海外で活躍する日本人選手への高揚感の正体:心理学からの考察 - 勝手にマーケティング分析
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海外で活躍する日本人選手への高揚感の正体:心理学からの考察

海外で活躍する日本人選手への高揚感の正体 応用を学ぶ
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はじめに

海外のスポーツクラブで日本人選手が活躍すると、日本国内では大きな話題となり、多くの人が歓喜します。この「高揚感」の正体は何なのでしょうか? それは単なるスポーツの勝敗を超えた、より深い心理的要因に根ざしています。本記事では、この感情がどのような心理学的要素や人間の本能に基づいているのかを探り、自己の生存と繁栄の確率を上げたいという本能との関係についても考えてみました。ぜひ消費者心理を勉強している方は参考にしていただければ幸いです。


海外で活躍する日本人選手に対する高揚感の心理学的要因

1. 社会的アイデンティティ理論(Social Identity Theory)

社会心理学者タジフェル(Henri Tajfel)による社会的アイデンティティ理論によれば、人は自分が属する集団の成功を自分の成功と感じる傾向があります。日本人選手が海外で成功すると、多くの日本人は「自分たちの代表」が活躍していると認識し、自己評価が高まるのです。

  • 内集団バイアス(Ingroup Bias):自分が属する集団をポジティブに評価し、他の集団よりも優れていると考える傾向
  • 自己拡張(Self-Enhancement):自分と関連のある他者の成功を通じて、自分の価値を高める

たとえば、大谷翔平選手がMLBでホームランを打つと、日本のファンはまるで自分のことのように誇りに思い、高揚感を覚えます。これは、日本という国の一員であることへの誇りを強化するからです。


2. ミラーリング効果(Mirroring Effect)

ミラーリングとは、人が他者の感情や行動を無意識に模倣する現象です。これは共感能力と関係が深く、脳のミラーニューロンが活性化することで起こります。

  • スポーツ観戦時のミラーリング:試合を観ながら、選手の動きや感情を自分のものとして感じる
  • 勝利時のドーパミン放出:応援している選手が活躍すると、報酬系が活性化し、快楽ホルモンであるドーパミンが分泌される

このため、サッカー日本代表がワールドカップで強豪国を破ると、多くの人が自分自身が勝利したような快感を得るのです。


3. 自己実現欲求と代理達成(Vicarious Achievement)

マズローの欲求階層説によれば、人間は「自己実現の欲求」を持っています。しかし、多くの人は実際には自分がスポーツ選手になるわけではありません。そこで、日本人選手の成功を自分の成功のように感じる「代理達成(Vicarious Achievement)」が生じます。

  • 代理的達成感:他者の成功を通じて、自分の達成欲求を満たす
  • 感情移入:応援する選手の努力や苦難を共に乗り越えているかのように感じる

たとえば、錦織圭選手がテニスの世界ランキング上位に入ったとき、日本人の多くは「日本人がここまでやれた!」と感動し、まるで自分の努力が報われたかのような満足感を得ました。


本能的な視点:生存と繁栄の確率を上げるためのメカニズム

では、なぜ人間はこのような感情を抱くのでしょうか? その根底には、生存と繁栄の確率を上げる本能があると考えられます。

1. 文化的生存戦略

人間は単独では生存が難しく、集団を形成することで進化してきました。そのため、自分の属する集団(国や民族)が成功することは、自分自身の生存確率を上げるという進化的な動機付けが働きます。

  • 「日本人」という文化的アイデンティティの強化
    • 自国の選手が活躍することで、日本というコミュニティが強くなる
    • 経済的な発展や文化的な影響力の増大が期待できる
  • 生存に有利なポジションの確保
    • 日本がスポーツで成功すると、国際社会での評価が向上し、国全体の影響力が増す
    • これにより、日本人としての誇りが高まり、社会的な結束力が強くなる

2. 集団選択(Group Selection)

進化生物学では、個人の生存だけでなく、集団の繁栄が種の存続に重要であるとされています。集団選択の観点から見ると、「優秀なメンバーがいる集団に属すること」は生存の確率を上げるため、日本人選手の活躍に対して強く反応するのは合理的な行動といえます。

  • 成功する集団に属することで恩恵を受ける
    • 文化的影響力の増大
    • 経済的・社会的なネットワークの強化
  • 「我々は強い」という集団的自己効力感
    • 同じ国の選手が世界で活躍することで、自己肯定感が高まり、個々人のモチベーションも向上する

たとえば、日本企業がスポーツ選手のスポンサーになるのは、こうした集団選択の心理を利用したマーケティング戦略ともいえます。


3. 進化心理学的な競争本能

人間は競争を通じて生存の確率を上げる生き物です。スポーツはその縮図であり、選手が国際舞台で競い合う姿を見ると、**「日本人としての優位性」**を実感し、自己の生存戦略と結びつけるのです。

  • 「勝ち組」に属したいという本能
    • 自分が強い集団に属することで、リソースの分配を有利にする
  • 社会的地位の向上
    • 日本人選手が成功することで、日本全体の評価が高まり、日本人としての誇りを持つ

このように、スポーツの勝利が単なる娯楽ではなく、本能レベルで「生存と繁栄」に結びついていることがわかります。


まとめ

日本人選手が海外で活躍する際の高揚感の正体は、単なる「嬉しさ」や「興奮」ではなく、社会的アイデンティティの強化、代理達成、本能的な生存戦略といった深い心理的要因に根ざしています。

  • 社会的アイデンティティ理論 → 自分の属する集団の成功を誇りに思う
  • ミラーリング効果 → 選手の活躍を自分の体験のように感じる
  • 代理達成 → 他者の成功を通じて自己実現を果たす
  • 生存と繁栄の確率を上げる本能 → 強い集団に属することで生存戦略を強化する

この視点から考えると、スポーツの国際大会は単なる競技の場ではなく、私たちの進化や本能に深く根ざした現象なのかもしれません。これからも、日本人選手の活躍を見守りながら、その高揚感の背後にある心理メカニズムを意識してみるのも面白いかもしれませんね。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

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