳細 | 営業への影響 |
|---|---|---|
| 顧客の購買行動の変化 | 商談前にWebで情報収集を完了。営業接触時には既に約60%以上の検討が進んでいる | 営業の役割が「情報提供者」から「意思決定支援者」へシフト |
| SaaSビジネスモデルの普及 | 買い切りから継続課金へ。顧客との関係が長期化し、LTV(顧客生涯価値)重視に | 契約後の活用支援・解約防止が収益に直結 |
| 専門性の高度化 | マーケティング、セールス、CSそれぞれで高度な専門知識が必要に | 一人の営業が全てをカバーすることが困難に |
特に重要なのは、顧客の購買プロセスの60%以上が営業との接触前に完了しているという事実です。つまり、営業担当者が直接アプローチする前に、マーケティングによる適切な情報提供と関係構築が不可欠になっているのです。
THE MODELの4つの構成要素と役割
THE MODELは、顧客のライフサイクルを4つのフェーズに分け、それぞれを専門部門が担当します。
全体像:顧客ライフサイクルと4部門の関係


1. マーケティング:見込み客を集める
マーケティング部門は、まだ自社を知らない潜在顧客を発見し、興味を持ってもらう段階を担当します。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主な役割 | 見込み客(リード)の獲得、ブランド認知向上、リード情報の蓄積 |
| 具体的な業務の例 | コンテンツマーケティング(ブログ、ホワイトペーパー、ウェビナー) SEO/SEM対策 SNSマーケティング 展示会・イベント企画 広告運用(リスティング、ディスプレイ、SNS広告) |
| 成果指標(KPI) | リード獲得数 リード獲得単価(CPL) Webサイト訪問者数 コンバージョン率(CVR) MQL(Marketing Qualified Lead)数 |
| 引き渡し基準 | 特定の行動(資料ダウンロード、ウェビナー参加など)を取った見込み客をMQLとして認定し、インサイドセールスに引き渡し |
重要ポイント:質より量ではなく、「質と量」の両立
マーケティングでよくある失敗は、「とにかくリード数を増やす」ことに注力し、質の低いリードを量産してしまうことです。インサイドセールスが対応できないほどのリードを送り込んでも、結果的に商談化率が下がり、組織全体の効率が落ちます。質と量の両方を考慮した目標を立てるようにしましょう。
2. インサイドセールス:見込み客を育て、商談を生み出す
インサイドセールス部門は、マーケティングから引き継いだ見込み客を育成し、購買意欲を高めて商談機会を創出します。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主な役割 | リード育成(ナーチャリング)、購買タイミングの見極め、商談設定 |
| 具体的な業務 | メール・電話によるフォローアップ オンライン商品デモ ニーズヒアリング 課題の明確化 リードスコアリング(見込み度の評価) 商談のアポイント設定 |
| 成果指標(KPI) | 商談化率(MQL → SQL) 商談設定数 平均対応時間 デモ実施数 SQL(Sales Qualified Lead)数 |
| 引き渡し基準 | 予算、決裁権、ニーズ、導入時期(BANT条件)を満たした見込み客をSQLとして認定し、フィールドセールスに引き渡し |
重要ポイント:インサイドセールスは「断る力」も必要
すべてのリードを商談化しようとするのではなく、「今は適切なタイミングではない」と判断して育成を継続する見極めも重要です。無理に商談化しても、フィールドセールスの時間を無駄にし、最終的な受注率を下げてしまいます。その際には今後のコミュニケーションに役立つその人の情報をヒアリングしておき、それをCRMに記録して蓄積していくことで、いざ課題が顕在化した時に再度アプローチがしやすくなります。
3. フィールドセールス:商談を進め、契約を獲得する
フィールドセールス部門は、購買意欲の高い見込み客と商談を行い、契約締結まで導きます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主な役割 | 提案活動、契約交渉、クロージング |
| 具体的な業務 | 対面・オンライン商談 課題深掘りと解決策の提案 ROI試算・費用対効果の提示 契約条件交渉 パートナー・代理店との連携 エンタープライズ顧客への対応 |
| 成果指標(KPI) | 受注率(商談 → 受注) 平均受注金額(Deal Size) 受注数 売上金額 セールスサイクル(商談開始から受注までの日数) |
| 引き渡し基準 | 契約締結後、顧客情報と導入要件をカスタマーサクセスに引き渡し |
重要ポイント:フィールドセールスは「選択と集中」
すべての商談に同じリソースを割くのではなく、受注確度と契約金額を見極めて注力先を決めます。特に大型案件(エンタープライズ)には、複数回の提案や経営層へのアプローチなど、手厚い対応が必要です。また、選択と集中をして進行できた案件、失注した案件のその理由を明確にしてCRM上に記録を蓄積していくことも今後の再現性を高めることにつながりますので非常に重要な活動の1つです。
4. カスタマーサクセス:顧客の成功を支援し、継続と拡大を実現する
カスタマーサクセス部門は、契約後の顧客が製品を活用し、成果を出せるよう支援します。SaaSビジネスにおいて、契約は「ゴール」ではなく「スタート」です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主な役割 | 顧客満足度向上、解約防止(チャーン抑制)、活用促進、アップセル・クロスセル |
| 具体的な業務 | オンボーディング(初期導入支援) 定期的なヘルスチェック 活用状況モニタリング 利用促進提案 トレーニング・ウェビナー開催 NPS(顧客推奨度)測定 アップセル・クロスセルの提案 |
| 成果指標(KPI) | チャーンレート(解約率) NPS(Net Promoter Score) 製品利用率(アクティブユーザー率) アップセル・クロスセル率 顧客満足度(CSAT) LTV(顧客生涯価値) |
| 成果の循環 | 成功した顧客が新たなリードを紹介したり、事例として協力してくれることで、マーケティングに貢献 |
重要ポイント:カスタマーサクセスは「先回り」の姿勢
問い合わせを待つのではなく、データを見て「利用が減っている顧客」「活用が進んでいない機能」を見つけ、能動的にアプローチします。解約の兆候が見えてから動くのでは遅いのです。
なぜTHE MODELが重要なのか:3つの本質的価値
さて、これまでTHE MODELの構成要素と役割を解説してきましたが、改めてこの組織体制を採用するメリットは何でしょうか。ポイントは3つで、専門性・生産性・持続性です。
1. 専門性の向上で成果が最大化される
従来の一人完結型営業では、1人が「見込み客発掘→商談→契約→サポート」のすべてを担当します。しかし、それぞれのフェーズで求められるスキルは大きく異なります。
| フェーズ | 求められるスキル | 一人完結型の課題 |
|---|---|---|
| 見込み客発掘 | マーケティング知識、データ分析、コンテンツ制作 | 営業担当者はマーケティングの専門家ではない |
| リード育成 | メール・電話でのコミュニケーション、タイミング判断 | 商談に追われて育成が後回しになる |
| 商談・提案 | 課題発見力、提案力、交渉力 | これが本来の営業の強み |
| 導入支援・継続フォロー | 製品知識、顧客成功設計、データ分析 | 新規獲得に注力し、既存顧客が放置される |
THE MODELでは、各フェーズを専門部門が担当することで、それぞれのスキルを磨き、高い成果を出せるようになります。
具体例:インサイドセールスの専門化による成果向上
ある企業では、フィールドセールスがリード対応を兼務していた時期は、商談化率が15%でした。インサイドセールス専任チームを立ち上げた結果、商談化率が28%に向上しました。専門性の向上により、リードのタイミングを見極める精度が上がったためです。
2. 効率的なリソース配分で生産性が向上する
営業プロセスの各段階で、必要なコストと時間は異なります。THE MODELでは、それぞれの段階に適したリソースを配分できます。
| フェーズ | コスト特性 | THE MODELでの最適化 |
|---|---|---|
| マーケティング | 1件あたりコストは低いが、大量のリードを扱う | マーケティングオートメーション(MA)ツールで自動化 |
| インサイドセールス | 電話・メールで効率的に対応。移動コストなし | オンライン商談ツールで1日10件以上対応可能 |
| フィールドセールス | 対面商談で移動時間・コストが高い | 受注確度の高い商談のみに注力 |
| カスタマーサクセス | 既存顧客の維持・拡大でLTVを最大化 | デジタルタッチ(メール、ウェビナー)と人的サポートを使い分け |
具体例:フィールドセールスの時間をどう使うか
従来型では、フィールドセールスが「見込み度の低いリード」にも時間を割いていました。THE MODELでは、インサイドセールスが見込み度を判定し、確度の高い商談のみをフィールドセールスに渡します。その結果、フィールドセールスは本来の強みである「提案力」「交渉力」を発揮する時間が増え、受注率が向上します。
3. スケーラブルな組織で持続的成長が可能になる
一人完結型の営業組織では、売上を2倍にするには営業人員を2倍にする必要があります。しかし、優秀な営業担当者を大量に採用することは困難です。
THE MODELでは、各フェーズの業務が標準化されているため、比較的採用しやすい人材でも成果を出せる仕組みが整います。
| 項目 | 一人完結型 | THE MODEL |
|---|---|---|
| 採用難易度 | 高い(全フェーズをこなせる人材は希少) | 中〜低(各フェーズの専門家を採用) |
| 育成期間 | 長い(6ヶ月〜1年) | 短い(専門分野に特化して3ヶ月程度) |
| 再現性 | 低い(属人的なスキルに依存) | 高い(プロセスとツールで標準化) |
| スケール速度 | 遅い(採用・育成がボトルネック) | 速い(部門ごとに拡大可能) |
具体例:成長スピードの違い
一人完結型で売上を年間30%成長させるには、毎年30%の営業人員増が必要です。しかし THE MODELでは、マーケティングの自動化やインサイドセールスの効率化により、人員増20%で売上30%成長を実現できた事例があります。
THE MODELが適している組織・適していない組織
すべての企業にTHE MODELが適しているわけではありません。前述したメリットを享受しにくい企業も存在しますので、自社の状況を見極めることが重要です。適している組織、適していない組織を理解しておきましょう。
THE MODELが適している組織
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| B2B SaaS企業 | 継続課金モデルで、契約後の関係が長期化するため、CSの役割が重要 |
| 成長フェーズの企業 | 急拡大に対応できるスケーラブルな組織が必要 |
| 平均契約金額が一定以上 (目安:年間50万円以上) | フィールドセールスのコストを回収できる規模 |
| 購買プロセスが複雑 (意思決定者が複数、検討期間が長い) | 各フェーズで専門的なアプローチが必要 |
| 既にある程度のリード数がある | 分業によるメリットを享受できる規模 |
THE MODELが適していない(または工夫が必要な)組織
| 条件 | 理由 | 代替案 |
|---|---|---|
| スタートアップ初期 (社員10名未満) | そもそも4部門に分けるリソースがない、リードもそこまで集まっていない | 「兼務型THE MODEL」で段階的に導入 |
| B2C・低単価商品 | 一人あたりの顧客対応コストが見合わない | セルフサービス型モデル、デジタルマーケティング中心 |
| 超高単価・完全カスタマイズ型ビジネス | 一人の営業が深く長く関わる必要がある | アカウント型営業を維持し、部分的にTHE MODELを導入 |
| 地方密着型ビジネス | 対面での関係構築が重視される | インサイドセールスの役割を限定的に |
診断チェックリスト
以下の質問に「はい」が多いほど、THE MODELの導入メリットが大きいと言えます。
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 月間の新規リード数が50件以上ある | ||
| 営業担当者が新規開拓と既存顧客フォローの両方に追われている | ||
| 契約後の解約率が気になっている | ||
| 営業プロセスが属人化しており、再現性が低い | ||
| 組織を拡大したいが、優秀な営業を採用するのが難しい | ||
| 見込み客から商談、契約までのデータが可視化されていない |
5個以上「はい」→ THE MODEL導入を強く推奨
3〜4個「はい」→ 段階的導入を検討
2個以下「はい」→ 現状の組織体制を維持し、部分的な改善を優先
THE MODELの構築ステップ:組織の作り方
では、自社がTHE MODELの組織を作るべきだと考えた時に実際に組織をどのようなステップで作ればいいのでしょうか。THE MODELを導入する際は、いきなり4部門すべてを立ち上げるのではなく、段階的に進めることが成功の鍵です。詳細なステップを理解していきましょう。
ステップ0:事前準備(現状把握と目標設定)
組織を変える前に、まず現状を正確に把握します。
| 準備項目 | 具体的な内容 | 使用ツール・手法 |
|---|---|---|
| 現状の営業プロセス可視化 | 見込み客獲得から契約、契約後フォローまでの流れを図式化 | プロセスマッピング |
| 各フェーズの数値把握 | リード数、商談化率、受注率、解約率などを測定 | Excel、スプレッドシート |
| ボトルネックの特定 | どのフェーズで最も効率が悪いか、離脱が多いかを分析 | ファネル分析 |
| 目標設定 | 6ヶ月後、1年後に達成したい売上・受注数を明確化 | OKR、SMART目標 |
特に、現状どこに歩留りが発生しているのかをリードから受注、リピートまでの数と率を可視化していくことから始めましょう。そしてその数字をどこまで伸ばしていきたいのかの目標数字もここで立てていきます。
現状把握シート(例)
| フェーズ | 現状の数値 | 目標数値(6ヶ月後) | 改善施策 |
|---|---|---|---|
| リード獲得 | 月間100件 | 月間200件 | コンテンツマーケティング強化 |
| 商談化率 | 10%(10件) | 20%(40件) | インサイドセールス専任化 |
| 受注率 | 30%(3件) | 40%(16件) | 提案資料の標準化 |
| 月間受注数 | 3件 | 16件 | - |
ステップ1:最初の分業「マーケティングとセールスの分離」
まずは、現状の営業が自分でリードを探し、商談し、契約まで進めている体制を変えていきます。最初のステップは、リード獲得をマーケティングに任せ、営業は商談に集中する体制を作ることです。
| 実施内容 | 詳細 |
|---|---|
| マーケティング担当者の配置 | 1名から開始可能。外部パートナー活用も可 |
| リード獲得施策の開始 | SEO記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなど |
| MAツールの導入 | HubSpot、Marketo、Pardotなど |
| 営業へのリード引き渡しルール策定 | どのような行動をしたリードを渡すか基準を決める |
成功事例:分業の第一歩
あるIT企業では、営業5名全員がリード開拓から契約まで担当していました。マーケティング担当者1名を採用し、Webサイトとブログを強化した結果、月間リード数が30件から80件に増加。営業は商談に集中できるようになり、受注数が月3件から月7件に増えました。
ステップ2:インサイドセールスの立ち上げ
リード数が増えてきたら、次はインサイドセールスを立ち上げます。
| 実施内容 | 詳細 |
|---|---|
| インサイドセールス担当者の採用 | 1〜2名から開始。営業経験は必須ではなく、コミュニケーション能力重視 |
| 業務フローの設計 | リード受領→初回コンタクト→育成→商談設定の流れを定義 |
| SFA/CRMツールの導入 | Salesforce、HubSpot CRMなど |
| KPI設定と測定 | 商談化率、対応リード数、商談設定数を毎週測定 |
| フィールドセールスとの連携ルール | どのような条件を満たしたら商談を設定するか(BANT基準など)を明確化 |
重要:インサイドセールスの役割を明確に
インサイドセールスは「テレアポ部隊」ではありません。見込み客の課題を理解し、適切なタイミングで商談を設定する「コンサルタント」的な役割です。この認識がズレると、質の低い商談ばかりが増え、フィールドセールスの負担が増えます。
ステップ3:カスタマーサクセスの設置
契約数が増えてきたら、カスタマーサクセスを立ち上げます。
| 実施内容 | 詳細 |
|---|---|
| CS担当者の配置 | 契約数が月間10件を超えたら専任CSを検討 |
| オンボーディングプログラムの設計 | 契約後30日間で顧客が確実に価値を実感できる導入プランを作成 |
| ヘルスモニタリングの仕組み構築 | ログイン頻度、機能利用状況などをダッシュボードで可視化 |
| 解約兆候の早期発見 | 利用減少、問い合わせ減少などのアラート設定 |
| 定期的なタッチポイント設計 | 月次レビュー、四半期ビジネスレビューなど |
成功事例:CSによる解約率改善
あるSaaS企業では、契約後のフォローを営業が兼務していましたが、新規開拓に追われて既存顧客対応が後回しになり、解約率が月間8%に達していました。CS担当者2名を配置し、オンボーディングとヘルスチェックを徹底した結果、解約率が月間3%まで改善しました。
ステップ4:フィールドセールスの役割再定義
すべての部門が揃ったら、フィールドセールスの役割を「商談・提案・クロージング」に集中させます。
| 実施内容 | 詳細 |
|---|---|
| リード開拓業務の完全移管 | 営業自身でのリスト作成、テレアポは原則禁止 |
| 商談準備の効率化 | インサイドセールスから詳細なヒアリング情報を引き継ぎ |
| 提案資料の標準化 | 業種別・課題別のテンプレートを用意 |
| 受注後の引き継ぎフロー確立 | CSへのスムーズな引き継ぎでオンボーディング成功率を向上 |
商談からの受注率とその数を最大化することがミッションのため、そのための目標を追っていきます。
ステップ5:PDCAサイクルの確立
組織ができたら、継続的に改善するサイクルを回します。この分業体制の1番のメリットがPDCAが高速で回りやすくなるということです。つまり、各組織のKPIの最大化のために各部門が専門知識を蓄積しながら高速でPDCAを回せるようになります。
ただし、自部門だけで最適化するのではなく、部門間の連携も必要です。下記のような頻度でPDCAを回すためのミーティングや振り返りをしていくことが必要でしょう。
| 改善活動 | 頻度 | 参加者 |
|---|---|---|
| 週次ミーティング | 毎週 | 各部門リーダー |
| 数値レビュー | 毎週 | 全社 |
| 部門間連携改善会議 | 隔週 | マーケ・IS・FS・CSの実務担当者 |
| 四半期振り返り | 3ヶ月ごと | 全社 |
THE MODEL成功のカギ:KPI設計と部門間連携
では、THE MODELの組織を立ち上げて、実際に各種数字の向上につなげるために、どのようなKPIと部門間連携をしていけばその成功確率は上がるのでしょうか
全体KPIツリー:各部門がどう繋がるか
THE MODELでは、各部門のKPIが連動して最終的な売上目標を達成します。

逆算思考でKPIを設計する
目標から逆算することで、各部門が「何をどれだけ達成すれば良いか」が明確になります。
| 目標 | 逆算ロジック |
|---|---|
| 売上月間1,000万円 | = 受注数10件 × 平均受注単価100万円 |
| 受注数10件 | = 商談数34件 × 受注率30% |
| 商談数34件 | = MQL数170件 × 商談化率20% |
| MQL数170件 | = リード獲得数340件 × MQL化率50% |
| リード獲得数340件 | = サイト訪問17,000人 × CVR 2% |
部門別KPI一覧と改善アクション
| 部門 | 主要KPI | 目標値(例) | 改善アクション例 |
|---|---|---|---|
| マーケティング | リード獲得数 CPL(リード獲得単価) MQL化率 | 月間340件 5,000円以下 50% | SEO記事を月10本公開 ウェビナー月2回開催 LP改善でCVR向上 |
| インサイドセールス | 商談化率 商談設定数 平均対応時間 | 20% 月間34件 初回コンタクト24時間以内 | BANTヒアリングの徹底 スクリプト改善 育成メールのテンプレ化 |
| フィールドセールス | 受注率 平均受注単価商談サイクル | 30% 100万円 30日以内 | 提案資料のブラッシュアップ デモ環境の充実 価格交渉ガイドライン策定 |
| カスタマーサクセス | チャーンレート NPS アップセル率 | 月間3%以下 50以上 20% | オンボーディング改善 定期レビュー実施 活用事例の共有 |
部門間の連携を成功させる3つのルール
ルール1:SLA(Service Level Agreement)を設定する
各部門間で「何を、いつまでに、どのように引き渡すか」を明文化します。
| 引き渡し | SLAの内容 | 測定指標 |
|---|---|---|
| マーケ → IS | MQL発生から24時間以内に初回コンタクト | 初回対応時間 |
| IS → FS | 商談設定時に顧客情報シートを完成させて共有 | 情報完成度スコア |
| FS → CS | 契約締結から3営業日以内にキックオフMTG設定 | 引き継ぎ完了時間 |
SLA違反時の対応
単に「守れなかった」で終わらせず、なぜ守れなかったかを分析し、プロセスを改善します。
ルール2:定期的な部門間ミーティングを実施する
| 会議名 | 頻度 | 目的 | 参加者 |
|---|---|---|---|
| デイリースタンドアップ | 毎日15分 | 昨日の成果と今日の予定共有 | 各部門リーダー |
| ウィークリーレビュー | 毎週1時間 | KPI確認と課題共有 | 全社 |
| マンスリー振り返り | 月次2時間 | 月間成果の振り返りと翌月計画 | 全社 |
ルール3:共通ダッシュボードでリアルタイム可視化
全部門が同じダッシュボードを見ることで、「今、どこに問題があるか」が一目でわかります。
推奨ツール
- Salesforce(CRM/SFA)
- HubSpot(MA/CRM)
- Looker / Tableau(BIツール)
各部門のKPIの目標と進捗、どのフェーズでの歩留りが起きているのかを関係者全員が共通認識を持てるように明確にしておきましょう。
THE MODELの失敗パターンと対策
ここまでTHE MODELの概念や役割、立ち上げステップなどを解説してきましたが、THE MODELを導入しても、以下のような失敗に陥ることがあります。事前に知っておくことで回避できますのでぜひご一読ください。
失敗パターン1:部門間の壁ができてしまう
症状
- マーケティング「質の高いリードを送っているのに、インサイドセールスが対応していない」
- インサイドセールス「マーケから来るリードの質が低すぎて、商談化できない」
- フィールドセールス「インサイドセールスが設定した商談が全然受注にならない」
- カスタマーサクセス「営業が無理な契約を取ってくるから、解約が増える」
原因
- 各部門が自部門のKPIだけを追いかけ、全体最適を考えていない
- コミュニケーション不足
- 責任の押し付け合い
対策
| 対策 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 全社共通目標の設定 | 「売上」「顧客満足度」など、全部門が共通で追うKPIを設定 |
| 部門横断プロジェクトの実施 | 「商談化率向上プロジェクト」など、複数部門で協力する取り組み |
| 定期的なジョブローテーション | マーケ担当者がISを1週間体験するなど、相互理解を深める |
| 成功/失敗事例の共有会 | 部門間で協力して成果を出した事例/失敗した事例を全社で共有 |
失敗パターン2:KPI至上主義に陥る
症状
- 「数字さえ達成すれば良い」という風潮
- 質より量を優先し、将来的な顧客価値を無視
- 短期的な成果ばかり追い、長期的な関係構築ができない
原因
- KPIが細かすぎて、本質を見失う
- 評価制度がKPIのみに依存している
対策
| 対策 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 定性評価や事業全体の達成率も取り入れる | 顧客からのフィードバック、チーム貢献度、最終的な事業計画全体の達成率なども評価対象に設定 |
| KPIの定期見直し | 3ヶ月ごとに「このKPIは本当に事業成長に繋がっているか」を検証 |
| 顧客視点を常に持つ | 「この施策は顧客にとって価値があるか」を問い続ける |
失敗パターン3:ツールに振り回される
症状
- MAツール、CRMツールを導入したが、使いこなせていない
- データ入力が負担になり、現場が疲弊
- ツールの機能を活用できず、高額な費用だけがかかる
原因
- ツール導入が目的化している
- 現場の業務フローを考えずにツールを選定
対策
| 対策 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 業務フローを先に設計 | ツール導入前に、「誰が、いつ、何をするか」を明確化 |
| スモールスタート | 最初は無料プランや小規模プランで始め、使いこなせてから拡大 |
| 定期的なトレーニング | 月1回、ツールの使い方勉強会を実施 |
| 入力を最小限に | 自動連携や入力補助機能を活用し、手入力を減らす |
こちらの記事でTHE MODELの弊害についてもまとめていますので、ぜひご覧ください。
成功事例:THE MODELで成果を出した企業
事例1:営業系Saas企業
背景
営業支援ツールを提供する同社は、リード数が急増する中で、営業が対応しきれない状況でした。
施策
- インサイドセールスチームを立ち上げ、リードの初回対応と育成を担当
- マーケティングからのリードを「ホット」「ウォーム」「コールド」に分類
- ホットリードのみをフィールドセールスに渡す仕組みを構築
成果
- 商談化率が12% → 25%に向上
- フィールドセールスの受注率が20% → 35%に向上
- 売上が前年比150%成長
事例2:人事評価システムSaas企業
背景
人事評価システムのSaasを提供する同社は、創業初期から THE MODELを採用。
施策
- 創業時からマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、CSを分業
- 各部門のKPIを週次で全社共有
- 部門間の連携を強化するため、毎朝15分の全社ミーティングを実施
成果
- 創業3年で売上10億円突破
- 社員数50名規模でも、効率的に成長
- 解約率を業界平均の半分以下に維持
まとめ:THE MODELで持続的成長を実現する
THE MODELは、単なる営業の分業体制ではありません。顧客のライフサイクル全体を最適化し、持続的な成長を実現するための経営戦略です。
THE MODEL導入で得られる3つの成果
| 成果 | 具体的な効果 |
|---|---|
| 1. 生産性の向上 | 各部門が専門性を高め、効率的に業務を遂行。売上を2倍にするために必要な人員増が半分で済む |
| 2. 再現性の確立 | 属人的なスキルに依存せず、プロセスとツールで成果を再現。新人でも早期に戦力化 |
| 3. 顧客満足度の向上 | 購買前から購買後まで一貫したサポート。解約率が下がり、LTVが向上 |
今日からできる3つのアクション
THE MODELの導入は一朝一夕にはいきませんが、今日から始められることがあります。
| アクション | 具体的な内容 |
|---|---|
| 1. 現状を可視化する | 現在の営業プロセスを書き出し、リード数・商談化率・受注率を測定する |
| 2. ボトルネックを特定する | どのフェーズで最も効率が悪いか、離脱が多いかを分析する |
| 3. 小さく始める | まずは「マーケティングとセールスの分離」から着手する |
最後に:THE MODELは手段であり、目的ではない
THE MODELを導入することがゴールではありません。重要なのは、顧客に価値を提供し続け、選ばれ続ける組織を作ることです。
顧客の購買行動は今後も変化し続けます。THE MODELも、自社の事業フェーズや市場環境に合わせて進化させる必要があります。常に「顧客にとって最適な体験とは何か」を問い続け、組織をアップデートしていきましょう。
あなたの組織が THE MODELを活用し、持続的な成長を実現することを願っています。





