オイシックスのLP分析:消費者心理を揺さぶる戦略的アプローチを学ぶ - 勝手にマーケティング分析
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オイシックスのLP分析:消費者心理を揺さぶる戦略的アプローチを学ぶ

オイシックスのLP分析: 消費者心理を揺さぶる戦略的アプローチを学ぶ 商品を勝手に分析
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はじめに

このオイシックス(Oisix)は食材宅配の会社で、非常に効果的なマーケティングをすることで有名です。特に、ランディングページ(LP)は、「手間をかけずに高品質な食事を提供する」という悩みを抱える消費者に向けて、巧みに設計されています。このLPは限定性や社会的証明を効果的に活用し、「手抜き感のない簡便さ」という情緒的価値を前面に押し出しています。以下では、このLPの消費者心理学的な側面と戦略的なマーケティングアプローチについて分析してみます。

該当のランディングページ

長いので分割して共有します。

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Who/What/Howの仮説

まず、このLPの分析の前に、商品のターゲットを想像してみましょう。

Who(ターゲット)

  • 時間に追われながらも食事の質にこだわりたい30〜50代の働く大人
  • 「便利さ」と「本物志向」を両立させたい消費者
  • 食材選びに時間をかけられないが、家族に良質な食事を提供したい親世代

What(提供価値)

  • 機能的価値: 厳選された高品質な食材を手軽に入手できる利便性
  • 情緒的価値: 「手抜き感を出さずに楽できる」という罪悪感のない簡便さ
  • 社会的価値: 選び抜かれた生産者の商品を購入する目利き感・信頼性

How(提供方法)

  • 78%OFFの大幅割引による初回ハードルの低減
  • お試しセット15品という具体的な提案
  • 農家・オブザイヤー殿堂入りなどの品質保証
  • 実際のユーザーの声による信頼性の担保

LPの心理的アプローチ分析

では実際に上記のWho/What/Howに対してどのような意図でLPを構築しているのか、各要素を見ていきましょう。

1. 限定性と緊急性の活用

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このLPは冒頭から「締切まで2日3時間44分38秒」というカウントダウンを表示し、「数量限定」や「4,050枚限定!」といった表現を複数箇所で使用しています。これは行動経済学における「希少性の原理」に基づいており、消費者の「失う恐れ(FOMO: Fear Of Missing Out)」を刺激していると考えられます。限られた機会に対する心理的焦りが購買意欲を高める効果があるでしょう。

2. 価格訴求と価値認識のフレーミング

「78%OFF」「9,200円相当が1,980円」という表示は、アンカリング効果を活用しています。高い定価を先に示すことで、割引後の価格が極めて魅力的に感じられるよう仕向けています。また「全額返金保証」は、消費者の知覚リスクを軽減し、試してみようという心理的ハードルを下げる役割を果たしていると思われます。

3. 社会的証明の効果的活用

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「お客様のお声」を複数掲載することで、ソーシャルプルーフ(社会的証明)を提供しています。これは「他の人が良いと言っているならば、おそらく本当に良いのだろう」という心理に訴えかけるものです。例えば「偏食の子がこれは残さずに食べます」などの具体的な体験を掲載することで、信頼性と共感を高めていると考えられます。

4. 品質と安全性、楽さを表現

「農家・オブザイヤー殿堂入り」「国産丸大豆」「液切り要らずで便利」などの表記は、品質と安全性への配慮と楽さを強調しています。これは「自分や家族の健康を守りたい」という消費者の基本的欲求に応えつつ、「日々の家事を楽にしながら美味しいものを味わいたい」というちょうど良い欲求に応えていると思われます。

5. 製品のビジュアル訴求

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LPには鮮やかな赤いいちごの画像や、食材の質感が伝わる写真が多用されています。これらは視覚的な訴求力が高く、消費者の感覚的な欲求を刺激していると考えられます。特に「甘酸っぱく果汁たっぷり」などの表現と組み合わさることで、体験をリアルに想像させる効果があるでしょう。

消費者心理的アプローチの分析

1. 「ジョブ理論」の視点から

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クレイトン・クリステンセンの「ジョブ理論」の観点では、このLPは「時間をかけずに質の高い食事を提供したい」という機能的ジョブと、「手抜きと思われたくない(自分も含めて)」という情緒的・社会的ジョブに応えようとしていると考えられます。

特に「作りたてのような風味」「お湯を注ぐだけ!」などの表現は、「簡便さ」と「本格感」の両立という矛盾する欲求を満たせることを示唆しています。

2. カラー心理学の活用

LPには赤や黄色など、食欲を刺激し緊急性を感じさせる色が多用されています。赤色は心理学的に注意を引き、衝動的な行動を促す効果があるとされており、セールやタイムリミットの訴求と組み合わされることで、即時行動への誘導が強化されていると思われます。

3. 直接的な商品価値訴求

このLPでは、深いストーリーテリングよりも、商品の直接的な価値や特徴を簡潔に伝えるアプローチが採用されています。例えば、舞茸については「旨み、食感、香り!」という端的な表現で価値を伝え、顧客の声で補強する構成になっています。これは、時間のない消費者が求める「すぐに理解できる価値」を意識した構成と考えられます。

潜在的な改善点

1. モバイルユーザビリティの最適化

スマートフォンでの閲覧を想定した場合、情報量がやや多く、スクロールが長くなっている可能性があります。主要なCTAボタン(コールトゥアクション)をスクロールの途中にももう少し配置することで、「今すぐ申し込みたい」と思った瞬間にアクションを取れるよう改善できるかもしれません。

2. パーソナライゼーションの強化

「初めての方限定」という訴求はありますが、より具体的なペルソナに対する訴求(例:「共働き家庭におすすめ」「一人暮らしの方も無駄なく使える」など)があれば、消費者との関連性がさらに高まる可能性があります。

3. 具体的な使用シーンの提示

商品単体の説明は詳細ですが、それらを使った具体的な1週間の献立例などを提示することで、消費者が自分の生活における使用イメージをより鮮明に思い描けるようになるかもしれません。

4. ストーリーテリングの戦略的活用

現在のLPでは商品の直接的な価値訴求が中心ですが、一部の商品については生産者のストーリーや背景を紹介することで、情緒的な結びつきをさらに強化できる可能性があります。特に「農家・オブザイヤー殿堂入り」と記載されている商品については、その背景にある物語を簡潔に紹介することで、差別化要素をより強化できるかもしれません。

5. 初回以降の継続利用への訴求強化

現在のLPでは初回購入への訴求が非常に強いですが、その後の継続利用の価値についての言及が少ない印象です。便利さと品質の高さにより、継続して利用することで得られる生活の質の向上や時間の節約などについても言及すれば、顧客生涯価値(LTV)の向上につながる可能性があります。

まとめ

オイシックスのLPは、「手抜き感なく楽できる」という情緒的価値と、高品質な食材という機能的価値を効果的に訴求しています。限定性や社会的証明といった心理的トリガーを巧みに活用し、消費者の購買障壁を下げながら、価値認識を高める戦略が採られています。

このLPの最大の強みは、「簡便さ」と「本格感・品質」という一見矛盾する価値を同時に提供できることを、視覚的・言語的に説得力をもって伝えている点にあると思われます。消費者の「罪悪感なく楽をしたい」という隠れた欲求に応えるこのアプローチは、時間価値が高まる現代社会において、特に効果的であると考えられます。

商品価値の直接的な訴求を中心としつつも、顧客の声や品質保証の仕組みを効果的に組み合わせることで、信頼性を高める構成になっています。戦略的なストーリーテリングの追加や継続利用価値の強化など改善の余地はあるものの、ターゲット消費者の機能的・情緒的ニーズを深く理解し、それに応える提案を行っているという点で、マーケティング的に洗練されたLPであると言えるでしょう。

マーケターは他社のビジネスやLPを分析することで自社の糧を得ることができます。ぜひトライしていきましょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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