はじめに:なぜビジネスモデルキャンバスが必要なのか
「新規事業のアイデアはあるけど、どこから手をつければいいかわからない」 「既存事業の課題が見えているのに、何を改善すべきか整理できない」 「チームメンバーとビジネスの方向性が共有できず、議論が噛み合わない」
こんな悩みを抱えていませんか?
ビジネスモデルキャンバス(BMC: Business Model Canvas)は、こうした課題を解決する強力なフレームワークです。複雑なビジネスモデルをたった1枚のシートで可視化し、事業の全体像を誰もが理解できる形で整理できます。
この記事では、ビジネスモデルキャンバスの基本から、実践的な作成手順、成功企業の事例、そして明日から使える具体的なテンプレートまで、若手マーケターやビジネスパーソンが実務で即活用できる知識を徹底解説します。
ビジネスモデルキャンバスとは?基本を理解する
ビジネスモデルキャンバスの定義
ビジネスモデルキャンバスは、スイスのビジネス理論家アレクサンダー・オスターワルダー氏が開発した、ビジネスモデルを視覚的に設計・分析するためのフレームワークです。
ビジネスモデルキャンバスの特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構成要素 | 9つの重要な要素でビジネス全体を表現 |
| 視覚化 | A4やA3サイズ1枚にまとめて俯瞰可能 |
| 対象 | 既存事業の分析・改善に最適 |
| 所要時間 | 初回作成は1〜2時間程度 |
| 活用シーン | 事業計画、戦略会議、投資家向けプレゼンなど |
なぜ「キャンバス」なのか
ビジネスモデルキャンバスという名称の「キャンバス」は、絵を描くキャンバスに由来します。真っ白なキャンバスに絵を描くように、ビジネスの構造を自由に描き、何度も書き直しながら完成させていくというコンセプトが込められています。
ビジネスモデルキャンバスを使う4つのメリット
メリット1:事業の全体像を一目で把握できる
ビジネスモデルキャンバスの最大の強みは、ビジネスの全体像をA4サイズ1枚で表現できることです。
通常、事業計画書は数十ページにわたる文章になりがちで、全体像を掴むのに時間がかかります。しかしビジネスモデルキャンバスなら、顧客は誰か、どんな価値を提供するか、どう収益を得るか、といった重要な要素を一瞬で理解できます。
具体例:事業計画書 vs ビジネスモデルキャンバス
| 比較項目 | 従来の事業計画書 | ビジネスモデルキャンバス |
|---|---|---|
| ページ数 | 20〜50ページ | 1ページ |
| 理解に要する時間 | 30分〜1時間 | 3〜5分 |
| 全体像の把握 | 読み込まないと見えない | 一目で俯瞰可能 |
| 修正の容易さ | 全体を書き直す必要あり | 該当箇所のみ修正 |
メリット2:チーム内の認識を統一できる
ビジネスの議論で起こりがちな「認識のズレ」を防げます。
たとえば、「顧客」という言葉一つとっても、営業担当は「既存の大口取引先」をイメージし、マーケティング担当は「潜在的な新規顧客層」を想定していることがあります。ビジネスモデルキャンバスで顧客セグメントを明確に書き出すことで、こうした認識のズレを可視化し、チーム全体で同じ方向を向けるようになります。
メリット3:競合分析と差別化戦略の立案に使える
自社だけでなく、競合他社のビジネスモデルもキャンバスに落とし込むことで、次のような気づきが得られます。
- 競合が注力している顧客セグメントはどこか
- 競合の収益源と自社の収益源の違いは何か
- 競合が持っていない自社独自のリソースは何か
活用例:競合3社との比較分析

メリット4:アイデアを素早く検証し、改善できる
新規事業のアイデアをいきなり詳細な事業計画書に落とし込むのは時間がかかりすぎます。ビジネスモデルキャンバスなら、1〜2時間でアイデアを形にし、仮説検証のサイクルを高速で回せます。
検証サイクルの例
| ステップ | 所要時間 | 実施内容 |
|---|---|---|
| 1. 初版作成 | 1時間 | アイデアをキャンバスに落とし込む |
| 2. チーム議論 | 30分 | 穴や矛盾点を洗い出す |
| 3. 顧客インタビュー | 2時間 | 想定顧客5名にヒアリング |
| 4. 修正 | 30分 | フィードバックを反映 |
| 5. 再検証 | 1時間 | 修正版で再度検証 |
このサイクルを2〜3回繰り返すことで、精度の高いビジネスモデルが完成します。
リーンキャンバスとの違いを理解する
ビジネスモデルキャンバスと並んでよく使われるフレームワークに「リーンキャンバス」があります。両者の違いを理解し、状況に応じて使い分けましょう。
主な違いの比較表
| 項目 | ビジネスモデルキャンバス | リーンキャンバス |
|---|---|---|
| 対象 | 既存事業の分析・改善 | 新規事業の立ち上げ |
| 重点 | ビジネス全体のバランス | 課題解決とソリューション |
| 特有の要素 | キーパートナー、顧客との関係 | 課題、ソリューション、優位性 |
| 開発者 | アレクサンダー・オスターワルダー | アッシュ・マウリャ |
| 適用シーン | 事業の見直し、M&A分析、投資判断 | スタートアップ、MVP開発 |
どちらを使うべきか
ビジネスモデルキャンバスを使うべきケース
- 既存事業の収益構造を見直したい
- 競合他社との比較分析を行いたい
- 既に顧客がいて、サービスも稼働している
リーンキャンバスを使うべきケース
- まだ顧客が誰かも明確でない
- 解決すべき課題の仮説検証から始めたい
- スタートアップや社内新規事業の立ち上げフェーズ
詳しくは別記事「リーンキャンバス完全ガイド:基本から書き方・メリットを詳しく解説」で解説していますので、ぜひご覧ください。
ビジネスモデルキャンバスを構成する9つの要素
ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つのブロックで構成されます。それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
全体構造図

1. 顧客セグメント(CS: Customer Segments)
定義: ビジネスが価値を提供する対象となる顧客グループ
ビジネスモデルの中心となる最も重要な要素です。誰に価値を届けるのかが明確でなければ、他のすべての要素が意味を持ちません。
記入のポイント
| 観点 | 具体的な検討内容 |
|---|---|
| デモグラフィック | 年齢、性別、職業、年収、家族構成 |
| サイコグラフィック | 価値観、ライフスタイル、趣味嗜好 |
| 行動特性 | 購買頻度、利用シーン、意思決定プロセス |
| セグメント数 | 2〜4つ程度に絞り込む(多すぎると焦点がぼける) |
良い例・悪い例
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 「20代〜40代の女性」 | 「30代前半、都市部在住、世帯年収600万円以上、美容・健康に月3万円以上投資する共働き女性」 |
| 「中小企業」 | 「従業員50〜300名のIT・Web業界の企業で、マーケティング予算が年間1,000万円未満の企業」 |
セルフチェック質問
- この顧客セグメントは、本当に困っている課題を抱えているか?
- この顧客セグメントは、お金を払ってでも解決したいと思っているか?
- この顧客セグメントにリーチする現実的な方法はあるか?
2. 価値提案(VP: Value Propositions)
定義: 顧客の課題を解決し、ニーズを満たす製品・サービスの価値
価値提案は、「なぜ顧客はあなたの製品・サービスを選ぶのか」という問いへの答えです。
価値提案の6つの型
| 型 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 新規性 | 今までにない全く新しい価値 | iPhone(2007年発売時) |
| 性能 | 既存製品より高性能 | ダイソンの掃除機 |
| カスタマイズ | 個人に合わせたオーダーメイド | ナイキID |
| デザイン | 優れたデザイン性 | Apple製品全般 |
| ブランド | ブランド力そのものが価値 | ルイ・ヴィトン |
| 価格 | 圧倒的な低価格 | ユニクロ、ニトリ |
| 利便性 | 手軽さ、アクセスのしやすさ | Uber、Amazon Prime |
| リスク低減 | 不安や危険を減らす | 保険、セキュリティソフト |
記入のコツ
価値提案を書く際は、「顧客の課題」と「解決方法」をセットで記載すると明確になります。
【テンプレート】
〇〇(顧客セグメント)が抱える△△(課題)を、
××(製品・サービス)によって解決し、
◇◇(得られる結果)を実現する
具体例:Uber
都市部で移動したい人(顧客セグメント)が抱える
「タクシーがつかまらない」「料金が不透明」(課題)を、
スマホアプリによる配車とキャッシュレス決済(製品・サービス)によって解決し、
手軽で透明性のある移動体験(得られる結果)を実現する
3. チャネル(CH: Channels)
定義: 顧客に価値を届けるための経路や手段
チャネルは大きく5つの段階で機能します。
チャネルの5つの機能

| 段階 | 機能 | 手段の例 |
|---|---|---|
| 1. 認知 | 製品・サービスを知ってもらう | Web広告、SNS、展示会、口コミ |
| 2. 評価 | 価値を理解し検討してもらう | Webサイト、資料請求、無料体験 |
| 3. 購入 | 実際に購入してもらう | ECサイト、店舗、営業担当 |
| 4. 提供 | 製品・サービスを届ける | 配送、ダウンロード、店舗受取 |
| 5. アフターサポート | 購入後のフォロー | カスタマーサポート、コミュニティ |
直接チャネル vs 間接チャネル
| 種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 直接チャネル | 自社で顧客と接点を持つ | 顧客データ収集、高い利益率 | 初期投資大、運営コスト高 | 自社EC、直営店 |
| 間接チャネル | パートナー経由で販売 | 初期投資小、拡大が早い | 利益率低、顧客データ取得困難 | Amazon、代理店 |
4. 顧客との関係(CR: Customer Relationships)
定義: 顧客とどのような関係を築き、維持するか
顧客との関係性は、ビジネスモデルの持続可能性を左右する重要な要素です。
顧客との関係の6つのパターン
| パターン | 説明 | 適したビジネス | 具体例 |
|---|---|---|---|
| パーソナルアシスタンス | 担当者が個別対応 | 高額商材、BtoB | 法人営業、コンサルティング |
| 専属パーソナルアシスタンス | 専任担当が長期サポート | 富裕層向けサービス | プライベートバンキング |
| セルフサービス | 顧客が自分で全て行う | 大量販売、低価格帯 | 自動販売機、セルフレジ |
| 自動化サービス | システムが自動対応 | スケーラブルなサービス | Netflixのレコメンド |
| コミュニティ | 顧客同士がつながる | ファン形成が重要 | AppleのGenius Bar、ハーレーのオーナーズクラブ |
| 共創 | 顧客と一緒に価値を作る | UGC型ビジネス | YouTube、Wikipedia |
顧客生涯価値(LTV)を高める関係構築
顧客との関係は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)に直結します。
LTV = 平均購買単価 × 購買頻度 × 継続期間
| 施策 | 狙い | 具体例 |
|---|---|---|
| オンボーディング強化 | 初期離脱を防ぐ | チュートリアル、ウェルカムメール |
| 定期接点の創出 | 継続利用を促す | メルマガ、アプリ通知、定期イベント |
| ロイヤリティプログラム | 購買頻度を上げる | ポイント制度、会員ランク |
| アップセル・クロスセル | 客単価を上げる | おすすめ商品、上位プラン提案 |
5. 収益の流れ(RS: Revenue Streams)
定義: どのように収益を得るか(マネタイズモデル)
収益の流れは、ビジネスの持続可能性を決める最も重要な要素の一つです。
収益モデルの7つの型
| 型 | 説明 | メリット | デメリット | 事例 |
|---|---|---|---|---|
| 販売収益 | 製品・サービスを売って対価を得る | シンプル、理解しやすい | 継続性が低い | 家電量販店 |
| 利用料 | 使った分だけ課金 | 利用のハードルが低い | 予測が難しい | 電気・ガス |
| サブスクリプション | 定額の月額・年額課金 | 収益予測が立てやすい | 解約リスク | Netflix、Spotify |
| レンタル・リース | 一定期間貸し出す | 初期費用を抑えられる | 資産管理コスト | レンタカー、コピー機リース |
| ライセンス | 知的財産の使用許諾 | スケーラブル | 権利保護が必要 | ソフトウェアライセンス |
| 仲介手数料 | 取引の仲介で手数料 | 在庫リスクなし | 取引量に依存 | 不動産仲介、クレジットカード |
| 広告収益 | 広告枠を販売 | ユーザーは無料で利用可 | トラフィック依存 | Google、Facebook |
| フリーミアム | 基本無料+有料オプション | ユーザー獲得が早い | 有料転換率が課題 | Dropbox、Zoom |
価格設定の戦略
| 戦略 | 説明 | 適用例 |
|---|---|---|
| コストプラス | 原価+利益率で設定 | 製造業、小売 |
| 競合ベース | 競合価格を参考に設定 | コモディティ商品 |
| 価値ベース | 顧客が感じる価値で設定 | ブランド品、コンサル |
| ダイナミックプライシング | 需給に応じて変動 | 航空券、ホテル |
| フリーミアム | 基本無料+プレミアム課金 | SaaS、アプリ |
6. キーリソース(KR: Key Resources)
定義: 価値提案を実現するために必要な経営資源
キーリソースは4つのカテゴリーに分類されます。
キーリソースの4分類
| カテゴリー | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 物的資源 | 設備、施設、在庫など | 工場、店舗、配送センター、車両 |
| 知的資源 | 知的財産、データ、ノウハウ | 特許、ブランド、顧客データベース、独自技術 |
| 人的資源 | 人材、専門家 | エンジニア、デザイナー、営業チーム |
| 財務資源 | 資金、与信枠 | 自己資本、借入、ベンチャーキャピタル |
競争優位性を生むリソースの見極め方
すべてのリソースが競争優位につながるわけではありません。以下の3つの質問で、本当に重要なキーリソースを見極めましょう。
| 質問 | 判断基準 |
|---|---|
| 希少性はあるか? | 競合が簡単に手に入れられないリソースか |
| 模倣困難性はあるか? | 真似しようとしても時間やコストがかかるか |
| 代替不可能か? | 他のもので代用できないか |
この3つすべてに「Yes」と答えられるリソースが、真のキーリソースです。
7. キーアクティビティ(KA: Key Activities)
定義: 価値提案を実現するために必要な主要活動
キーアクティビティは3つの類型に分けられます。
キーアクティビティの3類型
| 類型 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 生産活動 | 製品を作る、サービスを提供する | 製造、開発、デザイン |
| 問題解決 | 顧客の課題を解決する | コンサルティング、カスタマーサポート |
| プラットフォーム/ネットワーク | 場を運営する | マッチング、コミュニティ運営 |
キーアクティビティの優先順位付け
すべての活動を同じ力配分で行うことはできません。価値提案に最も直結する活動に資源を集中させましょう。
優先度判定マトリクス
| 活動 | 価値提案への影響度 | 実行の難易度 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 製品開発 | 高 | 高 | ★★★ 最優先 |
| マーケティング | 高 | 中 | ★★★ 最優先 |
| 顧客サポート | 中 | 低 | ★★ 重要 |
| 管理業務 | 低 | 低 | ★ 効率化対象 |
8. キーパートナー(KP: Key Partners)
定義: ビジネスを成功させるために協力する外部パートナー
キーパートナーとの協業には3つの動機があります。
パートナーシップの3つの動機
| 動機 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 最適化と規模の経済 | 効率化とコスト削減 | 製造委託、物流アウトソース |
| リスクと不確実性の低減 | リスク分散 | 共同開発、保険 |
| 特定リソース・活動の獲得 | 自社にないものを補完 | 技術提携、販売代理店 |
パートナーの種類
| 種類 | 関係性 | 例 |
|---|---|---|
| 戦略的提携 | 非競合企業との協力 | Apple × Nike(Apple Watch Nike+) |
| 競合他社との協働 | 特定領域での共同 | トヨタ × スズキ(技術提携) |
| ジョイントベンチャー | 新会社設立 | ソニー × エリクソン(過去) |
| サプライヤー | 安定供給の確保 | 製造業の部品サプライヤー |
自社でやるべきか、パートナーに任せるべきか
| 判断軸 | 自社で実施 | パートナーに委託 |
|---|---|---|
| 競争優位性への影響 | 高い | 低い |
| 専門性 | 社内に蓄積したい | 外部の方が高い |
| コスト | 内製の方が安い | 外注の方が安い |
| スピード | 内製で間に合う | 外部の方が早い |
| リスク | 許容範囲内 | 分散したい |
9. コスト構造(CS: Cost Structure)
定義: ビジネスを運営するために発生する主要なコスト
コスト構造は、収益の流れとセットで考えることで、ビジネスの収益性が見えてきます。
コストの2つの類型
| 類型 | 説明 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|---|
| 固定費 | 売上に関係なく発生 | 予測しやすい、削減困難 | 人件費、家賃、システム維持費 |
| 変動費 | 売上に応じて変動 | 売上増減に連動 | 原材料費、手数料、物流費 |
コスト主導型 vs 価値主導型
| 型 | 特徴 | 狙い | 適した業界 |
|---|---|---|---|
| コスト主導型 | とにかくコストを下げる | 低価格で市場シェア獲得 | ディスカウントストア、LCC |
| 価値主導型 | 価値を最大化することに注力 | 高価格でも選ばれる価値提供 | ラグジュアリーブランド、ハイエンド製品 |
主要コスト項目の洗い出し
| コスト項目 | 内容 | 削減の可能性 |
|---|---|---|
| 人件費 | 給与、社会保険料 | 業務効率化、アウトソース |
| 原材料費・仕入れ | 商品・部材の調達 | 仕入先見直し、ロット増 |
| 設備費 | 機械、IT設備 | クラウド化、シェアリング |
| マーケティング費 | 広告、販促 | 効果測定、ROI改善 |
| 物流費 | 配送、倉庫 | 物流最適化、共同配送 |
| 研究開発費 | 新製品・技術開発 | オープンイノベーション |
以上、ビジネスモデルキャンバスの各要素の解説でした。この各要素を理解せずに作成はできませんのでまずは理解した上で次の作り方を学んでいってください。
ビジネスモデルキャンバスの作り方:7つのステップ
ここからは、実際にビジネスモデルキャンバスを作成する手順を解説します。
ステップ0:準備(事前に用意するもの)
必要なもの
| アイテム | 用途 | おすすめ |
|---|---|---|
| キャンバステンプレート | 記入用紙 | A3サイズ印刷、ホワイトボード、Miro等のツール |
| 付箋 | アイデア出し | 75mm × 75mm、複数色 |
| ペン | 記入用 | 太めのマーカー(黒・赤・青) |
| 参考資料 | 情報収集 | 市場調査データ、競合分析、顧客インタビュー |
| チームメンバー | 多角的視点 | 営業・開発・マーケなど異なる部門から3〜5名 |
所要時間の目安
| 作業 | 時間 |
|---|---|
| 初回作成(個人) | 1〜2時間 |
| チームでのワークショップ | 2〜3時間 |
| 修正・ブラッシュアップ | 1時間 × 複数回 |
キャンバスのテンプレートはぜひこちらからダウンロードして使ってください。
ステップ1:顧客セグメントを定義する
最も重要な質問:「誰のために価値を創造するのか?」
ビジネスモデルキャンバスは、必ず「顧客セグメント」から書き始めましょう。顧客が定まらなければ、他のすべての要素が決められません。
記入の手順

ワークショップ形式での進め方
- ブレストで顧客候補を列挙(10分)
- 付箋1枚に1顧客セグメント
- 思いつく限り書き出す(この段階では絞らない)
- 似たセグメントをグループ化(5分)
- 付箋を並べ替えて類似グループを作る
- 優先順位をつける(10分)
- 以下の基準で評価
| 評価軸 | 5点満点 |
|---|---|
| 市場規模 | 1〜5 |
| 成長性 | 1〜5 |
| 到達可能性 | 1〜5 |
| 収益性 | 1〜5 |
- 2〜3セグメントに絞り込む(5分)
- 合計点が高いセグメントを選択
- 初期は欲張らず、まずは1セグメントでも可
具体例:オンライン英会話サービス
| セグメント | 詳細 |
|---|---|
| セグメントA | 30代前半、都市部在住、年収500万円以上の会社員。海外出張や昇進のためにビジネス英語力を短期間で向上させたい |
| セグメントB | 40代後半、地方在住の主婦。子育てが一段落し、趣味として英会話を楽しみたい。予算は月3,000円程度 |
この場合、セグメントAの方が単価が高く収益性が見込めるため、まずはAに絞ってビジネスモデルを設計します。
ステップ2:価値提案を明確にする
顧客セグメントが決まったら、次は「その顧客にどんな価値を提供するか」を定義します。
価値提案を導く3つの質問
| 質問 | 具体的な考え方 |
|---|---|
| 顧客はどんな課題を抱えているか? | 不満、不便、不安、欲求不満 |
| その課題をどう解決するか? | 機能、性能、デザイン、利便性 |
| 競合と比べて何が優れているか? | 独自性、差別化ポイント |
価値提案マップで整理する
| 顧客の課題 | なぜ困っているか | 解決策 | 得られる結果 | ベネフィット |
|---|---|---|---|---|
| 英語が話せない | 仕事が忙しくて通学時間が取れない | 24時間いつでもレッスン | 出張前に集中学習できる | 早朝・深夜・休日など自分の都合に合わせて学習可能 |
| 高額なスクールは通えない | 月3〜5万円の英会話スクールは予算オーバー | 月額6,980円 | 予算内で継続できる | 従来の英会話スクールの1/4〜1/7の価格 |
| 対面だと恥ずかしい | 間違いを指摘されるのが怖い・他人の目が気になる | マンツーマンオンライン | 気軽に話せる | 自宅で1対1なので他の生徒の目を気にせず集中できる |
記入例:オンライン英会話サービス
忙しいビジネスパーソン(顧客セグメント)が抱える
「時間がないが英語力を短期で上げたい」「高額スクールは通えない」(課題)を、
24時間予約可能なマンツーマンオンラインレッスン、月額6,980円(製品・サービス)で解決し、
3ヶ月で海外出張で使える実践的な英語力を習得(得られる結果)
ステップ3:チャネルを設計する
価値をどうやって顧客に届けるかを考えます。
チャネル設計の5W1H
| 項目 | 検討内容 |
|---|---|
| Who(誰が届けるか) | 直販 or 代理店 or EC |
| What(何を届けるか) | 製品、情報、体験 |
| When(いつ届けるか) | リアルタイム、定期配送、オンデマンド |
| Where(どこで届けるか) | オンライン、店舗、イベント |
| Why(なぜそのチャネルか) | コスト、顧客体験、拡張性 |
| How(どう届けるか) | 配送、ダウンロード、ストリーミング |
カスタマージャーニーとチャネルのマッピング

記入例:オンライン英会話サービス
| フェーズ | チャネル | 施策 |
|---|---|---|
| 認知 | Google広告、YouTube広告、比較サイトSEO | 「ビジネス英語 短期」で上位表示 |
| 検討 | 公式サイト、無料体験レッスン | レッスン2回無料、カウンセリング |
| 購入 | 公式サイト(クレジットカード決済) | 初月半額キャンペーン |
| 利用 | 専用アプリ、Zoom | スマホで予約・受講可能 |
| 継続 | メールマガジン、アプリPush通知 | 学習レポート、おすすめ講師 |
ステップ4:顧客との関係を定義する
顧客とどんな関係を築くかを明確にします。
関係性の設計マトリクス
| 顧客セグメント | 初期 | 成長期 | 成熟期 |
|---|---|---|---|
| 高単価顧客 | 専任担当がオンボーディング | 定期ミーティング、カスタマイズ対応 | VIPプログラム、限定イベント |
| 一般顧客 | 自動オンボーディングメール | 定期メルマガ、FAQチャットボット | ポイントプログラム |
| フリーミアムユーザー | チュートリアル動画 | 有料転換のためのCTA | - |
LTV最大化のための施策
| 施策 | 狙う指標 | 具体例 |
|---|---|---|
| オンボーディング強化 | 初月離脱率 ↓ | ウェルカムメール、初回ガイダンス |
| エンゲージメント向上 | 利用頻度 ↑ | gamification、学習リマインド |
| ロイヤリティプログラム | 継続率 ↑ | ポイント還元、会員ランク |
| コミュニティ形成 | NPS ↑ | ユーザーフォーラム、オフ会 |
ステップ5:収益モデルを設計する
どこからお金を得るかを明確にします。
収益モデルの選択
まず、自社のビジネスに適した収益モデルを選びます。
| モデル | 適用判断 | 選択 |
|---|---|---|
| 販売収益 | 単発購入が中心か? | □ |
| サブスクリプション | 継続利用が前提か? | □ |
| 広告収益 | 大量のトラフィックがあるか? | □ |
| 仲介手数料 | マッチングビジネスか? | □ |
| フリーミアム | 無料ユーザーからの転換が見込めるか? | □ |
価格設定の3つのアプローチ
| アプローチ | 計算方法 | 適用例 |
|---|---|---|
| コストプラス | (原価 + 固定費配賦) × (1 + 利益率) | 製造業、小売 |
| 競合ベース | 競合価格 × 調整係数 | 同質的な商品・サービス |
| 価値ベース | 顧客が得る価値 × 価値換算率 | コンサル、SaaS |
記入例:オンライン英会話サービス
| プラン | 月額料金 | レッスン回数 | ターゲット | 想定比率 |
|---|---|---|---|---|
| ライト | 3,980円 | 月8回(週2回) | 趣味層 | 20% |
| スタンダード | 6,980円 | 月20回(週5回) | ビジネス層 | 60% |
| プレミアム | 12,800円 | 毎日1回 | 本気で学習したい層 | 20% |
ステップ6:リソース・活動・パートナーを整理する
価値提案を実現するために、何が必要かを整理します。
3要素の連動関係

Make or Buy 判断表
| 要素 | 内製 vs 外部 | 判断理由 |
|---|---|---|
| 講師 | 外部(フリーランス) | 多様性確保、固定費削減 |
| システム開発 | 内製(初期)→外注(拡大期) | 初期は小さく、拡大時は専門家へ |
| カスタマーサポート | 内製 | 顧客の声を直接聞くため |
| 決済システム | 外部(Stripe等) | セキュリティ、開発コスト考慮 |
ステップ7:コスト構造を算出する
最後に、ビジネス運営にかかるコストを洗い出します。
コスト項目の洗い出しシート
| 大分類 | 中分類 | 月額コスト | 固定/変動 |
|---|---|---|---|
| 人件費 | 社員給与 | 150万円 | 固定 |
| 講師報酬 | 80万円 | 変動 | |
| システム費 | サーバー代 | 10万円 | 固定 |
| 決済手数料 | 5万円 | 変動 | |
| マーケティング費 | Web広告 | 50万円 | 固定(予算) |
| その他 | オフィス賃料 | 20万円 | 固定 |
| 合計 | 315万円 |
損益分岐点の計算
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
例)
固定費:230万円/月
変動費:85万円/月
売上:315万円/月
変動費率:85 ÷ 315 = 27%
損益分岐点 = 230万円 ÷ (1 - 0.27) = 315万円
→ 月315万円の売上で損益トントン
→ スタンダードプラン(6,980円)なら、451人の有料会員が必要
ビジネスモデルキャンバス作成の5つのポイント
ポイント1:完璧を目指さず、まず埋めることを優先
悪い例
- 1つの要素に1週間かけて調査
- すべて正確なデータが揃うまで次に進まない
- 最初から完璧なキャンバスを作ろうとする
良い例
- まず仮説ベースで全体を埋める(1〜2時間)
- 不明な点は「要検証」と明記
- 70%の精度でまず完成させ、検証しながら精度を上げる
「Done is better than perfect」
初版は「仮説キャンバス」と割り切り、素早く作って検証サイクルを回しましょう。
ポイント2:付箋を使って柔軟に修正できるようにする
付箋活用のメリット
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 移動が自由 | 要素の並び替えが簡単 |
| 追加が容易 | 思いついたらその場で追加 |
| 削除が気楽 | 剥がすだけ、心理的ハードルが低い |
| 視覚的 | 色分けで優先度や分類が一目瞭然 |
| 共同作業向き | メンバー全員が同時に書き込める |
色分けルールの例
| 色 | 用途 |
|---|---|
| 黄色 | 確定している事実 |
| ピンク | 仮説(要検証) |
| 青 | 優先度高 |
| 緑 | アイデア・オプション |
ポイント3:定期的に見直し、アップデートする
ビジネス環境は常に変化します。キャンバスも「生きたドキュメント」として定期的に更新しましょう。
見直しのタイミング
| タイミング | 頻度 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 定例ミーティング | 月1回 | 各要素に変化はないか |
| 四半期レビュー | 3ヶ月に1回 | 戦略の見直しが必要か |
| 大きな環境変化時 | 随時 | 競合参入、法規制変更、技術革新など |
アップデートのルール
変更前:青い付箋
変更後:赤い付箋(日付を記入)
削除:グレーアウト(捨てずに残す)
変更履歴を残すことで、「なぜこの判断をしたのか」が後から振り返れます。
ポイント4:複数メンバーで作成し、多様な視点を取り入れる
理想的なメンバー構成
| 役割 | 視点 | 貢献ポイント |
|---|---|---|
| 経営層 | 全体戦略 | ビジョン、リソース配分 |
| 営業 | 顧客接点 | リアルな顧客ニーズ、競合情報 |
| マーケティング | 市場分析 | セグメント、チャネル設計 |
| 開発・製造 | 実現可能性 | リソース、技術的制約 |
| 財務 | 数値 | コスト構造、収益性 |
ワークショップの進行例
| 時間 | 内容 | 進め方 |
|---|---|---|
| 0:00-0:10 | 目的共有 | 今日のゴールを説明 |
| 0:10-0:30 | 個人ワーク | 各自で付箋にアイデアを書く |
| 0:30-1:00 | グループ共有 | 付箋をキャンバスに貼り、議論 |
| 1:00-1:30 | 優先順位付け | ドット投票で重要項目を決定 |
| 1:30-2:00 | まとめ | ネクストアクション決定 |
ポイント5:競合のキャンバスも作成して比較する
競合分析のステップ

比較分析シート
| 要素 | 自社 | 競合A | 競合B | 差別化ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 顧客セグメント | 30代ビジネスパーソン | 学生中心 | 40代管理職 | ✓ セグメントが異なる |
| 価値提案 | 短期集中でビジネス英語 | 低価格で日常会話 | ハイエンド、プライベートレッスン | ✓ 明確な差別化 |
| 価格 | 6,980円/月 | 2,980円/月 | 29,800円/月 | ✓ ミドルレンジで競合少 |
この比較で見えてきた「ミドルレンジ × ビジネス特化」という差別化ポイントが、自社の強みになります。
ビジネスモデルキャンバスの事例
理論だけでなく、実際の企業がどう活用しているかを見てみましょう。
事例1:Netflix(サブスクリプションモデルの成功)
Netflixのビジネスモデルキャンバス

| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | 映画・ドラマ好きの個人、ファミリー層(世界2億人以上) |
| 価値提案 | ・豊富なオリジナルコンテンツ ・いつでもどこでも視聴可能 ・レコメンデーションによる新しい作品との出会い |
| チャネル | ・自社Webサイト、モバイルアプリ ・スマートTV、ゲーム機との提携 |
| 顧客との関係 | ・自動化されたパーソナライズ ・継続課金モデル |
| 収益の流れ | ・月額サブスクリプション(990円〜1,980円) ・広告なしの収益モデル |
| キーリソース | ・独自コンテンツ(年間1兆円超の投資) ・レコメンドアルゴリズム ・ビッグデータ |
| キーアクティビティ | ・コンテンツ制作・調達 ・データ分析によるパーソナライゼーション ・ストリーミング技術の最適化 |
| キーパートナー | ・映画スタジオ、制作会社 ・ISP(インターネットプロバイダー) ・デバイスメーカー |
| コスト構造 | ・コンテンツ制作費(最大) ・ストリーミングインフラ ・マーケティング費 |
成功のポイント
- データ活用の徹底:視聴データから「次に見たくなる作品」を予測
- 独自コンテンツへの大胆投資:他社との差別化
- グローバル展開:190カ国以上で展開し、規模の経済を実現
事例2:Uber(プラットフォームビジネスの革新)
Uberのビジネスモデルキャンバス

| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | ・乗客:都市部の移動ニーズがある人 ・ドライバー:副業・本業として稼ぎたい人 |
| 価値提案 | ・乗客:スマホで簡単配車、キャッシュレス、透明な料金 ・ドライバー:柔軟な働き方、安定した収入機会 |
| チャネル | ・モバイルアプリ(乗客用・ドライバー用) |
| 顧客との関係 | ・自動マッチング ・評価システムによる品質管理 ・アプリ内サポート |
| 収益の流れ | ・運賃の25%を手数料として徴収 ・ Uber Eatsなどの派生サービス |
| キーリソース | ・マッチングプラットフォーム ・ブランド力 ・ドライバーネットワーク |
| キーアクティビティ | ・プラットフォーム開発・運営 ・需給マッチングの最適化 ・ドライバー獲得・管理 |
| キーパートナー | ・決済プロバイダー ・地図データ提供企業(Google Maps等) ・自動車メーカー(自動運転の提携) |
| コスト構造 | ・プラットフォーム開発・運用 ・マーケティング(ドライバー・乗客獲得) ・カスタマーサポート |
成功のポイント
- 両面市場の構築:乗客とドライバーの両方に価値提供
- ネットワーク効果:ドライバーが増える→待ち時間短縮→乗客増→ドライバー増
- 規制への対応:各国の法規制と向き合いながら市場拡大
事例3:Amazon(顧客中心主義の徹底)
Amazonのビジネスモデルキャンバス(EC事業)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | ・一般消費者(B2C) ・出店企業(マーケットプレイス) ・Prime会員 |
| 価値提案 | ・圧倒的な品揃え ・最速の配送(当日・翌日配送) ・価格競争力 |
| チャネル | ・Webサイト、モバイルアプリ ・Alexa(音声ショッピング) |
| 顧客との関係 | ・レコメンデーション ・レビューシステム ・Prime会員プログラム |
| 収益の流れ | ・商品販売 ・Prime会費(月額600円/年額5,900円) ・マーケットプレイス手数料 ・AWS(クラウド事業) |
| キーリソース | ・物流ネットワーク ・顧客データベース ・AWSインフラ ・ブランド力 |
| キーアクティビティ | ・在庫管理・物流 ・プラットフォーム運営 ・データ分析 |
| キーパートナー | ・出店企業 ・配送業者 ・決済プロバイダー |
| コスト構造 | ・物流センター運営 ・配送コスト ・技術開発 ・マーケティング |
成功のポイント
- 顧客体験の徹底追求:1-Click注文、当日配送など
- データ活用:購買履歴からのパーソナライズ
- エコシステム構築:EC、Prime Video、AWS、Alexaなど相互連携
事例4:Airbnb(遊休資産の活用)
Airbnbのビジネスモデルキャンバス
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | ・旅行者(宿泊ニーズ) ・ホスト(空き部屋・物件の所有者) |
| 価値提案 | ・旅行者:ユニークな宿泊体験、ホテルより安い ・ホスト:空き部屋で副収入、柔軟な運営 |
| チャネル | ・Webサイト、モバイルアプリ |
| 顧客との関係 | ・レビューシステム ・ホストコミュニティ ・24時間サポート |
| 収益の流れ | ・ゲストから3% ・ホストから3%〜20%のサービス料 |
| キーリソース | ・プラットフォーム ・ブランド ・ホストネットワーク |
| キーアクティビティ | ・プラットフォーム運営 ・信頼性の担保(本人確認、保険) ・ホスト支援 |
| キーパートナー | ・決済プロバイダー ・保険会社 ・写真家(物件撮影) |
| コスト構造 | ・プラットフォーム開発・運用 ・カスタマーサポート ・マーケティング ・保険・安全対策 |
成功のポイント
- 遊休資産の活用:使われていない部屋を収益化
- 体験価値の提供:「住むように旅する」という新しい価値
- コミュニティ形成:ホストとゲストの信頼関係構築
よくある失敗パターンと対策
ビジネスモデルキャンバスを作成する際、多くの人が陥りがちな失敗パターンと、その対策を紹介します。
失敗パターン1:「なんとなくキャンバス」になっている
症状
- 各要素が抽象的で具体性がない
- 「顧客満足度向上」「高品質なサービス」など、誰でも書けることしか書いていない
- 数値が一切ない
悪い例
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | 幅広い年齢層 |
| 価値提案 | 高品質な商品を低価格で提供 |
| チャネル | インターネット |
良い例
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント | 25〜35歳、都市部在住、世帯年収500万円以上の共働き夫婦。平日は忙しく、食材買い出しに時間を割けない |
| 価値提案 | 有機野菜を中心とした食材を、レシピ付きでその日のうちに配送。調理時間15分以内で、2人分3,500円 |
| チャネル | 専用アプリで注文、自社配送網で18〜21時に配達 |
対策:5W2Hで具体化する
| 質問 | 考えるべきこと |
|---|---|
| Who(誰が) | 年齢、職業、年収、ライフスタイル |
| What(何を) | 具体的な製品・サービスの内容 |
| When(いつ) | 利用タイミング、頻度 |
| Where(どこで) | 利用場所、購入場所 |
| Why(なぜ) | 購入・利用する理由、課題 |
| How(どのように) | 実現方法、プロセス |
| How much(いくらで) | 価格、コスト |
失敗パターン2:要素間の整合性が取れていない
症状
- 価値提案とキーアクティビティが噛み合っていない
- 収益の流れとコスト構造のバランスが崩れている
- 顧客セグメントとチャネルがミスマッチ
悪い例
顧客セグメント:高齢者(60代以上)
チャネル:スマホアプリのみ
→ ミスマッチ!高齢者のスマホ利用率は低い
整合性チェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 顧客セグメント ⇔ チャネル | この顧客はこのチャネルにアクセスできるか? |
| 価値提案 ⇔ キーリソース | この価値を提供するリソースは揃っているか? |
| 価値提案 ⇔ キーアクティビティ | この価値を実現する活動が定義されているか? |
| 収益の流れ ⇔ コスト構造 | 利益が出る構造になっているか? |
| キーパートナー ⇔ キーアクティビティ | パートナーに任せる活動は明確か? |
失敗パターン3:一度作って終わり
症状
- 作成後、一度も見直していない
- 環境変化に対応できていない
- 検証せず、仮説のまま放置
対策:検証サイクルを回す

検証の例
| 要素 | 仮説 | 検証方法 | 判定基準 |
|---|---|---|---|
| 顧客セグメント | 30代男性会社員がメインターゲット | アンケート100名 | 70%以上が該当すればOK |
| 価値提案 | 時短が最大の価値 | インタビュー20名 | 15名以上が「時短」を理由に挙げればOK |
| チャネル | Instagram広告が効果的 | A/Bテスト | CPA 3,000円以下ならOK |
| 価格 | 月額6,980円が適正 | 価格感度調査 | 60%以上が「適正」と回答すればOK |
失敗パターン4:競合を意識していない
症状
- 「うちは他とは違う」という思い込み
- 競合調査をしていない
- 差別化ポイントが不明確
対策:競合マッピングで可視化
競合ポジショニングマップ
(要改善)
(プレミアム)
(エコノミー)
(バリュー)
このマップで、自社がどこに位置し、どの領域に勝機があるかを見極めます。
失敗パターン5:数字がない
症状
- 「たくさん」「多く」「安い」など、定性的な表現のみ
- 収益予測やコスト試算をしていない
- 実現可能性の検証ができない
対策:主要数値を明記する
| 要素 | 定性表現(NG) | 定量表現(OK) |
|---|---|---|
| 顧客セグメント | 多くの人 | 国内市場500万人、うち10万人を初年度獲得目標 |
| 価格 | お手頃な価格 | 月額6,980円(競合比20%安) |
| コスト | なるべく抑える | 固定費230万/月、変動費率27% |
| 収益 | 十分な利益 | 初年度売上1億円、営業利益率15%目標 |
無料で使えるビジネスモデルキャンバスのツール・テンプレート
おすすめツール3選
| ツール名 | 特徴 | 料金 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| Miro | ・オンラインホワイトボード ・複数人で同時編集可能 ・テンプレート豊富 | 無料プランあり(3ボードまで) | ★★★★★ |
| Canvanizer | ・シンプルで使いやすい ・ビジネスモデルキャンバス専用 ・PDFエクスポート可 | 完全無料 | ★★★★☆ |
| Google スライド Google スプレッドシート | ・誰でもアクセス可能 ・共有が簡単 ・オフラインでも使える | 完全無料 | ★★★☆☆ |
Miroの使い方(推奨)

ステップ1:アカウント作成
- Miro公式サイトにアクセス
- 「無料で始める」をクリック
- メールアドレスで登録(GoogleアカウントでもOK)
ステップ2:テンプレート選択
- ダッシュボードで「テンプレート」を選択
- 検索窓で「Business Model Canvas」と入力
- 好みのテンプレートを選択して「使用する」
ステップ3:編集
- ダブルクリックで付箋を追加
- ドラッグ&ドロップで移動
- 色分けで優先度を表現
ステップ4:共有
- 右上の「共有」ボタンをクリック
- リンクをコピーして送信
- 編集権限の設定(閲覧のみ or 編集可)
本ブログの独自テンプレートのご案内
以下のテンプレートをダウンロードして、コピーしてご利用ください。
バリュープロポジションキャンバスとの併用
ビジネスモデルキャンバスをさらに強化するツールとして、「バリュープロポジションキャンバス(VPC: Value Proposition Canvas)」があります。
バリュープロポジションキャンバスとは
VPCは、ビジネスモデルキャンバスの「顧客セグメント」と「価値提案」の2要素を深掘りするためのフレームワークです。
構造

使い分けのポイント
| フレームワーク | 使うタイミング | 焦点 |
|---|---|---|
| ビジネスモデルキャンバス | ビジネス全体を設計する | ビジネスモデル全体のバランス |
| バリュープロポジションキャンバス | 価値提案を磨き込む | 顧客の課題と解決策のフィット |
併用の流れ

まとめ:ビジネスモデルキャンバスで事業を加速させよう
この記事のKey Takeaways
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| ビジネスモデルキャンバスとは | 9つの要素でビジネス全体を1枚で可視化するフレームワーク |
| 主なメリット | ①全体像の把握 ②認識統一 ③競合分析 ④高速検証 |
| リーンキャンバスとの違い | BMC=既存事業向け、LC=新規事業向け |
| 作成の流れ | 顧客セグメント→価値提案→チャネル→関係→収益→リソース→活動→パートナー→コスト |
| 成功の鍵 | 完璧を目指さず、検証サイクルを高速で回すこと |
明日から実践すべき3つのアクション
アクション1:まず自社のキャンバスを作ってみる(所要時間:1時間)
- テンプレートをダウンロード
- 記入 ※リアルの場合は付箋を用意
- 70%の精度でまず完成させる
アクション2:チームメンバーと共有し、議論する(所要時間:30分)
- キャンバスを見せながら説明
- 穴や矛盾点を指摘してもらう
- 「この顧客セグメント、本当に正しい?」と問いかける
アクション3:競合のキャンバスを1社分作成する(所要時間:1時間)
- 競合のWebサイト、IR情報を調査
- 推測でも良いのでキャンバスに落とし込む
- 自社との差分を明確にする
最後に
ビジネスモデルキャンバスは、単なるフレームワークではありません。チーム全員が同じ方向を向き、戦略的に事業を前進させるためのコミュニケーションツールです。
完璧を目指す必要はありません。まずは70%の精度で作成し、顧客の声を聞きながら、仮説検証を繰り返してください。そのプロセスの中で、あなたのビジネスは必ず進化します。
明日から、ビジネスモデルキャンバスを使って、あなたの事業を次のステージへと導きましょう。
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