森岡毅のマーケティング思考を活かす方法 - 勝手にマーケティング分析
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森岡毅のマーケティング思考を活かす方法

森岡毅のマーケティング 基礎を学ぶ
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森岡毅氏と氏が行っているマーケティング戦略は、多くの企業やマーケターにとってバイブルとも言える存在です。本記事では、彼のマーケティング思考を深堀し、具体的な活用方法をご紹介します。

森岡毅氏とは

森岡毅

経歴

  • 1972年、福岡県北九州市で生まれ、兵庫県伊丹市で育つ
  • 1996年、神戸大学経営学部を卒業
  • 1996年〜2010年、P&Gジャパン・マーケティング本部に勤務
  • 2010年〜2016年、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に入社
  • 2017年以降、株式会社刀を設立し代表を務める

主な業績

USJでの実績

  • USJの入場者数を975万人から1400万人に増加させた
  • チケット料金を大幅に値上げしながら集客数を倍増
  • ハリー・ポッターエリアの導入
  • ハロウィンイベントの成功により、2015年と2016年10月に東京ディズニーランドを上回る集客を達成

その他の実績

  • 西武園ゆうえんちのV字回復
  • ネスタリゾート神戸の再生支援
  • ハウステンボスの経営改善

現在の活動

  • 株式会社刀の代表として、様々な業種のマーケティングに携わる
  • 沖縄県でのテーマパーク開発計画
  • 「イマーシブ・フォート東京」の開業準備
  • ニップンとの協業による家庭用パスタ市場の活性化

森岡毅氏のマーケティング思考とは?

森岡氏は、USJの再建や様々なテーマパークの成功を通じて、「日本一のマーケター」として知られるようになりました。現在も新たな挑戦を続け、様々な業界で革新的なマーケティング戦略を展開しています。

  1. 消費者を徹底的に理解する
  2. データと統計学を活用した「確率思考」
  3. 自社の強みを生かした戦略構築
  4. 大胆な価格設定と付加価値の創造

消費者を徹底的に理解する

森岡氏は消費者の理解を最も重視しています。例えば、USJの再建では、「映画好きの大人が楽しめるテーマパーク」というコンセプトを「あらゆる世代が訪れることのできる場所」に変更しました。また、沖縄でのテーマパーク開発では、アジアの消費者が沖縄の海だけでなく、森や山にも魅力を感じていることを徹底的な調査で明らかにしました。消費者が本当に求めていることを徹底的に理解して価値を作り出している点が共通しています。

森岡氏は、マーケティングの最大の武器は消費者理解だと考え、彼の消費者理解は以下の特徴を持ちます。

1. 本能に基づく消費者行動の分析

  • 人間の「本能」を理解し、消費者の選択構造を解き明かすことを重視
  • 消費者の無意識の選択プロセスを「頭の中でサイコロを振る」と表現

2. 徹底的な調査と仮説検証

  • 明確な仮説を持った上でフォーカスグループインタビューを実施
  • 消費者の言葉の奥にある真の意味を探る姿勢

3. データと確率モデルの活用

  • 購買行動を支配する数式や確率モデルを活用
  • データ分析とAI技術を駆使した精度の高いマーケティング戦略の策定

USJの再建

  1. コンセプトの転換
    • 「映画好きの大人が楽しめるテーマパーク」から「あらゆる世代が訪れることのできる場所」へ
  2. ターゲット層の拡大
    • 「ユニバーサル・ワンダーランド」の建設による小さな子供連れ家族向けエリアの創出
  3. シーズンイベントの強化
    • 「ユニバーサル・クールジャパン」など、閑散期を集客シーズンに転換するイベントの展開

沖縄テーマパーク開発(ジャングリア)

  1. アジア市場の徹底分析
    • 20億人の潜在顧客を想定した市場分析
  2. 消費者ニーズの発見
    • アジアの消費者が沖縄の海だけでなく、森や山にも魅力を感じていることを調査で明らかに
  3. 地域特性の活用
    • 沖縄北部の自然を活かしたテーマパーク構想

森岡氏の消費者理解アプローチの特徴

  1. 多角的な分析
    • データ、インタビュー、行動観察など複数の手法を組み合わせた分析
  2. 仮説と検証の繰り返し
    • 常に仮説を立て、それを検証し、修正するサイクルを回す
  3. 潜在的ニーズの発掘
    • 消費者自身も気づいていない潜在的なニーズや欲求を見出す
  4. 長期的視点
    • 一時的なトレンドだけでなく、長期的な消費者の価値観の変化を捉える
  5. グローバルな視点
    • 国内だけでなく、グローバルな消費者動向を把握

森岡氏の「消費者を徹底的に理解する」アプローチは、単なるマーケティング手法にとどまらず、ビジネス全体の戦略構築の基盤となっています。このアプローチにより、消費者の真のニーズに応える価値を創造し、ビジネスの成功につなげています。

データと統計学を活用した「確率思考」

森岡毅氏が提唱する「確率思考」は、データと統計学を活用してマーケティング戦略を立案・実行する手法です。以下にその詳細をまとめます。

確率思考の基本概念

確率思考の核心は、ビジネスの成果を確率で捉え、数式化することです。これにより、戦略の効果を予測し、最適な施策を選択することが可能になります。

市場分析の公式

森岡氏が提唱する市場分析の基本公式は以下の通りです。

売上=平均単価×1回あたりの平均購入個数×総人口×認知率×配荷率×過去購入率×店頭接触率×年間購入回数×平均購入確率

この公式を用いることで、各要素がどの程度売上に影響を与えるかを定量的に把握できます。

売上計算式の例

売上 = 平均単価 × 1回あたりの平均購入個数 × 総人口 × 認知率 × 配荷率 × 過去購入率 × 店頭接触率 × 年間購入回数 × 平均購入確率

この式に以下の架空の数値を当てはめてみましょう。

  • 平均単価: 2,000円
  • 1回あたりの平均購入個数: 3個
  • 総人口: 1,000,000人
  • 認知率: 50% (0.5)
  • 配荷率: 80% (0.8)
  • 過去購入率: 25% (0.25)
  • 店頭接触率: 60% (0.6)
  • 年間購入回数: 2回
  • 平均購入確率: 40% (0.4)

これらの数値を式に代入すると:

売上 = 2,000 × 3 × 1,000,000 × 0.5 × 0.8 × 0.25 × 0.6 × 2 × 0.4

計算結果は以下のようになります:

売上 = 288,000,000円

この計算結果は、与えられた条件下での年間売上予測を示しています。

解釈と活用

この計算式と結果を用いることで、以下のような分析や戦略立案が可能になります。

  1. 感度分析:各要素を変化させた時の売上への影響を見ることができます。例えば、認知率を60%に上げた場合の売上増加を予測できます。
  2. 重点施策の決定:売上に最も影響を与える要素を特定し、そこに資源を集中投下することができます。
  3. シナリオプランニング:様々な市場状況を想定し、それぞれのケースでの売上予測を立てることができます。
  4. KPI設定:各要素を改善するための具体的な数値目標を設定することができます。

この手法を用いることで、マーケティング戦略をより定量的に、そして科学的に立案・実行することが可能になります。ただし、実際の適用にあたっては、市場調査や過去のデータ分析を通じて、より現実に即した数値を用いることが重要です。また、定期的に実績と予測の乖離を確認し、必要に応じてモデルを調整することも忘れてはいけません。

ダブルジョパディの法則

確率思考の重要な要素の一つに「ダブルジョパディの法則」があります。これは、市場浸透率が低いブランドは、購買頻度などのロイヤルティも低くなる傾向を示す法則です。

数式で表すと:

ロイヤルティ=f(市場浸透率)

ここで、fは市場浸透率に対して単調増加する関数を表します。

確率モデルの活用

森岡氏は、消費者の購買行動を確率モデルで表現し、それを基に戦略を立てることを提唱しています。例えば、ある商品の購入確率を以下のように表現できます。

P(購入)=P(認知)×P(興味∣認知)×P(購入∣興味)

ここで、P(A|B)は条件付き確率を表し、Bという条件下でAが起こる確率を意味します。

実践における注意点

  1. データの質と量:精度の高い予測には、十分な量の質の高いデータが必要です。
  2. モデルの適用範囲:全ての業界や状況に同じモデルが適用できるわけではありません。適用範囲を見極めることが重要です。
  3. 継続的な検証:市場環境は常に変化するため、モデルの妥当性を定期的に検証し、必要に応じて更新する必要があります。
  4. 定性的要素の考慮:数値化できない要素(ブランドイメージなど)も考慮に入れることが重要です。

確率思考は、マーケティングをより科学的にアプローチする手法として注目されています。しかし、その適用には十分な理解と適切なデータ収集・分析が不可欠です。森岡氏の手法を参考にしつつ、各企業や商品の特性に合わせてカスタマイズすることが成功の鍵となるでしょう。

自社の強みを活かした戦略構築

森岡氏は、企業が持つ既存の強みを見出し、それを最大限に活用する戦略を重視しています。この手法は、新たな投資を最小限に抑えつつ、効果的なブランディングを可能にします。

主な特徴

  1. 既存の強みの再発見
  2. 強みの効果的な訴求
  3. 顧客視点からの価値再定義

具体的な事例

森岡氏は、企業の既存の強みを活かす戦略を重視します。例えば、うどんチェーン丸亀製麺では店舗でうどんを打っているという特徴を前面に出し、埼玉県の西武園遊園地では古さを逆手に取り、レトロな魅力を強調しました。どちらも新たに0から作り出した強みではなく、すでにあったが効果的に、そして絞って訴求できていなかった強みでした。

丸亀製麺の事例

  1. 強みの特定:店舗内での製麺
  2. 訴求ポイント:「生きているうどん」というコンセプト
  3. 施策:
  • 「ここのうどんは、生きている」というキャッチフレーズのCM制作
  • 店舗内での製麺過程の可視化
  • 「丸亀食感」という独自の価値提案

西武園ゆうえんちの事例

  1. 強みの特定:長い歴史と昭和レトロな雰囲気
  2. 訴求ポイント:ノスタルジーと現代的エンターテイメントの融合
  3. 施策:
  • 「夕日の丘商店街」という昭和レトロなエリアの創設
  • 古い施設を活かしつつ、最新のアトラクション(ゴジラ・ザ・ライド)との対比
  • 懐かしさと新しさを同時に体験できる空間設計

戦略構築のプロセス

  1. 徹底的な現状分析:企業の歴史、設備、人材、技術などを精査
  2. 顧客ニーズとの照合:発見した強みが現代の顧客ニーズに合致するか確認
  3. 独自性の確立:競合他社との差別化ポイントを明確化
  4. 効果的な訴求方法の選択:強みを最も効果的に伝えられる手段を選定
  5. 一貫性のある展開:商品開発からマーケティング、店舗設計まで一貫したメッセージを発信

戦略の効果

  • 投資効率の向上:新規投資を抑えつつ、高い効果を得られる
  • ブランド価値の向上:独自性を強調することで、ブランドの記憶度が上がる
  • 従業員のモチベーション向上:既存の強みを活かすことで、従業員の自信と誇りが醸成される
  • 持続可能な成長:急激な変革ではなく、既存の基盤を活かすことで長期的な成長が可能になる

森岡氏のこのアプローチは、企業の本質的な価値を再発見し、それを現代のニーズに合わせて再構築する点で非常に効果的です。単なるリブランディングではなく、企業のDNAを活かしながら新たな価値を創造する手法として、多くの企業で成功を収めています。

大胆な価格設定と付加価値の創造

USJでは、チケット料金を大幅に値上げしながらも、ハリー・ポッターエリアの導入やハロウィンイベントの成功など、付加価値の高い体験を提供することで集客数を倍増させました。

これらの手法を組み合わせることで、森岡氏は様々な業界で革新的なマーケティング戦略を展開し、多くの企業のV字回復や成長を実現しています。

大胆な価格設定

森岡氏がUSJに入社した当時、入場料金は5,800円でした。しかし、彼の指揮のもと、以下のような大胆な価格設定を行いました。

  1. 入場料金を5,800円から7,600円へ約31%値上げ
  2. 年間パスを10,500円から22,800円へ約117%値上げ

これは一般的なマーケティング戦略とは逆行する、非常に大胆な施策でした。

付加価値の創造

価格を大幅に引き上げる一方で、森岡氏は以下のような付加価値の高い体験を提供することで、顧客満足度を向上させました。

  1. ハリー・ポッターエリアの導入
    • 450億円という巨額を投資し、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を建設
    • 日本全国からの集客を実現
  2. ハロウィンイベントの成功
    • 「ハロウィン・ホラー・ナイト」を企画・実施
    • 2015年10月には175万人もの集客を記録し、東京ディズニーランドを抜いて集客数日本一を達成
  3. 新しいアトラクションの開発
    • 「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」など、既存設備を活用した革新的なアトラクションを導入
  4. ターゲット層の拡大
    • 「ユニバーサル・ワンダーランド」を建設し、小さな子供連れ家族向けのエリアを創出
  5. シーズンイベントの強化
    • 「ユニバーサル・クールジャパン」など、閑散期を集客シーズンに転換するイベントを展開

戦略の成果

これらの施策の結果、以下のような成果が得られました。

  1. 入場者数の増加:975万人から1400万人へ約43%増加
  2. 売上高の向上:価格設定の変更と入場者数の増加により、大幅な売上向上を実現
  3. ブランド価値の向上:「世界最高品質のエンターテイメントを届けるテーマパーク」としての認知度向上

戦略の本質

森岡氏の戦略の本質は以下の点にあります。

  1. 消費者視点の徹底:顧客が本当に求める体験を提供することに注力
  2. データと統計学の活用:市場分析や顧客行動の予測に数学的アプローチを採用
  3. 大胆な投資と価格設定:高品質な体験を提供するための投資と、それに見合う価格設定
  4. 継続的なイノベーション:常に新しい体験や価値を創造し続ける姿勢

この「大胆な価格設定と付加価値の創造」という戦略は、USJのみならず森岡氏が関わった他の企業でも成功を収めており、彼の革新的なマーケティングアプローチの核心となっています。

森岡毅氏のマーケティング思考のまとめ

森岡毅氏のマーケティング戦略は、徹底した消費者理解とデータ分析に基づく「確率思考」を軸に、企業の強みを最大限に活かした戦略構築、そして大胆な価格設定と付加価値の創造を組み合わせたものです。これらの手法により、森岡氏はUSJやその他のテーマパークを見事に再建し、さらに多くの企業の成長を支えています。

彼のアプローチは、単なるマーケティング手法に留まらず、企業全体のビジネス戦略の基盤となり得るものです。消費者の本質的なニーズを見極め、それに応える価値を提供することで、ブランドの成長を持続的に実現することができます。

森岡氏の成功から学べる最も重要な教訓は、「顧客の声に耳を傾け、そのニーズに基づいた価値を創造すること」です。この原則を念頭に置き、自社の強みを活かした戦略を展開することで、競争の激しい市場においても確固たる地位を築くことが可能です。

彼の思考法や戦略は、現代のマーケティングにおける最も重要な指針の一つであり、多くの企業やマーケターにとってバイブル的な存在であることは間違いありません。これからのビジネス環境においても、森岡氏の手法を参考に、より効果的で革新的なマーケティング戦略を追求していくことが求められます。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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