竹島水族館の大逆転:廃館危機から年間50万人集客へ - マーケティング戦略の秘訣 - 勝手にマーケティング分析
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竹島水族館の大逆転:廃館危機から年間50万人集客へ – マーケティング戦略の秘訣

竹島水族館はなぜ選ばれるのか 企業を勝手に分析
この記事は約11分で読めます。

はじめに

多くのマーケターやビジネスパーソンが直面する課題の一つに、自社製品やサービスが市場で選ばれる理由を明確に理解し、その成功を再現することがあります。本記事では、愛知県蒲郡市にある竹島水族館の事例を通じて、ユニークな差別化戦略と顧客価値創造のプロセスを解析します。廃館の危機から年間50万人を集客する人気スポットへと変貌を遂げた竹島水族館の戦略は、あらゆる業界のビジネスに応用可能な貴重な洞察を提供します。

竹島水族館とは

Screenshot

竹島水族館は、愛知県蒲郡市竹島町に位置する市立の水族館です。1956年に開館し、2024年10月に大規模なリニューアルを行いました。

公式サイトURL:https://www.city.gamagori.lg.jp/site/takesui/

主な特徴:

  1. 深海生物の展示種類数が日本最大級(深海は日本一)
  2. 常時約500種類、4,500匹の生き物を展示
  3. アシカやカワウソ、カピバラなど多様な生物を飼育
  4. 担当飼育員による手書きの詳細解説プレートで知られる独特の展示スタイル

竹島水族館の売上と集客状況

竹島水族館の具体的な売上データは公開されていませんが、入館者数と入場料から推測できます。

  • 2018年度の入館者数:475,000人
  • 2024年リニューアル後の入場料:高校生以上1,200円

仮に全員が大人料金で入館したと仮定すると:
年間売上 = 475,000人 × 1,200円 = 5億7,000万円

実際の売上はこれより低いと考えられますが、地方の小規模水族館としては非常に好調と言えます。

出典:https://www.travel.co.jp/guide/article/34650/

集客数の推移:

  • 1991年度:29万人(最高記録)
  • 2005年度:12万人(最低記録、廃館の危機)
  • 2015年度:30万人突破
  • 2018年度:47.5万人(過去最高記録)

この急激な回復と成長は、竹島水族館の独自のマーケティング戦略と顧客価値創造の成功を示しています。

続いては、竹島水族館が戦う市場のPOP/POD/POFを見ていきましょう。

竹島水族館が戦う市場のPOP/POD/POF

水族館市場におけるPOP(Point of Parity)、POD(Point of Difference)、POF(Point of Failure)を分析します。これを言語化することでどういう要素があると市場で生き残り、成功するのかが見えてきます。

要素内容
POP(業界標準)- 多様な海洋生物の展示
- 教育的な解説や展示
- 家族向けのエンターテインメント
POD(差別化要素)- 日本最大級の深海生物展示
- 手書きの親しみやすい解説プレート
- カピバラなど珍しい陸上動物との融合
- アットホームな雰囲気と地域密着型運営
POF(失敗要因)- 施設の老朽化
- 大型水族館と比べた規模の小ささ
- 立地の不便さ(大都市から離れている)

竹島水族館は、POFを克服し、独自のPODを確立することで成功を収めています。特に、深海生物の展示や手書きの解説プレートは、他の水族館にはない強力な差別化要素となっています。

竹島水族館が戦う市場のPESTEL分析

続いて、水族館市場におけるPESTEL分析を行い、竹島水族館を取り巻く環境変化を考察します。

要素内容
Political(政治的要因)- 公共施設の民営化推進
- 観光振興政策の強化
Economic(経済的要因)- インバウンド需要の回復
- レジャー支出の増加傾向
Social(社会的要因)- 環境保護意識の高まり
- 体験型レジャーへの需要増加
Technological(技術的要因)- VR/AR技術の進歩
- SNSによる情報拡散の加速
Environmental(環境的要因)- 海洋生態系保護の重要性増大
- 気候変動による海洋生物への影響
Legal(法的要因)- 動物愛護法の強化
- 公共施設運営に関する規制変更

竹島水族館は、これらの環境変化に柔軟に対応しながら、独自の戦略を展開しています。特に、社会的要因である体験型レジャーへの需要増加や、技術的要因であるSNSによる情報拡散を巧みに活用していると言えます。

続いて、竹島水族館のSWOT分析と取るべき戦略を見ていきましょう。

竹島水族館のSWOT分析と取るべき戦略

竹島水族館のSWOT分析を行い、それに基づいた戦略を考察します。

強み(Strengths)弱み(Weaknesses)
- 日本最大級の深海生物展示
- 独自の展示スタイル(手書き解説)
- 地域密着型の運営
- 多様な生物(深海魚からカピバラまで)
- 施設の規模が小さい
- 立地が大都市から離れている
- 予算の制約
機会(Opportunities)SO戦略
- SNSを活用した深海生物の魅力発信
- 地域観光資源との連携強化
- 体験型プログラムの拡充
WO戦略
- オンラインコンテンツの充実
- 交通アクセス改善のための行政連携
- クラウドファンディングの活用
脅威(Threats)
- 大型水族館との競争
- 少子化による来場者減少
- 環境規制の強化
ST戦略
- 独自性を強調したブランディング強化
- 教育機関との連携による学習プログラム開発
- 環境保護活動への積極的参加
WT戦略
- 特定ターゲット(深海生物マニアなど)への特化
- 運営効率化によるコスト削減
- 他の小規模水族館とのネットワーク構築

竹島水族館は、その強みである独自の展示スタイルと深海生物コレクションを活かしつつ、SNSやオンラインコンテンツを活用して弱みを補完する戦略を取るのも一つの手ではないでしょうか。

竹島水族館の購入者の合理(オルタネイトモデル)

次に、竹島水族館の来館者心理をオルタネイトモデルで分析します。

きっかけ

質問内容
何をしている時か(What)休日のレジャー計画、家族や友人との外出
どこか(Where)自宅、SNS閲覧中、旅行先
誰といるか、誰がいないか(Who)家族(特に子供連れ)、友人、カップル
どんな時間/タイミングか(When)週末、夏休みなどの長期休暇、イベント開催時

欲求

  1. 珍しい深海生物を見たい
  2. 楽しく学びたい
  3. 家族や友人と楽しい時間を過ごしたい
  4. SNSに投稿できる面白いコンテンツに出会いたい
  5. アットホームな雰囲気で癒されたい
  6. 地域の文化や自然に触れたい

抑圧

  1. 大型水族館ほど華やかでない
  2. アクセスが不便(大都市から離れている)
  3. 施設の老朽化への懸念
  4. 予算の制約による展示の質への不安
  5. 知名度が低い

行動

  1. 竹島水族館を訪れる
  2. 手書きの解説を読む
  3. 深海生物の展示を見学する
  4. カピバラやアシカのショーを観覧する
  5. SNSで写真や感想を投稿する

報酬

  1. 独特の展示で新しい発見がある
  2. アットホームな雰囲気で癒される
  3. SNSに投稿できる面白いコンテンツに出会える
  4. 家族や友人との思い出作りができる
  5. 深海生物に関する知識が得られる
  6. 地域の文化や自然に触れる体験ができる

竹島水族館は、来館者の「珍しいものを見たい」「楽しく学びたい」という欲求に対し、独自の展示方法と日本最大級の深海生物コレクションで応えています。また、アットホームな雰囲気が「家族で楽しい時間を過ごしたい」という欲求を満たしています。

また、手書きの親しみやすい解説プレートや、カピバラなどの珍しい陸上動物との融合展示は、「SNSに投稿できる面白いコンテンツに出会いたい」という現代的な欲求にも応えています。

大型水族館との差別化を図り、「お金がない」ことを逆手に取った独自のマーケティング戦略は、「抑圧」要因を「報酬」に転換することに成功していると言えます。例えば、施設の古さや規模の小ささを、アットホームで親しみやすい雰囲気という強みに変えています。

このように、竹島水族館は顧客の深層心理を巧みに理解し、独自の価値提供を行うことで、多様な層からの支持を獲得しています。オルタネイトモデルの観点から見ると、竹島水族館は顧客の「きっかけ」から「報酬」までの一連のプロセスを効果的に設計し、リピーターの確保と新規顧客の開拓に成功していると言えるでしょう。

竹島水族館のWho/What/How

最後に、竹島水族館のターゲット顧客とその価値提供方法を複数のパターンで分析してみます。

パターン1:深海生物マニア向け

Who

  • 深海生物に強い興味を持つ人々
  • 年齢層:10代後半〜40代
  • 特徴:珍しい生き物を見たい、専門的な知識を得たい

What

  • 便益:日本最大級の深海生物コレクションを間近で観察できる
  • 独自性:140種類もの深海生物を展示し、タッチプールで直接触れる体験ができる
  • RTB:地元の深海で採取された生物を展示、専門知識を持つ飼育員による解説

How

  • コミュニケーション:SNSでの深海生物の魅力発信、専門誌への情報提供
  • プロダクト:「さわりんぷーる」でのタカアシガニやオオグソクムシとの触れ合い体験
  • 場所:愛知県蒲郡市の立地を活かした新鮮な深海生物の展示
  • 価格:一般的な水族館より安価な入館料(大人900円、子供500円)

パターン2:家族連れ

Who

  • 子供がいる家族
  • 年齢層:30代〜40代の親と未就学児〜小学生の子供
  • 特徴:子供と楽しく学べる場所を求めている

What

  • 便益:アットホームな雰囲気で楽しく海の生き物について学べる
  • 独自性:手書きの親しみやすい解説プレート、飼育員との直接対話
  • RTB:小規模ならではの細やかな対応、飼育員の個性を活かした展示

How

  • コミュニケーション:地域の学校や家族向けイベントでのPR
  • プロダクト:「さわりんぷーる」での触れ合い体験、カピバラなど珍しい動物の展示
  • 場所:三河湾を臨む立地を活かした地域密着型の運営
  • 価格:家族で楽しめる手頃な料金設定

パターン3:SNS世代

Who

  • SNSを積極的に利用する若者
  • 年齢層:10代後半〜30代
  • 特徴:面白い投稿ネタを求めている、体験型コンテンツを好む

What

  • 便益:ユニークな投稿ネタが豊富にある水族館体験
  • 独自性:シュールな手書き解説プレート、珍しい深海生物の展示
  • RTB:飼育員の個性的な取り組み(深海魚を食べて味を解説するなど)

How

  • コミュニケーション:Instagram、X(旧Twitter)などでのユニークな投稿
  • プロダクト:「♯ベストオブタケスイ」などのSNS向けイベント開催
  • 場所:フォトジェニックなスポットの設置
  • 価格:学生割引の導入

パターン4:教育関係者

Who

  • 学校の先生や教育機関の関係者
  • 年齢層:30代〜50代
  • 特徴:生きた教材として水族館を活用したい

What

  • 便益:海洋生物や環境保護について実践的に学べる場所
  • 独自性:深海生物を中心とした特色ある展示、飼育員との直接対話
  • RTB:地域の海洋環境と密接に関連した展示内容

How

  • コミュニケーション:教育機関向けの特別プログラムの提供
  • プロダクト:学習しやすい展示方法、教育プログラムの開発
  • 場所:学校からアクセスしやすい立地
  • 価格:団体割引や教育機関向け特別料金の設定

竹島水族館は、これらの異なるターゲット層に対して、それぞれのニーズに合わせた価値提供を行っています。小規模であることを逆手に取り、深海生物という特定分野での専門性と、手書き解説による親しみやすさを組み合わせることで、独自のポジションを確立しています。この多角的なアプローチが、幅広い層からの支持獲得につながっていると考えられます。

結論:竹島水族館は誰になぜ選ばれるのか

竹島水族館は、以下の理由で多様な層から選ばれています:

  1. 深海生物マニアには、日本最大級の深海生物コレクションと詳細な解説が魅力となっています。
  2. 家族連れには、手書きの親しみやすい解説や多様な生物展示が、楽しく学べる体験を提供しています。
  3. SNS世代には、独特の展示スタイルや珍しい生物がユニークな投稿ネタとなり、集客につながっています。
  4. 教育関係者には、生きた教材としての価値と学習しやすい展示方法が評価されています。
  5. 地域住民には、アットホームな雰囲気と地域密着型の運営が親しみやすさを生んでいます。

竹島水族館の成功の核心は、「小規模であることを逆手に取った独自性の追求」にあります。大型水族館との直接競争を避け、深海生物という特定分野での専門性と、手書き解説による親しみやすさを組み合わせることで、独自のポジションを確立しています。

また、SNSを活用した情報発信や、カピバラなど意外性のある展示を取り入れることで、常に新鮮な体験を提供し続けています。これらの戦略が、リピーターの獲得と新規顧客の開拓につながっています。

まとめ

  • 竹島水族館は、廃館の危機から年間50万人を集客する人気スポットへと変貌を遂げました。
  • 深海生物の展示と手書きの解説プレートという独自のPODを確立し、差別化に成功しています。
  • PESTEL分析から、体験型レジャーへの需要増加やSNSによる情報拡散を巧みに活用していることがわかります。
  • SWOT分析に基づく戦略では、強みを活かしつつ弱みを補完する方針が効果的です。
  • オルタネイトモデルとWho/What/How分析から、多様なターゲット層に対して適切な価値提供を行っていることが明らかになりました。
  • 竹島水族館の成功は、小規模であることを逆手に取った独自性の追求と、多角的な顧客価値創造にあります。

この事例から、小規模事業者の戦い方として、自社製品やサービスの独自性を見出し、適切なターゲット設定と価値提供を行うことの重要性が理解できます。竹島水族館の戦略は、規模や業界を問わず、多くのビジネスに応用可能な示唆に富んでいます。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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