はじめに
あなたの関わるビジネスはなぜ顧客から選ばれているのでしょうか?
この問いに明確に答えられているマーケターはおそらくビジネスはうまくいっているのではないでしょうか。逆にこの問いに答えられないマーケターは、目先のマーケティングの成果や再現性、事業全体の効率、持続性に悩みを抱えているのではないでしょうか。
現代のビジネス環境において、どの業界・市場でも競合や代替手段が存在し、競争が繰り広げられていると思います。本記事のメインテーマである競争優位性の構築は企業の成功と存続に不可欠と言えるでものです。しかし、多くのマーケターは、競争優位性の概念や具体的な構築方法は不明確なままです。つまり自社商品に競争優位性がないまま、顧客に振り向いてもらおうと日々プロモーション活動に邁進しているマーケターが多いのが現状です。
本記事では、競争優位性の基本から応用まで、どんなマーケター、ビジネスパーソンでも理解し実践できるよう詳しく解説します。競争優位性の重要性を理解し、具体的な戦略と手順を学ぶことで、あなたのビジネスを成功に導く力を身につけることができると確信しています。
ビジネスにおける競争優位性とは
まず言葉の定義から揃えていきます。競争優位性とは、企業が競合他社や代替手段と比較して優れた or 唯一無二の要素を持ち、それがあるから顧客に選ばれる理由の1つなっていることを指します。
ここで明らかなのは競争優位性は相対的ということです。つまり顧客が良し悪しを感じる時は、何かと比べて良い悪いを表現しており、相対的な判断であるということです。
また、競争優位性の具体例としては以下のような商品の特徴が当てはまります。
例 | 競争優位性のカテゴリ |
---|---|
Appleの革新的デザインやUIUX | デザイン |
Amazonの全てが揃う商品ジャンルと点数、スピード配送 | 利便性 |
Googleの検索アルゴリズム | 技術力 |
Starbucksのブランド力 | ブランド |
例えばAppleは機能性で選んでいるかというと、見た目のデザイン、そしてそのプロダクトを持った時の高揚感や気分の良さという情緒的な価値を感じて選んでいるのではないでしょうか。このように、競争優位性となるものは、その市場の中で競合や代替手段がある中で最終的に選ばれる理由になっていきます。
競争優位性の重要性
競争優位性を構築することは、以下の理由から極めて重要と言えます。
重要性 | 説明 | 影響 |
---|---|---|
市場シェアの確保 | 競合他社との差別化により顧客から選ばれる確率が上がる | 売上増加、ブランド認知度向上 |
利益率の向上 | 独自の強みにより価格決定力を獲得 | 収益性の改善、投資余力の増加 |
顧客ロイヤルティの構築 | 他社にない価値提供により顧客を維持 | リピート率向上、顧客生涯価値の増大 |
イノベーションの促進 | 競争力維持のための継続的改善 | 新製品開発、プロセス改善 |
人材の獲得・維持 | 魅力的な企業文化や成長機会の提供 | 優秀な人材の確保、生産性向上 |
競争優位性を持つ企業は、顧客から選ばれやすくなり、市場での地位を強化し、長期的な成功を実現することができると言えます。
競争優位性と言える要素の条件
では、競争優位性はどのような条件でできているのでしょうか。条件は4つです。
- 顧客が求める要素であること
- 唯一無二であること
- トレードオフであること
- 継続して実現できる組織体制があること
それぞれ解説します。
1. 顧客が求める要素であること
顧客が求めていることはJOBの解決です。JOBとは「顧客が特定の状況下で達成したい進歩や改善したい事柄、片付けたい用事」のことです。わかりやすく言うと、満たしたい欲求のことです。顧客のJOBを解決できることに価値があり、顧客から求められます。よって顧客のJOBに合わない特徴や機能は競争優位性にはなりえません。顧客の潜在的なニーズを見出し、それに応える製品やサービスを提供することで、市場での優位性を確立できます。
2. 唯一無二であること
唯一無二であることは、競合他社や代替手段が実現できていない独自の特徴や価値のことです。これは技術、ブランド、サービス、ビジネスモデルなど、様々な面で実現可能です。唯一無二の要素は、顧客の心に強く印象付けられ、競合優位性を作る上で必須の役割を果たします。
3. トレードオフであること
ある面で優れた価値を提供するために、他の面では妥協や犠牲、コストが必要となることを意味します。すべての面で優れることは現実的に困難であり、特定の領域に集中することで独自の強みを築き、他者が真似できない構造になります。このトレードオフの選択が、他社との明確な違いを生み出し、競争優位性を強化します。
4. 継続して実現できる組織体制があること
一時的な優位性ではなく、長期にわたって維持できる組織的な仕組みや体制が整っていることが重要です。これには、人材育成、技術開発、品質管理、顧客サービスなど、様々な側面が含まれます。継続的な改善と革新を可能にする組織文化や体制を構築することで、持続可能な競争優位性を確保できます。
この4つの要素は必ず全てを満たしていなければなりません。全てを満たして初めて競争優位性であると言えます。よって、下記のような表を作成して
競争優位性の候補 | 顧客が求める | トレードオフ | 唯一無二 | 組織体制 |
---|---|---|---|---|
A | ◯ | ◯ | △ | △ |
B | ◯ | × | × | ◯ |
C | × | △ | ◯ | △ |
D | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
E | △ | ◯ | ◯ | ◯ |
様々な競争優位性
では、4つの条件を満たすものが競争優位性になるということをご理解いただいたかと思いますが、実際に競争優位性となるものにはどんなものがあるのでしょうか。基本的には4Pの視点でカテゴリを分けて考えてみましょう。
カテゴリ | 独自性の要素 | 説明 | 実際の商品例 |
---|---|---|---|
プロダクト | 革新的技術 | • 革新的な技術、イノベーションによる機能 • 特許取得技術 • 高度な製造プロセス | ・Google検索エンジン ・東レの炭素繊維 ・テスラの電気&自動運転車 |
革新的ビジネスモデル | ・今までにない新しい価値提供方法 | ・Airbnb | |
高品質、高機能 | ・高い性能、材質、耐久性のプロダクト | ・iPhone | |
エコシステム | ・エコシステムの構築 | ・iPhoneのAppStore ・楽天の経済圏 | |
カスタマイズ性 | ・顧客に対してパーソナライズ、カスタマイズできるプロダクト | ・Netflixのコンテンツ推薦 | |
デザイン | • 美しい外観 • 人間工学に基づいた設計による使いやすさや美しさ | • MacBookの美しい外観 • ダイソン掃除機の人間工学に基づいた設計 | |
ブランド | ・ブランドのミッションやビジョン ・ストーリー、歴史、伝統 ・コンセプト への共感や信頼 | ・Starbucksの第3の場所というコンセプト ・星のや | |
環境・社会配慮 | • 環境に優しい材料の使用 • 省エネルギー設計 • リサイクル可能性 | ・パタゴニアの環境に優しい材料を使用したアウトドア用品と企業運営 • 三菱電機の省エネ家電 | |
健康配慮 | ・オーガニック、自然食品 | ・Whole Foods Market | |
UIUX、利便性 | ・利用前中後の一環したユーザー体験 ・使いやすさ、アクセシビリティ | ・Airbnbのアプリ(直感的なUI) ・Starbucksの一貫した体験 ・Uber | |
安全性 | ・セキュリティの強さ ・安全機能や耐久性 | ・ボルボの安全性 | |
品揃え | ・商品点数や在庫の多さ | ・Amazonの品揃え | |
コミュニケーション | 早期の認知形成 | ・第一想起、助成想起ブランドの認知度と連想を高める | ・コカ・コーラ(清涼飲料水の代名詞) ・PayPay |
コミュニティ | ・コミュニティやコラボレーションの機会提供 | ・We Workのネットワーキングやコラボレーション | |
アフターサービス | • 充実したアフターサービス ・広範囲に渡る保証 | ・Amazonのプライム会員サービス ・HubSpotのチャットサポート ・Zapposのカスタマーサービス ・ドミノピザの30分保証 | |
標準以上のサービス | ・標準を超えるサービスを提供 | ・リッツ・カールトンホテルの体験 | |
継続的なフィードバックと改善 | ・継続的な顧客フィードバックの活用、データ活用、共有 | ・Amazonのサジェスト機能 | |
ターゲティング | ・特定ターゲットへ特化することによる4Pの専門性や特化体験 | ・Let's noteのターゲティング | |
信頼性 | ・顧客実績、他社認証、顧客レビュー ・製造ストーリーや過程による安心感 ・専門性 ・RTBの提示 | ・TOYOTAの販売実績 ・Airbnbのレビュー | |
希少性 | ・限定性、独自性 | ・リミテッドエディション | |
価格 | 低価格 | ・手頃さ、アクセシビリティ ・大幅な割引 | ・ダイソーの手頃な価格設定 ・TEMUの激安価格 |
コストパフォーマンス | ・品質と価格のバランス | ・UNIQLOの価格と品質のバランスのとれた衣料品 | |
柔軟な価格体系 | ・フリーミアム、無料トライアル、試供 ・バンドル販売 ・従量課金型 | ・Spotifyのフリーミアムモデル | |
プレミアム価格 | ・高付加価値の価格設定 | ・アップルの製品(高付加価値の価格設定) | |
流通 | 効率、広範な流通 | • 効率的な供給チェーン • 広範な立地による販売網 | • セブン-イレブンの広範販売網 |
立地 | ・近郊 ・地域密着 | • セブン-イレブンの広範販売網 | |
オフライン、オンラインの融合 | • オムニチャネル戦略 | ・UNIQLOの店舗とECで連動した在庫管理と流通 |
これらの競争優位性の候補は市場によっては合わないものも出てくるでしょう。またiPhoneのように複数の競争優位性を持ち合わせているからこそ世界的なヒット商品になっているものもあります。
・市場によっては競争優位性にならないものもある
・組み合わせて自社商品の競争優位性となる
これらを考慮して、4つの条件に照らし合わせながら自社の競争優位性となりうるものがあるかぜひチェックしてみてください。
ではこれらの競争優位性はどのように見つけて、構築していけば良いのでしょうか。
競争優位性を作るための手順
では、競争優位性を作るにはどうしたら良いのでしょうか。競争優位性を構築するためには、以下の手順を踏むことが効果的と言われています。
ステップ | 内容 | ツール・手法 |
---|---|---|
1. 市場(顧客)、競合、自社の把握 | 市場:業界構造、顧客JOBの把握 競合:競合のWho/What/Howの把握 自社:強み、弱み、機会、脅威の洗い出し | PEST分析、5フォース分析、ジョブ把握、SWOT分析、Who/What/How言語化、オルタネイト分析、バリューチェーン分析、バリュープロポジション |
2. 大枠の戦略決め | 4つの大枠の戦略から方向性を選択 ・コストリーダーシップ戦略 ・差別化戦略 ・コスト集中戦略 ・差別化集中戦略 | ポーターの4つの競争戦略 |
3. 競争優位性の特定 | 自社の強みから競争優位性の候補を選び条件に該当するものを探索 | 競争優位性の表と条件 |
4. 自社Who/What/Howの言語化 | マーケティング戦略の構築 | Who/What/How言語化 |
5. 実行計画策定 | 具体的なアクションプランの作成 | ガントチャート、KPI設定 |
6. 実行 | 戦略の実施と進捗管理 | プロジェクト管理ツール |
7. 評価と改善 | 結果の分析と戦略の調整 | バランススコアカード |
各ステップの詳細は以下の通りです。
1. 市場(顧客)、競合、自社の把握
まずは3Cと言われる市場(顧客)、競合、自社の状況を把握していきましょう。この3つの要素を深く理解することが、競争優位性構築の第一歩です。
分析項目 | 内容 | 手法 |
---|---|---|
マクロ環境 | 政治、経済、社会、技術要因の分析 | PEST分析 |
業界構造 | 競争の激しさ、参入障壁などの分析 | ポーターの5フォース分析 |
顧客JOB | 顧客の要求、不満、潜在ニーズの把握 | 顧客インタビュー、アンケート、JOBのオルタネイト分析 |
競合分析 | 主要競合の戦略、強み、弱みの分析 | 競合のSWOT分析、Who/What/How言語化 |
自社分析 | 自社の分析 | 自社のSWOT分析、Who/What/How言語化 |
上記にある様々な手法を使って3Cの要素を分析、把握することが重要ですが、最も重要なのは顧客のJOBを特定することです。JOBは何か、そのJOBが発生するきっかけ、欲求、抑圧、報酬を把握することでJOBが明らかになります。詳しくはオルタネイト分析をぜひご覧ください。
2. 大枠の戦略決め
次のステップは、ハーバード大学経営大学院の経営学博士のマイケル・ポーター氏が提唱した4つの競争戦略の枠組みに基づき、競争優位性の方向性を見定めていきます。まずはそれぞれの象限に該当する戦略をご紹介します。
1. コストリーダーシップ戦略
要素 | 説明 | 事例 |
---|---|---|
定義 | 業界内で最も低いコスト構造を実現 | Walmart |
方法 | 規模の経済、効率化、コスト削減 | 大量仕入れ、物流最適化 |
メリット | 価格競争力、高い利益率 | 低価格でも利益確保 |
リスク | 品質低下、差別化困難 | 価格以外の魅力が乏しい |
この戦略は幅広いターゲットに対して低コストでアプローチができる戦略のため、市場を支配できるほどの資本力のある大手の企業しか実現できません。よって世の中の多くの企業はこれ以外の戦略をとることになります。
2. 差別化戦略
要素 | 説明 | 事例 |
---|---|---|
定義 | 独自の価値を提供し、高い顧客満足を実現 | Apple |
方法 | 品質、機能、ブランド、サービスでの差別化 | 革新的デザイン、エコシステム |
メリット | 高い価格設定力、顧客ロイヤルティ | プレミアム価格での販売 |
リスク | 高コスト構造、模倣される可能性 | 競合の追随、コスト上昇 |
この戦略はターゲットは幅広い層だが、競合他社と比べて価格以外の独自の価値を作り、市場で特別なポジションを確率し、顧客から選ばれるようにする戦略です。
3. 集中戦略(コスト)
要素 | 説明 | 事例 |
---|---|---|
定義 | 特定市場セグメントでコストリーダーを目指す | Spirit Airlines |
方法 | ニッチ市場に特化し、効率的な運営を実現 | 格安航空路線に特化 |
メリット | 特定市場での強い競争力、効率的な資源配分 | 低コスト運営で利益確保 |
リスク | 市場の縮小、大手企業の参入 | 景気変動の影響を受けやすい |
この戦略は、特定の狭い市場セグメントに焦点を当て、そこでコスト優位性を追求する戦略です。この戦略はコストを強みにした戦略のため、比較的大手に近い企業が実現しています。
4. 集中戦略(差別化)
要素 | 説明 | 事例 |
---|---|---|
定義 | 特定市場セグメントで独自の価値を提供 | Tesla (初期) |
方法 | ニッチ市場のニーズに特化した製品・サービス開発 | 高級電気自動車に特化 |
メリット | 高い顧客ロイヤルティ、競争が少ない | ブランド価値の確立 |
リスク | 市場の限界、大手企業の模倣 | 市場拡大の難しさ |
この戦略は、特定の狭い市場に焦点を当て、その市場内で独自の価値を提供する戦略です。世の中に存在する多くの企業は最初はここから始まり、最初の市場でのシェアを伸ばし、他市場に広げ、コストの強みを作るのか、それ以外の強みを作るのかでコスト集中戦略、差別化戦略、コストリーダーシップ戦略になっていくのかが変わってきます。
3. 競争優位性の特定
続いて、顧客のJOBと自社の強みから競争優位性になる要素を特定していきます。特定の仕方は先述の競争優位性の候補と自社の強みの中から、競争優位性の4条件に合う候補を探していきます。
- 顧客が求める要素であること
- 唯一無二であること
- トレードオフであること
- 継続して実現できる組織体制があること
競争優位性の候補 | 顧客が求める | トレードオフ | 唯一無二 | 組織体制 |
---|---|---|---|---|
A | ◯ | ◯ | △ | △ |
B | ◯ | × | × | ◯ |
C | × | △ | ◯ | △ |
D | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
E | △ | ◯ | ◯ | ◯ |
全てが◯になる競争優位性が見つかったら、それを押し出していくための自社のWho/What/Howを言語化していきます。
4. 自社Who/What/Howの言語化
上記で定めた顧客JOBと競争優位性をもとに自社商品のWho/What/Howを言語化しましょう。商品のWho/What/Howとはこちらです。
Who:誰のどんなJOB(叶えたい欲求)に対して、
What:企業はどんな便益と独自性(競争優位性)を、
How:どのようなプロダクト、顧客コミュニケーション、場所、価格で提供するのか
具体的にはこのようなところまで言語化した上で、定めたWhoとWhatに沿ったHowの実行計画をたてて実行していくことが最重要です。
5. 実行計画策定
市場分析と自社分析の結果を踏まえ、競争優位性を構築するための戦略を立案します。デフォルメしたものだと下記のようなものを作成して実行計画を策定していきます。
カテゴリ | 計画名 | PM | 想定コスト | 想定効果 | 対応期限 |
---|---|---|---|---|---|
プロダクト | A機能の改善 | 中村 | |||
プロダクト | UIUXの改善 | 中村 | |||
コミュニケーション | リスティング広告の実施 | 鈴木 | |||
コミュニケーション | WEBサイトのTOP訴求の改善 | 鈴木 | |||
価格 | フリーミアムプランの構築 | 山田 |
戦略を具体的なアクションに落とし込み、実行計画を策定します。
計画要素 | 内容 | ツール |
---|---|---|
タスク分解 | 戦略を具体的な作業に分解 | WBS (Work Breakdown Structure) |
スケジュール設定 | タスクの優先順位付けと期間設定 | ガントチャート |
責任者の割り当て | 各タスクの責任者を明確化 | RACI マトリックス |
KPI設定 | 進捗を測定する指標の設定 | KPI (Key Performance Indicator) ダッシュボード |
6. 実行
計画に基づいて戦略を実行し、下記のような手段を使って進捗を管理します。
実行要素 | 内容 | ツール |
---|---|---|
プロジェクト管理 | タスクの進捗管理と調整 | プロジェクト管理ソフトウェア (e.g., Trello, Asana) |
コミュニケーション | チーム内外での情報共有 | コラボレーションツール (e.g., Slack, Microsoft Teams) |
リスク管理 | 潜在的な問題の特定と対策 | リスクマトリックス |
変更管理 | 計画変更の管理とステークホルダーへの周知 | 変更管理プロセス |
7. 評価と改善
実行結果を評価し、必要に応じて戦略を調整します。
評価要素 | 内容 | ツール |
---|---|---|
パフォーマンス測定 | KPIに基づく成果の評価 | バランススコアカード |
顧客フィードバック | 顧客満足度や意見の収集 | NPS (Net Promoter Score) |
市場シェア分析 | 競合との相対的な位置づけの評価 | マーケットシェア分析 |
継続的改善 | PDCAサイクルに基づく改善活動 | カイゼン活動 |
競争優位性を作るその他フレームワーク
競争優位性を構築するためのフレームワークとして、PEST分析、5フォース分析、JOBの特定、オルタネイト分析、SWOT、Who/What/Howの言語化などを上記で紹介してきましたが、以下のフレームも試してみるのも有効です。
1. ポーターの価値連鎖(バリューチェーン)
企業活動全体と各活動の中で、競争優位性につながる箇所を探していきます。
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
主活動 | 製品・サービスの直接的な価値創造活動 | 各活動の効率化と差別化 |
支援活動 | 主活動を支える間接的な活動 | 全体最適化とイノベーション |
マージン | 顧客が支払う価値と総コストの差 | 利益率の向上 |
2. リソース・ベースト・ビュー (RBV)
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
価値ある資源 | 外部機会の活用や脅威の中和に貢献する資源 | 戦略的資源の特定と強化 |
希少な資源 | 競合他社が保有していない、または少ない資源 | 独自性の確保 |
模倣困難な資源 | 他社が容易に複製できない資源 | 持続的優位性の構築 |
組織 | 資源を活用する組織能力 | 資源の最適活用 |
3. ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略は、既存の競争が激しい市場(レッドオーシャン)から脱却し、新たな市場空間(ブルーオーシャン)を創造することを目指す戦略です。
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
非顧客の発見 | 現在の市場に存在しないが、潜在的な顧客層を特定 | 市場調査、インタビュー |
価値イノベーション | 低コストで高価値を提供する新しいビジネスモデルの創造 | 価値曲線の再設計 |
4つのアクションフレームワーク | 価値を創造するための4つのアクション(削減、排除、増加、創造) | 各要素の具体的な実行計画 |
戦略キャンバス | 現在の市場と新しい市場の価値要素を視覚化 | 競争要素の再定義 |
競争優位性を保つには
様々なフレームワークを使って苦労して競争優位性を一度構築しても、顧客や市場、競合は変化をしていきますので、常に今の競争優位性が本当に優位性になっているかを確認する必要があります。そして、競争優位性を継続するには相当な努力が必要です。以下に、競争優位性を保つための方法を紹介します。
1. 継続的なイノベーション
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
技術革新 | 新しい技術の導入と活用 | R&D投資、技術提携 |
製品開発 | 新製品やサービスの開発 | 顧客フィードバックの活用 |
プロセス改善 | 業務プロセスの効率化と最適化 | Lean、Six Sigma |
2. 顧客関係の強化
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
顧客ロイヤルティ | 顧客満足度とリピート率の向上 | ロイヤルティプログラム、パーソナライズドサービス |
顧客エンゲージメント | 顧客との継続的な関係構築 | ソーシャルメディア、コミュニティ形成 |
顧客フィードバック | 顧客の意見や要望の収集と反映 | アンケート、NPS調査、顧客インタビュー |
3. 戦略的提携とアライアンス
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
パートナーシップ | 互いに補完し合う企業との提携 | 戦略的提携、ジョイントベンチャー |
サプライチェーンの最適化 | 供給網の効率化と信頼性向上 | サプライチェーンマネジメント |
エコシステムの構築 | 企業間のネットワーク形成 | オープンイノベーション |
4. 組織文化の強化
要素 | 説明 | 活用方法 |
---|---|---|
マーケティング思考 | 組織全体にマーケティング思考をつける | 社内研修、KPI、社内MTGの内容改善 |
イノベーション文化 | 新しいアイデアを奨励する文化 | アイデアコンテスト、インキュベーションプログラム |
学習と成長 | 継続的な学習と成長の機会提供 | 社内研修、キャリア開発プログラム |
柔軟性と適応力 | 環境変化に迅速に対応する能力 | アジャイル手法、変革管理 |
まとめ
ここまで競争優位性の構築方法を紹介してきました。改めて競争優位性はビジネスにとっては欠かせない要素です。これがないと目先の利益も持続的な成功も見えてきません。自社の商品に競争優位性がないと感じられているマーケターの方はぜひ上記を参考に競争優位性の構築にトライしてみてください。最後に重要な点を再度まとめていきます。以下に、key takeawaysをまとめます。
- 競争優位性の定義: 他社より優れたパフォーマンスを発揮し、持続的に利益を生み出す能力。
- 重要性: 市場シェアの確保、利益率の向上、顧客ロイヤルティの構築、イノベーションの促進、人材の獲得・維持。
- 競争優位性と言える要素の条件: 顧客が求める、唯一無二である、トレードオフである、継続して実現できる組織体制がある
- 構築手順: 3C、大枠の戦略決め、競争優位性の特定、自社Who/What/Howの言語化、実行計画策定、実行、評価と改善
- 他のフレームワーク: ポーターの価値連鎖、リソース・ベースト・ビュー、ブルーオーシャン戦略
- 持続方法: 継続的なイノベーション、顧客関係の強化、戦略的提携とアライアンス、組織文化の強化。
これらのポイントを押さえ、競争優位性を築き、持続するための具体的な戦略と手法を実践することで、あなたのビジネスを成功に導くことができるでしょう。