なぜあのブランドは指名検索されるのか?指名検索までの顧客ジャーニーを徹底解剖 - 勝手にマーケティング分析
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なぜあのブランドは指名検索されるのか?指名検索までの顧客ジャーニーを徹底解剖

指名検索 顧客ジャーニー マーケの応用を学ぶ
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はじめに

マーケティング担当者として、こんな課題を感じたことはありませんか。広告を出せば一時的にアクセスは増えるものの、広告を止めた途端に流入が激減する。競合との比較検索ばかりで、自社ブランド単体での検索がほとんど増えない。つまり、顧客の頭の中に自社ブランドが残っていない状態です。

指名検索とは、ユーザーが企業名やブランド名、サービス名など特定の名称で検索する行動を指します。この指名検索こそが、ブランドが顧客の記憶に刻まれている証であり、安定した集客とコンバージョン率の向上につながる最も重要な指標です。

しかし、顧客が「なんとなく知っている」から「指名して検索する」に至るまでには、複雑な心理変容プロセスがあります。本記事では、BtoCとBtoBそれぞれの顧客が指名検索に至るまでの時系列の心理と行動を、具体的なブランド事例を交えて徹底解説します。さらに、指名検索数を増やすための施策を優先度付きで提示するため、明日からのマーケティング活動に即座に活用できます。


指名検索とは何か|一般検索との決定的な違い

指名検索を理解するには、まず一般検索との違いを明確にする必要があります。

一般検索は「名刺管理ツール」「プロジェクト管理ソフト」のように、特定のブランドを含まないキーワードでの検索です。ユーザーは複数の選択肢を比較検討している段階にあり、まだどのブランドにするか決めていません。このフェーズでは競合との激しい競争が発生し、コンバージョン率も低くなりがちです。

一方、指名検索は「Sansan 料金」「HubSpot 事例」のように、すでにブランド名を知っており、そのブランドについて詳しく知りたいという明確な意図を持っています。この段階のユーザーは検討がかなり進んでおり、購入や問い合わせに至る確率が格段に高くなります。実際、指名検索経由のユーザーはクリック率が70〜90%と非常に高く、コンバージョン率も一般検索の3〜5倍になることが一般的です。

さらに重要なのは、指名検索数の増加はSEO評価にも好影響を与える点です。Googleは指名検索数やサイテーション(他サイトからの言及)を、そのブランドの権威性や信頼性を測る重要な指標として活用しています。つまり、指名検索を増やすことは、単なる直接的な集客増加だけでなく、検索エンジン全体での評価向上にもつながるのです。

指名検索が重要な3つの理由

理由内容ビジネスへの影響
高いコンバージョン率すでにブランドを認知しており信頼がある状態での検索のため、購入や問い合わせに至りやすいCVRが一般検索の3〜5倍になり、マーケティングROIが向上する
安定した流入の確保広告予算に左右されない自然流入が増え、中長期的な集客基盤が構築できる広告コストの削減と安定した収益構造の実現が可能になる
ブランド資産の蓄積指名検索数の増加はブランド認知度とE-E-A-T評価の向上を示し、検索エンジン全体での評価が高まるSEO全体のパフォーマンス向上と競合との差別化が実現する

顧客が指名検索に至るまでの5つの心理段階

顧客がブランドを指名検索するまでには、認知から信頼形成、そして想起に至る一連の心理変容が必要です。この心理変容は以下の5段階で整理できます。

段階1: 認知前(Pre-Awareness)|潜在課題の存在

この段階では、顧客はまだ自分が抱えている課題を明確に認識していません。「なんとなく不便」「もっと効率的にできるはず」といった漠然とした不満を感じている状態です。この段階でブランドが接触する機会はほとんどありませんが、潜在課題を顕在化させるコンテンツや情報発信が、後の認知につながる種まきとなります。

顧客の心理状態は「現状に対する軽い不満はあるが、解決策を探すほど深刻ではない」というものです。BtoCであれば「毎日の服選びが面倒」「もっと快適な下着がほしい」といった日常の小さな不満、BtoBであれば「名刺管理が煩雑」「営業の進捗が見えづらい」といった業務上の非効率性などが該当します。

段階2: 初期認知(Initial Awareness)|ブランドとの最初の接触

何らかのきっかけでブランドと初めて接触する段階です。テレビCM、SNS広告、友人からの紹介、記事やニュース、店頭ディスプレイなど、接触経路はさまざまです。この時点では「そういうブランドがあるんだ」という程度の認識で、まだ深い関心は持っていません。

重要なのは、この初回接触で強烈なインパクトを残すか、繰り返し接触する機会を設けることです。心理学の単純接触効果により、繰り返し見聞きするブランドに対しては親近感や好意が生まれやすくなります。ユニクロが毎週新聞折込チラシを配布しているのも、まさにこの効果を狙ったものです。

段階3: 興味関心(Interest & Consideration)|情報収集と比較検討

ブランドを認知し、自分のニーズと関連がありそうだと感じると、顧客は能動的に情報を収集し始めます。この段階では「ユニクロ ヒートテック 口コミ」「HubSpot 料金」といった、ブランド名と詳細情報を組み合わせた検索が発生します。これも広義の指名検索ですが、まだ他社との比較検討中の状態です。

顧客はブランドの公式サイト、口コミサイト、レビュー記事、SNSでの評判などを横断的にチェックします。BtoBの場合は、事例記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなどで専門性や実績を確認する傾向が強くなります。この段階で提供する情報の質と量が、次の段階への移行を大きく左右します。

段階4: 信頼形成(Trust Building)|プレファレンスの確立

情報収集を通じて、顧客の中でブランドに対する信頼と好意が形成される段階です。マーケティング用語では「プレファレンス(ブランド選好度)」と呼ばれ、「このカテゴリーならこのブランド」という優先的な位置づけが確立されます。

この信頼形成には、機能的価値だけでなく情緒的価値も重要な役割を果たします。ユニクロであれば「機能性が高く、長く使える」という機能的価値に加えて、「子供の学校行事に着ていっても恥ずかしくない清潔感」という情緒的価値が組み合わさることで、強い信頼関係が生まれます。

段階5: 想起と指名検索(Top of Mind Awareness)|ブランド名での直接検索

最終段階では、顧客が特定のニーズや状況に直面したときに、真っ先にそのブランドを思い浮かべる状態になります。これを「第一想起(トップ・オブ・マインド)」と呼びます。「寒くなってきたからヒートテックを買おう」と考えたときに、他の防寒下着ブランドではなくユニクロを検索するのは、この段階に到達している証拠です。

この段階に達すると、顧客は「ユニクロ」「ユニクロ 店舗」「ユニクロ オンラインストア」といった純粋な指名検索を行います。比較検討をスキップし、そのブランドありきで購入を進めるため、コンバージョン率が極めて高くなります。


BtoC事例: ユニクロ|指名検索に至る顧客ジャーニー

ペルソナ設定

畠山さん(43歳女性、東京都在住)は専業主婦で既婚、世帯年収400〜600万円の方です。動きやすい服を重視していますが、あまりにも動きやすさを重視したあまり、おしゃれのかけらもないラフすぎる服装になってしまうことに悩んでいました。家族でキャンプに行ってバーベキューを楽しむなど、活動的でありながらもおしゃれでありたいと考えています。

以前、子供に「お母さん今日はおじさんみたいだね」と笑われたことがショックで、このままではいけないと感じていました。しかし、動きやすい服はすぐに傷んだり変調したりして、頻繁な買い替えで余計なお金がかかってしまう懸念もありました。

段階別の心理と行動プロセス

段階1: 認知前 - 潜在的な不満の蓄積

畠山さんは日常的に「きちんとした清潔感のある服を着て、おしゃれな人でありたい」と思いつつも、「動きやすい服でもすぐ傷むと買い替えコストがかかる」というジレンマを抱えていました。この段階では、ユニクロという選択肢は視野に入っていません。

心理状態: 現状の服に対する漠然とした不満。でも具体的な解決策を探すほどの緊急性は感じていない。

行動: 近所のスーパーやショッピングモールで、なんとなく服売り場を眺める。価格と見た目のバランスで選ぶが、満足度は低い。

段階2: 初期認知 - メールマガジンとの出会い

寒い時期に中に着る温かい下着を探していた畠山さんは、何かのきっかけで登録したメールマガジンでユニクロのヒートテックのセール情報を目にしました。「温かい下着」という明確なニーズと、「セールで半額」というお得感が、最初の関心を引きました。

心理状態: 「温かい下着が欲しい」という明確なニーズに対して、「ヒートテック」という具体的な解決策と「半額」という魅力的なオファーを発見。これは試してみる価値がありそう。

行動: メールマガジンのリンクからユニクロのECサイトにアクセス。ヒートテックの商品ページで、機能性や価格を確認。

タッチポイント: メールマガジン、ユニクロECサイト

段階3: 興味関心 - 情報収集と初回購入

ECサイトで商品詳細を確認し、「薄いのに温かい」という機能性と、セール価格でのお得感に魅力を感じた畠山さんは、まず試しに購入してみることにしました。ユニクロのO2O施策により、ECサイトで注文して実店舗やコンビニで受け取れることも、初回購入のハードルを下げました。

心理状態: 「これなら失敗しても痛手は少ない」「店舗受け取りなら送料もかからないし、実物を見てから決められる」という安心感。

行動: ECサイトでヒートテックを注文し、近くの店舗で受け取り。実際に着用してみる。

タッチポイント: ユニクロECサイト、実店舗(受け取り)

段階4: 信頼形成 - 製品体験とブランド価値の理解

実際にヒートテックを着用してみると、期待以上の暖かさと着心地に驚きました。さらに、何度洗濯を繰り返しても変質せず長く使えることを実感しました。「きちんとした清潔感のある人に見える」「子供の学校行事に出ても恥ずかしくない」という、当初求めていた情緒的価値も満たされました。

この体験を通じて、畠山さんの中で「ユニクロ = 機能性が高く、長持ちして、清潔感のある服」というブランド認識が確立されました。ヒートテック以外の商品にも関心が広がり、アプリをダウンロードしてセール情報をチェックするようになりました。

心理状態: 「ユニクロの服は期待以上だった」「これなら他のアイテムも試してみたい」「セール情報を逃したくない」

行動: ユニクロアプリをダウンロード。定期的にセール情報をチェック。実店舗にも足を運び、他のアイテムを試着・購入。

タッチポイント: ユニクロアプリ、実店舗、メールマガジン

段階5: 想起と指名検索 - ブランドの第一想起

今では畠山さんは、服が必要になったときに真っ先にユニクロを思い浮かべるようになりました。季節の変わり目、家族でのお出かけ前、子供の学校行事の前など、服を買うタイミングになると「ユニクロで探そう」と自然に考えます。

検索行動も変化しました。以前は「動きやすい服」「主婦 ファッション」といった一般的なキーワードで検索していましたが、今では「ユニクロ 新作」「ユニクロ セール いつ」「ユニクロ 店舗 営業時間」といった、ユニクロありきの指名検索を行います。

心理状態: 「服を買うならユニクロ」という確固たる位置づけ。他のブランドを検討する必要性を感じない。

行動: スマートフォンで「ユニクロ」と検索。最新のセール情報や新商品をチェック。ECサイトで購入するか、店舗に足を運ぶ。

タッチポイント: Google検索、ユニクロ公式サイト、ユニクロアプリ、実店舗

ユニクロが実践する心理変容の仕掛け

施策心理段階具体的内容効果
毎週の新聞折込チラシ初期認知大量の商品と価格を掲載し、「掘り出し物を探す楽しみ」を提供単純接触効果によるブランド親近感の醸成と、定期的な来店動機の創出
ヒートテック・エアリズムなどの機能性商品興味関心・信頼形成明確な価値提案(薄くて暖かい、涼しくて快適)で、季節ごとに繰り返し購入されるカテゴリーエントリーポイント(防寒下着=ヒートテック)の確立
O2O施策(EC注文・店舗受取)興味関心オンラインで注文し、店舗で受け取れる仕組みで、初回購入のハードルを下げる購入の利便性向上と、実店舗への誘導による追加購入機会の創出
アプリとメールマガジン信頼形成・想起定期的なセール情報配信で、ブランドとの接触頻度を高めるトップ・オブ・マインドの維持と、購買機会の最大化
Life Wear(究極の普段着)というコンセプト全段階「流行に左右されず、誰でも長く着られる服」という明確なポジショニングブランド独自性の確立と、幅広いターゲット層へのリーチ

ユニクロの成功の鍵は、「ユニクロがいい」ではなく「ユニクロでいい」と思わせる戦略にあります。これは決して妥協ではなく、「ベーシックな普段着 = ユニクロ」という強固なカテゴリー想起を確立することで、比較検討をスキップして直接選ばれる存在になっているのです。


BtoB事例: HubSpot|指名検索に至る顧客ジャーニー

ペルソナ設定

田中さん(35歳男性、東京都在住)は、従業員50名規模のBtoB SaaS企業でマーケティング担当を務めています。マーケティング部門は田中さんを含めて3名の小規模チームで、営業部門との連携強化と、リード獲得の効率化が課題となっています。

これまではExcelとスプレッドシートでリード管理を行い、メール配信は別のツール、顧客情報は営業がそれぞれのやり方で管理している状態でした。マーケティング施策の効果測定も難しく、経営層からは「マーケティングのROIを可視化してほしい」という要望が出ています。

段階別の心理と行動プロセス

段階1: 認知前 - 業務課題の蓄積

田中さんは日々の業務の中で、複数のツールを使い分ける煩雑さと、データの分断による非効率性を感じていました。営業から「マーケが渡したリードの質が悪い」と言われることもあり、マーケティングと営業の連携に課題を感じています。

心理状態: 「このやり方は非効率だけど、どうすれば改善できるか分からない」「経営層にマーケティングの成果を示せていない」という焦りと、「でも大きくシステムを変えるのは大変そう」という躊躇。

行動: 日々のルーティン業務をこなしながら、なんとなく現状のやり方に疑問を持っている。具体的な改善策は探していない。

段階2: 初期認知 - Webメディアでの記事露出

ある日、田中さんは「BtoBマーケティング 効率化」という一般キーワードで検索し、マーケティング関連のWebメディア記事を読んでいたところ、「マーケティングオートメーション(MA)」という概念を知りました。その記事の中で、HubSpotが事例として紹介されており、「リード管理から営業連携まで一元化できる」という価値提案に興味を持ちました。

心理状態: 「MAというものがあるのか」「HubSpotというツールがあるらしい」「これなら今の課題が解決できるかもしれない」

行動: HubSpotについてもっと知りたくなり、「HubSpot」と検索。公式サイトにアクセスし、製品概要を確認。

タッチポイント: マーケティングWebメディア、Google検索、HubSpot公式サイト

段階3: 興味関心 - 情報収集と比較検討

HubSpotの公式サイトで、CRM、マーケティングハブ、セールスハブなど、統合的なプラットフォームであることを知った田中さんは、さらに詳しい情報を求めました。「HubSpot 料金」「HubSpot 事例」「HubSpot vs Salesforce」といった検索を行い、価格体系、導入事例、競合との比較情報を集めました。

また、HubSpotが提供している無料のeBookやウェビナーにも参加しました。特に「BtoBマーケティングの基礎知識」というeBookは、MAツールの選び方だけでなく、マーケティング戦略全体を学べる内容で、HubSpotの専門性の高さを実感しました。

心理状態: 「HubSpotは単なるツールベンダーではなく、マーケティング知識も提供してくれる」「無料版もあるから、まず試してみる価値がありそう」「でも他のツールとも比較したい」

行動: HubSpotの無料CRMに登録して実際に触ってみる。競合のSalesforce、Marketo、Pardotなどの情報も収集。社内で上司に相談し、「MAツール導入」の検討を正式に始める。

タッチポイント: Google検索、HubSpot公式サイト、eBook、ウェビナー、無料CRM、比較サイト

段階4: 信頼形成 - 専門性と実績の確認

無料版を実際に使ってみたことで、UIの使いやすさと機能の充実度を体感した田中さんは、HubSpotへの信頼を深めました。さらに、同じ業界の企業がHubSpotを導入して成功している事例を読み、「自社でも同じような成果が出せるかもしれない」と確信を持ち始めました。

社内で導入を提案するため、HubSpotの営業担当者にデモを依頼しました。デモでは、自社の課題に合わせたカスタマイズ方法や、導入後のサポート体制について詳しく説明を受け、「このツールなら営業部門も納得して使ってくれそう」と感じました。

心理状態: 「HubSpotなら間違いない」「営業部門との連携も改善できそう」「経営層にもROIを示しやすい」

行動: 社内で導入稟議を回す。経営層向けに、HubSpot導入による期待効果と投資回収計画を資料にまとめる。HubSpotの営業担当者と、具体的な導入プランと見積もりを詰める。

タッチポイント: HubSpot営業担当者、導入事例、無料CRM、社内稟議資料

段階5: 想起と指名検索 - HubSpotありきの情報収集

導入が決定し、実際にHubSpotを使い始めた田中さんは、日々の業務の中でHubSpotに関する情報を継続的に検索するようになりました。「HubSpot ワークフロー 作り方」「HubSpot リードスコアリング 設定」「HubSpot 新機能」といった、より具体的で実践的な指名検索を行います。

また、社内で「マーケティングツールといえばHubSpot」という認識が定着し、新しいメンバーが入ってきたときにも「HubSpotの使い方を教えてください」と自然に尋ねられるようになりました。田中さん自身も、他の企業のマーケターと情報交換する際に「うちはHubSpot使ってるんですが」と自然にブランド名を出すようになっています。

心理状態: 「HubSpotは業務に不可欠なツール」「HubSpotをもっと使いこなしたい」「HubSpot関連の最新情報を常にキャッチアップしたい」

行動: 定期的に「HubSpot」と検索して、公式ブログやヘルプセンターで新機能や活用Tipsをチェック。HubSpotのコミュニティやイベントにも参加し、他のユーザーと交流。

タッチポイント: Google検索、HubSpot公式ブログ、HubSpotアカデミー、HubSpotコミュニティ、ユーザーイベント

HubSpotが実践する心理変容の仕掛け

施策心理段階具体的内容効果
教育的コンテンツ(eBook、ウェビナー、ブログ)初期認知・興味関心MAツールの選び方だけでなく、マーケティング戦略全体を学べる高品質なコンテンツを無料提供専門性の訴求と、潜在顧客の育成。HubSpot = マーケティング教育のリーダーという認識の確立
無料CRMの提供興味関心・信頼形成基本機能を無料で提供し、実際に使って価値を体感してもらう導入ハードルの低減と、製品への信頼構築。有料版へのアップグレード率向上
豊富な導入事例とケーススタディ信頼形成業界別、規模別、課題別の詳細な事例を公開し、「自社でも成果が出せる」という確信を提供購買意思決定の後押しと、社内稟議の材料提供
HubSpotアカデミー全段階無料のオンライン学習プラットフォームで、認定資格も取得可能ユーザーのスキルアップ支援と、ブランドロイヤルティの向上。HubSpot認定資格が業界標準に
コミュニティとイベント想起・継続利用ユーザー同士がつながり、知見を共有できる場を提供ブランドコミュニティの形成と、長期的な顧客関係の構築

HubSpotの成功の鍵は、「製品を売る」のではなく「知識を提供する」というインバウンドマーケティングの思想にあります。顧客が必要とする情報を先に提供することで信頼を構築し、自然とHubSpotが選ばれる状況を作り出しています。


BtoCとBtoBの指名検索プロセスの違い

両事例から分かる通り、BtoCとBtoBでは指名検索に至るプロセスに明確な違いがあります。

意思決定者の数と関与度

BtoCでは基本的に個人が単独で意思決定します。畠山さんの例では、本人が「ヒートテックを買おう」と思えば、そのまま購入に進めます。検討期間も比較的短く、衝動買いや感情的な判断も起こりやすい環境です。

一方BtoBでは、複数の意思決定者が関与します。田中さんの例では、マーケティング担当の田中さん、上司、経営層、そして実際に使う営業部門など、複数のステークホルダーを説得する必要がありました。それぞれが異なる視点で評価するため(田中さんは機能性、上司は費用対効果、経営層はROI、営業は使いやすさ)、各層に響く情報提供が必要です。

検討期間の長さ

BtoCでは、認知から購入までが数日から数週間というケースも多くあります。特にユニクロのような日用品は、「寒いからヒートテックを買おう」と思い立ってから購入までが非常に短時間です。

BtoBでは、数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。田中さんの例でも、HubSpotを知ってから実際に導入するまでに3〜6ヶ月程度かかっています。その間、情報収集、無料版の試用、競合比較、デモ、社内稟議など、多くのステップを踏みます。

情報源と信頼構築の方法

BtoCでは、広告、SNS、口コミ、店頭体験など、感情に訴えかける情報源が重要です。ユニクロのテレビCMが着用シーンを美しく描くのは、視聴者に「自分もこんな風になりたい」という感情を喚起するためです。

BtoBでは、事例、ホワイトペーパー、ウェビナー、専門家の推奨など、論理的で証拠に基づいた情報源が重視されます。HubSpotが豊富な教育コンテンツを提供するのは、専門性を証明し、論理的な意思決定を支援するためです。

購買後の関係性

BtoCでは、購入後はリピート購入やアップセルの機会はあるものの、ブランドとの継続的な関係は必ずしも強くありません。ユニクロの場合、購入後にアプリでつながることで継続的な関係を維持していますが、それでも個々の顧客との関係は比較的緩やかです。

BtoBでは、購入後の関係が非常に重要です。HubSpotのようなSaaSツールは、継続的に使用してもらい、アップグレードや追加機能の購入を促す必要があります。カスタマーサクセスチームが伴走し、顧客の成功を支援することで、長期的な関係を構築します。

比較項目BtoC(ユニクロの例)BtoB(HubSpotの例)
意思決定者個人(畠山さん本人)複数(田中さん、上司、経営層、営業部門)
検討期間数日〜数週間数ヶ月〜1年以上
主な情報源広告、SNS、口コミ、店頭体験事例、ホワイトペーパー、ウェビナー、デモ
意思決定の軸感情+機能(温かい、清潔感がある)論理+ROI(業務効率化、売上向上、費用対効果)
購入単価低〜中(数千円〜数万円)高(数十万円〜数百万円)
購買後の関係リピート購入、緩やかなつながり継続利用、密接なサポート関係
指名検索の内容「ユニクロ」「ユニクロ セール」「HubSpot 使い方」「HubSpot 設定」

これらの違いを理解し、自社のビジネスモデルに合った心理変容プロセスを設計することが、指名検索を増やすための第一歩です。


指名検索を増やすための施策|優先度別15選

ここからは、指名検索数を増やすための具体的な施策を、優先度別に紹介します。優先度は「効果の大きさ」「実施の容易さ」「コストパフォーマンス」の3軸で評価しています。

【最優先】すぐに取り組むべき施策

1. 覚えやすく検索しやすいブランド名の設定

これから新規事業やサービスを立ち上げる場合、ブランド名の選定は最も重要な意思決定の一つです。覚えやすく、発音しやすく、スペルが簡単で、キーボード入力しやすい名前を選びましょう。

悪い例は、アルファベットが長く複雑で、読み方が分からないもの(例:XYZQWERTY)です。良い例は、短く覚えやすく、日本語でもカタカナ表記しやすいもの(例:ユニクロ、楽天、メルカリ)です。また、同名の企業やサービスがすでに存在しないかも必ず確認してください。

実施の容易さ: ★★★★★(新規の場合) / ★☆☆☆☆(既存ブランドの場合)
効果: ★★★★★(長期的に極めて大きい)
優先度: 最優先(新規立ち上げ時)

2. 一貫したブランドメッセージの発信

すべてのタッチポイント(Webサイト、広告、SNS、営業資料、店頭など)で、一貫したブランドメッセージを発信しましょう。ユニクロであれば「Life Wear = 究極の普段着」、HubSpotであれば「インバウンドマーケティングのリーダー」といった、明確で一貫したメッセージが、顧客の記憶に刻まれます。

メッセージの一貫性は、ブランド認知の定着速度を3〜5倍に高めるという研究結果もあります。逆に、チャネルごとにバラバラのメッセージを発信すると、顧客は混乱し、ブランドを覚えられません。

実施の容易さ: ★★★★☆
効果: ★★★★★
優先度: 最優先

3. 単純接触効果を活用した定期的な露出

顧客と定期的に接触する仕組みを作りましょう。ユニクロの毎週の新聞折込チラシ、HubSpotの週次ブログ更新、メールマガジンの定期配信など、一定の頻度でブランドと接触する機会を設けることで、親近感と記憶の定着が進みます。

重要なのは「頻度」と「継続性」です。月に1回よりも週に1回、不定期よりも毎週決まった曜日の方が、効果が高くなります。ただし、過度な接触は逆効果なので、週1〜2回程度が適切です。

実施の容易さ: ★★★★☆
効果: ★★★★☆
優先度: 最優先

【高優先】効果が高い施策

4. カテゴリーエントリーポイント(CEP)の確立

特定のニーズや状況が発生したときに、真っ先に自社ブランドを思い出してもらえる「きっかけ」を作りましょう。これをカテゴリーエントリーポイント(CEP)と呼びます。

ユニクロの「寒い = ヒートテック」、「海といえば = エアリズム」といった連想が典型例です。HubSpotであれば「MAツール導入 = HubSpot」、「インバウンドマーケティング = HubSpot」という連想を確立しています。

CEPを確立するには、特定の機能や価値を繰り返し訴求し、顧客の頭の中に「この状況ならこのブランド」という結びつきを作ることが必要です。

実施の容易さ: ★★★☆☆
効果: ★★★★★
優先度: 高

5. 口コミとレビューの積極的な獲得

購入者や利用者に、積極的に口コミやレビューを書いてもらう仕組みを作りましょう。特にBtoBでは、第三者の評価が購買意思決定に大きな影響を与えます。

Googleビジネスプロフィール、Amazon、価格.com、ITreviewなど、顧客がレビューを読む可能性が高いプラットフォームでの評価を増やすことが重要です。レビュー投稿者には特典を提供するなど、インセンティブ設計も有効です。

実施の容易さ: ★★★☆☆
効果: ★★★★☆
優先度: 高

6. プレスリリースとメディア露出の最大化

定期的にプレスリリースを配信し、メディアへの露出を増やしましょう。Yahoo!ニュース、業界専門誌、Webメディアなどに記事が掲載されると、そのメディアの読者が「この企業はどんな会社だろう?」と検索する動機が生まれます。

プレスリリースは、新製品発表だけでなく、受賞歴、イベント登壇、調査レポート発表、社会貢献活動など、多様な切り口で発信できます。月1〜2回の頻度で配信することを目標にしましょう。

実施の容易さ: ★★★★☆
効果: ★★★★☆
優先度: 高

7. 自社ブランド名でのリスティング広告出稿

競合他社が自社ブランド名で広告出稿しているケースもあるため、自社名を含むキーワードでもリスティング広告を出稿しましょう。検索結果の上位を確保し、他社流入を防止するとともに、CV獲得を最大化できます。

自社ブランド名での広告は、クリック単価が一般キーワードの1/10以下と非常に安く、コストパフォーマンスに優れています。すでに認知しているユーザーからのクリックを確実に獲得できます。

実施の容易さ: ★★★★★
効果: ★★★☆☆
優先度: 高

【中優先】効果は大きいが時間とリソースが必要な施策

8. オウンドメディアによる教育的コンテンツの提供

HubSpotの事例で見たように、顧客が求める情報を先に提供することで、専門性と信頼性を高めることができます。自社のオウンドメディアで、業界のトレンド、課題解決のノウハウ、ベストプラクティスなどを発信しましょう。

重要なのは、単なる製品PRではなく、顧客にとって本当に価値のある情報を提供することです。「このメディアを読めば業界のことが分かる」と思ってもらえれば、自然とブランド認知も高まります。

実施の容易さ: ★★☆☆☆
効果: ★★★★★
優先度: 中

9. SNSでのブランドコミュニティ形成

Twitter、Instagram、Facebook、LinkedInなどのSNSで、ブランドの公式アカウントを運用し、顧客との双方向コミュニケーションを図りましょう。特にハッシュタグキャンペーンやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進は、ブランド認知拡大に効果的です。

ユニクロは「#ユニクロコーデ」などのハッシュタグで、顧客が自発的にコーディネートを投稿する文化を作り、大きな成功を収めています。

実施の容易さ: ★★★☆☆
効果: ★★★★☆
優先度: 中

10. インフルエンサーやアンバサダーとのコラボレーション

影響力のあるインフルエンサーやブランドアンバサダーと提携し、ブランドの認知度を高めましょう。ユニクロが錦織圭選手や羽生結弦選手をアンバサダーに起用しているように、ターゲット層に影響力のある人物とのコラボは、ブランド価値を大きく高めます。

BtoBでも、業界の著名人やソートリーダーとのウェビナー共催、記事寄稿などが有効です。

実施の容易さ: ★★☆☆☆(コストとコネクションが必要)
効果: ★★★★☆
優先度: 中

11. 無料版やトライアルの提供

HubSpotの無料CRMのように、製品の一部を無料で提供し、実際に使って価値を体感してもらう戦略は、BtoBにおいて非常に効果的です。フリーミアムモデルやトライアル期間の提供により、導入ハードルを下げ、製品への信頼を構築できます。

BtoCでも、サンプル配布や初回限定価格などが、同様の効果を発揮します。

実施の容易さ: ★★☆☆☆(製品設計の変更が必要な場合もある)
効果: ★★★★☆
優先度: 中

【低優先】補助的だが有効な施策

12. SEO対策による検索上位表示

一般キーワードでの検索上位表示は、新規顧客との接点を増やし、ブランド認知の入り口となります。ただし、これはあくまで「認知前→初期認知」の段階を支援するもので、指名検索そのものを直接増やす施策ではありません。

それでも、一般キーワードで上位表示されることで、ブランドとの接触機会が増え、間接的に指名検索の増加につながります。

実施の容易さ: ★★☆☆☆(専門知識と時間が必要)
効果: ★★★☆☆(間接的)
優先度: 低

13. リターゲティング広告による再接触

一度サイトに訪れたユーザーに対して、リターゲティング広告を配信し、ブランドとの接触頻度を高めましょう。単純接触効果により、繰り返し見ることでブランド親近感が高まります。

ただし、過度なリターゲティングは逆効果なので、頻度キャップ(同じユーザーへの配信回数制限)を適切に設定することが重要です。

実施の容易さ: ★★★★☆
効果: ★★★☆☆
優先度: 低

14. イベントやセミナーの定期開催

オフラインイベント、ウェビナー、セミナーなどを定期的に開催し、顧客と直接的に接触する機会を作りましょう。特にBtoBでは、ウェビナーが効果的で、専門知識の提供とブランド認知向上を同時に実現できます。

イベント参加者には、ハッシュタグを使ったSNS投稿を促すことで、さらなる認知拡大も期待できます。

実施の容易さ: ★★☆☆☆(企画運営のリソースが必要)
効果: ★★★☆☆
優先度: 低

15. O2O施策による顧客体験の最適化

ユニクロのEC注文・店舗受取のように、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ施策は、顧客の利便性を高め、ブランド体験を向上させます。これにより、ブランドへの満足度が高まり、リピート購入や口コミにつながります。

ただし、実店舗を持たないオンライン専業の企業には適用が難しい施策です。

実施の容易さ: ★☆☆☆☆(実店舗とシステム連携が必要)
効果: ★★★★☆(実店舗がある場合)
優先度: 低(実店舗がある企業のみ)

施策の優先度マトリクス


まとめ|指名検索を増やすための3つの本質

本記事では、BtoCとBtoBそれぞれの顧客が指名検索に至るまでの心理変容プロセスを、ユニクロとHubSpotの具体例を通じて解説しました。また、指名検索を増やすための15の施策を優先度別に提示しました。

最後に、これらすべてに共通する本質的な考え方を3つにまとめます。

1. 認知から想起へ|記憶に残るブランド体験の設計

顧客がブランドを「知っている」だけでは指名検索は発生しません。特定のニーズや状況が発生したときに、真っ先にそのブランドを「思い出す」状態になって初めて、指名検索が生まれます。

そのためには、単に広告を打つだけでなく、顧客の記憶に刻まれるブランド体験を設計する必要があります。ユニクロのヒートテックは、「寒いときに着る温かい下着」という明確な価値提案と、実際に着用したときの期待以上の体験により、「寒い = ヒートテック」という強固な連想を作り出しました。

2. 一貫性と継続性|ブレないメッセージの反復

ブランドメッセージがチャネルごとにバラバラだったり、頻繁に変わったりすると、顧客は混乱し、ブランドを覚えられません。すべてのタッチポイントで一貫したメッセージを、継続的に発信し続けることが、記憶の定着に不可欠です。

ユニクロの「Life Wear = 究極の普段着」、HubSpotの「インバウンドマーケティングのリーダー」という明確なポジショニングは、何年にもわたって一貫して発信され続けています。この一貫性と継続性が、強固なブランド認知を生み出しています。

3. 顧客価値の最大化|選ばれる理由の明確化

最終的に、指名検索を増やすための最も本質的な方法は、顧客にとっての価値を最大化することです。製品やサービスが顧客の課題を解決し、期待以上の体験を提供すれば、自然と口コミが生まれ、リピート購入が発生し、ブランドが想起されるようになります。

ユニクロは「機能性が高く、長持ちして、清潔感がある服を手頃な価格で提供する」という明確な価値を提供し続けています。HubSpotは「マーケティング業務を効率化し、ROIを可視化できるツールと知識を提供する」という価値を徹底しています。この顧客価値の明確化と最大化が、選ばれる理由となり、指名検索につながっているのです。

Key Takeaways

ポイント内容アクション
指名検索は最強の集客資産広告費に依存せず、高いCVRで安定した流入を生む。ブランド認知とSEO評価の両方を高める指名検索数を定期的に計測し、KPIとして追跡する
心理変容は5段階で進む認知前→初期認知→興味関心→信頼形成→想起という段階的なプロセスを理解する各段階に応じた適切な施策を設計し、段階的に顧客を育成する
BtoCとBtoBでプロセスが異なる意思決定者数、検討期間、情報源、購買後関係が大きく異なる自社のビジネスモデルに合った顧客ジャーニーを設計する
優先度の高い施策から着手ブランド名最適化、一貫メッセージ、単純接触効果の3つが最優先明日から実行できる施策を1つ選び、即座に開始する
本質は顧客価値の最大化どんな施策も、顧客にとっての価値提供が土台自社の提供価値を再定義し、それを軸にすべての施策を設計する

指名検索を増やすことは、一朝一夕には実現できません。しかし、本記事で紹介したフレームワークと施策を活用し、顧客の心理変容プロセスに寄り添ったマーケティングを継続的に実践すれば、必ず成果は現れます。

明日から、あなたのブランドが顧客の頭の中で「第一想起」されるための第一歩を踏み出しましょう。

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この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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