角上魚類の3C分析とWho/What/Howの詳細整理 - 勝手にマーケティング分析
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角上魚類の3C分析とWho/What/Howの詳細整理

角上魚類 企業を勝手に分析
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角上魚類は、新潟県を中心に展開する鮮魚専門店チェーンです。本記事では、角上魚類の3C分析(顧客、競合、自社)を行い、その結果に基づいてWho/What/Howを詳細に整理します。また、角上魚類のマーケティング戦略の特徴や、他のマーケターが学べる点についても考察します。この分析を通じて、角上魚類の市場での位置づけと独自性を明らかにしていきます。

角上魚類の3C分析

角上魚類の顧客分析

角上魚類が事業を展開する鮮魚小売市場について、以下の点を分析します。

日本の鮮魚小売市場の規模と成長率

日本の水産物市場全体の規模は、2023年に3,586億8,000万ドル(約53兆円)と推定されています。2024年から2032年にかけて、年平均成長率(CAGR)10.14%で成長し、2032年には8,371億7,000万ドル(約124兆円)に達すると予測されています。

一方、国内の水産物価格は、新興国での需要増加や天候不順による供給力不足の影響を受けて、年平均成長率(CAGR)+1.6%と上昇傾向で推移してきました。

惣菜市場に関しては、2023年の市場規模が前年比104.9%の10兆9,827億円となり、3年連続で増加しています。この伸び率は過去10年で最大であり、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比較しても106.4%と成長しています。

出典:
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E6%A5%AD%E7%95%8C-%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88-101469
https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport037.pdf
https://www.suikei.co.jp/%EF%BC%92%EF%BC%93%E5%B9%B4%E6%83%A3%E8%8F%9C%E5%B8%82%E5%A0%B4%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E3%80%81%EF%BC%94%EF%BC%8E%EF%BC%99%EF%BC%85%E5%A2%97/

角上魚類の市場シェア

角上魚類の具体的な市場シェアは明確に示されていませんが、同社の業績と特徴から、鮮魚小売市場において重要なプレイヤーであることがわかります。

  • 売上高:
    • 2024年3月期の売上高は426億5,966万円
    • 2022年3月期の売上高は400億円(2018年同期比で120.5%)
    • 2021年3月期の売上高は394億4,124万円(前年同期比11.7%増)
  • 店舗展開:
    • 日本で唯一の郊外展開大型鮮魚専門店チェーン
    • 新潟や首都圏などに計22店舗を展開
  • 店舗の特徴:
    • 1店舗あたりの年間売上高は平均14億円弱で、同業2位の2.5倍
    • 他店の2〜3倍の広さの売り場を構える
    • 東京・小平店の年間売上高は29億円超
  • 集客力:
    • 駐車場待ちの車列がコストコを上回ることもある
    • 大みそかには1店舗で約11,000人が来店

これらの数字から、角上魚類は鮮魚小売市場において、特に大型店舗や郊外型店舗の分野で強い競争力を持っていることがわかります。

出典:
https://www.kakujoe.co.jp/recruit/company.php
https://president.jp/articles/-/71158?page=1
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2111/30/news047.html
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/66248
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00290/041000033/

プロダクトライフサイクル:


鮮魚小売市場は成熟期にあると考えられます。新たな消費者ニーズへの対応や、付加価値の創出が求められる段階です。

顧客層と顧客のJOB:

顧客層機能的課題情緒的課題社会的課題
地域の一般家庭新鮮で安全な魚を手頃な価格で入手したい美味しい魚料理を家族に提供したい地域の食文化を守りたい
飲食店オーナー品質の高い魚を安定的に仕入れたいメニューの差別化を図りたい地産地消を推進したい
健康志向の消費者栄養価の高い魚を日常的に摂取したい健康的な食生活を楽しみたい持続可能な食生活を実践したい

PESTLE分析:

要因機会脅威
政治的水産業振興政策による支援漁業規制の強化
経済的高付加価値商品への需要増加景気後退による消費減少
社会的健康志向の高まり若年層の魚離れ
技術的鮮度保持技術の進歩ECサービスの台頭
法的食品表示法改正による信頼性向上衛生管理基準の厳格化
環境的サステナブルな水産物への関心増海洋汚染による水産資源の減少

角上魚類の競合分析

  • 主要競合:
    • 中島水産
    • 魚力
  • 競合のSWOT分析:
競合強み(S)弱み(W)機会(O)脅威(T)
中島水産全国展開による知名度地域密着度の低さEC市場の拡大人材確保の困難
魚力高級路線のブランドイメージ価格帯の高さインバウンド需要原材料費の高騰
  1. 競合のWho/What/How:
競合Who(誰)Who(JOB)What(便益)What(独自性)How(プロダクト)How(コミュニケーション)How(場所)How(価格)
中島水産全国の一般消費者手軽に質の良い魚を購入したい全国各地の新鮮な魚全国展開による品揃えの豊富さ鮮魚、加工品テレビCM、チラシスーパー内店舗中~高価格帯
魚力高所得者層高級な魚料理を楽しみたい最高級の魚希少価値のある魚の取り扱い高級鮮魚、高級加工品高級感のある店舗デザイン百貨店、専門店高価格帯

角上魚類の自社分析

  1. SWOT分析:
強み(S)弱み(W)機会(O)脅威(T)
1. 地域密着型の経営1. 全国展開の遅れ1. 健康志向の高まり1. 若年層の魚離れ
2. 直接仕入れによる鮮度の高さ2. ECサービスの未整備2. サステナブル水産物への需要増2. 大手小売チェーンとの競争激化
3. 豊富な品揃え3. ブランド認知度の低さ3. 食の安全性への関心増大3. 原材料費の高騰
4. 熟練した目利き技術4. デジタルマーケティングの遅れ4. 地産地消の推進4. 漁獲量の減少
5. 顧客との強い信頼関係5. 後継者不足5. 調理済み食品需要の増加5. 気候変動による漁場環境の変化
  1. 戦略提案:
SO戦略WO戦略ST戦略WT戦略
1. 地域の健康志向消費者向けに栄養価の高い魚の販促強化1. ECサービスの構築による新規顧客層の開拓1. 若年層向けの魚料理教室の開催1. 業務効率化によるコスト削減
2. サステナブル水産物の取り扱い拡大2. デジタルマーケティングを活用したブランド認知度向上2. 独自の仕入れルートを活かした競争力強化2. 他業種とのコラボによる新商品開発
3. 地産地消を推進する地域イベントの主催3. 調理済み食品ラインの拡充3. 顧客との信頼関係を活かしたロイヤルティプログラムの導入3. 従業員教育の強化による技術継承
  1. 角上魚類のWho/What/How:
Who(誰)Who(JOB)What(便益)What(独自性)How(プロダクト)How(コミュニケーション)How(場所)How(価格)
地域の一般家庭新鮮で安全な魚を手頃な価格で入手したい高鮮度の魚を適正価格で提供直接仕入れによる鮮度と価格の両立鮮魚、加工品、惣菜店頭での対面販売、チラシ地域密着型店舗中価格帯
健康志向の消費者栄養価の高い魚を日常的に摂取したい栄養価の高い魚の提供と調理アドバイス熟練スタッフによる魚の目利きと調理提案高品質鮮魚、健康志向の加工品栄養情報の提供、料理教室専門店、イベント中~高価格帯
地元飲食店品質の高い魚を安定的に仕入れたい安定供給と専門知識の提供豊富な品揃えと専門的なアドバイス業務用鮮魚、特殊部位B2B営業、産地情報の提供専用卸売部門交渉価格

一言で表すと:

  • 地域の一般家庭:「新鮮な魚を求める地元の家族」
  • 健康志向の消費者:「魚の栄養価を重視するヘルスコンシャスな個人」
  • 地元飲食店:「高品質な魚を求めるプロフェッショナル」

ここがすごいよ角上魚類のマーケティング

角上魚類の最大の独自性は、地域密着型の経営と直接仕入れによる高鮮度・適正価格の実現にあります。競合や大手スーパーマーケットチェーンが存在する中で、角上魚類が顧客から選ばれる理由は以下の点にあります:

  1. 地域に根ざした信頼関係:長年の地域密着経営により、地元消費者との強い信頼関係を構築しています。これは大手チェーンには真似できない強みです。
  2. 鮮度と価格のバランス:直接仕入れにより、高鮮度の魚を適正価格で提供できています。これは価格競争に陥りがちな大手スーパーとの差別化ポイントとなっています。
  3. 専門知識と提案力:熟練スタッフによる目利きと調理提案は、魚に不慣れな若年層や健康志向の消費者にとって大きな価値となっています。
  4. 地域の食文化への貢献:地産地消の推進や地域イベントの主催など、単なる小売店以上の役割を果たしています。

マーケターがここから学べる点は以下の通りです:

  1. ニッチ市場での強みの活かし方:全国展開や低価格競争ではなく、地域特性を活かした独自のポジショニングが可能です。
  2. 顧客との関係性構築の重要性:単なる商品販売ではなく、顧客の生活に寄り添うサービス提供が長期的な支持につながります。
  3. 専門性の価値:商品知識や技術を活かしたコンサルティング的なアプローチが、付加価値の創出につながります。
  4. 社会的役割の重要性:地域社会への貢献が、ブランドの信頼性と持続可能性を高めます。
  5. 多様な顧客ニーズへの対応:一般家庭、健康志向の個人、プロの料理人など、異なるセグメントに対して適切な価値提案を行うことの重要性。

これらの点を考慮することで、他の業界でも地域に根ざした持続可能なビジネスモデルを構築することができるでしょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
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