はじめに
商品やサービスを説明する際、「特徴」と「利点」という言葉が頻繁に使われます。しかし、これらの違いを正しく理解し、適切に使い分けているでしょうか?
多くの企業は、自社商品をアピールする際に「特徴」ばかりを強調しがちですが、実際に顧客が購入の決め手とするのは「利点」です。本記事では、マーケティングにおける「特徴」と「利点」の違いを明確にし、具体的な事例を交えながら効果的な伝え方を解説します。
「特徴」と「利点」の違い
項目 | 特徴(Feature) | 利点(Benefit) |
---|---|---|
主語 | 企業・商品 | 顧客 |
定義 | 商品やサービスが持つ特性 | 商品を使うことで得られる価値(便益やベネフィットと言われることも) |
視点 | 企業目線 | 顧客目線 |
マーケティングにおける役割 | 製品のスペックや機能を説明する | 顧客のニーズを満たし、購買意欲を高める |
伝え方のポイント | 客観的な事実を述べる | 顧客が得られる価値やメリットを伝える |
例 | 「このスマートフォンは5000mAhの大容量バッテリーを搭載」 | 「一日中充電を気にせず使える」 |
成功事例から学ぶ「特徴」と「利点」の使い分け
① AppleのiPhone
特徴:
- A17 Bionicチップ搭載
- 48MPカメラ
- 6.7インチのOLEDディスプレイ
利点:
- 「ゲームも動画編集もサクサク快適に!」(A17 Bionicチップ)
- 「プロレベルの写真が誰でも簡単に撮れる!」(48MPカメラ)
- 「圧倒的な没入感!美しい映像体験を楽しめる」(OLEDディスプレイ)
ポイント:
Appleは「特徴」を伝えるだけでなく、それがどのようにユーザーに価値をもたらすかを明確に表現しています。単なるスペックの羅列ではなく、消費者がどのような体験を得られるかを具体的なメッセージで伝えています。
② ダイソンの掃除機
特徴:
- サイクロン技術
- 軽量設計
- コードレス
利点:
- 「吸引力が変わらず、どんなゴミも強力に吸い取る!」(サイクロン技術)
- 「片手でラクラク掃除できる!」(軽量設計)
- 「部屋のどこでも手軽に掃除!」(コードレス)
ポイント:
技術的な説明(特徴)を顧客の課題解決(利点)につなげて訴求しています。例えば、「サイクロン技術」と言われても一般消費者には分かりにくいですが、「吸引力が落ちないからゴミをしっかり吸い取る」と伝えることで価値が明確になります。
③ スターバックスのカスタマイズサービス
特徴:
- ミルクの種類が選べる
- シロップの追加が可能
- 氷の量を調整できる
利点:
- 「自分好みの完璧な一杯が楽しめる!」(カスタマイズ可能)
- 「甘さ控えめでヘルシーな選択ができる!」(シロップ調整)
- 「氷を減らして、もっと濃厚な味わいに!」(氷の量の調整)
ポイント:
スターバックスは、単なる「機能」ではなく「顧客体験」に焦点を当てています。例えば、「ミルクの種類を選べる」と言うだけではなく、「自分のライフスタイルや健康意識に合わせたドリンクを楽しめる」と伝えることで、より顧客の共感を得ることができます。
④ テスラの電気自動車(EV)
特徴:
- 高性能バッテリー
- オートパイロット機能
- ソフトウェアアップデート可能
利点:
- 「長距離ドライブでも充電の心配なし!」(高性能バッテリー)
- 「渋滞中もストレスフリーで運転可能!」(オートパイロット機能)
- 「買った後も進化するクルマ!」(ソフトウェアアップデート可能)
ポイント:
テスラはEV市場において、「ガソリン車と比べて充電の手間がかかる」という懸念を「長距離でも充電不要」といった利点に変えています。また、オートパイロット機能も「AIによる運転補助」という特徴ではなく、「ドライバーの負担を減らす」という利点として訴求しています。
⑤ ナイキのランニングシューズ
特徴:
- 軽量素材
- クッション性の高いソール
- 通気性の高いメッシュ構造
利点:
- 「まるで履いていないような軽さ!」(軽量素材)
- 「長時間走っても足が痛くならない!」(クッション性の高いソール)
- 「汗をかいてもムレにくい!」(通気性の高いメッシュ構造)
ポイント:
ナイキはスポーツブランドとして、機能性だけでなくアスリートの「パフォーマンス向上」にフォーカスしたマーケティングを行っています。単なる「軽量素材」ではなく、「足の負担を軽減する」と伝えることで、ユーザーの共感を呼ぶメッセージになっています。
これらの成功企業の事例からも分かるように、単なるスペックや技術的な特徴を伝えるだけでは顧客には響きません。「その特徴があることで、顧客にどんなメリットがあるのか?」を明確にし、顧客目線のメッセージに変換することが重要です。
💡 チェックポイント:
- 自社の商品・サービスの「特徴」をリストアップ
- それが顧客にとってどんな「利点」になるのか考える
- 「だから何?」を繰り返し、最も伝わるメッセージを作る
この考え方をマーケティング戦略に取り入れることで、より強いブランドメッセージを作り上げることができます。
「特徴」ではなく「利点」を伝えるための3つのポイント
1. 顧客の「JOB(解決したい課題)」を意識する
顧客が商品を購入するのは、その商品の「特徴」自体が欲しいわけではなく、その特徴によって「解決できる課題」があるからです。そのため、マーケティングでは Who(誰が)→ What(何の課題を解決したいのか)→ How(どのように解決するのか) を明確に伝えることが重要です。
例:
- 「5000mAhバッテリー搭載」(特徴) → 「充電を気にせず一日中使える」(利点)
- 「防水機能付きの腕時計」(特徴) → 「雨の日でも安心して使える」(利点)
- 「AIによる自動翻訳機能」(特徴) → 「海外旅行でも言葉の壁を感じずに会話できる」(利点)
ポイント:
- 顧客が どんなシーンで商品を使うのか をイメージさせる
- 機能の説明だけでなく、その機能が どう役立つのか まで説明する
2. 「So what?(だから何?)」を繰り返して深掘りする
多くの企業が商品紹介で「特徴」を羅列してしまいがちですが、それでは顧客には響きません。「だから何?」を繰り返し問いかけることで、真の利点を見つけ出し、より説得力のあるメッセージに変えることができます。
例:
- 「この掃除機はコードレスです。」(特徴)
- だから? → 「だから、家中どこでも掃除できます。」
- それで? → 「だから、掃除がストレスなく簡単になります!」(より強い利点)
- 「このパソコンはSSDを搭載しています。」(特徴)
- だから? → 「だから、起動が速く、データの読み書きもスムーズです。」
- それで? → 「だから、仕事やゲームがストレスなく快適に楽しめます!」(より強い利点)
ポイント:
- 「だから何?」を繰り返し、本当に伝えるべき 顧客にとっての価値 を明確にする
- 「特徴」から 具体的なメリット に変換し、より強いメッセージにする
3. 感情やストーリーで伝える
人は理屈ではなく、感情で購買を決めることが多いです。単なる機能説明ではなく、その商品を使うことで どんな気持ちになれるのか をストーリー仕立てで伝えることで、より顧客の心に響くメッセージになります。
例:
- 「このマットレスは低反発素材を使用」
→ 「まるで雲の上で眠るような快適な寝心地!」 - 「このスニーカーはクッション性に優れる」
→ 「どんなに歩いても足が痛くならない!」 - 「このコーヒーは厳選された高品質な豆を使用」
→ 「朝のひとときを、香り高いコーヒーで特別な時間に!」
ポイント:
- 顧客がその商品を使ったときの感情を想像できるように表現する
- 具体的なシーンを描写し、共感を呼び起こす
まとめ
企業が伝えたいのは「特徴」ですが、顧客が知りたいのは「利点」です。マーケティング戦略では、単なる機能の説明ではなく、 「この商品を使うことで顧客の生活がどう変わるのか?」 を明確に伝えることが重要です。
チェックリスト:
✅ 自社商品の「特徴」をリストアップ
✅ その「特徴」は、顧客にとってどんな「利点」になるのか考える
✅ 「だから何?」を繰り返し、本当に伝えるべき価値を見つける
✅ 顧客がその商品を使った時の 感情や体験 を伝える
💡 「特徴」ではなく「利点」を伝えることで、売れるマーケティングを実現しましょう!