はじめに
Starbucksが2025年1月31日に一部の店舗の価格を変更する立地別価格を導入することを公表しました。
他飲食チェーン店でも「立地別価格設定」が注目を集めています。この施策は、店舗の立地条件や商圏特性に応じて価格を調整するもので、収益性の向上やコスト増への対応策として採用されています。本記事では、立地別価格の背景、メリット・デメリット、具体的な事例、そしてマーケターが注目すべきポイントについて解説します。
立地別価格設定とは？
立地別価格設定とは、店舗が所在する地域や立地条件に応じて、同一商品でも異なる価格を設定する施策です。例えば、都市部や観光地、高速道路のサービスエリアなどでは価格が高めに設定される一方、地方や郊外では価格が据え置かれる、または低めに設定されることがあります。
この価格設定は、以下の要因を考慮して行われます：
- 地代や賃料の違い：都市部では賃料が高いため、価格を引き上げることでコストを吸収。
- 顧客層の購買力：都市部や観光地では購買力が高い顧客が多い。
- 競合環境：地域ごとの競合状況に応じて価格を調整。
- 物流コスト：遠隔地や特定の立地では物流コストが高くなる場合がある。
立地別価格設定のメリット
- 収益性の向上
高コスト地域での価格引き上げにより、利益率を確保できます。特に都市部や観光地では、顧客が価格に敏感でないケースが多く、価格調整が可能です。 - 柔軟な価格戦略
地域ごとの需要や競争環境に応じた価格設定が可能になり、競合との差別化を図れます。 - コスト増への対応
原材料費や人件費の上昇に対し、立地別価格を導入することで、全店舗で一律値上げを行う必要がなくなります。
立地別価格設定のデメリット
- 顧客の不満
同じチェーン店でありながら、地域によって価格が異なることに対して不満を抱く顧客が出る可能性があります。 - ブランドイメージへの影響
「公平性」に欠けると感じられる場合、ブランドの信頼性に影響を与えるリスクがあります。 - 運用の複雑化
価格設定や管理が複雑化し、店舗運営やマーケティング施策に追加のリソースが必要となります。
具体的な事例
スターバックス
スターバックス コーヒー ジャパンは、2025年2月から全国の約3割の店舗で立地別価格を導入しました。東京23区や大阪市内の一部店舗では平均4％（4～28円）の値上げを実施し、高速道路のサービスエリアや空港ではさらに高い6％（13～32円）の値上げを行っています。この施策は「持続的な店舗運営」を目的としており、商圏特性を踏まえた価格設定が特徴です。
出典：－ 2025年2月15日（土）からの商品価格の取り組みについて －全国の約3割の店舗で「立地別価格」導入
マクドナルド
日本マクドナルドは、2023年7月から「都心型価格」を導入し、東京や大阪、名古屋などの都市部にある店舗で10～90円の値上げを実施しました。これにより、地価や賃料の高い地域での収益性を確保しています。
また、現在、通常店、準都心店、都心店、特殊立地店の4種類があり、それぞれで価格を変えています。
・ビッグマック：通常店450円、準都心店470円、都心店・特殊立地店500円
・マックフライポテトM：通常店330円、準都心店340円、都心店・特殊立地店370円
・マックシェイクM：通常店220円、準都心店230円、都心店・特殊立地店250円
参考：価格が異なる店舗一覧
ガスト・バーミヤン
すかいらーくグループのガストやバーミヤンでは、2022年から「超都心」、「都市部」、「地方都市」で価格を分けています。都市型店舗では価格が高めに設定されており、地域ごとの需要に応じた柔軟な価格戦略を展開しています。
出典：すかいらーくグループ 2022年プレスリリース 10 月の価格改定のお知らせ
マーケターが注目すべきポイント
- データ分析の活用
- 立地別価格を成功させるには、地域ごとの顧客層、購買力、競合状況を詳細に分析することが重要です。CRM（顧客関係管理）やPOSデータを活用し、顧客の購買行動を把握しましょう。
- 価格設定の透明性
- 顧客に対して価格設定の理由を明確に伝えることで、不満を軽減し、ブランドイメージを守ることができます。
- 柔軟なプロモーション戦略
- 価格差を補うために、地域ごとに異なるプロモーションや特典を提供することも効果的です。
- 競合他社の動向を把握
- 他のチェーン店がどのような価格戦略を採用しているかを常にモニタリングし、自社の戦略に反映させることが重要です。
まとめ
立地別価格設定は、飲食チェーン店が収益性を高め、コスト増に対応するための有効な施策です。しかし、顧客の反応やブランドイメージへの影響を考慮し、慎重に運用する必要があります。マーケターとしては、データ分析や顧客理解を基盤に、地域ごとの特性に応じた柔軟な戦略を立案することが求められます。
立地別価格設定は、単なる価格調整ではなく、顧客体験やブランド価値を向上させるための重要なマーケティング施策の一つです。ぜひチャレンジしていきましょう。他の価格戦略に関する記事はこちらもご覧ください。
