はじめに
「うちの商品、機能は良いのになぜ売れないんだろう...」
マーケティング担当者として、こんな悩みを抱えていませんか?広告費をかけても反応が薄い、キャンペーンを打っても一時的な効果しかない、競合との価格競争に巻き込まれて利益率が下がる一方...。
実は、これらの課題の根本原因は「マーケティング戦略の不在」にあります。
本記事では、マーケティング戦略の基本から実践的な立て方まで、明日からあなたのビジネスで使える知識とツールを徹底解説します。特に、実務で使えるWho/What/Howフレームワークを軸に、戦略構築の具体的なステップを紹介。読み終わる頃には、自社のマーケティング戦略を見直すための明確な指針が手に入っているはずです。
マーケティング戦略とは?Who/What/Howで理解する本質
マーケティング戦略の定義
マーケティング戦略とは、単なる広告やプロモーションの計画ではありません。「自社商品が顧客から選ばれ続ける仕組みづくり」そのものです。
より具体的に言えば、次の3つの問いに答えることがマーケティング戦略を立てることと同義と筆者は考えています。
Who(誰): 誰のどんなJOB(叶えたい欲求)に対して
What(何): どんな便益と独自性を
How(どのように): どのようなプロダクト、コミュニケーション、場所、価格で提供するのか
このWho/What/Howフレームワークは、複雑なマーケティング活動を整理し、実行可能な戦略に落とし込むための強力なツールです。
経営戦略・事業戦略との違い
マーケティング戦略を正しく理解するには、他の戦略との違いを把握することが重要です。

| 戦略の種類 | 範囲 | 主な焦点 | 時間軸 | Who/What/Howとの関係 |
|---|---|---|---|---|
| 経営戦略 | 全社 | 企業の長期的な方向性と資源配分 | 長期(5-10年) | 全社としてどの市場で戦うかを決定 |
| 事業戦略 | 事業単位 | 各事業の方向性や計画 | 中期(3-5年) | Who/Whatの大枠を定める |
| マーケティング戦略 | マーケティング機能 | Who/What/Howの具体化と実行 | 短期〜中期(1-3年) | Who/What/Howを明確に言語化 |
つまり、マーケティング戦略は経営戦略と整合性を保ちながら、具体的に「誰に・何を・どのように」届けるかを決める実行戦略なのです。

なぜマーケティング戦略が必要なのか?3つの理由
理由1: 商品は万人向けではない
どんな商品も、世界中の全ての人をターゲットにすることはできません。特定の人の特定のJOBを解決するために創られたものです。
たとえば、スターバックスのコーヒーは単なる飲み物ではありません。「自己学習に励む30代の共働き夫婦が、快適で充実した朝活でその日を始める」というJOBを解決しているのです。
Who/What/Howを決めない限り、次のような問題が起きます:
| 問題 | 具体的な影響 |
|---|---|
| ターゲットが曖昧 | 誰にも刺さらないメッセージになる |
| 便益が不明確 | 「なぜうちを選ぶべきか」を説明できない |
| 独自性がない | 価格競争に巻き込まれる |
| 施策がバラバラ | リソースが分散し効果が出ない |
理由2: 選択肢が多すぎる時代だから
現代の顧客は、問題を解決する手段を数多く持っています。たとえば「英語を学びたい」という人に対しても:
- 英会話スクールに通う
- オンライン英会話を使う
- 学習アプリ(Duolingoなど)を使う
- YouTubeで独学する
- 英語圏に留学する
この中で「これが今の自分たちの状況に合う最善の手段だ」と顧客に思ってもらうには、英語を学びたい人は最終的に何を叶えたい欲求を持っているのか、だからどういう価値を提供するべきなのか、それをどう届けるべきなのか、を明確にするべくマーケティング戦略が不可欠です。
理由3: 限られたリソースで成果を最大化するため
企業のリソース(時間・予算・人材)は有限です。マーケティング戦略を明確にすることで:
- リソースの最適配分: 効果の高い施策に集中投下できる
- ターゲティングの精度向上: 無駄な広告費を削減できる
- コミュニケーションの最適化: 顧客に最も響くメッセージを選択できる
- PDCAサイクルの効率化: 測定と改善のサイクルを迅速に回せる
マーケティング戦略の立て方:実践7ステップ
ここからは、実際にマーケティング戦略を構築するための具体的なステップを解説します。
ステップ1: 外部環境分析 - 市場を読み解く
まずは自社を取り巻く環境を理解します。
| 分析手法 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| PESTEL分析 | マクロ環境の理解 | 政治・経済・社会・技術・環境・法律の6軸で市場を分析 |
| 競合分析 | 競争環境の把握 | 主要競合の強み・弱み・戦略を特定 |
| 顧客分析 | ニーズの理解 | アンケート・インタビューで顧客の声を集める |
| トレンド分析 | 将来予測 | 業界の最新トレンドと今後の方向性を見極める |
実践のコツ: いきなり完璧な分析を目指さない。まずは1週間で「競合3社の強み・弱みリスト」を作ることから始めましょう。
ステップ2: 内部環境分析 - 自社の強みを見つける
次に、自社のリソースと能力を棚卸しします。
| 分析手法 | 目的 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威の整理 | 自社の強みは何か?市場機会はどこにあるか? |
| コア・コンピタンス分析 | 独自能力の特定 | 他社が真似できない自社の能力は何か? |
| バリューチェーン分析 | 価値創造プロセスの可視化 | どこで価値を生み出し、どこに改善余地があるか? |
実践ワーク: 営業チーム・開発チーム・カスタマーサポートにヒアリングし、「顧客から褒められたポイント」「競合に勝てた理由」を書き出してみましょう。そこにあなたの強みのヒントがあります。
ステップ3: Whoの明確化 - 顧客のJOBを理解する
マーケティング戦略の核心は、「誰のどんなJOBに応えるか」を明確にすることです。
Whoを構成する2つの要素
- どんな人か(デモグラフィック・サイコグラフィック)
- BtoC: 性別、年齢、職業、家族構成、価値観、ライフスタイル
- BtoB: 売上規模、業種、従業員数、役職、担当業務
- どんなJOBを持っているか(オルタネイトモデル)
| JOBの要素 | 内容 | 質問例 |
|---|---|---|
| きっかけ | その欲求が生まれる状況 | どんな時にこの課題を感じるか? |
| 欲求 | 達成したいこと | 理想的な状態はどんなものか? |
| 抑圧 | 欲求の実現を妨げる要因 | 何が解決を妨げているか? |
| 報酬 | 欲求が満たされた時の利益 | 解決したらどうなりたいか? |
実践例: Duolingoの場合
- Who: 20-30代の社会人・学生
- きっかけ: 通勤時間やスキマ時間がもったいないと感じる
- 欲求: 効率的に外国語を学習したい
- 抑圧: 学習時間の確保が難しい、従来の学習法は退屈で続かない
- 報酬: スキルアップによるキャリア向上、異文化コミュニケーション
ステップ4: Whatの明確化 - 独自の価値を定義する
顧客が「あなたを選ぶ理由」を明確にします。
| Whatの要素 | 説明 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 便益 | 顧客が得られる具体的な効果 | 機能的・情緒的・社会的便益を明確に |
| 独自性 | 競合との差別化要素 | トレードオフがあり、かつ顧客が求めるものか? |
| RTB | 便益と独自性の根拠 | 技術、実績、第三者評価などで証明できるか? |
独自性チェックリスト
独自性は商品機能だけではありません。以下のどれかで差別化できているかチェックしましょう:
- [ ] 商品・サービスの機能や品質
- [ ] 顧客体験(UI/UX、サポート、コミュニティ)
- [ ] 情緒的要素(ミッション・ビジョンへの共感、ブランドの安心感)
- [ ] 継続的な改善とイノベーション
- [ ] 特定セグメントへの特化
- [ ] エコシステムや仕組み
- [ ] 認知度やブランド力
- [ ] 価格体系や課金モデル
ステップ5: Howの明確化 - 届け方を設計する
Who/Whatが決まったら、それをどう届けるかを具体化します。
| Howの要素 | 検討事項 | 具体例 |
|---|---|---|
| プロダクト | 商品・サービスの特徴、機能、デザイン | 「1レッスン10分」「AI個別最適化」 |
| コミュニケーション | 訴求内容、手段、タイミング | SNS広告、SEO記事、ウェビナー |
| 場所 | 販売チャネル、流通経路 | 直販サイト、App Store、実店舗 |
| 価格 | 価格設定、課金方法 | 基本無料+プレミアム月額980円 |
実践ワーク: 現在のHowを書き出し、Who/Whatとの整合性をチェックしてください。ズレている部分が改善ポイントです。
ステップ6: 優先的なターゲットに絞り込む
複数のWho/What/Howパターンが見えてきたら、どこから攻めるかを決めます。
ターゲット優先順位付けの指標
| 指標 | 評価内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 市場規模 | そのセグメントの顧客数・金額規模 | TAM/SAM/SOM分析 |
| 成長率 | 市場が拡大しているか | 業界レポート、統計データ |
| JOBの優先度 | 顧客にとって切実な課題か | 顧客インタビュー |
| 競合の強さ | 既存プレイヤーの数と強さ | 競合マッピング |
| 自社の独自性 | 真似されにくい強みがあるか | 内部分析 |
| ROI予測 | 施策の費用対効果 | シミュレーション |
ステップ7: 実行とPDCA - 小さく始めて改善する
完璧な戦略を目指すより、小さく始めて改善することが重要です。
推奨アプローチ:
- 仮説でWho/What/Howを言語化(1週間)
- 顧客・営業担当者へのヒアリング
- 各要素を箇条書きで整理
- 最小工数で検証(2-4週間)
- 現状のHowと比較し、改善できる箇所を特定
- 1つの施策に絞って実験
- 効果測定と改善(継続)
- KPIを設定し、週次で振り返り
- うまくいった要素を横展開
実践で使えるフレームワーク6選
マーケティング戦略構築に役立つ主要フレームワークを紹介します。
| フレームワーク | 使う場面 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Who/What/How | 戦略全体の整理 | シンプルで実行に落としやすい | 各要素の深掘りは別途必要 |
| SWOT分析 | 全体状況の把握 | 簡単で直感的 | 深い洞察が得られにくい |
| 5フォース分析 | 業界構造の理解 | 包括的な競争環境分析 | 動的な市場変化を捉えにくい |
| STP | 市場アプローチの決定 | 効果的な市場選択と差別化 | 実施に時間とリソースが必要 |
| 4P/4C | マーケティングミックスの策定 | 具体的なアクションプランの立案 | 顧客視点が欠けがち(4Pの場合) |
| カスタマージャーニーマップ | 顧客体験の最適化 | 顧客中心のアプローチ | 複雑な購買行動の場合、作成が困難 |
フレームワークの使い分け:
- 戦略立案初期: SWOT分析 → Who/What/How・STP
- 施策具体化: 4P → カスタマージャーニーマップ
- 定期見直し: 5フォース分析 → SWOT分析
成功事例に学ぶWho/What/How実践法
事例1: Duolingo - ゲーム感覚で続く語学学習

| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Who | 20-30代の社会人・学生 / スキマ時間を有効活用して外国語を学びたい |
| What(便益) | 短時間で手軽に語学学習ができる、楽しく続けられる |
| What(独自性) | AIによるパーソナライズ学習 + ゲーム感覚のUI |
| What(RTB) | 科学的な学習メソッド、3億人以上のユーザー実績 |
| How(プロダクト) | 1レッスン10分、ストリーク機能、リーグシステム |
| How(コミュニケーション) | SNS広告、App Storeでの高評価、口コミ |
| How(場所) | iOS/Android アプリ、Webサイト |
| How(価格) | 基本無料、プレミアム月額1,400円程度 |
成功要因: 「学びたいけど続かない」という顧客の抑圧を、ゲーミフィケーションで解決。無料で始められる心理的ハードルの低さも効いています。
事例2: マツモトキヨシ - 都市部の働く女性に選ばれる理由

| 要素 | 内容 |
|---|---|
| Who | 25-45歳の都市部で働く女性 / 美容と健康の両立、時間効率の良い買い物をしたい |
| What(便益) | 高品質な美容製品と健康サポート商品、ワンストップショッピング |
| What(独自性) | 豊富な品揃えと専門的なアドバイス、駅近の利便性 |
| How(プロダクト) | 高級化粧品ブランド、自社PB「matsukiyo LAB」、健康食品 |
| How(コミュニケーション) | SNSマーケティング、美容セミナー、アプリでのパーソナライズ情報 |
| How(場所) | 駅近店舗、オフィス街、オンラインストア |
| How(価格) | 中〜高価格帯、ポイント還元、定期キャンペーン |
成功要因: 都市部女性の「時間がない」という抑圧に対し、駅近立地とワンストップで解決。専門知識を持つスタッフによる信頼感も強み。
よくある失敗パターンと対策
マーケティング戦略が失敗する典型的なパターンと、その対策を整理します。
| 失敗パターン | 具体例 | 根本原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| Whoが曖昧 | 「20-60代の全ての人」がターゲット | ターゲットが広すぎる | 最も刺さるセグメントに絞る |
| 独自性がない | 「高品質・低価格・便利」だけ | 差別化要素が弱い | トレードオフのある独自性を探す |
| 戦略と実行の乖離 | 計画は立派だが現場が動かない | 部門間連携不足 | 全社で戦略を共有し、KPIを統一 |
| 柔軟性の欠如 | 市場変化に対応できない | 硬直的な計画 | 短期サイクルでPDCAを回す |
| 測定指標がない | 効果がわからない | KPI未設定 | Who/What/How別にKPIを設定 |
| 短期志向 | キャンペーンばかりで長期視点がない | ブランド構築の軽視 | 短期・中期・長期の目標をバランス |
明日からできるアクションプラン
最後に、今日から実践できる具体的なステップを紹介します。行動しなければ現状から数値を変化させられません。ぜひ今日から動いていきましょう。
【今週やること】Who/What/Howの現状チェック
以下の質問に答え、自社の現状を可視化しましょう。
| カテゴリ | 質問 | 回答 |
|---|---|---|
| Who | ターゲットは誰で、どんな課題を抱えているか明確か? | |
| Who | その市場規模やシェアは把握しているか? | |
| Who | 複数のターゲットパターンを言語化できているか? | |
| What | 自社商品を使うとどんな効果があるか明確か? | |
| What | 競合や代替手段がある中でなぜ自社を選ばれているのか? | |
| What | その根拠(RTB)を説明できるか? | |
| How | ターゲットとその課題にマッチしたコミュニケーションができているか? | |
| How | ターゲットにマッチしたプロダクトになっているか? | |
| How | 価格設定は適切か? |
【来月やること】小さな改善から始める
- 営業チームにヒアリング(1-2時間)
- 「どんな顧客が買ってくれるか」
- 「競合に勝てる理由は何か」
- 「顧客から褒められたポイントは?」
- 1つのHowを改善(2-4週間)
- 最も効果が出やすそうな施策を1つ選ぶ
- Who/Whatとの整合性を確認して修正
- KPIを設定して効果測定
- 週次で振り返り(継続)
- 数字の変化を確認
- うまくいった要素と改善点を記録
- 次の施策に活かす
まとめ:マーケティング戦略は「選ばれる仕組み」づくり
本記事のKey Takeawaysを整理します。
| ポイント | 実践のヒント |
|---|---|
| マーケティング戦略 = Who/What/How | この3つを明確に言語化することが戦略立案の本質 |
| Whoは「JOB」で理解する | デモグラフィックだけでなく、きっかけ・欲求・抑圧・報酬を掘り下げる |
| 独自性は機能だけではない | 顧客体験、ブランド、価格体系など多角的に考える |
| 完璧を目指さず小さく始める | 仮説→検証→改善のサイクルを高速で回す |
| 全社で戦略を共有する | 部門間で共通言語を持つことで施策の一貫性が生まれる |
マーケティング戦略は、静的なものではありません。市場環境の変化に応じて、継続的に見直し、改善し続ける必要があります。
次の一歩:
今日、まずはWho/What/Howチェック表を埋めてみてください。そこから見えてくる「ズレ」や「曖昧さ」が、あなたのビジネスを成長させるヒントです。










