ディズニーリゾートの3C分析とWho/What/Howの整理 - 勝手にマーケティング分析
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ディズニーリゾートの3C分析とWho/What/Howの整理

ディズニーリゾート 企業を勝手に分析
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東京ディズニーリゾートは、日本を代表するテーマパークであり、ディズニーランドとディズニーシーの2つのパークを擁する複合型リゾート施設です。本記事では、東京ディズニーリゾートの3C分析(顧客、競合、自社)を行い、その戦略的ポジショニングを詳細に探ります。さらに、東京ディズニーリゾートのWho/What/How分析を通じて、その成功の秘訣を明らかにします。最後に、そのマーケティング戦略から学べる重要な洞察を提供します。

東京ディズニーリゾートの顧客分析:夢と魔法の王国を求める人々

市場規模と成長性

日本のテーマパーク市場の規模と成長率:

日本のテーマパーク市場規模は2022年に691億円となりました。2013年から2022年にかけての市場規模の推移を見ると、2019年に718億円でピークを迎えた後、新型コロナウイルスの影響で2020年に大きく落ち込みましたが、その後回復傾向にあります。

出典:https://www.statista.com/statistics/1266138/japan-market-size-amusement-leisure-park-industry/

東京ディズニーリゾートの市場シェア:

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの国内アミューズメント・レジャーパーク市場におけるシェアは約54%となっています。

出典:https://www.olc.co.jp/en/ir/olc/group04.html

プロダクトライフサイクル

東京ディズニーリゾートは成熟期にありますが、新アトラクションの導入や季節イベントの開催により、継続的な成長を維持しています。

顧客セグメント

  1. ファミリー層:子供連れの家族
  2. カップル:デートスポットとして利用
  3. 若年層(10代後半~20代):友人との思い出作り
  4. ディズニーファン:コアなファン層
  5. インバウンド観光客:海外からの来訪者

顧客のJOB(解決したい課題)

機能的課題情緒的課題社会的課題
楽しい時間を過ごしたい非日常を体験したい家族や友人との絆を深めたい
快適に過ごせる環境が欲しい夢や憧れを実現したい思い出を共有したい
多様なアトラクションを楽しみたいストレス解消したいSNSで体験を共有したい
美味しい食事やグッズを楽しみたい感動体験をしたい文化的な体験をしたい

東京ディズニーリゾート市場のPLESTE分析

要因機会脅威
政治的(Political)・観光立国政策によるインバウンド増加・国際情勢の不安定化による観光客減少
法的(Legal)・エンターテイメント産業支援策・労働法改正による人件費増加
経済的(Economic)・景気回復による消費増加・景気後退によるレジャー支出減少
社会的(Social)・体験重視の消費トレンド・少子高齢化による顧客層の変化
技術的(Technological)・VR/AR技術の発展・オンラインエンターテイメントの台頭
環境的(Environmental)・環境配慮型施設への需要増加・気候変動による屋外施設の運営リスク

東京ディズニーリゾートの競合分析:日本のテーマパーク市場

主要競合(日本国内)

  1. ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)
  2. ナガシマスパーランド
  3. 富士急ハイランド

競合のWho/What/How分析

競合Who(誰)What(便益)How(戦略)
USJ幅広い年齢層、特に若年層人気キャラクターとの体験、スリル最新技術の導入、季節イベント
ナガシマスパーランド家族連れ、若者グループ多様なアトラクション、温泉施設複合型レジャー施設、地域密着
富士急ハイランドスリル好きな若者絶叫系アトラクション世界記録級のアトラクション、富士山の景観

東京ディズニーリゾートの自社分析:SWOT分析

強み(Strengths)

  1. ブランド力:世界的に認知されたディズニーブランド
  2. 顧客ロイヤリティ:リピーター率80%以上(2019年度)
  3. 高品質なサービス:キャストによるおもてなし
  4. 多様なアトラクション:2つのパークで200以上
  5. 季節イベントの充実:年間を通じた集客力
  6. 立地:首都圏からのアクセスの良さ
  7. 関連ビジネスの展開:ホテル、商品販売など

弱み(Weaknesses)

  1. 高い運営コスト:施設維持、人件費など
  2. 混雑と待ち時間:ピーク時の顧客満足度低下リスク
  3. 天候依存:屋外施設が多いため
  4. 価格設定:比較的高価な入場料
  5. 新規アトラクション導入の制約:既存スペースの限界
  6. インバウンド対応の遅れ:多言語対応など
  7. デジタル戦略の遅れ:オンラインサービスの充実度

機会(Opportunities)

  1. インバウンド需要の回復:観光立国政策の推進
  2. デジタル技術の進化:VR/AR技術の活用可能性
  3. SDGsへの関心高まり:環境配慮型施設への需要
  4. 新しい生活様式:屋外レジャーへの注目
  5. ライセンス拡大:新規キャラクター・IPの獲得
  6. eコマースの成長:オンライン販売の拡大
  7. 地域連携:周辺地域との協力による経済効果

脅威(Threats)

  1. 競合の台頭:USJなど他テーマパークの成長
  2. 少子高齢化:主要顧客層の減少
  3. 経済不況:レジャー支出の減少リスク
  4. 自然災害:地震、台風などのリスク
  5. 感染症:COVID-19のような健康リスク
  6. オンラインエンターテイメントの台頭:家庭内レジャーの増加
  7. 労働力不足:サービス品質維持の課題

戦略提案

SO戦略(強み×機会)

  1. インバウンド向けVIPツアーの拡充:ブランド力を活かした高付加価値サービス
  2. AR技術を活用した新アトラクション開発:技術革新と多様なアトラクションの融合
  3. SDGs対応型イベントの開催:環境配慮と季節イベントのコラボレーション

WO戦略(弱み×機会)

  1. デジタルチケッティングシステムの導入:混雑緩和とデジタル戦略の強化
  2. 多言語対応アプリの開発:インバウンド対応とデジタル化の推進
  3. オフピーク時の特別イベント開催:稼働率向上と新規顧客獲得

ST戦略(強み×脅威)

  1. ディズニー独自のオンラインコンテンツ展開:ブランド力を活かした新規事業
  2. 災害対策強化と安全性のPR:高品質サービスの一環としての安全確保
  3. シニア向けプログラムの拡充:顧客ロイヤリティを活かした新規セグメント開拓

WT戦略(弱み×脅威)

  1. 柔軟な価格戦略の導入:経済状況に応じた料金設定
  2. 屋内アトラクションの増設:天候リスクの軽減
  3. 地域連携による人材育成プログラム:労働力確保と地域貢献の両立

東京ディズニーリゾートのWho/What/How分析

パターン1:ファミリー層向け

項目内容
Who(誰)3-12歳の子供を持つ家族
Who(JOB)家族の思い出作り、子供の夢を叶える
What(便益)世代を超えた楽しみ、安全で快適な環境
What(独自性)ディズニーキャラクターとの触れ合い、ストーリー性のある体験
How(プロダクト)ファミリー向けアトラクション、キャラクターグリーティング
How(コミュニケーション)テレビCM、ファミリー向け雑誌広告
How(場所)東京ディズニーランド中心
How(価格)ファミリーチケット割引、年間パスポート

一言で言うと:「家族の絆を深める魔法の王国」

パターン2:カップル・若年層向け

項目内容
Who(誰)18-30歳のカップル、友人グループ
Who(JOB)特別な思い出作り、非日常体験
What(便益)ロマンチックな雰囲気、インスタ映えスポット
What(独自性)大人向けの洗練された空間、季節限定イベント
How(プロダクト)ナイトショー、シーズナルイベント
How(コミュニケーション)SNS広告、インフルエンサーマーケティング
How(場所)東京ディズニーシー中心
How(価格)ナイトパスポート、カップル向けプラン

一言で言うと:「大人のための夢と冒険の世界」

パターン3:ディズニーファン向け

項目内容
Who(誰)コアなディズニーファン、コレクター
Who(JOB)ディズニーの世界観への没入、限定アイテム収集
What(便益)深いストーリー体験、限定グッズ
What(独自性)バックステージツアー、メンバーシップ特典
How(プロダクト)ファン向け限定イベント、コレクターズアイテム
How(コミュニケーション)公式ファンクラブ、専門誌タイアップ
How(場所)パーク全体、専用ショップ
How(価格)プレミアム年間パスポート、限定商品

一言で言うと:「ディズニーマニアの聖地」

ここがすごいよ東京ディズニーリゾートのマーケティング

東京ディズニーリゾートは、他のテーマパークや娯楽施設がある中で、独自の「夢と魔法の王国」というコンセプトを確立し、圧倒的な顧客ロイヤリティを獲得しています。その成功の理由は以下の通りです:

  1. 総合的な体験価値の提供:アトラクションだけでなく、ショー、パレード、食事、ショッピングなど、全ての要素が一つのストーリーラインで統一されています。
  2. 細部へのこだわり:「ミッキーの形をした植え込み」など、パーク内の細部まで徹底的にテーマ性を追求しています。
  3. 常に進化し続ける姿勢:新アトラクションの導入や季節イベントの開催など、リピーターを飽きさせない工夫を続けています。
  4. 卓越したホスピタリティ:キャストと呼ばれるスタッフの徹底したサービス教育により、高品質な顧客体験を提供しています。
  5. 感情に訴えかけるマーケティング:「夢」「魔法」「ファンタジー」といった言葉を効果的に使用し、顧客の感情に直接訴えかけています。

マーケターがここから学べる重要な洞察:

  1. 一貫したブランド体験の重要性:全てのタッチポイントでブランドの世界観を一貫して提供することの価値。
  2. 顧客セグメントに応じた細やかな戦略:ファミリー、カップル、ファンなど、各セグメントに合わせた細やかな戦略立案の必要性。
  3. 継続的なイノベーションの重要性:顧客を飽きさせない新しい体験の提供と、伝統的な価値の両立。
  4. 感情的なつながりの構築:単なる製品やサービスの提供を超えて、顧客の感情に訴えかけるストーリーテリングの重要性。
  5. 従業員教育の徹底:顧客体験の質を高める上で、従業員のトレーニングと企業文化の浸透が果たす重要な役割。
  6. データ駆動型の意思決定:来場者数や人気アトラクションのデータを分析し、継続的な改善に活かす姿勢。
  7. 季節性を活かしたマーケティング:季節ごとのイベントやプロモーションにより、年間を通じた集客力の維持。
  8. クロスセル・アップセルの戦略:パークチケットだけでなく、ホテル、グッズ、飲食など、総合的な収益構造の構築。
  9. コミュニティ形成:ファンクラブやSNSを通じた顧客コミュニティの形成と、ブランドアンバサダーの育成。
  10. 危機管理とレジリエンス:自然災害や感染症などの危機に対する迅速な対応と、安全性の確保による信頼の維持。

東京ディズニーリゾートの成功は、単なる娯楽施設を超えた「体験」を提供し、顧客の心に深く刻まれる思い出を創出する能力にあります。これは、製品やサービスの機能的価値だけでなく、感情的価値を重視する現代のマーケティングトレンドを体現しています。

マーケターは、自社の製品やサービスがどのような「体験」を提供できるのか、そしてその体験がどのように顧客の人生や感情に影響を与えるのかを常に考える必要があります。また、ターゲット顧客セグメントごとに異なるニーズや欲求を深く理解し、それぞれに合わせたカスタマイズされた体験を設計することが重要です。

さらに、東京ディズニーリゾートの例から学べるのは、ブランドの核となる価値観や世界観を守りつつ、時代の変化に合わせて進化し続けることの重要性です。伝統と革新のバランスを取りながら、常に顧客に新鮮な驚きと感動を提供し続けることが、長期的な成功につながります。

最後に、東京ディズニーリゾートの成功は、単一の戦略や施策によるものではなく、マーケティング、オペレーション、人材育成、テクノロジー活用など、様々な要素が有機的に結合した結果であることを認識することが重要です。マーケターは、自社の強みを最大限に活かしつつ、弱みを補完し、外部環境の変化に適応する総合的な戦略を立案・実行することが求められます。

このようなアプローチを自社のコンテキストに適用することで、顧客に深い感動と価値を提供し、長期的な成功を実現することができるでしょう。東京ディズニーリゾートの事例は、エンターテイメント業界に限らず、あらゆる業種のマーケターにとって貴重な学びを提供しています。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

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