コモディティ商品でも売れる!独自性が薄い商品のマーケティング実践ガイド - 勝手にマーケティング分析
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コモディティ商品でも売れる!独自性が薄い商品のマーケティング実践ガイド

コモディティ商品でも売れる! 独自性が薄い商品のマーケティング実践ガイド マーケの応用を学ぶ
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はじめに

マーケターとして、「うちの商品には特別な特徴がない...」「競合と同じような商品でどう差別化すればいいか分からない...」という悩みを抱えたことはありませんか?多くの市場では、技術の成熟化や情報共有の加速により、商品やサービスのコモディティ化(同質化)が進んでいます。そのような環境で、どうすれば独自価値が薄い商品でも顧客に選ばれるようになるのでしょうか。

この記事では、独自性が少ない商品やサービスを効果的に販売するためのマーケティング戦略を詳しく解説します。コモディティ商品でも売上を伸ばすことができる実践的なテクニックや成功事例を学ぶことで、あなたのマーケティング活動を次のレベルに引き上げましょう。

コモディティ商品とは?その課題を理解する

コモディティとは、競合他社の製品と実質的な違いがなく、消費者が「どれを選んでも大きな違いがない」と認識している商品やサービスのことです。

コモディティ商品の特徴

特徴説明
機能的類似性基本的な機能や性能が競合と似ている単三電池、白米、ボールペン
価格競争の激化差別化要素が少ないため価格が主な競争ポイントになるガソリン、コピー用紙
代替可能性が高い顧客が簡単に他社製品に乗り換えられるインターネットプロバイダ、銀行サービス
ブランドロイヤルティの構築が難しい愛着や信頼関係を築きづらいコモディティ化した家電製品

独自価値が少ない商品が直面する課題

コモディティ商品のマーケティングにおいて、主に以下の課題に直面します:

  1. 価格競争の罠: 差別化要素がないと、価格競争に陥りやすく、利益率が低下する危険性があります。
  2. 顧客ロイヤリティの欠如: 「どれでも同じ」と認識されると、顧客は常に最安値を求めて移動します。
  3. ブランド認知の困難: 似たような商品の中で、自社ブランドを記憶してもらうことが難しくなります。
  4. マーケティングメッセージの伝えにくさ: 「他社と何が違うのか」を明確に伝えるのが難しくなります。

しかし、これらの課題があっても、効果的な戦略によって商品を差別化し、競争優位性を築くことは可能です。次のセクションでは、その具体的な方法を見ていきましょう。

POP/POD/POFフレームワークを活用した差別化戦略

マーケティングにおいて、商品の市場ポジショニングを効果的に分析するためのフレームワークとして「POP/POD/POF」があります。このフレームワークを理解し、活用することで、コモディティ商品でも効果的な差別化が可能になります。

POP(Points of Parity)とは

POPは「同等性ポイント」を意味し、顧客が商品カテゴリーに最低限求める要素や、競合他社と同等に持っていなければならない特徴のことです。

POPの役割説明
カテゴリーメンバーシップの確立そのカテゴリーに属するための最低条件(例:ビールはアルコール度数があるべき)
競合解消競合の強みを相殺する要素(例:「低カロリーだけど美味しい」)
市場参入の基本条件顧客が期待する基本的な機能や品質

コモディティ市場では、POPは「当たり前の品質」と認識されがちですが、これを確実に押さえることが戦略の基本となります。

POD(Points of Difference)とは

PODは「差別化ポイント」を意味し、競合他社にない独自の強みや特徴です。コモディティ商品でも、何らかの形でPODを見つけ出すことが成功の鍵となります。ただし企業内で強みに思っていても顧客からするとどうても良いというズレが生じている場合も多いので注意が必要です。

PODの種類説明
機能的差別化物理的・技術的な優位性より長持ちする電池、特殊素材を使った服
感情的差別化感情や心理的価値に訴える環境に優しい商品、地域に根ざしたストーリー
シンボル的差別化社会的・文化的な価値や意味ステータス、所属感、アイデンティティ

POF(Points of Failure)とは

POFは「失敗ポイント」を意味し、顧客満足を損なう可能性のある弱点です。コモディティ市場では、競合が犯しがちなミスを避けることも差別化につながります。

POFの対象領域説明対策例
品質問題商品の基本的な品質や耐久性の問題厳格な品質管理、保証期間の延長
カスタマーサービス対応の悪さ、問題解決の遅さ24時間サポート、迅速な返品対応
ユーザー体験使いにくさ、不便な設計UX改善、直感的なデザイン

コモディティ商品におけるPOP/POD/POF活用方法

独自価値が少ない商品であっても、このフレームワークを使って以下のようにアプローチできます:

  1. POPの完璧な実行: 業界標準を間違いなく、一貫して提供する
  2. 創造的なPOD探し: 製品自体ではなく、周辺要素(配送速度、パッケージ、顧客体験など)で差別化を図る
  3. 競合のPOFを特定して対策: 業界内の一般的な失敗ポイントを徹底的に改善する

例えば、シンプルな文房具を販売する場合:

  • POP: 書きやすさ、適正価格、耐久性(基本的な品質)
  • POD: 環境に優しい素材、ユニークなデザイン、購入ごとの社会貢献
  • POF対策: 品質のばらつきをなくす、パッケージの使いやすさ向上、購入プロセスの簡素化

このフレームワークを使って自社商品を分析することで、コモディティ市場での競争優位性を見つける手がかりになります。

本能に基づく消費者心理を活用した差別化

コモディティ商品を差別化するための効果的なアプローチとして、消費者の根本的な本能や欲望に訴えかけるマーケティングがあります。人間の行動の基盤には「生存本能」と「生殖本能」という2つの根源的な本能があり、これらは8つの欲望として表出します。

人間の2つの本能と8つの欲望

欲望心理的意味関連する本能コモディティ商品への応用例
安らぐ (Rest)心身の回復と休息生存シンプルな白米を「忙しい日常からの解放」として訴求
進める (Advance)自己改善と成長生存、生殖普通のノートを「アイデアを形にする一歩」として提案
決する (Decide)自分の人生をコントロール生存、生殖電池選びを「確実な選択」として位置づけ
有する (Possess)資源獲得と安全生存、生殖日用品も「生活の質を高める所有物」として価値づけ
属する (Belong)社会的つながり生存、生殖コモディティ商品の購入を「コミュニティへの参加」に
高める (Elevate)自尊心と社会的認知生存、生殖同質の商品でも「選ぶ人の価値観」を表現するものに
伝える (Communicate)情報共有と関係構築生存、生殖文房具を「思いを伝えるための道具」として訴求
物語る (Narrate)経験の理解と共有生存、生殖商品に「ストーリー」を付加して意味を与える

コモディティ商品への応用方法

独自価値が少ない商品でも、これらの根源的欲望に訴えかけることで差別化が可能になります:

例:白米(コモディティの典型)の差別化

graph TD A[コモディティ商品: 白米] --> B[従来の訴求: 美味しさ・品質] A --> C[本能に基づく訴求] C --> D[安らぐ: 「忙しい日々の中の、ほっとする一杯」] C --> E[属する: 「日本の食文化を受け継ぐ」] C --> F[物語る: 「生産者の想いが詰まった一粒」]

同じ白米でも、ただの「美味しいお米」ではなく、「一日の終わりにほっと安らぐ瞬間を作る」「日本の伝統的な食文化を自分の家庭に取り入れる」という欲望に訴えかけることで、付加価値を創出できます。

効果的な欲望訴求のポイント

  1. ターゲット顧客の優先する欲望を特定する: アンケート調査やインタビューで、顧客の根源的な動機を探る
  2. 競合分析の実施: 競合が対応していない欲望領域を特定し、そこにフォーカスする
  3. 複数の欲望に同時に訴求: 「安らぐ」と「属する」など、複数の欲望を満たす訴求方法を考案する
  4. 視覚的・感覚的要素の活用: パッケージデザイン、広告のトーン、色使いなどで欲望を刺激する

この戦略は、商品自体の機能的な差別化が難しいコモディティ市場で特に有効です。物理的な違いがなくても、心理的な価値を創出することで、消費者の選択に影響を与えられます。

Who/What/How分析による独自性の明確化

コモディティ商品でも効果的に売るための重要なアプローチとして、Who/What/How分析があります。この枠組みを使うことで、「誰に」「どんな価値を」「どのように」提供するかをより明確にし、見えにくい差別化ポイントを浮き彫りにすることができます。

Who/What/How分析の基本

要素説明コモディティ商品での重要性
Who(誰に)ターゲット顧客と彼らの抱えるJOB(課題・欲求)より明確で細分化されたターゲット設定が差別化の鍵
What(何を)提供する便益と独自性、その根拠機能的同質性を超えた価値提案が必要
How(どのように)商品特性、コミュニケーション、価格、場所などの提供方法独創的な提供方法が差別化要素になる

コモディティ商品の差別化に効果的なWho/What/How戦略

1. 超特定型ターゲティング戦略

一般的なターゲット設定ではなく、より具体的な「ペルソナ」を設定することで、コモディティ化した市場でも共感を生み出せます。

事例:文房具(コモディティ商品)のWho/What/How分析

WhoWhatHow
「ミニマリスト志向の20-30代都市部在住者」
JOB:物は少なく、でも価値あるものを持ちたい
便益:長く使える高品質な一点物
独自性:シンプルだが洗練されたデザイン
根拠:職人による手作り、厳選素材
プロダクト:余計な装飾を省いたデザイン
コミュニケーション:「一生モノの文房具」
価格:適正価格(過度な高級化はしない)
場所:セレクトショップ、オンラインD2C

普通なら「オフィスワーカー全般」と設定しがちな文房具でも、特定のライフスタイルや価値観に焦点を当てることで、コモディティから脱却できます。

2. 潜在的JOB(課題・欲求)の発掘

顧客が言語化できない潜在的なJOB(課題や欲求)を発掘し、それに応えることで差別化を図ります。

オルタネイトモデルを活用した潜在JOB発掘法

分析要素説明コモディティ商品への応用
きっかけ行動が起こる状況(何を/どこで/誰と/どんな時に)購買の文脈を深く理解し、従来見落とされていたシーンに対応
欲求達成したいこと機能的ニーズを超えた情緒的・社会的欲求を発見
抑圧欲求実現を妨げる要因業界の常識となっている不便さや制約を見つけ出す
報酬欲求が満たされたときの利益や満足感顧客が本当に感じる価値を理解し、それを強調

例えば、普通の歯ブラシ(コモディティ商品)でも:

  • きっかけ:朝の忙しい時間の歯磨き
  • 欲求:簡単に、でもしっかり磨きたい
  • 抑圧:時間がない、適切な磨き方がわからない
  • 報酬:清潔感、自信、時間節約

という生活文脈からJOBを発掘すれば、「忙しい朝でも1分で効果的に磨ける」という差別化ポイントが見えてきます。

3. 統合的What(便益・独自性)の設計

コモディティ商品では、単一の機能的ベネフィットではなく、複数の価値を統合することで差別化できます。

graph LR A[機能的価値] --> D[統合的価値] B[感情的価値] --> D C[社会的価値] --> D D --> E[差別化されたWhat]

例:水(コモディティの極致)の差別化

価値の種類一般的な水のWhat差別化された水のWhat
機能的価値「喉の渇きを癒す」「特定のミネラル配合で体調管理をサポート」
感情的価値「さわやかな感覚」「自分を大切にする贅沢な時間」
社会的価値(ほぼなし)「購入金額の一部が環境保全に寄付される」

4. 革新的なHow(提供方法)の開発

最もコモディティ化した商品でも、提供方法を変えることで新たな価値を創出できます。

コモディティからの脱却に効果的なHow革新例

How要素従来の提供方法革新的提供方法の例
販売形態店頭販売サブスクリプション方式(定期配送)
購入体験受動的商品選択カスタマイズ・パーソナライズ体験
パッケージ機能重視の最小限アート性・コレクション性の高いデザイン
アフターサービス(ほぼなし)使用方法の継続的アドバイス、コミュニティ参加

Who/What/How分析を徹底して実施することで、一見差別化が難しいコモディティ商品でも、独自の市場ポジションを確立し、顧客に選ばれる理由を創出することができます。

売上の方程式に基づく戦略的アプローチ

コモディティ商品を効果的に販売するためには、売上を構成する要素を理解し、戦略的にアプローチすることが重要です。森岡毅氏の「売上の方程式」を基に、独自価値が少ない商品でも売上を向上させる方法を考えてみましょう。

売上の9つの構成要素

売上は以下の9つの要素によって構成されます:

graph TD S[売上] --> A[人口] S --> B[認知率] S --> C[配荷率] S --> D[該当カテゴリーの過去購入率] S --> E[エボークトセットに入る率] S --> F[年間購入率] S --> G[1回あたりの購入個数] S --> H[年間購入頻度] S --> I[購入単価]

独自価値が少ない商品では、これらの要素のうち、特にコントロール可能なものに注力することが効果的です。

コモディティ商品で重点的に強化すべき要素

要素コントロール可能性コモディティ商品での重要性強化方法
認知率高(◎)★★★ブランド認知度を高める広告、PR活動の強化
配荷率中(○)★★★流通チャネルの拡大、店頭での目立つ陳列獲得
エボークトセットに入る率中(○)★★★★★ブランドの独自ポジショニング確立、プレファレンスの向上
購入単価高(◎)★★★★価値の再定義による適正価格設定、プレミアム版の開発

プレファレンス(選好度)の向上が鍵

コモディティ商品でも「エボークトセットに入る率」(商品選択時の候補として考慮される確率)を高めることが特に重要です。これにはプレファレンス(好意度・選好度)の向上が鍵となります。

プレファレンスを向上させる3つの要素:

  1. ブランド・エクイティ:
    • コモディティでも独自の世界観やポジショニングを構築
    • 顧客の購買意思決定に影響する重要な判断軸を見極め
  2. 製品パフォーマンス:
    • 基本機能は同等でも、使用感や体験の質で差別化
    • 特定のニーズに特化した機能強化
  3. 価格戦略:
    • 単なる値下げ競争ではなく、価値に見合った適正価格設定
    • 価格帯の複数展開(プレミアム、スタンダード等)

コモディティ市場での配荷率向上戦略

独自性が低い商品でも、流通を最適化することで売上向上が可能です:

  1. 流通特化戦略: 特定の販路に集中し、そこでの存在感を最大化
  2. 陳列位置の戦略的交渉: 「ゴールデンゾーン」への陳列獲得
  3. 流通パートナーとの戦略的提携: 共同キャンペーン、専用商品開発
  4. オムニチャネル最適化: オンラインとオフラインの流通の相乗効果創出

購入単価・購入頻度を高める戦略

コモディティ商品でも、以下の方法で購入単価や頻度を高めることができます:

戦略説明具体例
バンドル販売複数商品をセットで提供「お試しセット」「定番+新商品」のパック
アップセル戦略基本商品から上位版への誘導プレミアムライン、限定版の提案
定期購入プログラム継続的な購入を促進サブスクリプションモデル、自動補充サービス
シーズナル展開季節ごとの展開で購入機会創出季節限定パッケージ、季節に合わせた使用提案

これらの戦略を組み合わせることで、コモディティ商品でも売上の方程式の各要素を強化し、総合的な売上向上を図ることができます。

コモディティ商品の販売戦略成功事例

独自価値が薄い商品でも、効果的な戦略で成功している企業は数多く存在します。以下に、異なる業界での成功事例と、そこから学べるポイントを紹介します。

事例1: MUJI(無印良品)- 「無」をブランド化

業界: 日用品・衣料・食品(典型的なコモディティ市場)

戦略ポイント:

  • 削ぎ落とす差別化: 装飾や過剰な機能を意図的に削ぎ落とすことで逆に独自性を創出
  • 「無駄のなさ」の価値化: 無駄のない設計をライフスタイル価値として訴求
  • 一貫したデザイン哲学: すべての商品に統一感のあるミニマルなデザイン哲学を適用

成果:

  • グローバル展開に成功(世界各国で800店舗以上)
  • コモディティ商品でも適正な価格と利益率の維持に成功

学びのポイント: コモディティ商品でも、一貫した哲学と世界観によって強いブランドを構築できる。「何を足すか」ではなく「何を引くか」という逆転の発想も差別化につながる。

事例2: Amazon Basics - 徹底した顧客体験の向上

業界: 日用品、電子アクセサリー(高度にコモディティ化した市場)

戦略ポイント:

  • 顧客の購買障壁の低減: レビュー、迅速配送、容易な返品で購入不安を解消
  • データ駆動型の品揃え: 顧客データを活用した最適な品揃え
  • エコシステムとの統合: Amazonのエコシステム(Prime等)との統合による便益

成果:

  • Amazonの自社ブランドとして急成長
  • 多くのカテゴリでベストセラーを獲得

学びのポイント: コモディティ商品でも、購買体験や利便性の向上によって差別化できる。既存の強みやプラットフォームとの連携も重要な戦略となる。

事例3: Evian - コモディティの究極「水」の差別化

業界: ミネラルウォーター(最もコモディティ化した製品の一つ)

戦略ポイント:

  • 原産地ストーリー: アルプスの雪解け水という独自のストーリー構築
  • プレミアムポジショニング: 高級感のあるデザインと限定版ボトル
  • ライフスタイルブランディング: スポーツやファッションとの連携

成果:

  • 水という完全コモディティ商品でもプレミアム価格の維持に成功
  • グローバルなブランド認知の確立

学びのポイント: 最もコモディティ化した商品でも、ストーリーテリングとライフスタイル訴求によって価値を創出できる。製品自体ではなく、その背景や世界観での差別化が可能。

事例4: コカ・コーラ - 感情的価値の創造

業界: 炭酸飲料(機能的に差別化しにくい市場)

戦略ポイント:

  • 感情的な訴求: 「幸せ」「団らん」などの感情と商品を結びつける
  • 一貫したブランドアイデンティティ: ロゴ、カラー、ボトル形状の一貫性
  • 文化的アイコン化: 季節イベント(クリスマス等)との結びつけ

成果:

  • 世界で最も認知されるブランドの一つに
  • コモディティ化した市場でもブランドロイヤルティの維持

学びのポイント: 機能的差別化が難しくても、感情的な価値創造とブランドアイコン化によって持続的な競争優位を構築できる。

これらの事例から、コモディティ商品でも独自のブランド体験を構築し、顧客の感情や価値観に訴えかけることで、選ばれ続ける商品になり得ることがわかります。

実践的ステップ:明日から始めるコモディティマーケティング

これまでの理論や事例を踏まえて、独自価値が少ない商品のマーケティングを改善するための具体的なステップを紹介します。これらは明日から実践できる実用的なアプローチです。

ステップ1:自社商品の現状分析

まずは自社商品が市場でどのように位置づけられているかを客観的に分析します。

分析項目手法具体的アクション
市場環境分析PESTEL分析政治・経済・社会・技術・環境・法律要因を整理して市場の全体像を把握
競合分析POP/POD/POF分析競合とのパリティポイント、差別化ポイント、失敗ポイントを比較表にまとめる
顧客分析オルタネイトモデル顧客インタビューで「きっかけ・欲求・抑圧・報酬」を明らかにする
売上要素分析売上の方程式9つの売上要素の現状値を推定し、改善余地を特定する

このステップで、「なぜ商品が選ばれていないのか」の本質的な理由を特定します。

ステップ2:差別化ポイントの再設計

コモディティ商品でも差別化できるポイントを探し、再設計します。

graph TD A[差別化ポイントの発掘] --> B[機能的差別化の可能性] A --> C[感情的差別化の可能性] A --> D[プロセス/体験の差別化] B --> E[差別化戦略の選定] C --> E D --> E E --> F[優先度の決定] F --> G[具体的な実行計画]

差別化ポイント発掘シート

差別化カテゴリ現状の評価(1-5)差別化の機会実現難易度(1-5)優先度
製品自体
包装/デザイン
購買体験
アフターサポート
ブランドストーリー

この分析から、「現状評価が低く」「差別化の機会が大きく」「実現難易度が比較的低い」領域に注力します。

ステップ3:Who/What/Howの明確化と実行

コモディティから抜け出すためのWho/What/Howを明確にし、実行に移します。

Who(誰に)の具体化

  • ペルソナの詳細化(名前、年齢、職業、ライフスタイル、価値観)
  • ペルソナの「一日」を詳細に想像し、接点を見つける
  • ペルソナが抱える具体的な課題や欲求のリスト化

What(何を)の具体化

  • 提供する3つの価値(機能的・感情的・社会的)を明確に言語化
  • 競合と比較した独自の価値提案(Value Proposition)の策定
  • その価値を裏付ける具体的な根拠(Reason To Believe)の整理

How(どのように)の具体化

  • 商品特性、パッケージ、ネーミングの見直し
  • 価格戦略の再検討(単一価格か複数価格帯か)
  • コミュニケーション戦略(タッチポイント、メッセージング)の設計
  • 流通戦略(販売チャネル、陳列方法)の最適化

ステップ4:実行と計測の仕組み構築

設計した戦略を実行し、効果を測定・改善するサイクルを確立します。

実行のためのアクションプラン:

フェーズ期間主要アクションKPI責任者
準備期1-2ヶ月・差別化ポイントの社内合意
・新パッケージ/メッセージの開発
・社内理解度
・開発進捗率
導入期1-3ヶ月・新マーケティング素材の展開
・販路への説明と陳列改善
・流通カバー率
・店頭露出度
拡大期3-6ヶ月・広告・PR活動の本格化
・顧客フィードバックの収集
・認知率
・売上増加率
最適化期継続・データに基づく継続的改善
・新たな差別化要素の探索
・リピート率
・顧客満足度

測定のための指標設定:

  1. 短期的指標(3ヶ月以内):
    • 認知度の変化
    • 店頭での視認性向上
    • 初回購入者数
  2. 中期的指標(6ヶ月〜1年):
    • 売上・利益の変化率
    • 市場シェアの変動
    • リピート購入率
  3. 長期的指標(1年以上):
    • ブランドロイヤルティ
    • 顧客生涯価値(LTV)
    • プレミアム価格の維持率

この実践的なアプローチを通じて、コモディティ商品であっても市場での独自ポジションを確立し、競争優位性を構築することができます。

まとめ

コモディティ化が進む現代市場において、独自価値が少ない商品でも効果的なマーケティング戦略によって差別化し、売上を伸ばすことは可能です。本記事では、そのための包括的なアプローチを紹介しました。

key takeaways:

  • コモディティ商品の課題を理解する: 価格競争の罠、顧客忠誠度の欠如、ブランド認知の困難さという課題を認識することが第一歩
  • POP/POD/POF分析で差別化ポイントを見つける: 市場の最低条件(POP)をしっかり押さえた上で、独自の差別化点(POD)を見つけ、競合の失敗(POF)から学ぶ
  • 消費者の根源的欲望に訴えかける: 「安らぐ」「属する」「高める」などの8つの欲望に訴えかけることで、機能的に同質な商品でも感情的な差別化が可能
  • Who/What/How分析で独自性を明確化する: より具体的なターゲット設定、潜在的JOBの発掘、統合的価値の設計、革新的な提供方法の開発が差別化につながる
  • 売上の方程式に基づくアプローチ: 認知率、配荷率、エボークトセットに入る率など、コントロール可能な要素に集中することで売上向上が可能
  • 成功事例から学ぶ: MUJI、Amazon Basics、Evian、コカ・コーラなど、さまざまな業界でコモディティ商品の差別化に成功している企業の戦略を参考にする
  • 実践的なステップを踏む: 現状分析、差別化ポイントの再設計、Who/What/Howの明確化、実行と計測という具体的なステップで着実に改善を進める

コモディティ商品のマーケティングでは、製品自体の差別化が難しい場合でも、顧客体験全体、感情的価値、ブランドストーリーなど、多様な角度から差別化の可能性を探ることが重要です。消費者の深層心理を理解し、本質的な欲求に応える価値を提供することで、「どれも同じ」と思われがちな市場でも、選ばれる商品を創り出すことができます。

独自価値が少ない商品でも、差別化の視点を変え、マーケティングの創造性を高めることで、持続的な競争優位性を構築できるのです。ぜひ本記事で紹介した戦略やフレームワークを活用して、あなたの商品を「選ばれる理由がある商品」に変えていってください。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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