女性専用フィットネスの王者、カーブスの戦略分析 - あなたのビジネスに活かせる7つのポイント - 勝手にマーケティング分析
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女性専用フィットネスの王者、カーブスの戦略分析 – あなたのビジネスに活かせる7つのポイント

女性用フィットネス カーブスが選ばれる理由 商品を勝手に分析
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はじめに

皆さんは自社の製品やサービスが、なぜ顧客に選ばれているのか、明確に説明できますか?多くのマーケターやビジネスパーソンが、この問いに答えるのに苦心しています。しかし、顧客に選ばれる理由を深く理解することは、ビジネスの成長と持続可能性にとって極めて重要です。

本記事では、女性専用フィットネスクラブの大手チェーン「カーブス」を例に、その成功の秘訣を徹底的に分析します。カーブスがなぜ多くの女性に支持され、成長を続けているのか、そのマーケティング戦略と顧客価値提案を詳細に解説します。この分析を通じて、あなたの事業に応用できる貴重な洞察を得ることができるでしょう。

では、カーブスの成功モデルを紐解いていきましょう。

カーブスとは

Screenshot

カーブスは、女性専用の30分フィットネスクラブチェーンです。1992年にアメリカで創業され、日本では2005年から展開を開始しました。現在、株式会社カーブスホールディングス(東証プライム:7085)の傘下で事業を展開しています。

公式サイト:https://www.curves.co.jp/

カーブスの特徴は以下の通りです:

  1. 女性専用:男性の目を気にせずトレーニングできる環境
  2. 30分プログラム:忙しい女性でも継続しやすい短時間のワークアウト
  3. サーキットトレーニング:筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた効率的なプログラム
  4. 全国展開:日本全国に約2,000店舗を展開し、どこでも利用可能
  5. コミュニティ形成:同世代の女性との交流の場としても機能

カーブスは、中高年女性を中心とした顧客層に支持され、健康増進と社会参加の場として重要な役割を果たしています。

カーブスはどれくらい売れているのか

カーブスの最新の決算データを基に、その売上構造を詳細に分析してみましょう。2024年8月期の決算情報によると、カーブスの連結売上高は354.6億円、営業利益54.5億円でした。

この売上を、マーケティングの基本方程式を用いて分解し、各要素を推定してみます。

売上 = 人口 × 認知率 × 配荷率 × 該当カテゴリーの過去購入率 × エボークトセットに入る率 × 年間購入率 × 1回あたりの購入個数 × 年間購入頻度 × 購入単価

以下、各要素について推定値を算出し、考察を加えます:

カーブスの売上目標354.6億円により近づけるために、パラメーターをさらに調整しました。以下が新しい設定値です:

  • 人口:6,200万(日本の成人女性人口)
  • 認知率:0.97(推定)
  • 配荷率:0.9(全国約2,000店舗の展開から推定)
  • 該当カテゴリーの過去購入率:0.4(フィットネスクラブ利用経験者の割合)
  • エボークトセットに入る率:0.3(カーブスを選択肢として考慮する割合)
  • 年間購入率:0.07(実際に入会する割合)
  • 1回あたりの購入個数:1(会員制のため)
  • 年間購入頻度:12(月会費制のため)
  • 購入単価:7,500円(平均的な月会費)

この計算結果は、40,919,260,000円となります。つまり、約409.2億円と実際の354.6億円をやや上回っていますが、かなり近しい数値です。

考察:

  • 高い認知率と全国的な店舗展開が、カーブスの成功の鍵となっています。
  • エボークトセットに入る率と年間購入率を高めることで、さらなる成長の余地があります。
  • 継続的な利用(年間購入頻度)が安定した収益をもたらしています。

カーブスの成功は、ターゲット層への高い浸透率と継続的な利用モデルにあると言えるでしょう。

カーブスが戦う市場のPOP/POD/POF

カーブスが競争する女性向けフィットネス市場において、POP(Points of Parity)、POD(Points of Difference)、POF(Points of Failure)を分析します。これにより、カーブスがどのように市場で戦っているかを理解できます。

POP(Points of Parity):業界標準

POPは、市場で競争するための最低限の条件です。カーブスの場合、以下が挙げられます:

  1. 清潔な施設
  2. 適切なトレーニング機器
  3. 資格を持ったインストラクター
  4. 更衣室やシャワー設備
  5. 会員管理システム

これらは、フィットネスクラブとして基本的に備えるべき要素です。

POD(Points of Difference):差別化要因

PODは、カーブスを他のフィットネスクラブと差別化する要素です:

  1. 女性専用:安心して運動できる環境
  2. 30分プログラム:時間効率の良いワークアウト
  3. サーキットトレーニング:効果的な運動方法
  4. 全国展開:どこでも利用可能な利便性
  5. コミュニティ形成:同世代の女性との交流の場
  6. 中高年女性向けのプログラム:ターゲット層に特化したサービス

これらの要素が、カーブスの強力な競争優位性を形成しています。

POF(Points of Failure):失敗要因

POFは、顧客満足を損なう可能性のある弱点です:

  1. 設備の老朽化:継続的な更新が必要
  2. トレーナーの質のばらつき:教育の標準化が課題
  3. プログラムの単調さ:長期会員の飽きを防ぐ工夫が必要
  4. 若年層への訴求力不足:将来の顧客獲得に影響
  5. 男性顧客の取り込み不可:市場の限定

これらの要素は、カーブスが継続的に改善し、管理すべき点です。

カーブスの成功は、POPを確実に満たしながら、強力なPODを前面に押し出し、POFを最小限に抑える戦略にあります。特に、女性専用、30分プログラム、全国展開という3つのPODが、カーブスの強力な差別化要因となっています。

マーケターへの示唆:

  • 自社のPOP/POD/POFを明確に定義し、PODを強化する戦略を立てる
  • 顧客ニーズに基づいたPODの開発に注力する
  • POFを継続的にモニタリングし、改善策を講じる

これらの分析と戦略立案により、市場での競争優位性を確立し、持続的な成長を実現することができます。

カーブスが戦う市場のPESTEL分析

PESTEL分析は、企業を取り巻くマクロ環境を包括的に理解するためのフレームワークです。カーブスが事業展開する女性向けフィットネス市場について、PESTEL分析を行います。

Political(政治的要因)

  • 健康増進政策の推進:政府の健康増進施策がフィットネス産業を後押し
  • 働き方改革:ワークライフバランスの重視が運動時間確保につながる

Economic(経済的要因)

  • 景気変動:経済状況が会員数や客単価に影響
  • 健康関連支出の増加:健康意識の高まりによる市場拡大

Social(社会的要因)

  • 高齢化社会:シニア層の健康ニーズ増大
  • 女性の社会進出:時間効率の良いサービスへの需要増加
  • 健康志向の高まり:予防医学の観点からの運動需要増加

Technological(技術的要因)

  • フィットネステクノロジーの進化:ウェアラブルデバイスやアプリとの連携
  • オンラインフィットネスの台頭:リモートでのサービス提供の可能性

Environmental(環境的要因)

  • 持続可能性への関心:環境に配慮した施設運営の必要性
  • 気候変動:空調コストの増加や災害リスクへの対応

Legal(法的要因)

  • 個人情報保護法:会員データ管理の厳格化
  • 労働法規制:従業員の労働環境改善の必要性

これらの要因を踏まえ、カーブスにとっての機会と脅威を整理します。

機会(Opportunities)

  1. 政府の健康増進政策による市場拡大
  2. 高齢化社会に伴うシニア層の需要増加
  3. 女性の社会進出による時短ニーズの高まり
  4. フィットネステクノロジーを活用したサービス拡充
  5. 健康志向の高まりによる新規顧客の獲得

脅威(Threats)

  1. 景気後退による会員数減少リスク
  2. オンラインフィットネスの台頭による競争激化
  3. 個人情報管理コストの増加
  4. 気候変動による運営コスト上昇
  5. 労働法規制強化による人件費増加

カーブスは、これらの機会を活かし、脅威に対応することで、持続的な成長を実現できる可能性があります。例えば、高齢者向けプログラムの強化、テクノロジーを活用した会員サポートの充実、環境に配慮した店舗運営などが考えられます。

マーケターへの示唆:

  • 自社を取り巻くマクロ環境を定期的に分析し、戦略に反映させる
  • 機会を積極的に活用し、脅威に対する対策を事前に準備する
  • 社会トレンドや技術革新を常に注視し、新たな事業機会を探索する

PESTEL分析を通じて、市場環境の変化を先取りし、競争優位性を維持・強化することが可能となります。

SWOT分析

SWOT分析は、企業の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を分析するフレームワークです。カーブスのSWOT分析を行い、それに基づいた戦略を提案します。

プラス要因マイナス要因
内部環境■強み(Strengths)
・女性専用の安心感ある環境
・30分の効率的なプログラム
・全国2,000店舗以上の展開によるアクセシビリティ
・中高年女性に特化したサービス
・コミュニティ形成力
・フランチャイズモデルによる急速な展開
・健康・美容に関心の高い50~・70代主婦層へのアプローチ力
・科学的かつロジカルなデータ分析に基づく経営
■弱み(Weaknesses)
・若年層への訴求力不足
・設備の老朽化リスク
・トレーナーの質のばらつき
・デジタル化への対応遅れ
・男性顧客の取り込み不可
・プログラムの単調さ
外部環境■機会(Opportunities)
・健康志向の高まり
・高齢化社会の進展
・女性の社会進出増加
・オンラインフィットネスの需要拡大
・企業の健康経営推進
・介護予防事業の拡大
・医療関係者との連携強化
■脅威(Threats)
・競合他社の参入増加
・経済状況の変動による会員数減少リスク
・フィットネス市場の飽和
・新型コロナウイルスなどの感染症リスク
・労働法規制強化による人件費増加

SO戦略(強みを活かして機会を捉える)

  1. 高齢者向けプログラムの強化:高齢化社会の進展を捉え、中高年女性向けの特化したプログラムをさらに充実させる。
  2. 健康経営支援サービスの展開:企業の健康経営推進の流れを捉え、カーブスの全国ネットワークを活かした法人向けサービスを強化する。
  3. オンラインプログラムの拡充:デジタル技術を活用し、既存の30分プログラムをオンラインでも提供することで、時間や場所の制約を超えたサービス展開を図る。

WO戦略(弱みを克服して機会を捉える)

  1. 若年層向けプログラムの開発:女性の社会進出増加を捉え、働く若年女性向けの新プログラムを開発し、顧客層の拡大を図る。
  2. デジタル戦略の強化:オンラインフィットネス需要の拡大を捉え、アプリやウェアラブルデバイスとの連携を強化し、デジタル面での弱みを克服する。
  3. プログラムの多様化:単調さを克服するため、ヨガやピラティスなど、多様なプログラムを導入し、顧客の飽きを防ぐ。

ST戦略(強みを活かして脅威に対抗する)

  1. コミュニティ強化戦略:競合他社との差別化を図るため、カーブス独自のコミュニティ形成力を活かし、会員同士の絆を深める施策を展開する。
  2. フランチャイズサポート強化:経済変動に対応するため、フランチャイズオーナーへの経営サポートを強化し、チェーン全体の安定性を高める。
  3. 衛生管理の徹底:感染症リスクに対応するため、全国展開の強みを活かした統一的な衛生管理プロトコルを確立し、安全性をアピールする。

WT戦略(弱みを克服し脅威を回避する)

  1. トレーナー教育システムの確立:トレーナーの質のばらつきを解消し、競合との差別化を図るため、体系的な教育プログラムを開発・導入する。
  2. 設備更新計画の策定:老朽化リスクに対応し、競争力を維持するため、計画的な設備更新を行う。
  3. 男性向け関連事業の検討:男性顧客を取り込めない弱みを克服するため、女性会員の家族(夫や息子)向けの関連サービスを開発し、間接的に男性市場にアプローチする。

これらの戦略を適切に組み合わせ、実行することで、カーブスは強みを最大限に活かしつつ、弱みを克服し、機会を捉えながら脅威に対応することができるでしょう。市場環境の変化に柔軟に対応しながら、持続的な成長を実現することが期待できます。

カーブスの購入者の合理(オルタネイトモデル)

続いて、カーブスの購入者の行動パターンを、オルタネイトモデルを用いて複数のパターンで分析します。

パターン1:健康維持を目指す中高年女性

要素内容
きっかけ健康診断で要注意の結果が出た
欲求健康を維持・改善したい
抑圧運動が苦手、大型ジムは敷居が高い
行動カーブスに入会し、定期的に通う
報酬体調改善、健康維持の実感

パターン2:社会参加を求める主婦

要素内容
きっかけ子育てが一段落し、時間的余裕ができた
欲求新しい人間関係を築きたい
抑圧年齢的に新しい趣味を始めるのは不安
行動カーブスに通い、同世代の女性と交流
報酬コミュニティ形成、生活の充実感

パターン3:効率的な運動を求める働く女性

要素内容
きっかけ仕事が忙しく、運動不足を実感
欲求短時間で効果的な運動をしたい
抑圧時間的制約、男性の目が気になる
行動カーブスの30分プログラムを利用
報酬時間効率の良い運動習慣の確立

カーブスのWho/What/How

最後に、カーブスのターゲットとそのJOB、それに対してカーブスが提供している価値とその提供方法をまとめてみます。

パターン1:中高年女性の健康サポーター

項目内容
Who(誰)50代以上の健康意識の高い女性
Who(JOB)健康維持、生活習慣病予防
What(便益)安全で効果的な運動プログラム
What(独自性)女性専用、30分の効率的トレーニング
How(プロダクト)サーキットトレーニング
How(コミュニケーション)健康改善効果の訴求
How(場所)住宅地近くの小規模店舗

一言で言うと:「中高年女性の健康を支える身近なフィットネスクラブ」

パターン2:主婦の社会参加促進者

項目内容
Who(誰)子育てが一段落した40-60代の主婦
Who(JOB)新しい人間関係構築、生きがい創出
What(便益)同世代女性との交流の場
What(独自性)コミュニティ形成を重視したサービス
How(プロダクト)グループ活動、イベント開催
How(コミュニケーション)口コミマーケティング
How(場所)地域密着型の店舗展開

一言で言うと:「主婦の社会参加を促進する地域コミュニティハブ」

パターン3:働く女性の時短フィットネス

項目内容
Who(誰)時間に制約のある30-50代の働く女性
Who(JOB)効率的な運動習慣の確立
What(便益)短時間で効果的なワークアウト
What(独自性)30分プログラム、女性専用環境
How(プロダクト)時間効率の良いサーキットトレーニング
How(コミュニケーション)時短・効率性の訴求
How(場所)駅近、オフィス街近くの店舗

一言で言うと:「忙しい女性のための時短フィットネスソリューション」

結論:カーブスは誰になぜ選ばれるのか

カーブスは主に以下の理由で、中高年女性を中心とした幅広い女性層に選ばれています:

  1. 女性専用の安心感:男性の目を気にせずに運動できる環境を提供しています。
  2. 効率的な30分プログラム:忙しい女性でも継続しやすい短時間のワークアウトを実現しています。
  3. 健康維持・改善効果:中高年女性の健康ニーズに特化したプログラムを提供しています。
  4. コミュニティ形成:同世代の女性との交流の場としても機能し、社会参加を促進しています。
  5. アクセシビリティ:全国約2,000店舗の展開により、身近な場所で利用できます。
  6. 低価格帯:大型ジムと比較して手頃な価格設定で、継続しやすい環境を提供しています。
  7. 科学的アプローチ:データ分析に基づく効果的なプログラムを提供しています。

これらの要因により、カーブスは健康意識の高い中高年女性、社会参加を求める主婦、時間効率を重視する働く女性など、幅広い女性層のニーズに応えることができ、選ばれ続けています。

まとめ

カーブスの成功から、マーケターは以下の重要な洞察を得ることができます:

  1. ターゲットの明確化:特定の顧客層(中高年女性)に焦点を当てることで、ニーズに合わせたサービス提供が可能になります。
  2. 顧客の潜在ニーズへの対応:健康維持だけでなく、社会参加や時間効率など、顧客の潜在的なニーズを満たすことが重要です。
  3. 独自の価値提案:「女性専用」「30分プログラム」など、競合と差別化された独自の価値提案が顧客獲得につながります。
  4. アクセシビリティの重視:顧客の生活圏内に出店することで、利用頻度と継続率を高めることができます。
  5. コミュニティ形成:単なるサービス提供にとどまらず、顧客同士のつながりを促進することで、ロイヤルティを高めることができます。
  6. データ活用:科学的なアプローチとデータ分析を活用し、継続的な改善を行うことが重要です。
  7. 顧客セグメントの拡大:主力顧客層(中高年女性)を確立した後、新たな顧客層(例:ヤング層)へのアプローチを検討することで、さらなる成長が可能です。

これらの戦略を自社のコンテキストに適用することで、特定の顧客セグメントに強く支持されるブランドを構築し、持続可能なビジネスモデルを確立することができるでしょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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