エンジニアとの会話で困らない!マーケター向け最低限の技術知識まとめ - 勝手にマーケティング分析
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エンジニアとの会話で困らない!マーケター向け最低限の技術知識まとめ

エンジニアとの会話で困らない! マーケター向け最低限の技術知識まとめ マーケの応用を学ぶ
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はじめに

「APIって何ですか?」「サーバーサイドとクライアントサイドの違いがわからない」「エンジニアとの打ち合わせで専門用語が飛び交って全然ついていけない」——こんな経験をしたことがあるマーケターは少なくないでしょう。

現代のマーケティング業界では、デジタル化が急速に進み、マーケターとエンジニアの協働が不可欠になっています。Google Analyticsの設定変更、マーケティングオートメーションツールの導入、ランディングページの改善提案など、日常的にエンジニアとコミュニケーションを取る機会が増えているのが現状です。

しかし、多くのマーケターが技術的な知識不足により、エンジニアとの会話で困惑したり、要望を正確に伝えられなかったりする問題に直面しています。その結果、プロジェクトの進行が遅れたり、意図しない成果物ができあがったりしてしまうケースも珍しくありません。

本記事では、マーケターがエンジニアと効果的にコミュニケーションを取るために最低限押さえておくべき技術知識を、わかりやすく体系的に解説します。専門用語の意味から実際の業務での活用方法まで、実践的な内容をお届けします。

なぜマーケターに技術知識が必要なのか

マーケターにとって技術知識が重要になっている背景には、デジタルマーケティングの進化があります。従来のマーケティング活動とは異なり、現在のマーケティングはテクノロジーと密接に結びついています。

まず、マーケティングツールの複雑化が挙げられます。Google Analytics、Google Tag Manager、各種CRMシステム、マーケティングオートメーションツールなど、マーケターが日常的に使用するツールは技術的な仕組みの上に成り立っています。これらのツールを効果的に活用するためには、その背景にある技術的な仕組みを理解していることが不可欠です。

次に、データドリブンマーケティングの重要性があります。現代のマーケティングでは、データに基づいた意思決定が求められます。しかし、データがどのように収集され、処理され、分析されるのかを理解していなければ、正確な判断を下すことは困難です。

さらに、プロジェクトの効率化という観点も重要です。技術的な基礎知識を持つマーケターは、エンジニアとの認識齟齬を減らし、プロジェクトをスムーズに進行させることができます。逆に、技術知識が不足していると、不要な確認作業や修正作業が発生し、全体的な生産性が低下してしまいます。

技術知識を持つことのメリット具体例
正確な要件定義ができる「レスポンシブ対応」の必要性を理解して依頼できる
実装可能性を判断できる技術的制約を考慮した現実的な提案ができる
トラブルシューティングができるGTMの設定ミスを自分で発見・修正できる
コストを削減できる外部委託せずに済む作業を判別できる
エンジニアとの信頼関係を構築できる専門用語を使って具体的な議論ができる

ウェブ技術の基礎知識

マーケターがエンジニアと話をする際に最も頻繁に登場するのが、ウェブ技術に関する用語です。ここでは、マーケティング業務に直結する基本的なウェブ技術について解説します。

フロントエンドとバックエンドの違い

ウェブサイトは大きくフロントエンドバックエンドに分かれます。これは建物で例えると、フロントエンドが利用者が直接見る部分(店舗の内装や外観)、バックエンドが裏方の仕組み(配管や電気系統)に相当します。

フロントエンドは、ユーザーが直接触れる部分を指します。ウェブサイトのデザイン、レイアウト、ボタンのクリック動作、フォームの入力などがこれに該当します。マーケターが「このボタンの色を変更したい」「フォームの入力項目を追加したい」といった要望を出すときは、基本的にフロントエンドの修正を求めていることになります。

バックエンドは、ユーザーからは見えない裏側の処理を担当します。データベースとの連携、ユーザー認証、決済処理、メール送信などの機能がバックエンドで動作しています。マーケターが「問い合わせフォームから送信されたデータをCRMに自動で連携したい」という要望を出すときは、バックエンドの開発が必要になります。

分類主な技術マーケターが関わる場面
フロントエンドHTML, CSS, JavaScriptデザイン変更、UI/UX改善、A/Bテスト
バックエンドPHP, Python, Java, データベースデータ連携、自動化、システム統合

HTML、CSS、JavaScriptの役割

ウェブサイトを構成する基本的な技術として、HTML、CSS、JavaScriptがあります。これらは料理に例えると、HTMLが食材、CSSが調味料、JavaScriptが調理法に相当します。

HTMLは、ウェブページの構造を定義する言語です。見出し、段落、リンク、画像などの要素を配置します。マーケティングの観点では、SEOに重要な構造化データやメタタグもHTMLで記述されます。

CSSは、ウェブページの見た目を定義する言語です。文字の色、背景色、レイアウト、アニメーションなどを制御します。ブランディングに関わるデザイン要素は、主にCSSで実装されます。

JavaScriptは、ウェブページに動的な機能を追加する言語です。ボタンクリック時の動作、フォームの入力チェック、Google Analytics のトラッキングコードなどがJavaScriptで実装されます。

graph TD A[ウェブページ] --> B[HTML: 構造] A --> C[CSS: デザイン] A --> D[JavaScript: 動作] B --> E[見出し、段落、リンク] C --> F[色、レイアウト、フォント] D --> G[インタラクション、トラッキング]

サーバーとクライアントの関係

graph LR subgraph "フロントエンド(ユーザーが見る部分)" A[ウェブブラウザ] --> B[HTML表示] A --> C[CSS装飾] A --> D[JavaScript実行] end subgraph "バックエンド(裏側の処理)" E[Webサーバー] --> F[データベース] E --> G[ユーザー認証] E --> H[メール送信] E --> I[決済処理] end A <==> E subgraph "マーケターの関わり" B --> J[デザイン変更要望] C --> K[UI/UX改善] D --> L[A/Bテスト実装] F --> M[顧客データ分析] G --> N[会員機能企画] end

ウェブサイトの仕組みを理解するためには、サーバーとクライアントの関係を把握することが重要です。これはレストランに例えると、クライアントがお客様、サーバーが厨房に相当します。

クライアントは、ユーザーが使用するブラウザやアプリケーションを指します。Chrome、Safari、Firefoxなどのブラウザがクライアントの代表例です。ユーザーがウェブサイトを閲覧したり、フォームに入力したりする際の処理は、クライアント側で行われます。

サーバーは、ウェブサイトのデータや機能を提供するコンピューターです。ユーザーからのリクエストを受け取り、適切なレスポンスを返します。データベースに保存された情報の取得や、メール送信などの処理はサーバー側で実行されます。

sequenceDiagram participant U as ユーザー participant C as クライアント(ブラウザ) participant S as サーバー participant D as データベース U->>C: ページにアクセス C->>S: HTTPリクエスト送信 S->>D: データ取得要求 D->>S: データ返却 S->>C: HTMLレスポンス返却 C->>U: ページ表示 Note over C,S: SSL/HTTPS暗号化通信 Note over S,D: SQL問い合わせ

マーケターがこの違いを理解していると、「ページの読み込み速度を改善したい」という要望を出すときに、クライアント側の最適化(画像圧縮、CSS/JavaScript最適化)とサーバー側の最適化(データベース最適化、キャッシュ機能)のどちらが必要かを判断できるようになります。

マーケティングツールの技術的背景

マーケターが日常的に使用するツールの多くは、技術的な仕組みに基づいて動作しています。これらの背景を理解することで、ツールをより効果的に活用できるようになります。

Google Analyticsの仕組み

flowchart TD A[ユーザーがページ訪問] --> B[GAトラッキングコード実行] B --> C[ユーザー情報収集] C --> D[Cookie読み書き] C --> E[ページ情報取得] C --> F[イベント情報収集] D --> G[Googleサーバーに送信] E --> G F --> G G --> H[データ処理・集計] H --> I[サンプリング適用] I --> J[GAレポート生成] J --> K[セッション数] J --> L[ユーザー数] J --> M[ページビュー数] J --> N[コンバージョン数]

Google Analytics(GA)は、ウェブサイトのアクセス解析を行うツールですが、その仕組みを理解していると、データの意味をより深く理解できます。

GAはトラッキングコードと呼ばれる小さなJavaScriptプログラムをウェブサイトに埋め込むことで動作します。ユーザーがページを訪問すると、このコードが実行され、訪問情報がGoogleのサーバーに送信されます。

重要なのは、GAのデータがサンプリングされている場合があることです。大量のデータを処理する際に、Googleが全データではなく一部のサンプルデータのみを使用してレポートを作成することがあります。これを理解していないと、「なぜ数値が変動するのか」という疑問を持つことになります。

また、セッションユーザーの違いも重要な概念です。セッションは一連の操作期間を表し、ユーザーは個人を識別する単位です。同じユーザーが複数回サイトを訪問すると、ユーザー数は1ですがセッション数は複数になります。

指標意味マーケティングでの活用
セッションサイト訪問の一連の操作キャンペーン効果測定
ユーザー個別の訪問者リーチの把握
ページビューページの表示回数コンテンツ人気度測定
直帰率1ページのみ閲覧して離脱した割合サイト改善指標

タグ管理システム(GTM)の重要性

Google Tag Manager(GTM)は、ウェブサイトに設置する各種タグを一元管理するツールです。マーケターにとって、GTMを理解することは非常に重要です。

従来は、GA のトラッキングコードや広告の計測タグを設置するたびに、エンジニアにHTML の修正を依頼する必要がありました。しかし、GTMを使用することで、マーケター自身がタグの追加・修正・削除を行えるようになります。

GTMの基本概念として、コンテナタグトリガー変数があります。コンテナは全体の入れ物、タグは設置したいコード、トリガーはタグを実行する条件、変数は動的な値を表します。

graph TD A[GTMコンテナ] --> B[トリガー設定] A --> C[タグ設定] A --> D[変数設定] B --> E[ページ読み込み] B --> F[ボタンクリック] B --> G[フォーム送信] B --> H[スクロール到達] E --> I[条件判定] F --> I G --> I H --> I I --> J{条件一致?} J -->|Yes| K[タグ実行] J -->|No| L[実行せず] K --> M[Google Analytics] K --> N[Facebook Pixel] K --> O[広告計測タグ] C --> K D --> K

CRMとマーケティングオートメーション

顧客関係管理(CRM)システムとマーケティングオートメーション(MA)ツールも、マーケターが頻繁に扱うシステムです。これらのシステムの技術的な仕組みを理解することで、より効果的な活用が可能になります。

graph TB subgraph "データ収集" A[Webサイト行動] --> D[統合データベース] B[メール反応] --> D C[フォーム送信] --> D end subgraph "CRMシステム" D --> E[顧客基本情報] D --> F[購買履歴] D --> G[コミュニケーション履歴] end subgraph "MAシステム" D --> H[行動スコアリング] D --> I[セグメンテーション] D --> J[自動配信設定] end subgraph "マーケティング施策" H --> K[リード育成] I --> L[パーソナライズ配信] J --> M[タイミング最適化] E --> N[営業連携] end

CRMは顧客情報を一元管理するシステムです。顧客の基本情報、購買履歴、コミュニケーション履歴などが蓄積されます。技術的には、リレーショナルデータベースという形式でデータが管理されており、異なるテーブル間でデータが関連付けられています。

マーケティングオートメーションは、マーケティング活動を自動化するシステムです。リード獲得から育成、商談化までのプロセスを自動化できます。MAツールは、Webサイトでの行動履歴、メール開封・クリック履歴、フォーム送信履歴などのデータを収集し、これらの情報に基づいてスコアリングやセグメンテーションを自動で実行します。

これらのシステムを効果的に活用するためには、データの統合が重要になります。異なるシステム間でデータを連携させることで、より精密な顧客分析やパーソナライゼーションが可能になります。

データとAPIの基本理解

現代のマーケティングでは、様々なツールから得られるデータを統合・分析することが重要です。そのためには、データの基本的な概念とAPI について理解しておく必要があります。

データベースの基本概念

erDiagram CUSTOMER ||--o{ ORDER : places CUSTOMER { int customer_id PK string name string email string address date registration_date } ORDER ||--o{ ORDER_ITEM : contains ORDER { int order_id PK int customer_id FK date order_date decimal total_amount string status } PRODUCT ||--o{ ORDER_ITEM : featured_in PRODUCT { int product_id PK string product_name decimal price string category int stock_quantity } ORDER_ITEM { int order_id FK int product_id FK int quantity decimal unit_price }

データベースは、大量のデータを効率的に管理・検索するためのシステムです。マーケティングの文脈では、顧客情報、商品情報、売上データなどがデータベースに保存されています。

データベースの中でも、最も一般的なのがリレーショナルデータベースです。これは、データを表(テーブル)の形式で管理し、複数のテーブル間で関係性を持たせることができるシステムです。

例えば、ECサイトのデータベースでは以下のような構造になっています:

テーブル名主な項目説明
顧客テーブル顧客ID、氏名、メールアドレス、住所顧客の基本情報
商品テーブル商品ID、商品名、価格、カテゴリー商品の詳細情報
注文テーブル注文ID、顧客ID、商品ID、注文日時購買履歴情報

これらのテーブルは主キー(各レコードを一意に識別するID)と外部キー(他のテーブルとの関連を示すID)によって関連付けられています。この仕組みを理解していると、「特定の商品を購入した顧客のリストを作成したい」といった要望をエンジニアに正確に伝えることができます。

APIとは何か

API(Application Programming Interface)は、異なるソフトウェア間でデータのやり取りを行うための仕組みです。マーケティングの現場では、異なるツール間でデータを連携させる際に API が使用されます。

sequenceDiagram participant A as マーケティングアプリ participant API as APIサーバー participant DB as データベース participant S as 外部サービス A->>API: 認証情報送信(APIキー) API->>API: 認証チェック API->>A: 認証成功 A->>API: データ取得リクエスト(JSON) API->>DB: データベース検索 DB->>API: データ返却 API->>S: 外部データ取得 S->>API: 外部データ返却 API->>A: 統合データ返却(JSON) Note over A,API: HTTPS暗号化通信 Note over API: レート制限・セキュリティチェック

APIを理解するには、レストランの注文システムに例えると分かりやすいです。お客様(アプリケーション)がウェイター(API)に注文(リクエスト)を伝えると、ウェイターが厨房(サーバー)に伝達し、料理(データ)を持ってきてくれます。

マーケティングでよく使用される API の例として、以下があります:

サービスAPI の用途マーケティングでの活用例
Google Analyticsアクセスデータの取得カスタムダッシュボードの作成
Salesforce顧客データの取得・更新リード情報の自動同期
Facebook/Instagram投稿データ、広告データの取得SNS分析レポートの自動作成
Shopify商品データ、注文データの取得売上分析の自動化

APIには認証という仕組みがあります。これは、許可された人だけがデータにアクセスできるようにするセキュリティ機能です。多くの場合、APIキーOAuthという方式で認証が行われます。

データ形式の理解

API を通じてやり取りされるデータには、決まった形式があります。最も一般的なのがJSON(JavaScript Object Notation)形式です。

JSON は、人間にも読みやすく、コンピューターにも処理しやすい形式でデータを表現します。例えば、顧客情報は以下のような形式で表現されます:

{
  "customer_id": "12345",
  "name": "田中太郎",
  "email": "tanaka@example.com",
  "purchase_history": [
    {
      "product_name": "マーケティング入門書",
      "price": 2000,
      "purchase_date": "2024-01-15"
    }
  ]
}

この形式を理解していると、エンジニアと「どのようなデータが必要か」「データをどのような形式で受け取りたいか」という議論を具体的に行うことができます。

開発プロセスと協働のポイント

マーケターがエンジニアと効果的に協働するためには、開発プロセスの基本的な流れを理解しておくことが重要です。開発手法や進行管理の方法を知ることで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発

ソフトウェア開発には、大きく分けてアジャイル開発ウォーターフォール開発という2つのアプローチがあります。

graph TD subgraph "ウォーターフォール開発" A1[要件定義] --> A2[設計] A2 --> A3[実装] A3 --> A4[テスト] A4 --> A5[リリース] A5 --> A6[運用・保守] end subgraph "アジャイル開発" B1[スプリント1] --> B2[スプリント2] B2 --> B3[スプリント3] B3 --> B4[スプリント4] subgraph "各スプリント" C1[計画] --> C2[設計] C2 --> C3[実装] C3 --> C4[テスト] C4 --> C5[レビュー] C5 --> C6[振り返り] end end B1 --> C1 C6 --> B2

ウォーターフォール開発は、要件定義、設計、実装、テスト、リリースという工程を順番に進める手法です。各工程が完了してから次の工程に進むため、計画的で予測しやすいという特徴があります。しかし、途中での変更が困難で、市場の変化に対応しにくいという課題があります。

アジャイル開発は、短期間(通常1〜4週間)の開発サイクルを反復して、段階的に機能を追加していく手法です。各サイクルの終わりに動作するソフトウェアをリリースし、ユーザーからのフィードバックを次のサイクルに反映させます。

開発手法メリットデメリットマーケティングとの相性
ウォーターフォール計画的、予算管理しやすい変更に対応しにくい要件が固まっているプロジェクト
アジャイル変更に柔軟、早期フィードバック予算・期間の見積もりが困難試行錯誤が必要なプロジェクト

マーケティングの現場では、市場の変化や顧客のニーズに迅速に対応する必要があるため、アジャイル開発が適している場合が多いです。ただし、アジャイル開発では「要件が途中で変わる可能性がある」ことを前提として、エンジニアとコミュニケーションを取る必要があります。

バージョン管理の概念

バージョン管理は、ソフトウェアの変更履歴を管理する仕組みです。最も広く使用されているのがGitというツールです。

バージョン管理を理解していると、「以前のバージョンに戻したい」「どの変更でバグが発生したか知りたい」といった要望を具体的に伝えることができます。また、複数の人が同じプロジェクトで作業する際の協調作業の仕組みも理解できます。

Gitでは、変更内容をコミットという単位で記録し、プッシュによってチーム全体で共有します。また、ブランチという仕組みを使って、メインの開発ラインに影響を与えずに新機能の開発を行うことができます。

テスト環境と本番環境

システム開発では、開発環境テスト環境本番環境という段階的な環境を用意するのが一般的です。

graph TD A[ローカル開発環境] --> B[開発サーバー] B --> C[テスト環境] C --> D[ステージング環境] D --> E[本番環境] subgraph "各環境の特徴" A --> A1[個人作業・実験] B --> B1[チーム統合・内部確認] C --> C1[機能テスト・品質保証] D --> D1[本番同等環境・最終確認] E --> E1[実際のユーザー・安定運用] end subgraph "マーケターの関わり" C1 --> F[要件確認] D1 --> G[最終承認] E1 --> H[効果測定] end

開発環境は、エンジニアが新機能の実装やバグ修正を行う環境です。頻繁に変更が加えられるため、不安定な場合があります。

テスト環境(ステージング環境とも呼ばれる)は、本番環境と同じ構成で作られた検証用の環境です。ここで機能テストや性能テスト、セキュリティテストなどが実施されます。

本番環境は、実際にユーザーが使用する環境です。最も安定性が重視され、変更には慎重な検討が必要です。

マーケターがこの概念を理解していると、「テスト環境で確認してから本番に反映してほしい」「本番環境での変更は慎重に行ってほしい」といった要望を適切に伝えることができます。

セキュリティとプライバシーの基礎

マーケティング活動では、顧客の個人情報を扱うことが多いため、セキュリティとプライバシーに関する基本的な知識は不可欠です。法的な要件を満たすだけでなく、顧客からの信頼を維持するためにも重要な知識です。

個人情報保護の基本

個人情報保護法GDPR(EU一般データ保護規則)などの法規制により、個人情報の取り扱いには厳格なルールが設けられています。マーケターは、これらの法規制がシステム設計にどのような影響を与えるかを理解しておく必要があります。

個人情報を取り扱うシステムでは、以下のような技術的対策が必要になります:

対策説明実装例
暗号化データを読み取れない形に変換SSL/TLS通信、データベース暗号化
アクセス制御権限のある人のみがアクセス可能ユーザー認証、役割ベースアクセス制御
監査ログデータアクセス履歴の記録ログイン履歴、データ操作履歴
データ最小化必要最小限のデータのみ収集フォーム項目の精査、保存期間の設定

認証と認可の違い

セキュリティの基本概念として、認証(Authentication)と認可(Authorization)の違いを理解しておくことが重要です。

認証は「その人が本当に本人であるかを確認する」プロセスです。ユーザーIDとパスワードの入力、SMS認証、指紋認証などが認証に該当します。

認可は「認証された人が特定の操作を行う権限があるかを確認する」プロセスです。例えば、同じ社員でも、一般スタッフは顧客データの閲覧のみ可能で、管理者は編集も可能といった権限の違いを制御します。

マーケティングシステムでも、データの機密性や重要性に応じて、適切な認証・認可機能を実装する必要があります。

Cookieとプライバシー

Webマーケティングで重要な概念がCookieです。Cookieは、ユーザーのブラウザに保存される小さなデータファイルで、ウェブサイトがユーザーを識別したり、行動を追跡したりするために使用されます。

Cookieには以下の種類があります:

Cookie の種類説明用途例
ファーストパーティCookie訪問しているサイトが設定ログイン状態の保持
サードパーティCookie他のサイト(広告ネットワークなど)が設定行動ターゲティング広告
セッションCookieブラウザを閉じると削除一時的な状態保持
永続Cookie有効期限まで保存ユーザー設定の記憶

プライバシー規制の強化により、Cookie の使用には ユーザーの同意が必要になっています。また、Safari や Chrome などのブラウザでは、サードパーティCookie の制限が強化されており、マーケティング手法にも影響を与えています。

パフォーマンスとSEOの技術的側面

ウェブサイトのパフォーマンスは、ユーザー体験だけでなく SEO にも大きな影響を与えます。マーケターがパフォーマンス改善の提案をする際には、技術的な背景を理解していることが重要です。

サイト速度の重要性

GoogleはCore Web Vitalsという指標を通じて、ウェブサイトのユーザー体験を評価しています。これらの指標は検索順位にも影響するため、マーケターも理解しておく必要があります。

主なCore Web Vitals指標は以下の通りです:

指標説明改善方法
LCP (Largest Contentful Paint)最大要素の表示時間画像最適化、CDN使用
FID (First Input Delay)初回入力遅延JavaScript最適化
CLS (Cumulative Layout Shift)レイアウトシフト要素サイズの事前指定

これらの指標を改善するためには、以下のような技術的対策が必要です:

画像最適化では、適切なファイル形式の選択(WebP形式の使用など)、適切なサイズでの配信、遅延読み込み(Lazy Loading)の実装などが効果的です。

JavaScript最適化では、不要なコードの削除、ファイルの圧縮、非同期読み込みの実装などが行われます。

キャッシュの活用により、繰り返し訪問するユーザーに対してより高速な表示を提供できます。

graph TD A[Webサイトパフォーマンス] --> B[Core Web Vitals] B --> C[LCP: 最大要素表示時間] B --> D[FID: 初回入力遅延] B --> E[CLS: レイアウトシフト] C --> C1[画像最適化] C --> C2[CDN使用] C --> C3[サーバー応答改善] D --> D1[JavaScript最適化] D --> D2[非同期読み込み] D --> D3[実行時間短縮] E --> E1[要素サイズ事前指定] E --> E2[広告配置最適化] E --> E3[フォント読み込み改善] subgraph "マーケティング効果" C1 --> F[SEO順位向上] D1 --> G[ユーザー体験改善] E1 --> H[コンバージョン率向上] end

SEOの技術的要素

検索エンジン最適化(SEO)には、コンテンツだけでなく技術的な要素も重要です。マーケターが SEO 改善の提案をする際には、以下の技術的要素を理解しておくことが有効です。

構造化データは、検索エンジンにコンテンツの意味を正確に伝えるための仕組みです。JSON-LD形式で記述され、リッチリザルト(強調スニペット)の表示に影響します。

HTTPSの実装は、セキュリティだけでなく SEO の観点からも重要です。Googleは HTTPS を検索順位の要因として考慮しています。

モバイルファーストインデックスにより、スマートフォンでの表示が検索順位の主な評価基準となっています。レスポンシブデザインやモバイル用サイトの最適化が重要です。

レスポンシブデザインの概念

レスポンシブデザインは、様々な画面サイズのデバイスに対応するウェブデザイン手法です。マーケターがランディングページやキャンペーンサイトの制作を依頼する際には、この概念を理解しておくことが重要です。

レスポンシブデザインでは、ブレークポイントという概念を使って、異なる画面サイズでのレイアウトを定義します:

デバイス画面幅主な考慮点
スマートフォン〜767pxタッチ操作、縦スクロール
タブレット768px〜1023pxタッチ操作、横向き対応
デスクトップ1024px〜マウス操作、大画面活用

レスポンシブデザインを理解していると、「スマートフォンでのフォーム入力を改善したい」「タブレットでの画像表示を最適化したい」といった具体的な要望を出すことができます。

エンジニアとの効果的なコミュニケーション術

技術知識を身につけたら、次はそれを活用してエンジニアと効果的にコミュニケーションを取る方法を学びましょう。単に専門用語を知っているだけでなく、相互理解を深めるためのコミュニケーション技術が重要です。

要望の伝え方

エンジニアに要望を伝える際は、「何を実現したいか」(What)と「なぜそれが必要か」(Why)を明確に伝えることが重要です。具体的な実装方法(How)については、エンジニアの専門性に任せるのが効果的です。

良い要望の伝え方の例:

目的: コンバージョン率を向上させたい
背景: 現在のフォームの離脱率が60%と高く、入力項目が多すぎることが原因と考えられる
要望: フォームの入力項目を減らし、複数ステップに分割して心理的負担を軽減したい
期待効果: フォーム完了率を現在の40%から60%に改善したい」

避けるべき要望の伝え方:

「フォームをAjaxで非同期処理にして、バリデーションをJavaScriptで実装してください」

この例では、目的が不明確で、実装方法だけを指定しているため、エンジニアがより良い解決策を提案する余地がありません。

優先順位の決め方

複数の要望がある場合は、MoSCoW法という優先順位付けの手法が効果的です:

優先度意味
Must(必須)プロジェクト成功に絶対必要セキュリティ対応、法的要件
Should(重要)重要だが代替手段があるユーザビリティ改善
Could(可能であれば)あると良いが必須ではない追加機能
Won't(今回は見送り)将来的に検討大幅な仕様変更

この手法を使って優先順位を明確にすることで、限られた開発リソースを効果的に活用できます。

技術的制約の理解

エンジニアから「技術的に困難です」という回答があった場合、その理由を理解し、代替案を一緒に検討することが重要です。

技術的制約の主な要因として以下があります:

パフォーマンスの制約: 大量のデータ処理や複雑な計算が必要な機能は、サーバーの負荷やレスポンス時間に影響を与える可能性があります。

セキュリティの制約: 個人情報の取り扱いや外部システムとの連携において、セキュリティ要件を満たすための追加実装が必要になる場合があります。

既存システムとの互換性: 既に運用されているシステムとの整合性を保つために、実装方法に制限が生じる場合があります。

開発コストと時間: 複雑な機能の実装には相応の時間とコストが必要になります。

これらの制約を理解した上で、「どうすれば同様の効果を得られるか」「段階的な実装は可能か」といった建設的な議論を行うことが大切です。

継続的なコミュニケーション

プロジェクトの成功のためには、継続的なコミュニケーションが重要です。以下のような定期的なコミュニケーションの機会を設けることが効果的です:

週次進捗会議: プロジェクトの進捗状況、課題、次週の予定を共有します。

レビュー会議: 開発された機能の確認と、改善点の議論を行います。

振り返り会議: プロジェクト完了後に、良かった点と改善点を整理し、次回のプロジェクトに活かします。

また、日常的なコミュニケーションツール(Slack、Teams、Chatworkなど)を活用して、気軽に質問や相談ができる環境を作ることも重要です。

まとめ

マーケターがエンジニアと効果的にコミュニケーションを取るためには、技術的な基礎知識の習得と、それを活用したコミュニケーション術の両方が重要です。本記事で紹介した内容を参考に、段階的に知識を深めていってください。

Key takeaways:

  • フロントエンドとバックエンドの違いを理解することで、適切な要望の出し分けができる
  • HTML、CSS、JavaScriptの役割を把握することで、ウェブサイト改善の議論に参加できる
  • APIやデータベースの基本概念を理解することで、システム連携の提案ができる
  • Google Analytics や GTM の仕組みを知ることで、計測環境の改善に貢献できる
  • アジャイル開発やバージョン管理を理解することで、開発プロセスに適応できる
  • セキュリティとプライバシーの基礎知識は、法的要件を満たすシステム設計に必要
  • Core Web Vitals や SEO の技術的要素を理解することで、サイトパフォーマンス改善に貢献できる
  • 要望を伝える際は、What(何を)とWhy(なぜ)を明確にし、How(どのように)はエンジニアに委ねる
  • MoSCoW法を使った優先順位付けで、限られたリソースを効果的に活用できる
  • 技術的制約を理解し、代替案を一緒に検討する姿勢が重要
  • 継続的なコミュニケーションが、プロジェクト成功の鍵となる

これらの知識とスキルを身につけることで、マーケターとしてより価値の高い提案ができるようになり、エンジニアとの協働をスムーズに進めることができるでしょう。技術は日々進歩するため、継続的な学習と実践を通じて、スキルを向上させていくことが大切です。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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