ピボットの教科書!富士フイルムに学ぶマーケティング革新 - 勝手にマーケティング分析
企業を勝手に分析

ピボットの教科書!富士フイルムに学ぶマーケティング革新

富士フイルムのピボットが 成功した理由 企業を勝手に分析
この記事は約8分で読めます。

はじめに

マーケティング担当者の皆さん、市場の変化に対応できていますか?今回は、劇的な事業転換で成功した富士フイルムの戦略を徹底深掘りしていきたいと思います。彼らの革新的なアプローチから、あなたのビジネスに活かせるヒントを見つけましょう。

富士フイルムとは

Screenshot

会社概要

富士フイルムホールディングスは、1934年に設立された日本を代表する総合メーカーです。かつては写真フイルムで世界的に知られていましたが、現在は多角的な事業展開を行っています。

事業領域と売上構成(2023年度)

Screenshot
事業領域売上高構成比具体的な事業
ヘルスケア9,751億円32.9%- メディカルシステム(6,596億円)
- バイオCDMO(2,034億円)
- LSソリューション(1,121億円)
ビジネスイノベーション11,577億円39.2%- オフィスソリューション(5,243億円)
- ビジネスソリューション(3,018億円)
- グラフィックコミュニケーション(3,316億円)
エレクトロニクス3,584億円12.0%- 半導体材料(1,997億円)
- ディスプレイ材料(783億円)
- 他エレクトロニクス材料(804億円)
イメージング4,697億円15.9%- コンシューマーイメージング(2,976億円)
- プロフェッショナルイメージング(1,721億円)

出典元:統合報告書2024

富士フイルムの創業と歴史

創業期(1934年〜)

  • 1934年1月20日、大日本セルロイド株式会社の写真フィルム部門を分離して富士写真フイルム株式会社を設立
  • 創業の目的は写真フィルムの国産化
  • 初期の資本金は300万円
  • 2月に足柄工場を操業開始し、写真フィルム、印画紙、乾板の製造を開始

事業拡大期(1938年〜1980年)

  • 1938年:小田原工場建設
  • 1958年:ブラジルに初の海外現地法人設立
  • 1962年:富士ゼロックスを設立
  • 1980〜90年代:日本・米国・欧州・中国のグローバル4極生産体制を構築

デジタル時代への転換(1990年代〜)

  • 1990年代:アナログ技術を磨きながら、デジタル時代への対応を本格化
  • 2005〜2006年:写真フィルム事業を縮小し、他分野への事業展開を推進
  • 2006年:持株会社体制に移行し、富士フイルムホールディングスに社名変更

現在の事業展開

主要な事業領域:

  • ヘルスケア(医療機器、バイオCDMO)
  • エレクトロニクス(半導体材料、ディスプレイ材料)
  • ビジネスイノベーション
  • イメージング

2023年度の連結売上高は29,609億円、連結従業員数は72,254名となっています。

富士フイルムのピボット戦略:写真フィルムから新事業への革新的な転換

ピボット以前の状況

富士フイルムは、長年写真フィルムを主力事業としていましたが、デジタルカメラの普及により、事業存続の危機に直面しました。2000年代初頭、写真フィルムの需要は急激に縮小し、企業の存続が危ぶまれていました。

ピボット戦略の本質

技術の再定義と新市場開拓

富士フイルムは、写真フィルム事業で培った技術の本質的な価値を徹底的に分析し、新たな市場への展開を図りました。具体的には以下の技術を活用しました:

  1. 抗酸化技術:写真の色鮮やかさを保つ技術
  2. コラーゲン技術:フィルム材料の半分がコラーゲンであることに着目

抗酸化技術を新事業へ応用

ヘルスケア領域

富士フイルムは、写真の色あせを防ぐ抗酸化技術を、スキンケア分野に革新的に応用しました。具体的には:

  1. 化粧品開発
    • アスタリフトシリーズで、約4000種類の抗酸化成分を活用
    • 肌のシミやシワの原因となる活性酸素のダメージを抑制
    • 紫外線による肌の酸化を防御する技術を応用

エレクトロニクス領域

抗酸化技術は、電子材料の安定性向上にも貢献しています。

コラーゲン技術を新事業へ応用

ヘルスケア領域

  1. 再生医療
    • 細胞培養に必要な細胞外マトリックス「cellnest」を開発
    • iPS細胞の培養技術に応用
    • 再生医療における移植効果を高める技術開発
  2. 化粧品・サプリメント
    • 高純度で安定したコラーゲン技術を活用
    • 「アスタリフト ドリンク ピュアコラーゲン」を開発
    • 不純物を極限まで削減した高品質なコラーゲン製品

技術的特徴

  • フィルム開発で培った20ミクロンの薄膜技術
  • 紫外線ダメージに強い高純度コラーゲン
  • 長期間安定した成分保持

富士フイルムは、写真フィルム技術を、ヘルスケアとエレクトロニクス領域に見事に転用し、新たな価値を創造しました。

驚くべき成果

わずか2年で新規事業を立ち上げ、現在では以下の成果を達成:

  • ヘルスケア事業が売上の32.9%を占める
  • 医薬品、化粧品分野で高い評価
  • 技術者の知見を最大限に活用

富士フイルムのピボット成功の本質

成功の鍵となった戦略的アプローチ

富士フイルムのピボット成功には、以下の重要な要因がありました:

1. 技術資産の徹底的な棚卸し

富士フイルムは、自社が持つ技術資産を徹底的に分析し、新たな市場への応用可能性を探りました。具体的には:

  • フィルム製造で培った技術の水平展開
  • 写真技術の新たな用途開発
  • コア技術の多角的な活用

2. 危機意識と変化への積極的な対応

経営陣の特徴的な姿勢:

  • デジタル化による市場変化を早期に、深刻に受け止める
  • 変化を恐れず、むしろ積極的に追求
  • 破壊的技術をビジネスチャンスと捉える

3. 変化する顧客ニーズの徹底的な分析

  • 抗酸化技術を化粧品の肌ケアに応用
  • コラーゲン技術を再生医療や美容製品に転用
  • 市場の潜在的なニーズを技術的知見から発見

4. 迅速かつ大胆な事業転換

具体的な転換戦略:

  • わずか2年で新規事業を立ち上げ
  • 医薬品、化粧品、医療機器など全く新しい領域へ進出
  • 40社の買収に90億ドルを投資
  • 2,500億円を投じて組織を再構築

技術マーケティングの実践

富士フイルムの成功の本質は、「技術マーケティング」にあります。これは:

  • 既存技術の新たな用途開発
  • 市場ニーズに適合する技術応用
  • 技術者の知見を最大限に活用

富士フイルムのピボットは、単なる生存戦略ではなく、「強みの技術を、変化する世の中のニーズに合致させることができた」ことが最大の要因と言えるでしょう。

富士フイルムのピボットからマーケターが学ぶ7つの本質的な戦略

1. 技術の本質的価値の理解

学びのポイント

  • 自社の技術を固定的に捉えない
  • 技術の根本的な価値を多角的に分析
  • 異なる文脈での技術応用可能性を探求

具体的な実践方法

  • 技術棚卸しワークショップの定期開催
  • クロスインダストリー(他業界連携)分析
  • 技術者と市場担当者の共同セッション

2. 市場変化への感度を高める

重要な視点

  • 変化を脅威ではなく、機会として捉える
  • 早期シグナルを読み取る感度
  • 柔軟な組織文化の醸成

実践的アプローチ

  • 定期的な市場調査(定量、定性ともに)
  • 異業種交流
  • シナリオプランニングの活用

3. 既存資産の戦略的再定義

学習すべき観点

  • 保有する経営資源の多面的活用
  • 技術の水平展開
  • 固定観念からの脱却

具体的手法

  • リソースマッピング
  • クロスドメイン戦略
  • イノベーションワークショップ

4. 顧客視点での価値再創造

マーケティング的アプローチ

  • 顧客の潜在ニーズの深い理解
  • 技術シーズと市場ニーズの融合
  • 価値提案の革新

実行ステップ

  • カスタマージャーニーマップ
  • 顧客インサイト分析
  • プロトタイピングと仮説検証

5. 迅速な意思決定と実行

組織的学び

  • 意思決定のスピード
  • 失敗を恐れない企業文化
  • 継続的な実験と学習

具体的メソッド

  • アジャイル経営
  • MVP(最小viable製品)アプローチ
  • クイックプロトタイピング

6. 技術マーケティングの実践

戦略的要点

  • 技術者と市場担当者の密接な連携
  • 技術の市場価値の多角的探索
  • イノベーション創出プロセス

実行フレームワーク

  • 技術×市場マトリクス分析
  • クロスファンクショナルチーム編成
  • オープンイノベーション

7. 長期的視点での戦略立案

戦略的思考

  • 短期利益よりも持続的成長
  • 未来予測と戦略的ポジショニング
  • 複数のシナリオへの備え

実践モデル

  • バックキャスティング
  • 長期シナリオプランニング
  • 戦略的柔軟性の確保

まとめ:本質的な学び

富士フイルムのピボットから学べる最大の教訓は、「変化を恐れず、技術の本質的価値を追求し、顧客視点で価値を再定義する」ことです。

マーケターは、単なる技術や製品の販売者ではなく、価値創造のアーキテクトであるべきなのです。

  • 技術は固定的なものではなく、新しい価値を生み出す可能性を秘めている
  • 市場の変化に柔軟に対応することが生存と成長の鍵
  • 自社の技術的強みを徹底的に理解し、新たな市場を探索することが重要
この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

tomiheyをフォローする
相談し放題バナー(800×364)
シェアする
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました