楽天モバイルの3C分析とWho/What/Howの詳細整理 - 勝手にマーケティング分析
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楽天モバイルの3C分析とWho/What/Howの詳細整理

楽天モバイル 企業を勝手に分析
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楽天モバイルは、楽天グループが提供する格安スマートフォン通信サービスです。2020年4月に本格的なMNO(移動体通信事業者)として事業を開始し、独自の料金プランと楽天エコシステムを活用したサービスで注目を集めています。本記事では、楽天モバイルの3C分析(顧客、競合、自社)を行い、その戦略的ポジショニングを詳細に探ります。さらに、楽天モバイルのWho/What/How分析を通じて、その成功の秘訣を明らかにします。

楽天モバイルの顧客分析:コスト意識の高いスマートフォンユーザーから

市場規模と成長性

  • 日本の携帯電話市場:2023年12月末時点の移動系通信(携帯電話、PHS及びBWA)の契約数は2億1,888万契約で、前年同期比5.4%増加しました。
  • MVNO(仮想移動体通信事業者)市場:2021年度の契約数は約2,800万件、年間成長率は約8%(出典:MM総研)

楽天モバイルの市場シェア

これらの情報から、日本の携帯電話市場は契約数ベースでは成長を続けているものの、端末出荷数では減少傾向にあることがわかります。また、楽天モバイルは着実にシェアを拡大しており、新興キャリアとして成長を続けていることが示されています。

プロダクトライフサイクル

楽天モバイルは成長期にあり、MNOとしての事業開始から急速に契約数を伸ばしています。

顧客セグメント

  1. コスト意識の高い若年層(20代~30代)
  2. デジタルサービスに精通した中年層(40代~50代)
  3. 楽天エコシステムのヘビーユーザー
  4. 地方在住者(都市部以外でも使えるサービスを求める層)

顧客のJOB(解決したい課題)

機能的課題情緒的課題社会的課題
通信費の削減スマートな消費者でありたいデジタルライフの充実
安定した通信品質新しいサービスへの期待エコシステムへの帰属感
簡単な契約・解約プロセスブランドへの信頼テクノロジー先進者としての自己実現
多様なサービスの一元管理選択の自由度持続可能な消費行動

楽天モバイル市場のPLESTE分析

要因機会脅威
政治的(Political)・通信料金引き下げ政策・規制強化の可能性
法的(Legal)・新規参入促進策・個人情報保護法の厳格化
経済的(Economic)・消費者の節約志向・景気後退によるスマホ需要減少
社会的(Social)・リモートワークの普及・高齢化による新規顧客獲得の困難化
技術的(Technological)・5G技術の進展・サイバーセキュリティリスクの増大
環境的(Environmental)・省エネ技術の需要増加・環境規制の強化

楽天モバイルの競合分析:日本の通信市場における差別化戦略

主要競合(日本国内)

  1. NTTドコモ
  2. au(KDDI)
  3. ソフトバンク
  4. Y!mobile(ソフトバンクの子会社)

競合のSWOT分析と Who/What/How

NTTドコモ

SWOT内容
強み・最大の顧客基盤
・広範なネットワークカバレッジ
弱み・高コスト構造
・柔軟性の欠如
機会・5G技術の展開
・IoT市場の成長
脅威・MVNOの台頭
・政府の料金引き下げ圧力

Who/What/How:

  • Who:幅広い年齢層の消費者
  • What:安定した通信品質、広範なサービス
  • How:全国的な店舗網、大規模広告キャンペーン

au(KDDI)

SWOT内容
強み・強力なブランドイメージ
・エンターテインメントサービスの充実
弱み・ドコモに次ぐ高コスト構造
・若年層への訴求力不足
機会・5G技術の展開
・コンテンツ事業の拡大
脅威・新規参入者との競争激化
・通信料金の引き下げ圧力

Who/What/How:

  • Who:エンターテインメント志向の消費者
  • What:高品質な通信とコンテンツの融合
  • How:魅力的なコンテンツ提供、ポイントプログラム

ソフトバンク

SWOT内容
強み・革新的なマーケティング
・多様な事業ポートフォリオ
弱み・ネットワークカバレッジの相対的な弱さ
・高い負債比率
機会・AIやIoT分野での成長
・グローバル展開
脅威・規制環境の変化
・技術革新への投資負担

Who/What/How:

  • Who:テクノロジー志向の消費者
  • What:革新的なサービスと柔軟な料金プラン
  • How:斬新な広告戦略、多様なサービス連携

Y!mobile

SWOT内容
強み・低価格戦略
・ソフトバンクのインフラ活用
弱み・独自性の欠如
・限定的なサービス範囲
機会・コスト意識の高い消費者の増加
・オンライン販売の拡大
脅威・他のMVNOとの競争激化
・親会社の戦略変更リスク

Who/What/How:

  • Who:コスト意識の高い消費者
  • What:シンプルで低価格な通信サービス
  • How:オンライン中心の販売、最小限のサポート

楽天モバイルの自社分析:革新的なアプローチと課題

SWOT分析

  • 強み(Strengths)
    • 楽天エコシステムとの強力な連携
    • 革新的な料金プラン(Rakuten UN-LIMIT)
    • 完全仮想化ネットワークによる低コスト運用
    • 強力なeコマースプラットフォームとの統合
    • 豊富な顧客データと分析能力
  • 弱み(Weaknesses)
    • ネットワークカバレッジの制限(特に地方部)
    • ブランド認知度の相対的な低さ(通信事業者として)
    • 顧客サポート体制の未成熟
    • 高額な初期投資による財務負担
    • MNOとしての経験不足
  • 機会(Opportunities)
    • 5G技術の普及による新サービスの展開
    • 政府の通信料金引き下げ政策による顧客獲得チャンス
    • IoT市場の成長に伴う新規事業機会
    • グローバル展開の可能性(技術輸出など)
    • デジタルトランスформーション需要の増加
  • 脅威(Threats)
    • 大手キャリアの料金引き下げによる競争激化
    • ネットワーク品質に対する顧客の厳しい目
    • 技術革新に伴う継続的な投資の必要性
    • 規制環境の変化(個人情報保護、セキュリティなど)
    • 経済状況の悪化による消費者の通信費削減

戦略提案

  • SO戦略
    • 楽天エコシステムを活用した独自のサービス開発
    • 5G技術を活かした新たな収益モデルの構築
    • グローバル市場への技術輸出
  • WO戦略
    • パートナーシップによるネットワークカバレッジの拡大
    • デジタルマーケティングを活用したブランド認知度向上
    • AI活用による顧客サポートの強化
  • ST戦略
    • 価格以外の価値提案(エコシステム連携、ポイント還元)の強化
    • ネットワーク品質の継続的な改善と透明性の確保
    • 先進的な技術採用によるコスト競争力の維持
  • WT戦略
    • 段階的な設備投資によるリスク分散
    • 顧客フィードバックを活用したサービス改善サイクルの確立
    • 規制当局との積極的な対話と協力関係の構築

楽天モバイルのWho/What/How分析

パターン1:コスト意識の高い若年層向け

項目内容
Who(誰)20-30代のコスト意識の高い若年層
Who(JOB)通信費の大幅な削減、シンプルな契約プロセス
What(便益)低価格の無制限プラン、楽天ポイントの還元
What(独自性)完全仮想化ネットワークによる低コスト運用
How(プロダクト)Rakuten UN-LIMITプラン、楽天リンクアプリ
How(コミュニケーション)SNSマーケティング、インフルエンサー活用
How(場所)オンライン中心、一部実店舗
How(価格)業界最安水準の料金プラン

一言で言うと:「賢く節約したいデジタルネイティブ」

パターン2:楽天エコシステムのヘビーユーザー向け

項目内容
Who(誰)30-50代の楽天サービス愛用者
Who(JOB)楽天サービスの一元管理、ポイント最大化
What(便益)楽天エコシステムとの強力な連携、高還元率
What(独自性)楽天IDによる統合サービス体験
How(プロダクト)楽天モバイル専用端末、楽天経済圏サービス
How(コミュニケーション)楽天会員向けターゲティング広告
How(場所)楽天市場内での販促、楽天モバイルショップ
How(価格)楽天会員向け特別プラン、ポイント還元

一言で言うと:「楽天経済圏を最大限活用したい層」

ここがすごいよ楽天モバイルのマーケティング

楽天モバイルは、既存の通信事業者とは異なるアプローチで市場に参入し、独自の価値提案を行っています。その独自性と顧客から選ばれる理由は以下の通りです:

  1. 破壊的な料金プラン:Rakuten UN-LIMITに代表される、業界最安水準の料金プランを提供し、価格競争力で他社を圧倒しています。
  2. エコシステム連携:楽天の多様なサービスとの連携により、通信サービス以上の価値を顧客に提供しています。
  3. 技術革新:完全仮想化ネットワークの採用により、低コスト運用と柔軟なサービス展開を実現しています。
  4. デジタルファースト:オンライン中心の販売戦略と、デジタルネイティブ向けのユーザー体験を提供しています。
  5. ポイントエコノミー:楽天ポイントを中心とした独自の経済圏を構築し、顧客のロイヤリティを高めています。

マーケターがここから学べる重要な洞察:

  1. 既存市場への新規参入戦略:既存のビジネスモデルを覆す革新的なアプローチの重要性。
  2. エコシステム戦略:複数のサービスを連携させることで、顧客にとっての総合的な価値を高める方法。
  3. 技術革新とマーケティングの融合:最新技術を活用し、それをマーケティング戦略の中核に据える重要性。
  4. カスタマーセントリックアプローチ:顧客の痛点(高い通信料金、複雑な契約プロセスなど)に直接アプローチする戦略の有効性。
  5. データ駆動型マーケティング:豊富な顧客データを活用し、パーソナライズされたサービスや提案を行う重要性。
  6. ブランドエクイティの活用:既存の強力なブランド(楽天)を新規事業に活用し、信頼性と認知度を高める戦略。
  7. 長期的視点:初期投資や一時的な損失を恐れず、長期的な顧客価値の創造に焦点を当てる姿勢。
  8. 柔軟な価格戦略:市場の変化や競合の動きに応じて、迅速に価格戦略を調整する能力。
  9. コミュニティ構築:顧客を単なるサービス利用者ではなく、エコシステムの一員として巻き込む戦略。
  10. 継続的イノベーション:市場や技術の変化に合わせて、常に新しいサービスや機能を開発・提供し続ける姿勢。

楽天モバイルの事例は、既存市場に新規参入する際の革新的なアプローチを示しています。特に、自社の強みを最大限に活用しながら、顧客の潜在的なニーズに応える新しい価値提案を行うことの重要性を教えてくれます。

また、単一のサービスではなく、総合的な顧客体験を提供することの重要性も示唆しています。楽天モバイルは、通信サービスを起点として、eコマース、フィンテック、エンターテインメントなど、顧客の日常生活の様々な側面に価値を提供することで、顧客との長期的な関係構築を目指しています。

さらに、デジタル技術を活用した効率的な運営と、顧客との直接的なコミュニケーションチャネルの構築も、今後のマーケティング戦略において重要な要素となるでしょう。

最後に、楽天モバイルの事例は、市場の既存のルールや常識に挑戦する勇気の重要性を示しています。既存の大手通信事業者が長年築き上げてきたビジネスモデルに対して、全く新しいアプローチを取ることで、市場に新たな選択肢を提供し、業界全体の変革を促しています。

このような革新的なアプローチは、通信業界に限らず、様々な産業において適用可能です。マーケターは、自社の強みを再評価し、顧客のニーズを深く理解した上で、既存の市場構造や競争のルールを根本から見直す勇気を持つことが重要です。そうすることで、真に差別化された価値提案を行い、持続可能な競争優位性を構築することができるでしょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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