突然ですが、みなさんはキャンプしますか?私はキャンパーです。今回はキャンパーではなくても一度は聞いたことのあるであろうSnowPeakというブランドについてマーケティング視点の分析していきます。SnowPeakは、キャンプ用品やキャンプ場、アパレルなどを展開している企業で、コロナ禍においても絶好調の企業の1つです。この記事ではSnowPeakがなぜ売れているのかを勝手に分析していきたいと思います。
私自身、SnowPeakのプロダクトをたくさん持っていますが、私がなぜ買うのか?も語っていきたいと思います。
SnowPeakとは?
概要
株式会社スノーピークは新潟県三条市に本社を置くアウトドア総合メーカーです。社名でもある「Snowpeak」というブランドでアウトドアライフスタイル製品の開発・製造・販売を行っています。世界に先駆け、オートキャンプのスタイルを生んだ会社、日本のアウトドアシーンにキャンプブームをもたらした会社として知られています。
会社名 | 株式会社スノーピーク |
創業 | 1958年7月 |
代表取締役社長 | 山井梨沙 |
上場市場 | プライム市場 |
従業員数 | 623人 |
事業内容 | アウトドア製品の開発・製造・販売 アパレル製品の開発・製造・販売 アーバンアウトドア事業 キャンピングオフィス事業 地方創生事業 グランピング事業 |
ビジョン(社会的使命)
個人的にこのビジョンに非常に共感しています。魅了されるブランドとはこのビジョンや考え方などにおいて共感をし、それ故に自らが保有、体験し続けたいと思わせるブランドだと思っています。
この自然を起点として人間性の回復と、自然環境指向の生活を送ることは、今のデジタル化され、なんでもデータ化されている世の中から良いデトックスができると思っています。
業績
続いて業績の推移を見ていきましょう。
見てわかるように、売上、利益共に右肩上がりで爆伸びしています。グラフにはないですが、2021年の決算説明資料をみると、2000年度以降約20年に渡り成長基調を継続、2005年度より16期連続での増収を達成と書かれています。
もちろん、昨今のキャンプブームやSNS浸透による影響は大きいのですが、うまくその波に乗り、ファンを魅了し続けられるプロダクトを生み出していることは非常に参考にするべきことが多いです。
さらに、現在でも日本のキャンプ人口はおよそ7%と言われているため、キャンプのアウトドア用品市場はまだまだ成長の余地があると見られています。
また、少し古いデータになりますが、アウトドア用品市場のシェアでは4番目になります。
上記は各企業のアウトドア部門の売上を比較した図です。1位のゴールドウィンはあのTHE NORTH FACEを販売している会社で、同じくコロナ禍とSNSの影響で急成長しています。SnowPeakは4番目に位置していますが、この市場の中で常に持続的な成長をしている企業として注目されています。
どれくらいヒットしているのか
では、実際のプロダクトはどういうものがあり、どれだけ売れているのでしょうか。
直近の決算資料をみると、メインのアウトドア用品が牽引している一方で、アパレルや企業向けのオフィス空間変革サービス、アウトドア研修などのビジネスソリューションズ事業も伸びていることがわかります。SnowPeakはアウトドア用品の会社として有名ですが、アウトドア用品以外の個々の事業規模だけで会社として成り立つほどの規模を持っております。
メインのアウトドア用品では初めてキャンプをする方向けのエントリーモデルが売上を牽引しておりますが、その初心者の方が使い続けてくれる魅力がることがSnowPeakの凄さではないかと思っております。
誰のどのような課題を解決できるか(Who)
市場カテゴリ
まずメインで戦っている市場カテゴリは、アウトドア用品市場です。またはキャンプ用品市場と言ってもいいでしょう。
Q「あなたにとってアウトドア用品、キャンプ用品のブランドと言ったら?」
A「SnowPeak!」
このQ&Aがユーザーの頭の中でどれだけ成立しているかでこの市場での勝ち負けは大きく影響を受けます。なぜなら購買されるためには、まずは知られていないと何も始まらないからです。
元P&Gのマーケター森岡毅氏は、企業のマーケターは売上を伸ばすために3つの変数を改善することを意識するべきであると言っています。
① 認知率:
ターゲットの数(SAM)に対して知られている割合です。ただし知られているだけではその後の歩留まりが悪くなるため、認識させたいイメージと共に知ってもらう必要があります。
② 購入率:
競合や代替品がある中でそのブランドが選ばれる確率です。ブランドへの好意度を高める必要があります。
③ 単価:
プロダクトの単価です。単価を上げてもブランドを買ってもらえる価値を創り出すことが重要です。
購入率や単価の改善は、ユーザーに対してかかるコストに対して得られる独自の価値を感じてもらうことが必要です。そのあたりは下記でも解説していきます。
誰
SnowPeakのターゲットは外から想像するに下記のような層が存在すると考えています。
- キャンプ初心者で、ある程度趣味やプライベートにお金を割く余裕のある都心住まいの20代後半〜40代の単身男性、ファミリー
- キャンプ初心者で、今は安いライトなキャンプ用品を保持しており、より良いものをほしくなっている20代後半〜40代の単身男性、ファミリー
- 第一次キャンプブームでキャンプにハマっていた団塊の世代の男性
- キャンプ中級者で、既にSnowPeakのプロダクトを持っている既存顧客
ではこの人たちはどんな不(不平、不満、不便、不利、不都合、不幸、不安、不快など)を持っていて、SnowPeakのプロダクトはその不を解決するのにどうして選ばれるのでしょうか。
どのような不
こちらも下記のような不が存在すると考えます。
- 日々の都会でのデジタルに触れ続けている生活にストレスを感じ、一時的にでも離れ癒される機会がほしい(不快、不満)
- 仕事に追われている毎日から離れたい(不快、不満)
- 周りから充実していると思われたい、承認されたい(不安、不幸)
- 子供と一緒に楽しめる趣味や機会がない(不安)
- 既に使っているキャンプ用品がかっこよくない、壊れやすい(不満、不便、不都合)
SnowPeakは各所でユーザーが大元に感じているこれらの不を解決できるものときちんと謳って、実際にその不を解決しているので選ばれ続けていると言えます。
続いて、その不を解決するのにSnowPeakはどのような独自の価値を提供しているのでしょうか。
どのような価値を提供しているのか(What)
基本的には上記にあるWhoの種類ごとにそれぞれの提供価値があります。つまりWhoが3つあったらそれぞれで提供するべき価値は異なります。ですので下記のコアバリューや機能・情緒・社会環境的価値は一例だと思ってください。
Whoはキャンプ初心者で、今は安いライトなキャンプ用品を保持しており、より良いものをほしくなっている20代後半〜40代の単身男性、ファミリーとします。
コアバリュー
上記のWhoに対してメインで提供している価値は、現在持っている安かろう悪かろうのキャンプ用品ではなく、見た目や機能性にこだわりがあり、よくSNSでも展開されていて人気でもある、そんなキャンプ用品を保持、使用していることで、日々の生活で感じているストレスから解放され、人生の中で一時の癒しを感じられる。そんな価値を提供できているのではないでしょうか。
基本的にこの価値が、払うコストに対して上回っていれば購入されます。
価値>コスト
BtoBの場合は価値は売上向上やコスト削減などの生産性に紐づくものが多いですが、SnowPeakのような一般消費者向けのビジネスの場合、丈夫さ、使いやすさなどの機能性に加えて、保有欲、承認欲などの情緒的な価値の方が影響を受けやすいです。また、最近では社会的環境的な価値が感じられるかなども選ばれる1つの理由になってきています。
機能的価値
- 初心者でも組み立てやすく、丈夫、快適であること。また、それに対してのコストは割にあっていること。
情緒的価値
- スタイリッシュで、自然の中で非常に馴染む色合いやデザインのキャンプ用品を保持、体験できる高揚感、承認欲求が満たされること。
- メンテナンスなどの保守体制の充実による安心感。
- 利用ユーザーの多さからくる信頼感。
社会、環境的価値
- ユーザーのコミュニティーに属せる特権の存在。
- いいものを長年使い続けられるクオリティからくる環境配慮視点。
上記の通り、SnowPeakの強さは機能的価値だけじゃなく、情緒的価値、社会環境的価値も感じられやすいことが持続的な成長をできている根本要因なのではないかと考えます。
世の中のプロダクトを見てみてください。機能は良いけど感情的には高揚感などはない、感情的には満足しているけど使ってみると使いにくいなどどれかの価値が欠如しているプロダクトがあります。
基本的に3つの価値があり、それぞれが代替手段や競合と比較して独自の価値であればあるほどブランドの好意度が向上し、購入される率があがっていきます。
どのように提供しているのか(How)
では、上記のWho、Whatをどのように提供しているのかがHowです。
価値(Customer Value)と製品(Product)
上記でも語った要素ですが、3つの提供価値を提供できるアウトドア用品を常に試行錯誤し作り続けています。しかもその価値は企業のビジョンやミッションと紐づいて現物として生み出されていきます。これを生み出すには常にVOCが必要になります。VOCとはボイスオブカスタマー、つまり顧客の声や行動からニーズを汲み取りプロダクトや体験の開発、提供に活かしていく手法です。ターゲットとなるWhoは何に不を持っているのか、その情報を収集していることが最も成功要因と言えます。
例えばSnowPeakの焚き火台は約8,000円しますが、機能性の面では、丈夫で使いやすく、かさばらずに運びやすく、火の通りもよく、情緒的な面ではシンプルでスタイリッシュで、キャンプの現場で映えるデザインになっています。
本当に1つ1つのプロダクトが洗練されている印象です。きちんと顧客の声を収集し、プロダクトを作り、実際に使ってもらいさらに声を聞く、自分達でも一連の体験をしてみて改善していく。この流れをきちんと踏んで本当に顧客の不を解決する価値を作り出しているのがSnowPeakの凄さです。
コスト(Cost)と価格(Price)
一般的に価格を決める要素は3つあると言われています。
- カスタマーバリュー(顧客価値)
- 製造コスト
- 競争環境
どれも考慮することは必要ですが、まずは1のカスタマーバリューで考えることが重要です。ユーザーが払うコストは提供される価値より低いことが求められます。高くても買われるためには価値を研ぎ澄ませ、継続させていく必要があり、それが達成できていると言えます。
どのアウトドア用品かにもよりますが、SnowPeakのテントなどは基本的に5万円前後〜、高いものだと20万円弱するものあります。そのコストを払ってでも機能的、情緒的価値を感じているユーザーが多いため右肩上がりの成長を続けているのです。
利便性(Convenience)と流通(Place)
価値を届ける場所は直営店舗や、小売店への卸、EC、体験型施設の運営、イベント運営など様々な取り組みをおこなっています。特徴的なのは新潟の本社にキャンプ場を併設しており、そこでユーザーがプロダクトを使う姿をみて研究していると言われています。
コミュニケーション(Communication)とプロモーション(Promotion)
SnowPeakの存在や価値をどう届けるかについては、上記で示した場所はもちろんのこと、SNSを使ったUGC(ユーザー生成コンテンツ)、口コミ、実際に他者の利用シーンを見る機会、メディアや雑誌からの取材、会員へのフォローなどがメインとなります。基本的に自ら積極的に広告などのプロモーションを行うというよりかは、自然とユーザーやメディアが他のユーザーに広めてくれるきっかけの場(コミュニティ)を作っていること、顧客となったら魅力的な情報を提供し続けること、そしてそのために魅力的なブランドを作っていることが1番のプロモーションと言えるかと思います。
自ら積極的にプロモーションをせずプロモーションができている理想的な状態と言えます。
ここがすごいよSnowPeakのマーケティング
以上、SnowPeakを分析してきましたが、改めてその凄さをまとめると下記の3点が言えるかと思います。
VOCをもとにした一貫性のあるプロダクト開発
ユーザーの声や行動をもとにプロダクトを開発、改善し続ける体制や仕組みの凄さ。
高くても売れるブランド価値の創造
ビジョンやミッションをもとに共感するユーザーに機能的、情緒的、社会環境的価値を提供できている凄さ。
プロモーションをせずにプロモーションができている
魅力的なプロダクトをユーザー自ら広めてくれる最小工数で最大効果が出る仕組みを作っている凄さ。
まとめ
今回はアウトドア用品業界の大御所、SnowPeakを分析しました。やはり伸びるブランドの裏側には絶え間ない努力、工夫があり、一貫性のある取り組みをされています。どの分野のビジネスでも参考になる内容ばかりかと思いますので、今後のSnowPeakの動向もウォッチしていきます。
今後も勝手に売れているプロダクト、サービスのマーケティング分析をしていきますので、この企業を分析してほしいなどありましたらお気軽にお問い合わせください。