なぜ事業が伸び悩むのか?マーケティング視点で読み解く13の成長阻害要因と対策 - 勝手にマーケティング分析
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なぜ事業が伸び悩むのか?マーケティング視点で読み解く13の成長阻害要因と対策

なぜ事業が伸び悩むのか? マーケティング視点で読み解く13の成長阻害要因と対策 マーケの応用を学ぶ
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はじめに

「広告もやった」「営業も頑張ってる」「それなのに売上が伸びない…」「コストがどんどん増えてきている…」

そんな企業は大抵共通の課題に直面していると筆者は考えています。主に共通するのが、「顧客理解の浅さ」や「提供価値の不明瞭さ」、そして「組織内の戦略実行のズレ」です。

この記事では、筆者が数多くの事業の現場を見てきた中で感じた“企業の成長を阻害する13つの構造的問題”を、市場・顧客/提供価値/組織実行という3つの観点で徹底整理して、若手マーケターが明日から使える視点として、具体的に解説していきます。

企業成長を妨げる13つの問題と構造整理

よくある“事業が伸びない原因”を3つのカテゴリーと13個の課題に分けて整理しました。マーケターとして自社のどこに課題があるのか、まずはこの構造を俯瞰してみてください。

カテゴリー主な課題該当するWho/What/How
市場・顧客の問題1 Who(顧客像やJOB)が不明確
2 ターゲットが限定的すぎて成長余地が少ない
3 複数のターゲットを同じ優先度で追っている
4 イノベーター/アーリーアダプターまでしか届いていない
Whoが未定義または狭すぎる
→市場規模・成長性が足りない or 拡張施策(マス層向けのHow)が不十分
提供価値の問題5 便益が曖昧で弱い
6 顧客のジョブを満たしておらずクレームや解約が多い
7 独自性がなく価格競争に陥っている
8 独自性が「トレードオフ/唯一性/ニーズ一致」の3条件を満たしていない
Whatが弱い/ずれている
→顧客課題との整合性欠如/差別化ポイントの不在
組織・実行の問題9 Who/Whatを定義せずHow(施策)だけが走っている
10 ターゲット、提供価値、施策、KPIの重心が曖昧
11 社内の都合(政治、評価など)で時間とリソースが浪費されている
12 戦略が現場の実態から乖離しており、疲弊感が蔓延
13 社内に蓄積された顧客データや施策データ適切に残っておらず、改善や再現性ある策ができていない。
Howが空回りしている
→戦略と実行の整合性欠如、または顧客ではなく組織都合中心の意思決定

各課題の具体的解説と対処視点

13個の課題について具体的に解説していきます。

1 Who(顧客像やJOB)が不明確

  • 症状の詳細:顧客の年齢、性別、ライフスタイル、購買背景、JOBなどが不明確or社内で共有されておらず、マーケティング施策やセールストークがブレてしまう。広告コピーや訴求軸が場当たり的で、ターゲットに響かない。
  • 根本原因:ペルソナやセグメンテーションの解像度が低く、デモグラだけでターゲットを定義している。顧客インサイトやジョブ(困りごと)を特定する調査が不足している。もしくはその必要性/重要性が不足している人材が少ない。
  • 打ち消す対策
    • ペルソナとジョブをセットで整理し、顧客の行動と課題を具体化する
    • 定性インタビューと定量調査の組み合わせで顧客理解を深める
    • Who→What→Howの流れで訴求開発・施策設計を行う
    • 外部から商品コンセプトを設計できる人間を招聘する

2 ターゲットが限定的すぎて成長余地が少ない

  • 症状の詳細:最初の顧客層(例:都心部の20代IT業界)には好評だが、他セグメントに展開できず成長が鈍化。市場が飽和したあとに新しい需要を作れない。
  • 根本原因:スイートスポットに最初は依存しすぎており、他セグメントへの適応戦略(カスタマイズや別チャネル)が設計されていない。
  • 打ち消す対策
    • 6Rフレームで市場ポテンシャルを広く見直す
    • 既存顧客を起点に、類似セグメントへのペルソナ拡張を行う
    • マス市場に合わせた訴求軸の変換(便益の再定義)を行う

3 複数のターゲットを同じ優先度で追っている

  • 症状の詳細:Who(ターゲットセグメント)が3〜5種類あり、それぞれに同時にリソースを割いて施策を展開しているが、どれも中途半端で刺さりきらず成果が薄い。メッセージやチャネルもリソースも分散し、予算効率が悪い。
  • 根本原因:セグメントごとの「市場性×自社優位性×到達性」などを定量評価せず、なんとなくの感覚で並列に扱っている。ターゲット間で“優先すべき理由”の議論が不足している。
  • 打ち消す対策
    • 各ターゲットに対して6Rフレームで客観評価を行い、優先順位を明確化
    • もっともスイートスポットな1〜2ペルソナにフォーカスし、刺さる訴求設計を深める
    • フェーズ(例:立ち上げ期はペルソナA、拡大期にB)に応じた戦略的なターゲット切り替えを計画する

4 イノベーター/アーリーアダプターまでしか届いていない

  • 症状の詳細:新規性や面白さには反応する層には響くが、マス層には「事例」や「使う理由」が伝わらず売上が伸び悩む。バズるけど安心感がなくて売れないというジレンマ。
  • 根本原因:アーリー層は“感性”や“話題性”で動くが、マジョリティ層は“実利性”や“安心感”が重要。施策やLPがその違いに対応できていない。実際の事例を作れていない。
  • 打ち消す対策
    • 認知獲得後の“導入障壁の解消”(価格・使い方・比較優位など)を強化
    • 導入事例や数値実績など、信頼性を訴求するコンテンツを用意
    • アーリー層とマス層向けにLPやクリエイティブを分ける

5 便益が曖昧で弱い

  • 症状の詳細:「すごそう」「なんとなくよさそう」と思われるが、顧客にとっての実際の利益が不明確であり、顧客に響かない。故に価格競争や露出量、アプローチ量勝負になりやすく、リピートされない。
  • 根本原因:提供便益が「〇〇できます」止まりで、WhyやSo what?の視点が欠けている。RTB(その便益を提供できる根拠)も示されていない。それらを明確化することの重要性を理解できていない。
  • 打ち消す対策
    • What=機能価値+情緒価値+社会的価値で再設計する
    • RTBにあたる技術力、顧客数、導入事例、ユーザーボイスなどを整理
    • 便益の裏付けとして、使用前後比較やデータ視覚化を行う
    • その重要性を理解して設計できる人材を雇用する

6 顧客のジョブを満たしておらずクレームや解約が多い

  • 症状の詳細:最初は利用されても、すぐに離脱。問い合わせ内容が「思っていたのと違う」などネガティブで、継続率が低い。
  • 根本原因:プロダクトの価値不足。表面的なニーズしか拾えておらず、深層のジョブに寄り添えていない。あるいは導入フローが複雑でジョブ完了まで辿り着けていない。
  • 打ち消す対策
    • 「なぜそれを解決したいのか?」まで掘り下げるインサイト調査
    • プロダクトの提供価値の再設計
    • Onboarding設計やカスタマーサクセス設計を強化
    • 解約理由を体系化し、ジョブの見直しやHowの改善に繋げる

7 独自性がなく価格競争に陥っている

  • 症状の詳細:類似サービスと比較され、安さでしか勝負できない。値上げが難しく、粗利が圧迫されていく。
  • 根本原因:顧客が感じる便益に違いがなく、選定基準が“価格”に寄ってしまう。差別化ポイントが競合に模倣されやすい設計になっている。
  • 打ち消す対策
    • POD(差別化要素)の「模倣困難性」を強化する(例:UX、コミュニティ)
    • 安さ以外での競争軸(スピード、簡便性、体験など)を再設計
    • ブランド的価値(価値観・共感軸)を高め、機能以外での支持を得る

8 独自性が「トレードオフ・唯一性・ニーズ一致」の3条件を満たしていない

  • 症状の詳細:「尖ってはいるけどニーズがない」「差別化しているつもりだが自社よがり」などのズレが起きている。
  • 根本原因:PODの設計が主観的で、顧客の“選ぶ理由”になっていない。「トレードオフ性」「唯一性」「需要との一致」の視点が抜けている。
  • 打ち消す対策
    • 顧客ヒアリングで「どんな製品なら選びたくなるか」の感覚を把握
    • PODが3条件(トレードオフ、唯一性、ニーズ一致)を満たすか検証
    • 差別化軸をアップデートするための競合モニタリング体制を作る

9 Who/Whatを定義せずHow(施策)だけが走っている

  • 症状の詳細:誰に、どんな価値を提供する商品かが不明確な状態で次々と新しいマーケティング/セールス施策が行われるが、戦略に一貫性がなく、費用対効果も不明。顧客に伝えるメッセージがバラバラになる。
  • 根本原因:施策起点のマーケティングで、上流の設計がされていない。KPIドリブンではなく、Doドリブンの運用になっている。
  • 打ち消す対策
    • Who(誰に)、What(どんな価値を)、How(どう伝えるか)を明確にしてから施策を設計
    • 施策の前に「なぜこの施策をやるのか?」を常に問い直す習慣を持つ

10 ターゲット、提供価値、施策、KPIの重心が曖昧

  • 症状の詳細:各施策はあるが、それぞれの対象顧客や目的、訴求内容、KPIのどこにフォーカスするのかが不明確で全体の統一感がない。
  • 根本原因:マーケティング全体を俯瞰する「重心設計(どこにフォーカスすればKGIが達成できるのかの設計)」が行われておらず、断片的な施策が乱立。戦略ドキュメントが存在しない、あるいは更新されていない。
  • 打ち消す対策
    • Who/What/How/KPIを一つのシートで一貫管理する設計を導入
    • ターゲットごとに重心を再定義し、KPIをフェーズ別(認知、興味、導入、継続)に設計
    • 定期的にマーケティング重心マップ(例:カスタマージャーニー)をアップデート

11 社内の都合(政治、評価など)で時間とリソースが浪費されている

  • 症状の詳細:社内の管理や評価のための会議体や承認プロセスが多く、現場が顧客向けの施策に集中できない。顧客視点よりも、部門間の調整や上司の意向が優先されてしまう。
  • 根本原因:マーケティングの意思決定が組織のヒエラルキーや社内評価制度に強く影響され、顧客中心の運営が形骸化している。
  • 打ち消す対策
    • 顧客指標(NPS、継続率、解約理由など)を意思決定の最上位に置く
    • マーケターに意思決定権限を持たせ、現場主導の仮説検証サイクルを実装
    • 顧客指標の向上における評価基準を構築

12 戦略が現場の実態から乖離しており、疲弊感が蔓延

  • 症状の詳細:経営層が描く「高すぎる理想の目標」が先行し、現場のリソースや実力と乖離。担当者がモチベーションを失う。
  • 根本原因:トップダウン型で現場ヒアリングやデータを踏まえた戦略設計が行われていない。理想と現実のギャップが解消されないまま放置。投資家から過度な期待とプレッシャー。
  • 打ち消す対策
    • 戦略立案時に現場ヒアリングを組み込み、課題・ボトルネックを吸い上げる
    • 施策の優先順位付けを、達成可能性とインパクトの2軸で評価
    • 成果ベースでなく「プロセス評価」も取り入れ、失敗から学ぶ文化をつくる

13 社内に蓄積された顧客データや施策データが適切に残っておらず、改善や再現性ある策ができていない

  • 症状の詳細:顧客に関する再現性を担保するための情報や、過去にやった施策の結果や背景が引き継がれず。成功要因や失敗要因のナレッジが見えず、PDCAが機能しない。
  • 根本原因:社内の数字管理ばかりで、顧客満足やJOB解決に必要な再現性ある情報を管理しない思考。施策実行後の振り返りやナレッジ共有が制度化されていない。個人ベースの属人的な運用に頼っている。経営による指揮が触れていない。
  • 打ち消す対策
    • 顧客管理に必要な情報の整理とCRMの導入/運用
    • マーケ施策ごとに「目的/KPI/仮説/結果/学び」のログテンプレートを運用
    • ナレッジマネジメントツールやSlack/Notionなどで横展開を標準化
    • 成功施策の型化と再利用の仕組み(施策アーカイブ、勉強会など)を組織に定着させる

まとめ:マーケターが押さえるべき「成長阻害の本質」

事業が伸びない理由は、「広告が弱い」「プロダクトに魅力がない」といった表層的な話ではありません。その背後には、Who(誰に)・What(何を)・How(どうやって)の一貫性の欠如や、顧客視点を見失った組織構造が横たわっています。

項目ポイント
Whoジョブと市場規模を「定量」で評価。6Rで優先順位を明確化
What差別化とRTBの構造を設計し直す。POP・POD・POFを活用
How戦略→施策→KPIの「一貫性」と「重心バランス」を確保

自社の事業で当てはまる箇所があればぜひ参考にしていただければ幸いでございます。

この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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