本記事では、ビジネスチャットツール「Slack」と「Chatwork」のWho/What/Howを比較し、マーケターが学べる示唆をまとめます。各ツールの推定年商、販売数、PLESTE分析、POD/POP/POF分析、SWOT分析、オルタネイトモデルを用いた顧客の購買行動の背景、そしてWho/What/Howの複数パターンを具体的に整理します。
推定年商と販売数
Slack
- 推定年商:$1.8 billion (2023年) [1]
- 販売数:35 million users (2022年) [1]
- 平均単価:Slack Proプラン $7.25/月 [3]
Chatwork
- 推定年商:6,485 million JPY (2023年) [2]
- 販売数:6.64 million users (2023年) [2]
- 平均単価:Chatwork Basicプラン 400 JPY/月 [4]
PLESTE分析
この分析では、SlackとChatworkが直面する外部環境要因を比較し、両社の事業展開における機会と脅威を明らかにすることができます。
要素 | Slack | Chatwork |
---|---|---|
政治 (Political) | 安定した米国市場 | 日本市場の安定 |
法規制 (Legal) | GDPR準拠 | 日本の個人情報保護法準拠 |
経済 (Economic) | グローバル経済の影響 | 日本経済の影響 |
社会 (Social) | リモートワークの普及 | 日本の中小企業向け |
技術 (Technological) | 多数の統合アプリ | シンプルな機能 |
環境 (Environmental) | クラウドベースの効率化 | クラウドベースの効率化 |
機会と脅威
要素 | Slack | Chatwork |
---|---|---|
機会 (Opportunities) | グローバル市場の拡大 | 日本市場での拡大 |
脅威 (Threats) | 競合ツールの増加 | 競合ツールの増加 |
この分析から、SlackとChatworkは異なる市場戦略を取っていることがわかります。Slackはグローバル展開に注力し、Chatworkは日本市場での強みを活かしていることが明らかになりました。両社とも競合ツールの増加という共通の脅威に直面しています。
POD/POP/POF分析
この分析では、SlackとChatworkの差別化要素、必須要素、選ばれない理由を比較し、両社の市場ポジショニングを明確にすることができます。
要素 | Slack | Chatwork |
---|---|---|
POD (差別化要素) | 多機能統合、カスタマイズ性 | シンプルさ、使いやすさ |
POP (最低限必要な要素) | メッセージング、ファイル共有 | メッセージング、ファイル共有 |
POF (選ばれない理由) | 高価格 | 機能の少なさ |
この分析から、SlackとChatworkが異なる顧客ニーズに対応していることがわかります。Slackは多機能性とカスタマイズ性を重視する企業向け、Chatworkはシンプルさと使いやすさを求める中小企業やフリーランス向けにポジショニングしていることが明らかになりました。
SWOT分析
この分析では、SlackとChatworkの内部環境と外部環境を比較し、両社の強み、弱み、機会、脅威を明らかにすることができます。
Slack
強み (Strengths) | 弱み (Weaknesses) |
---|---|
- グローバルな知名度と利用者基盤 | - 高価格 |
- 多機能で高度なカスタマイズ性 | - 複雑な設定や操作性 |
- 豊富な統合アプリケーション | - 中小企業向けの機能不足 |
- 大規模組織向けの機能 | - 日本市場での認知度不足 |
機会 (Opportunities) | 脅威 (Threats) |
---|---|
- リモートワークの普及 | - 競合ツールの増加 |
- 新興市場での展開 | - データセキュリティへの懸念 |
- AIや自動化技術の活用 | - 景気後退による企業のIT投資抑制 |
- 大企業向けソリューションの拡大 | - プライバシー規制の強化 |
Chatwork
強み (Strengths) | 弱み (Weaknesses) |
---|---|
- 日本市場での高いシェア | - グローバル展開の遅れ |
- シンプルで使いやすいインターフェース | - 高度な機能の不足 |
- 中小企業向けの最適化 | - 大規模組織向け機能の不足 |
- 日本語対応の充実 | - 統合アプリケーションの少なさ |
機会 (Opportunities) | 脅威 (Threats) |
---|---|
- 日本の中小企業のDX推進 | - グローバル競合の日本市場参入 |
- アジア市場への展開 | - 機能拡張による複雑化 |
- BPaaS事業の成長 | - 価格競争の激化 |
- 日本特有の業務プロセスへの対応 | - 大手企業の自社開発ツールの台頭 |
この分析から、SlackとChatworkは異なる市場セグメントと地域で強みを持っていることがわかります。Slackはグローバル市場と大規模組織向けに強みがある一方、Chatworkは日本の中小企業市場に特化しています。両社とも、それぞれの強みを活かしつつ、弱みを補完する戦略が求められています。
戦略提案
この分析では、SWOT分析の結果を踏まえて、SlackとChatworkそれぞれに適した戦略を提案します。
Slack
- SO戦略(強みを活かして機会を活用):
- グローバルな知名度を活かし、新興市場でのシェア拡大を図る
- 多機能性とカスタマイズ性を強調し、リモートワーク需要を取り込む
- WO戦略(弱みを克服して機会を活用):
- 中小企業向けの簡易版プランを開発し、新たな顧客層を開拓する
- 日本市場向けにローカライズを強化し、認知度を高める
- ST戦略(強みを活かして脅威に対抗):
- セキュリティ機能を強化し、データ保護への懸念を払拭する
- 大企業向けの包括的ソリューションを提供し、競合との差別化を図る
- WT戦略(弱みと脅威の最小化):
- ユーザーインターフェースの簡素化を進め、操作性を向上させる
- 価格体系の見直しを行い、コストパフォーマンスを改善する
Chatwork
- SO戦略(強みを活かして機会を活用):
- 日本の中小企業向けDXソリューションとしての位置づけを強化する
- BPaaS事業を拡大し、チャットツールを超えた総合的なサービスを提供する
- WO戦略(弱みを克服して機会を活用):
- アジア市場向けにローカライズを進め、国際展開を加速する
- 大規模組織向けの機能を段階的に追加し、顧客基盤を拡大する
- ST戦略(強みを活かして脅威に対抗):
- 日本企業特有の業務プロセスに特化した機能を開発し、差別化を図る
- シンプルさを維持しつつ、段階的に高度な機能を追加する
- WT戦略(弱みと脅威の最小化):
- オープンAPIを強化し、サードパーティアプリケーションとの連携を促進する
- 価格競争力を維持しつつ、付加価値サービスの拡充を図る
この戦略提案から、SlackとChatworkはそれぞれの強みを活かしながら、弱みを補完し、新たな成長機会を追求する必要があることがわかります。特に、両社ともローカライゼーションと機能の最適化が重要な戦略となっています。
オルタネイトモデル分析
この分析では、SlackとChatworkの顧客の購買行動の背景を、「きっかけ」「行動」「欲求」「抑圧」「報酬」の観点から整理します。
Slack
要素 | 内容 |
---|---|
きっかけ | リモートワークの導入、複数部門にまたがるプロジェクトの開始 |
行動 | Slackの導入検討、トライアル利用 |
欲求 | 効率的なコミュニケーション、情報の一元管理、生産性向上 |
抑圧 | 高コスト、導入の複雑さ、既存システムとの統合の難しさ |
報酬 | 情報共有の迅速化、業務効率の向上、社内コラボレーションの活性化 |
Chatwork
要素 | 内容 |
---|---|
きっかけ | 中小企業のDX推進、リモートワーク対応の必要性 |
行動 | Chatworkの無料プラン利用、有料プランへのアップグレード |
欲求 | シンプルで使いやすいコミュニケーションツール、コスト削減 |
抑圧 | IT投資への抵抗感、従来の業務プロセス変更への不安 |
報酬 | 社内コミュニケーションの円滑化、ペーパーレス化、業務効率化 |
この分析から、SlackとChatworkの顧客は異なる背景と動機を持っていることがわかります。Slackの顧客は高度な機能と生産性向上を求める傾向があるのに対し、Chatworkの顧客はシンプルさと使いやすさを重視しています。両社とも、これらの顧客ニーズに合わせたマーケティングと製品開発が重要となります。
Who/What/Howの整理
この分析では、SlackとChatworkのターゲット顧客、提供価値、提供方法を複数のパターンで整理します。
Slack
Who(誰) | Who(JOB) | What(便益) | What(独自性) | How(プロダクト) | How(コミュニケーション) | How(場所) | How(価格) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
大企業 | 部門間連携の強化 | 情報共有の効率化 | 豊富な統合アプリ | 高機能チャットツール | グローバル対応 | クラウド | 高価格帯 |
IT企業 | 開発プロセスの最適化 | 生産性向上 | 開発者向け機能 | API連携 | テクニカルサポート | オンプレミス対応 | カスタム価格 |
リモートワーク企業 | チーム連携の強化 | コラボレーション促進 | ビデオ会議連携 | オールインワンツール | 24/7サポート | モバイル対応 | サブスクリプション |
Chatwork
Who(誰) | Who(JOB) | What(便益) | What(独自性) | How(プロダクト) | How(コミュニケーション) | How(場所) | How(価格) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
中小企業 | 業務効率化 | コスト削減 | シンプルな操作性 | 軽量チャットツール | 日本語対応 | クラウド | 低価格帯 |
フリーランス | 顧客とのコミュニケーション | 情報管理の一元化 | 無料プラン提供 | タスク管理機能 | メール連携 | モバイル重視 | フリーミアム |
非IT企業 | DX推進 | ペーパーレス化 | 日本企業向け最適化 | BPaaS連携 | 導入支援サービス | ハイブリッド対応 | 段階的価格 |
この分析から、SlackとChatworkは異なるターゲット顧客に対して、それぞれ特化した価値提案を行っていることがわかります。Slackは大企業や先進的なIT企業向けに高機能を提供し、Chatworkは中小企業や日本市場に特化したサービスを展開しています。両社とも、ターゲット顧客のニーズに合わせた製品開発とマーケティング戦略の継続的な最適化が求められます。
マーケターが学べる示唆
SlackとChatworkの比較から、マーケターは以下の示唆を得られます:
- ターゲットセグメンテーション:各ツールが異なるターゲット層に向けた戦略を持つことの重要性。
- 価格設定:高価格帯と低価格帯の市場での競争戦略の違い。
- 機能と使いやすさのバランス:多機能性とシンプルさのトレードオフを理解し、顧客ニーズに応じた製品開発の必要性。
これらの示唆を活かし、マーケティング戦略を最適化することが求められます。
引用元
[1] https://www.businessofapps.com/data/slack-statistics/
[2] https://www2.infomart.co.jp/web/jp/images/upload/2538/140120240209531949_17296813.pdf
[3] https://www.chanty.com/blog/slack-pricing/
[4] https://go.chatwork.com/en/pricing/
[5] https://slack.com/intl/ja-jp
[6] https://go.chatwork.com/ja/
[7] https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/218407447-Slack-%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%80%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%92%E9%96%B2%E8%A6%A7%E3%81%99%E3%82%8B
[8] https://go.chatwork.com/ja/column/efficient/efficient-333.html
[9] https://slack.com/intl/ja-jp/workspace-signin
[10] https://go.chatwork.com/en/
[11] https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/360057638533-Slack-%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%80%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B
[12] https://go.chatwork.com/ja/column/usage/usage-010.html