ローソンが選ばれる理由:日本を代表するコンビニエンスストアブランドのマーケティング戦略分析 - 勝手にマーケティング分析
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ローソンが選ばれる理由:日本を代表するコンビニエンスストアブランドのマーケティング戦略分析

ローソンが選ばれる理由: 日本を代表するコンビニエンスストアブランドのマーケティング戦略分析 商品を勝手に分析
この記事は約26分で読めます。

マーケティング担当者として、「なぜ消費者は特定のブランドを選ぶのか」という問いと日々向き合っているのではないでしょうか。消費者の選択理由を深く理解することは、自社製品やサービスが市場で選ばれる確率を高めるための重要な鍵となります。

本記事では、日本のコンビニエンスストア市場で独自のポジションを確立しているローソンを例に、このブランドが消費者から選ばれる理由を多角的に分析していきます。この分析を通じて、以下のメリットを得ることができるでしょう:

  1. 健康志向と地域密着を軸にした差別化戦略の方法論を学べる
  2. 顧客の深層心理に訴求する効果的なブランディング戦略を理解できる
  3. 既存市場でのポジショニングを強化するための具体的な施策を発見できる

老若男女に愛されるローソンの成功要因を紐解きながら、あなたのビジネスにも応用できる実践的な知見を提供していきます。

1. ローソンの基本情報

Screenshot

ローソンは、株式会社ローソンが運営する日本を代表するコンビニエンスストアチェーンです。「マチの"ほっと"ステーション」というビジョンを掲げ、国内外で店舗展開を行っています。

企業情報

  • 企業名:株式会社ローソン
  • 設立年:1975年
  • 本社所在地:東京都品川区大崎1-11-2
  • 代表取締役社長:竹増 貞信
  • 従業員数:約11,666名(連結)
  • URL:https://www.lawson.co.jp/

主要製品・サービスラインナップ

  • コンビニエンスストア「ローソン」
  • 健康志向店舗「ナチュラルローソン」
  • 低価格店舗「ローソンストア100」
  • プライベートブランド「ローソンセレクト」「Uchi Café Sweets」
  • エンタメサービス(チケット販売、マルチコピー機など)
  • キャッシュレス決済サービス

業績データ

ローソンは日本国内でセブン-イレブン、ファミリーマートに次ぐ規模を持つコンビニエンスストアチェーンであり、2025年時点で国内に14,694店舗を展開しています。また、中国を中心とした海外にも7,344店舗以上を展開しており、グローバル展開を進めています。2024年度の連結売上高は約2.8兆円で、店舗数は年々増加傾向にあります。※2024年以降は上場廃止に伴い業績不明

特に注目すべきは、ブランド価値調査「ブランド・ジャパン2025」においてローソンが3位にランクインしていることで、消費者からの高い支持を得ていることがわかります。特に2024は40位でしたので大幅なランクアップになります。

このように、ローソンは日本のコンビニエンスストア業界において、重要なプレイヤーとして昨今は位置づけられていますが、なぜこれほど消費者から選ばれているのでしょうか。その理由を探っていきましょう。

2. 市場環境分析

まずはローソンが所属しているコンビニエンスストア市場について理解していきましょう。

市場定義:消費者のジョブ(Jobs to be Done)

コンビニエンスストアが解決する主な消費者ジョブは以下の通りです:

  1. 「いつでも、どこでも、手軽に買い物をしたい」(機能的ジョブ):24時間営業と幅広い商品ラインナップにより、緊急時や忙しい時でも必要なものを入手できる環境を求めています。
  2. 「日常生活の小さな楽しみを見つけたい」(感情的ジョブ):新商品との出会いや季節限定商品を通じて、日常に小さな喜びや変化を求めています。
  3. 「複数の用事を一箇所で済ませたい」(機能的ジョブ):買い物だけでなく、公共料金の支払いやチケット購入など、複数の用事を一度に済ませる利便性を求めています。
  4. 「健康に配慮しながら手軽に食事をとりたい」(機能的・感情的ジョブ):忙しい生活の中でも健康を維持したいという願望があります。

これらのジョブの量と優先度は、ライフスタイルや価値観の変化によって影響を受けますが、現代社会においてはどのジョブも高い優先度を持っていると言えるでしょう。特に近年では、健康志向の高まりや時間の有効活用へのニーズが強まっています。

競合状況

コンビニエンスストア市場における主要プレイヤーとその特徴は以下の通りです:

  • セブン-イレブン:最大手で、独自の商品開発力と品質管理、高密度な店舗網が強み
  • ファミリーマート:中食(惣菜・弁当)の品質と品揃えを強化
  • ミニストップ:イートインスペースとソフトクリームが差別化ポイント
  • ドラッグストア:食品取扱いの増加によりコンビニと競合関係に
  • スーパーマーケット:長時間営業化によりコンビニとの境界線が薄れている

この中でローソンは、健康志向商品の強化と地域密着型の店舗展開で独自のポジションを確立しています。

POP/POD/POF分析

続いて、コンビニエンスストア市場で戦って勝っていくために必要な要素を整理していきましょう。

Points of Parity(業界標準として必須の要素):

  • 24時間営業による利便性
  • 基本的な食品・飲料・日用品の品揃え
  • 公共料金支払いやATMなどの生活サービス
  • 清潔で明るい店舗環境
  • 迅速なレジ対応

Points of Difference(差別化要素):

  • 独自の商品開発力と品質
  • プライベートブランド商品の魅力
  • 地域ニーズに応じた品揃えの最適化
  • 顧客ロイヤルティプログラムの充実度
  • 独自サービス(エンタメ、デジタル連携など)

Points of Failure(市場参入の失敗要因):

  • 不十分な商品在庫管理による品切れの多発
  • 接客品質の低下や不均一性
  • 立地選定の失敗
  • 商品開発力の弱さ
  • デジタル化への対応の遅れ

このカテゴリーでは、基本的なPOP要素を満たしつつ、独自のPODを確立することが重要です。特に商品力、サービス品質、地域適応力の3つが競争優位性を左右する要因となっています。

PESTEL分析

次に、コンビニエンスストア市場を各視点で見たときの追い風・向かい風を分析します。

Political(政治的要因):

  • 機会:キャッシュレス決済推進政策によるデジタル化の加速
  • 脅威:労働法制の厳格化による人件費増加や営業時間規制の可能性

Economic(経済的要因):

  • 機会:インバウンド需要の回復による売上増加
  • 脅威:原材料価格の高騰によるコスト圧力、デフレからインフレへの転換

Social(社会的要因):

  • 機会:健康志向の高まり、単身世帯や共働き世帯の増加
  • 脅威:少子高齢化による労働力不足、人口減少による市場縮小

Technological(技術的要因):

  • 機会:デジタル技術の進化によるオペレーション効率化、無人店舗の可能性
  • 脅威:ECサイトの台頭による実店舗の価値低下

Environmental(環境的要因):

  • 機会:環境配慮型商品への需要増加、サステナビリティへの取り組み
  • 脅威:プラスチック規制の強化、食品ロス削減の社会的要請

Legal(法的要因):

  • 機会:規制緩和によるサービス拡大の可能性
  • 脅威:食品表示法の厳格化、個人情報保護法の強化

日本のコンビニエンスストア市場は成熟期を迎えており、店舗数の増加による成長は限界に近づいています。しかし、商品やサービスの質的向上、健康志向商品の開発、デジタル技術の活用などにより、市場は今後も緩やかな成長が見込まれています。

3. ブランド競争力分析

続いて、ローソン自体の強み、弱みは何で、それらが今の外部環境の中でどう活かしていけるのか、いくべきなのかを見ていきましょう。

SWOT分析

Strengths(強み):

  • 健康志向商品のラインナップと品質(低糖質、トクホなど)
  • 「ナチュラルローソン」や「ローソンストア100」など多様な店舗フォーマット
  • チケット販売やマルチコピー機などのエンタメ関連サービスの充実
  • 地域特性に応じた商品開発と地域密着型の店舗運営
  • プライベートブランド「ローソンセレクト」「Uchi Café Sweets」の強化

Weaknesses(弱み):

  • セブン-イレブンやファミリーマートに比べて店舗数が少ない
  • 競合他社と比較した商品開発のスピードと供給力
  • セブン-イレブンと比較したブランド認知度やロイヤルティ
  • 一部地域における店舗ネットワークの弱さ
  • 利益率の低さ

Opportunities(機会):

  • 健康志向の高まりによる健康・オーガニック商品の需要増加
  • インバウンド需要の回復に伴う外国人観光客向けサービスの拡大
  • デジタル技術の進化によるオペレーション効率化と顧客体験向上
  • 環境配慮型商品やサービスによるSDGs対応
  • 中国を中心とした海外市場の成長

Threats(脅威):

  • セブン-イレブンやファミリーマートなど競合他社との競争激化
  • 労働力不足による人件費上昇とサービス品質の低下リスク
  • 原材料価格の高騰によるコスト増加
  • ECサイトやフードデリバリーサービスの台頭
  • 少子高齢化による国内市場の縮小

クロスSWOT戦略

SO戦略(強みを活かして機会を最大化):

  • 健康志向商品のラインナップをさらに拡充し、健康意識の高い消費者にアピール
  • 多様な店舗フォーマットを活かした地域ごとの最適な店舗展開
  • デジタル技術を活用したエンタメサービスの強化

WO戦略(弱みを克服して機会を活用):

  • デジタル技術を活用した効率的な店舗運営で、店舗数の少なさを補完
  • 健康商品の開発スピードを上げ、市場ニーズに迅速に対応
  • インバウンド需要を取り込むための多言語対応の強化

ST戦略(強みを活かして脅威に対抗):

  • 地域密着型の店舗運営で競合との差別化を強化
  • プライベートブランド商品の品質向上で原材料価格高騰の影響を最小化
  • 多様な店舗フォーマットで市場縮小の影響を軽減

WT戦略(弱みと脅威の両方を最小化):

  • 店舗運営の効率化で人件費上昇の影響を抑制
  • フランチャイズモデルの最適化で効率的な店舗展開を図る
  • オムニチャネル戦略でECサイトの台頭に対応

SWOT分析から見えてくることは、ローソンが健康志向商品と地域密着型の店舗運営を軸に差別化を図り、デジタル技術の活用で効率化を進める必要があるということです。また、プライベートブランドの強化と多様な店舗フォーマットの展開により、様々な顧客ニーズに対応する戦略が重要だと言えるでしょう。

4. 消費者心理と購買意思決定プロセス

続いて、ローソンの顧客はなぜブランドを選ぶのか、その購買行動の構造を複数パターンで見ていきましょう。

オルタネイトモデル分析

パターン1:忙しいビジネスパーソン

  • 行動:通勤途中でローソンに立ち寄り、コーヒーと健康志向の朝食を購入する
  • きっかけ:朝の通勤時間が迫っており、自宅で朝食を準備する時間がない
  • 欲求:時間をかけずに健康的な朝食を摂りたい、一日のスタートを快適に切りたい
  • 抑圧:コンビニ食は不健康というイメージ、朝食を抜くことへの罪悪感
  • 報酬:時間節約と健康的な食生活の両立、朝の習慣としての満足感

パターン2:健康志向の主婦/主夫

  • 行動:ナチュラルローソンで低糖質やオーガニック食品を選んで購入する
  • きっかけ:家族の健康維持への意識の高まり、食品に対する安全性の重視
  • 欲求:品質の良い健康的な食品を、手頃な価格で手軽に入手したい
  • 抑圧:健康食品は高価で専門店でしか手に入らないという思い込み
  • 報酬:家族の健康に貢献している自己肯定感、良質な食品を選ぶ知識を持つ満足感

パターン3:若年層の学生

  • 行動:友人との待ち合わせ前にローソンでスイーツや限定商品を購入する
  • きっかけ:SNSでの話題性、新商品への好奇心、友人との共有体験の創出
  • 欲求:トレンドに乗りたい、新しい体験をしたい、友人と楽しい時間を過ごしたい
  • 抑圧:使える金額の制限、流行に乗り遅れる不安
  • 報酬:新商品体験の喜び、SNSでシェアすることによる承認欲求の充足

本能的動機

ローソンが刺激する本能的動機を分析すると、以下のような本能に訴求していることがわかります:

生存本能に関連する訴求

  • 栄養補給:健康志向商品による必要な栄養素の摂取
  • 時間効率化:忙しい現代人の時間を節約し生存効率を高める
  • 安全確保:品質管理された食品による食の安全性の担保

生殖本能(社会的・家族的)に関連する訴求

  • 家族ケア:健康的な食品を家族に提供する養育本能の充足
  • 社会的承認:トレンド商品やSNS映えする商品による承認欲求の充足
  • コミュニティ参加:地域密着型店舗による地域社会への帰属感

8つの欲望への訴求 特にローソンは以下の欲望に強く訴求しています:

  1. 安らぐ:季節限定スイーツや快適な店内環境によるリラックス体験の提供
  2. 進める:健康的な選択肢を提供することで自己成長・健康増進をサポート
  3. 属する:地域密着型の店舗運営による地域コミュニティへの帰属感の醸成
  4. 高める:健康志向商品を選ぶことで「健康意識の高い消費者」という自己イメージの向上
  5. 伝える:限定商品体験をSNSで共有することによる自己表現と他者とのつながり

ローソンの商品・サービスは、特に「安らぐ」「属する」「高める」の3つの欲望に強く訴求していることがわかります。健康志向の商品ラインナップは「進める」「高める」欲望に、地域密着型の店舗運営は「属する」欲望に、そして季節限定商品やくつろげる店内環境は「安らぐ」欲望に、それぞれ訴求しています。これらが消費者の深層心理に働きかけ、ローソンを選ぶ動機となっています。

5. ブランド戦略の解剖

これまで整理した情報をもとに結局、ローソンはどういう人のどういうジョブに対して、なぜ選ばれているのか、そしてどうその価値を届けているのかをまとめていきます。

Who/What/How分析

パターン1:健康志向の消費者

Who(誰に):20〜50代の健康意識の高い都市部の消費者
Who(JOB):忙しい日常の中でも健康的な食生活を維持したい

What(便益):手軽に入手できる健康的な食品・飲料の提供
What(独自性):コンビニエンスストアでありながら、低糖質商品、トクホ、オーガニック食品など健康志向の商品ラインナップ
What(RTB):「マチの健康ステーション」というコンセプト、ナチュラルローソンの展開

How(プロダクト):低糖質・高タンパク質の弁当、サラダ、オーガニック食品など
How(コミュニケーション):健康効果や栄養価をわかりやすく訴求したパッケージデザインと店頭POPの活用
How(場所):通勤・通学路や住宅地に近い立地、特に健康意識の高い地域にはナチュラルローソンを配置
How(価格):健康食品としては手頃な価格設定(一般的なオーガニック専門店より低価格)

健康志向パターンでは、忙しい現代人が健康的な食生活を手軽に実現できるという価値提案がローソンの差別化ポイントとなっています。「マチの健康ステーション」というコンセプトのもと、コンビニエンスストアでありながら健康に配慮した商品を豊富に取り揃え、特にナチュラルローソンではオーガニック商品や特定保健用食品を重点的に展開しています。

パターン2:地域コミュニティ重視の消費者

Who(誰に):地域に根差した生活を送る30〜60代の消費者
Who(JOB):地域との繋がりを感じながら日常生活を便利に過ごしたい

What(便益):地域の特性を反映した商品・サービスと日常の利便性の提供
What(独自性):地域産品を活用した商品開発、地域イベントへの参加など地域密着型の店舗運営
What(RTB):「マチの"ほっと"ステーション」というビジョン

How(プロダクト):地域の特産品を活用した限定商品、地域のニーズに応じた品揃え
How(コミュニケーション):地域イベントへの参加、地域メディアとの連携、店舗スタッフと顧客の関係構築
How(場所):地域の生活動線上に位置する立地、地域のハブとしての機能
How(価格):地域の経済状況に応じた適正価格設定

地域コミュニティパターンでは、単なる小売店舗ではなく、地域社会の一員としてのローソンが価値を提供しています。地域の特産品を活用した商品開発や地域イベントへの参加を通じて、顧客は自分の住む地域との繋がりを感じることができます。また、店舗スタッフと顧客の関係構築を通じて、単なる買い物以上の価値を提供しています。

パターン3:利便性重視の消費者

Who(誰に):時間的制約の強い20〜40代の都市部の消費者
Who(JOB):限られた時間の中で、効率的に日常生活のニーズを満たしたい

What(便益):様々なサービスを一箇所で完結させる利便性の提供
What(独自性):商品購入だけでなく、公共料金支払い、チケット購入、コピーサービスなど多機能性
What(RTB):Loppi端末によるサービス多様化、マルチコピー機の充実

How(プロダクト):公共料金支払い、チケット販売、銀行ATM、コピーサービスなど多様なサービス
How(コミュニケーション):「あなたの日常をもっと便利に」というメッセージ訴求
How(場所):駅前や通勤路など、人の流れの多い立地
How(価格):時間節約の価値に見合った適正価格設定

利便性パターンでは、単なる物販店舗ではなく、生活のあらゆるニーズに対応する「生活インフラ」としてのローソンが価値を提供しています。買い物だけでなく、様々な手続きや支払いを一箇所で済ませられる利便性が消費者に選ばれる理由となっています。

成功要因の分解

ブランドのポジショニングと独自価値

  • マチの健康ステーション」としての健康志向の強調
  • 地域に根差した「マチの"ほっと"ステーション」というビジョン
  • 多様な店舗フォーマット(標準ローソン、ナチュラルローソン、ローソンストア100)による顧客ニーズへの対応
  • エンタメ要素(チケット販売等)による差別化

コミュニケーション戦略の特徴

  • 健康効果や栄養価を訴求した商品パッケージとPOP
  • 地域特性を反映したプロモーション活動
  • SNSを活用した若年層へのアプローチ
  • リアルとデジタルを融合したオムニチャネル戦略

価格戦略と価値提案の整合性

  • プライベートブランド「ローソンセレクト」による高品質・低価格の実現
  • 価格帯の異なる店舗フォーマット(ローソンストア100など)による多様なニーズへの対応
  • 価格以上の価値(健康、利便性、地域貢献)の訴求

カスタマージャーニー上の差別化ポイント

  • 認知段階:健康志向や地域密着のブランドイメージ
  • 検討段階:豊富な健康商品ラインナップと地域特性を反映した品揃え
  • 購入段階:Pontaカードによるポイント付与、キャッシュレス決済対応
  • 使用段階:商品の品質と多様なサービスによる顧客満足
  • 推奨段階:SNSでシェアしたくなる商品開発と体験の創出

顧客体験(CX)設計の特徴

  • 清潔で明るい店舗環境
  • 商品陳列の工夫による買い物のしやすさ
  • 季節感や地域特性を反映した商品展開
  • デジタル技術を活用した利便性向上
flowchart TD A[ローソンの価値提供プロセス] --> B[顧客ニーズの把握] B --> C[3つの主要価値の提供] C --> D[健康志向商品の提供] C --> E[地域密着型サービス] C --> F[生活インフラ機能] D --> G[健康意識の高い消費者] E --> H[地域との繋がりを求める消費者] F --> I[利便性を重視する消費者] G --> J[健康と便利さの両立] H --> K[地域コミュニティの一員としての満足] I --> L[効率的な日常生活の実現] J --> M[継続的な顧客関係構築] K --> M L --> M

見えてきた課題

外部環境からくる課題と対策

  1. デジタル化の加速
    • 課題:ECサイトやデリバリーサービスの台頭による実店舗の価値低下
    • 対策:デジタルとリアルを融合したオムニチャネル戦略の強化、モバイルアプリの機能拡充
  1. 人口減少と高齢化
    • 課題:労働力不足と市場縮小
    • 対策:自動化・省人化技術の導入、高齢者向け商品・サービスの強化、海外市場の開拓
  2. 環境・サステナビリティへの要請
    • 課題:プラスチック削減や食品ロス削減の社会的要請
    • 対策:環境配慮型包装の導入、フードロス削減のための需要予測精度向上、サステナブル商品の拡充

内部環境からくる課題と対策

  1. 店舗数の不足
    • 課題:セブン-イレブンやファミリーマートと比較した出店数の少なさ
    • 対策:フランチャイズモデルの最適化、未開拓エリアへの積極出店、既存店舗の収益性向上
  2. 商品開発のスピード
    • 課題:競合他社と比較した商品開発のスピードと供給力
    • 対策:商品開発プロセスの効率化、顧客参加型の商品開発「Blabo!システム」の活用拡大
  3. 人材確保と育成
    • 課題:優秀な店舗スタッフの確保と定着
    • 対策:働きやすい環境整備、研修プログラムの充実、キャリアパスの明確化

これらの課題に対応することで、ローソンは環境変化に柔軟に対応しながら、競争力を維持・向上させることができるでしょう。特に健康志向と地域密着型のポジショニングを強化しつつ、デジタル技術を活用した効率化と顧客体験の向上が重要な戦略となります。

6. 結論:選ばれる理由の統合的理解

総合的に見て、競合や代替手段がある中でローソンはなぜ選ばれるのでしょうか。

消費者にとっての選択理由

機能的側面

  • 健康志向商品の豊富なラインナップ(低糖質、トクホ、オーガニック商品など)
  • 24時間営業による高い利便性とアクセシビリティ
  • 日常生活のさまざまなニーズに応える多機能性(公共料金支払い、チケット、銀行ATMなど)
  • ナチュラルローソン、ローソンストア100などの多様な店舗フォーマット

感情的側面

  • 「マチの健康ステーション」としての安心感と自己肯定感
  • 地域に根差した店舗としての親近感と信頼感
  • 季節限定商品や地域限定商品による発見の喜びと新鮮さ
  • プライベートブランド商品の品質による満足感

社会的側面

  • 健康的な選択をする自分という自己イメージの強化
  • 地域コミュニティの一員としての帰属意識
  • エコフレンドリーな選択による社会貢献意識
  • トレンド商品の購入とSNS共有による社会的承認

市場構造におけるブランドの独自ポジション

ローソンは、日本のコンビニエンスストア市場において以下のような独自のポジションを確立しています:

  1. 健康志向と便利さの両立:健康志向の高い消費者に対して、「マチの健康ステーション」というコンセプトのもと、健康的な商品を手軽に入手できる価値を提供しています。特にナチュラルローソンは、この方向性を強く打ち出した独自のフォーマットとなっています。
  2. 地域密着型のコミュニティハブ:地域の特性に合わせた商品展開や地域イベントへの参加を通じて、単なる小売店舗ではなく、地域コミュニティの一部としての役割を果たしています。「マチの"ほっと"ステーション」というビジョンに基づく地域密着型の店舗運営は、ローソンの大きな差別化ポイントです。
  3. 多様な店舗フォーマットによるニーズへの対応:標準ローソン、ナチュラルローソン、ローソンストア100など、多様な店舗フォーマットを展開することで、様々な顧客層のニーズに応えています。これにより、より幅広い顧客層を獲得しています。
  4. エンタメ要素の強化:チケット販売やマルチコピー機などのサービスを充実させ、日常的な買い物以上の価値を提供しています。これにより、来店動機を多様化し、競合他社との差別化を図っています。

競合や代替手段との明確な差別化要素

  1. 健康志向商品の品揃え:セブン-イレブンやファミリーマートと比較して、健康志向の商品ラインナップが充実しており、特にナチュラルローソンでは低糖質食品やオーガニック商品など、健康に配慮した商品を重点的に取り扱っています。この健康志向の商品展開は、健康意識の高い消費者から支持を集めています。
  2. 地域特性を反映した商品開発:地域の特産品を活用した商品開発や地域限定商品の展開により、地域に根差した店舗としての存在感を示しています。これにより、地域住民との強いつながりを構築し、顧客ロイヤルティを高めています。
  3. エンタメサービスの充実:Loppi端末を活用したチケット販売や、マルチコピー機を通じたさまざまなサービス提供により、日常生活のさまざまなニーズに応える「生活インフラ」としての役割を果たしています。これにより、来店頻度の向上と顧客満足度の向上を実現しています。
  4. 多様な店舗フォーマット:ナチュラルローソン、ローソンストア100など、顧客層やニーズに応じた多様な店舗フォーマットを展開しています。これにより、より幅広い顧客層にアプローチし、様々なニーズに応えることが可能になっています。

持続的な競争優位性の源泉

ローソンの持続的な競争優位性は、以下の要素から生まれています:

  1. 独自の健康志向ポジショニング:「マチの健康ステーション」というコンセプトに基づく健康志向商品の展開は、健康意識の高まりという社会トレンドに合致しており、今後も成長が期待できる分野です。特にナチュラルローソンは、この方向性を強く打ち出した独自のフォーマットとして確立されています。
  2. 地域密着型の店舗運営とコミュニティ形成:地域特性を反映した商品開発や地域イベントへの参加を通じて、地域コミュニティとの強いつながりを構築しています。これにより、単なる便利さを超えた価値を提供し、顧客ロイヤルティを高めています。
  3. 顧客データの活用と商品開発力:Pontaカードの会員データを活用した顧客理解と、「Blabo!システム」を通じた顧客参加型の商品開発により、顧客ニーズに合った商品・サービスを提供できる体制を整えています。これにより、顧客満足度の向上と継続的な商品革新を実現しています。
  4. オムニチャネル戦略の推進:デジタル技術を活用したサービスの拡充やオンラインとオフラインの連携により、変化する顧客ニーズに対応する柔軟性を持っています。これにより、ECサイトやデリバリーサービスの台頭にも適応可能な体制を構築しています。
  5. 多様な店舗フォーマットによる市場適応力:標準ローソン、ナチュラルローソン、ローソンストア100など、多様な店舗フォーマットの展開により、異なる顧客層や地域特性に応じた柔軟な店舗展開が可能です。これにより、市場環境の変化にも適応しやすい体制を整えています。
flowchart TD A[ローソンが選ばれる主要因] --> B[健康志向] A --> C[地域密着] A --> D[利便性] A --> E[多様性] B --> F[健康商品ラインナップ] B --> G[ナチュラルローソン] C --> H[地域特性反映の商品] C --> I[地域イベント参加] D --> J[エンタメサービス] D --> K[公共サービス連携] E --> L[多様な店舗フォーマット] E --> M[多様な支払い方法]

ローソンは、健康志向と地域密着を軸にしたブランドポジショニングと、多様な店舗フォーマットによる柔軟な市場対応により、競争の激しいコンビニエンスストア市場において独自の地位を確立しています。特に健康志向商品の展開と地域コミュニティとの関係構築は、他社が短期間で模倣することが難しく、持続的な競争優位性の源泉となっています。

7. マーケターへの示唆

我々マーケターはローソンの成功例から何を学べるのでしょうか。

再現可能な成功パターン

  1. 社会トレンドを先取りした価値提案
    ローソンは健康志向の高まりという社会トレンドを早期に捉え、「マチの健康ステーション」というポジショニングを確立しました。これは、顕在化しつつあるニーズに先行して応えることの重要性を示しています。
    • 応用例:
      • 自社製品・サービスが対応可能な社会トレンドの特定と早期対応
      • トレンドを取り入れた明確なブランドコンセプトの構築
      • トレンドに合致した独自商品の開発とコミュニケーション
  2. 多様なフォーマットによる幅広いニーズへの対応
    ローソンは標準ローソン、ナチュラルローソン、ローソンストア100など、様々な店舗フォーマットを展開することで、異なる顧客層のニーズに応えています。これは、一つのブランドでも多様なニーズに対応できることを示しています。
    • 応用例:
      • 異なる顧客セグメント向けのサブブランドや製品ラインの開発
      • 価格帯や機能性の異なる製品バリエーションの展開
      • 地域特性や利用シーンに応じたカスタマイズの提供
  3. 地域特性を活かしたローカライゼーション
    ローソンは地域の特性に応じた商品開発や地域イベントへの参加により、地域住民との強いつながりを構築しています。これは、全国展開のチェーン店でも地域に根差したビジネスが可能であることを示しています。
    • 応用例:
      • 地域の特性や文化を取り入れた商品・サービスの開発
      • 地域コミュニティとの関係構築による差別化
      • 全国共通の品質基準と地域特性のバランス最適化
  4. 顧客参加型の製品開発プロセス
    ローソンの「Blabo!システム」は、顧客のアイデアを商品開発に取り入れる仕組みとして機能しています。これにより、顧客ニーズに合った商品開発と顧客エンゲージメントの向上を同時に実現しています。
    • 応用例:
      • オンラインコミュニティを活用した顧客アイデアの収集
      • プロトタイプや新商品のテストへの顧客参加の促進
      • 顧客フィードバックのシステム化と組織的な活用

業界・カテゴリーを超えて応用できる原則

  1. 「便利さ」と「専門性」の両立
    ローソンはコンビニの利便性を維持しながらも、健康食品などの専門性を持った商品展開を実現しています。これは、利便性と専門性のトレードオフを乗り越えるアプローチの可能性を示しています。
    • 業界横断的応用:
      • EC事業:配送の迅速さと商品の専門性・品質の両立
      • 金融サービス:使いやすさと専門性の高いアドバイスの提供
      • 教育サービス:アクセスの容易さと質の高い学習体験の実現
  2. データ活用とヒューマンタッチの統合
    ローソンはPontaカードの会員データ分析による精緻なマーケティングと、店舗スタッフによる地域住民との関係構築を両立しています。これは、デジタルとアナログの最適な組み合わせの重要性を示しています。
    • 業界横断的応用:
      • ヘルスケア:データ分析と人間的なケアの両立
      • 不動産:物件データとパーソナルな顧客対応の融合
      • ホスピタリティ:効率化と温かいサービスの共存
  3. 「日常」と「非日常」の融合
    ローソンは日常的な買い物体験の中に、季節限定商品や地域限定商品による「発見の喜び」という非日常的要素を取り入れています。これにより、リピート来店の促進と顧客体験の向上を実現しています。
    • 業界横断的応用:
      • サブスクリプションサービス:定期配送に「サプライズ」要素を取り入れる
      • オフィス環境:日常業務の中に創造性を刺激する要素を組み込む
      • 公共交通:通勤という日常体験に楽しさや文化的要素を追加する
  4. 顧客の「欲望」と「理性」の両方への訴求
    ローソンは、美味しさや新商品の興奮といった欲望的側面と、健康や環境配慮といった理性的側面の両方に訴求することで、消費者の深層心理を捉えています。
    • 業界横断的応用:
      • 自動車:走る楽しさと環境性能の両立
      • ファッション:トレンド性と持続可能性の共存
      • 食品:美味しさと栄養価の統合

これらの原則を自社のビジネスに応用することで、ローソンのような消費者から選ばれるブランドを構築することが可能になります。特に重要なのは、相反すると思われる価値(便利さと専門性、データ活用とヒューマンタッチなど)を創造的に融合させることで、独自の価値提案を生み出すことです。

8. まとめ

ローソンが消費者から選ばれる本質的な理由を分析した結果、以下のキーポイントが明らかになりました:

  1. 健康志向と利便性の両立:「マチの健康ステーション」というコンセプトのもと、健康志向商品を手軽に入手できる価値を提供し、健康意識の高い現代の消費者ニーズに応えています。
  2. 地域密着型の店舗運営:地域特性を反映した商品開発や地域イベントへの参加を通じて、単なる小売店舗ではなく、地域コミュニティの一員としての存在感を示しています。
  3. 多様な店舗フォーマット:標準ローソン、ナチュラルローソン、ローソンストア100など、様々な店舗フォーマットを展開することで、異なる顧客層のニーズに対応しています。
  4. エンタメ要素とサービスの充実:チケット販売やマルチコピー機などのサービスを通じて、日常的な買い物以上の価値を提供し、来店動機を多様化しています。
  5. 本能的欲望への訴求:特に「安らぐ」「属する」「高める」といった本能的欲望に訴求する商品・サービス展開により、消費者の深層心理に働きかけています。
  6. デジタルとリアルの融合:Pontaカードのデータ活用やモバイルアプリの機能強化など、デジタル技術を活用しながらも、リアル店舗ならではの価値を提供しています。
  7. 顧客参加型の商品開発:「Blabo!システム」などを通じて顧客のアイデアを商品開発に取り入れ、顧客ニーズに合った商品開発と顧客エンゲージメントの向上を実現しています。

これらの要素が組み合わさることで、ローソンは競争の激しいコンビニエンスストア市場において独自のポジションを確立し、持続的な成長を実現しています。

あなたのビジネスに応用するには、以下のアクションを検討してみましょう:

  1. 自社の顧客が抱える「ジョブ」を深く理解し、機能的、感情的、社会的側面から分析する
  2. 社会トレンドを先取りした価値提案を検討し、明確なブランドコンセプトとして打ち出す
  3. 顧客の本能的欲望(特に「安らぐ」「属する」「高める」)に訴求する製品・サービス設計を行う
  4. 顧客参加型の製品開発プロセスを取り入れ、顧客のアイデアやフィードバックを積極的に活用する
  5. 一見相反する価値(便利さと専門性、データ活用とヒューマンタッチなど)の創造的融合を目指す

ローソンの成功事例から学び、これらの原則を自社のビジネスに適用することで、消費者から選ばれるブランドの構築を目指しましょう。

出典:LAWSON 公式サイト

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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