はじめに:テレビ離れの現状とマーケティングへの影響
マーケティング担当者の皆さん、テレビCMの効果に疑問を感じていませんか?かつては「テレビCMを打てば商品が売れる」と言われた時代もありましたが、最近ではその効果が薄れてきているように感じられます。
実際、地上波テレビの視聴率は年々低下し、特に若年層のテレビ離れが顕著になっています。この状況は、企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えています。
本記事では、地上波テレビの現状と衰退の理由を詳しく解説し、マーケティング担当者が今後どのように対応すべきかを考察します。テレビ広告の効果的な活用方法や、新たな広告媒体の可能性についても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
日本の地上波テレビの種類
まずは、日本の地上波テレビの種類について整理しましょう。日本の地上波テレビは、大きく分けて以下の3種類があります。
- 公共放送:NHK(日本放送協会)
- 民間放送(民放):在京キー局とローカル局
- 独立U局
公共放送:NHK
NHKは、受信料を主な財源とする公共放送局です。全国に放送網を持ち、総合テレビと教育テレビの2チャンネルを運営しています。
民間放送(民放)
民放は、広告収入を主な財源とする民間企業が運営する放送局です。さらに以下のように分類されます。
在京キー局
東京に本社を置き、全国ネットワークの中心となる放送局です。
系列名 | キー局名 |
---|---|
日本テレビ系列(NNN) | 日本テレビ放送網 |
TBS系列(JNN) | TBSテレビ |
フジテレビ系列(FNN) | フジテレビジョン |
テレビ朝日系列(ANN) | テレビ朝日 |
テレビ東京系列(TXN) | テレビ東京 |
ローカル局
各地方で放送を行う放送局です。多くは在京キー局と系列を組んでいます。
独立U局
特定の系列に属さず、独立して運営している放送局です。主に都市部で放送を行っています。
地上波テレビの現状
次に、地上波テレビの現状について見ていきましょう。
視聴率の推移
地上波テレビの視聴率は、長期的に低下傾向にあります。特に若年層のテレビ離れが顕著です。
広告収入の推移
テレビの広告収入も、視聴率の低下に伴って減少傾向にあります。2022年度の在京キー局の放送収入合算値は、前年度比4.8%減の7999億円となりました。
[引用元: https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00868/00001/]
インターネット広告との比較
一方で、インターネット広告の市場規模は拡大を続けています。2022年のインターネット広告費は2兆7052億円で、テレビ広告費(1兆5888億円)を大きく上回りました。
[引用元: https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00868/00001/]
地上波テレビの影響力が下がってきている理由
地上波テレビの影響力が低下している理由は、主に以下の4つが挙げられます。
- メディア環境の変化
- 視聴者の生活様式の変化
- コンテンツの多様化
- 広告効果の測定困難性
メディア環境の変化
スマートフォンの普及やインターネットの高速化により、いつでもどこでも動画コンテンツを視聴できる環境が整いました。これにより、テレビ以外の選択肢が増えています。
特に、YouTube、Netflix、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスの台頭が、テレビ視聴時間の減少に大きく影響しています。
視聴者の生活様式の変化
働き方改革や共働き世帯の増加により、従来のプライムタイム(19時〜22時)にテレビを視聴する人が減少しています。また、若年層を中心に、テレビを所有しない「テレビなし世帯」も増加傾向にあります。
コンテンツの多様化
インターネットの普及により、個人の趣味や興味に合わせた多様なコンテンツを選択できるようになりました。これに対し、テレビは「マス」向けのコンテンツが中心となるため、個人の嗜好に合わないと感じる視聴者が増えています。
特にコンプライアンス意識の強化が面白いコンテンツ制作の妨げになり、テレビ業界の衰退につながっているとも言えます。
- 表現の制限:
過度なコンプライアンス意識により、クリエイターの表現の自由が制限され、挑戦的で斬新なコンテンツが作りにくくなっています。 - 視聴者の反応:
視聴者の半数以上が、現状のコンプライアンス対応について判断しかねているという調査結果があります。これは、適切なバランスを見出すことの難しさを示しています。 - 世代間のギャップ:
若い世代は現在のコンプライアンス基準を基に判断する傾向がある一方、上の世代は昔のテレビと比較して「つまらなくなった」と感じる傾向があります。 - タレントの苦悩:
実際のタレントからも現状のコンプライアンス対応に対する懸念の声が上がっています。 - 新しい取り組み:
「不適切にもほどがある!」のようなドラマでは、コンプライアンスへの配慮を逆手に取った演出で話題を呼んでいます。これは、制約の中でも創造性を発揮する試みと言えます。
一方で、コンプライアンスの重要性も決して無視できません。
- 社会的責任:
企業には社会的責任があり、コンプライアンスはその一環として重要です。 - リスク管理:
コンプライアンス違反は企業経営に大きな影響を与え、最悪の場合倒産にもつながる可能性があります。
広告効果の測定困難性
テレビCMは、その効果を正確に測定することが難しいという課題があります。一方、インターネット広告は、クリック数や購買行動などの具体的な指標で効果を測定できるため、広告主から支持を集めています。
テレビ局の生き残る道
テレビ局も、この状況を打開するためにさまざまな取り組みを行っています。主な戦略は以下の通りです。
- ネット配信の強化
- データ活用の推進
- コンテンツ制作力の強化
- 新たな収益モデルの構築
ネット配信の強化
テレビ局各社は、インターネットを活用した動画配信サービスを展開しています。代表的なものに「TVer(ティーバー)」があります。
TVerは、民放キー局5社と在阪局5社が共同で運営する無料の見逃し配信サービスです。2023年1月時点で、月間アクティブユーザー数(MAU)が2700万人を超えており、急速に利用者を増やしています。
データ活用の推進
ネット配信サービスを通じて、視聴者の詳細なデータを取得・分析することが可能になりました。これにより、視聴者の嗜好に合わせたコンテンツ制作や、効果的な広告配信が可能になります。
コンテンツ制作力の強化
テレビ局の強みである高品質なコンテンツ制作力を活かし、ネットフリックスなどの動画配信サービス向けにオリジナルコンテンツを制作する動きも増えています。
新たな収益モデルの構築
従来の広告収入に加え、動画配信サービスの有料会員収入や、コンテンツの二次利用による収益など、新たな収益源の開拓に取り組んでいます。
まとめ
地上波テレビの影響力低下は、マーケティング担当者にとって大きな課題です。しかし、テレビ局も変革を進めており、新たなマーケティング手法の可能性も広がっています。
Key Takeaways
- 地上波テレビの視聴率と広告収入は減少傾向にある
- テレビ離れの主な理由は、メディア環境の変化と視聴者の生活様式の変化
- テレビ局は、ネット配信の強化やデータ活用を推進している
- マーケティング担当者は、テレビとデジタルを組み合わせた統合的なアプローチが求められる
今後のマーケティング戦略を考える上で、以下の点に注目することをおすすめします。
- ターゲット層に合わせたメディアミックス
- テレビとデジタルの特性を活かした相互補完的な広告展開
- データ分析に基づく効果測定と改善
テレビの影響力は確かに低下していますが、依然として大きな影響力を持つメディアです。デジタルとの効果的な組み合わせを模索しながら、最適なマーケティング戦略を構築していくことが重要です。