はじめに
「BtoBマーケティング組織を作りたいけれど、何から手をつければいいかわからない」「人も予算も限られている中で、どう立ち上げればいいのか」――事業会社でマーケティング組織の立ち上げを任されたあなたは、こんな悩みを抱えていませんか?
多くの日本企業では、営業主導の売上構造からの脱却を目指し、マーケティング組織の必要性を感じています。しかし、いざ立ち上げようとすると「何を目標にすべきか」「どんな人材が必要か」「どの施策から始めるべきか」と迷いが生じるのが実情です。
本記事では、BtoBマーケティング組織を0から立ち上げる際に「いつ・何を・どうやるべきか」をフェーズごとに徹底解説します。準備期から拡大期まで、各段階で押さえるべきポイントと具体的なアクションを示すことで、あなたの組織立ち上げを成功に導きます。
読み終える頃には、自社の状況に合わせた組織構築のロードマップが明確になり、明日から取るべき具体的なアクションが見えているはずです。
BtoBマーケティング組織が今、必要な理由
営業だけでは限界がある時代
従来の日本企業では、営業担当者が顧客開拓から受注まで一貫して担当する「営業主導型」のビジネスモデルが主流でした。しかし、以下のような環境変化により、このモデルには限界が見えています。
市場環境の変化:
- 購買プロセスのデジタル化が進み、顧客は営業と会う前に情報収集を完了している
- 意思決定者が増え、購買プロセスが複雑化している
- 競合他社との差別化が困難になっている
営業リソースの限界:
- 営業担当者の訪問可能な顧客数には物理的な限界がある
- 新規開拓と既存顧客フォローの両立が困難
- 属人的な営業活動では再現性・拡張性に欠ける
マーケティング組織は、顧客のニーズを深く理解し、そのニーズに応じた製品やサービスを提供することで、企業の売上向上を支援します。また、デジタルマーケティングの専門的なスキルや技術により、市場環境の変化に対応し、競争力を高めることができます。
マーケティング組織がもたらす3つの価値
| 価値 | 具体的な効果 | ビジネスインパクト |
|---|---|---|
| リード獲得の仕組み化 | デジタル施策により見込み客を継続的に獲得 | 営業の新規開拓工数を削減、商談数を安定化 |
| 顧客理解の深化 | データ分析により顧客のニーズや行動を可視化 | 成約率の向上、LTVの最大化 |
| 営業効率の最大化 | 確度の高いリードを営業に渡すことで商談効率を向上 | 営業の生産性が向上、売上拡大 |
多様化するニーズに対応するためには、マーケティング組織による安定的なリード獲得の仕組み作り、顧客との接点創出から課題解決までのデータ収集やデータ分析が欠かせません。組織全体で一貫したアプローチを実践することで、顧客満足度を高めやすくなります。
BtoBマーケティング組織立ち上げの全体像
マーケティング組織の立ち上げの意義を理解した上で実際の立ち上げを具体的に考えていきましょう。しかしマーケ組織の立ち上げは一朝一夕にはいきません。フェーズごとに適切な目標を設定し、着実にステップを踏むことが成功の鍵と考えています。
4つのフェーズと目安期間

| フェーズ | 期間目安 | 主な目標 | 体制規模 |
|---|---|---|---|
| フェーズ0: 準備・基盤構築期 | 0-3ヶ月 | 戦略策定、初期体制構築 | 1-2名 |
| フェーズ1: 立ち上げ期 | 3-12ヶ月 | リード獲得の仕組み構築 | 2-3名 |
| フェーズ2: 成長期 | 1-2年 | 施策の拡大と精度向上 | 4-6名 |
| フェーズ3: 拡大・最適化期 | 2年以降 | 全体最適化と組織成熟 | 7名以上 |
立ち上げ期、中規模、大規模、それぞれのフェーズごとの組織体制と役割分担が異なります。企業や事業のフェーズに応じて、組織体制は変わります。
それでは各フェーズを詳しく解説していきます!
フェーズ0: 準備・基盤構築期(0-3ヶ月)
このフェーズのミッション
「なぜ・誰に・何を・どうやって」を明確にし、組織の土台を作る
立ち上げ前の準備が、その後の成否を大きく左右します。このフェーズでは、性急に施策を始めるのではなく、戦略の骨格を固めることに集中しましょう。
やるべきこと TOP5
1. マーケティング戦略の策定(Why/Who/What/How)
Why/Who/What/Howの視点を明確にして、マーケティングの方向性を定めます。
Whyの明確化:
Whyは、あなたの商品やサービスがなぜこの世に存在するのかという根本的な存在意義を表します。これは単なる企業理念ではなく、顧客の感情に訴えかける強力な動機づけ要因です。これが自身が訴求のメッセージになることもあります。
| 要素 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 信念・価値観 | なぜその事業を行うのかの根本的な動機 | 「誰もが学び続けられる社会を作る」 |
| 社会的使命 | 世の中にどんな変化をもたらしたいか | 「環境負荷を減らし持続可能な未来を作る」 |
| 顧客への貢献 | 顧客の人生にどんなプラスの影響を与えたいか | 「朝の時間を豊かにして一日を充実させる」 |
Whoの明確化:
【設定項目】
- ターゲット顧客: 業種、企業規模、役職、課題
- ペルソナ: 具体的な人物像とJOB(欲求)
- 市場規模: TAM/SAM/SOM
営業部門、マーケティング部門、製品企画部門合同でワークショップを実施し、顧客を理解することが重要です。営業部門と一緒にペルソナ、カスタマージャーニーをつくることで、より精度の高い設計を実現できます。また、社内に知見がない場合は現在の顧客に直接ヒアリングすることも重要です。
Whatの明確化:
| 要素 | 設定内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 提供価値 | 顧客が得られる具体的な便益 | 機能的価値だけでなく情緒的価値も |
| 独自性(POD) | 競合にない唯一無二の要素 | トレードオフがあるか |
| RTB | 独自性を裏付ける根拠 | 技術、実績、第三者評価 |
Howの明確化:
- コミュニケーション戦略(どのメッセージを、どのチャネルで)
- プロダクト戦略(機能、UI/UX、サポート体制)
- 価格戦略(価格帯、課金モデル)
実践ステップ:
- STEP1: 営業・CS・経営層へのヒアリング(各3名以上)
- STEP2: 顧客インタビュー(既存顧客5社、失注先3社)
- STEP3: 競合分析(主要競合3-5社のWeb/資料を分析)
- STEP4: Who/What/Howを1枚のシートにまとめる
- STEP5: 経営層・営業責任者との認識合わせ
詳しくはこちらの記事も参考にして作成してみてください。テンプレートもDLできます。
2. KGI/KPIの設定
マーケティング組織が「事業貢献」することを前提に、最終目標から逆算した達成するべき指標を設計・宣言することが重要です。
立ち上げ期の典型的なKGI:
- 商談数(SQL数)
- 受注金額
- リード獲得数(MQL数)
KPI設計の考え方:
| 指標レイヤー | 指標例 | 目標設定の考え方 |
|---|---|---|
| KGI(最終目標) | 年間受注金額 ○○百万円 | 経営目標から逆算 |
| 中間KPI | 商談数 月○○件<br/>受注率 ○○% | 過去実績または業界平均 |
| 行動KPI | リード数 月○○件<br/>リード→商談率 ○○% | 仮説ベースで設定 |
実践例: 目標から逆算する
【前提条件】
- 目標: 年間売上 1億円
- 平均単価: 500万円
- 受注率: 25%
【逆算】
受注数 = 1億円 ÷ 500万円 = 20件/年
必要商談数 = 20件 ÷ 25% = 80件/年 → 約7件/月
リード→商談率を15%と仮定
必要リード数 = 7件 ÷ 15% = 約47件/月
3. 初期体制の構築
立ち上げ期は1〜3人ほどの少数精鋭チームであることが大半です。マーケティングマネージャーが戦略立案を行い、自身や他マーケターとともに施策実行を行っていきます。
必要な役割と責任範囲:
| 役割 | 主な責任 | 必要スキル | 調達方法 |
|---|---|---|---|
| マーケティングマネージャー | 戦略立案、経営・営業との調整、予算管理 | 戦略思考、BtoBマーケ経験 | 社内異動or中途採用 |
| マーケター/プランナー | 施策企画・実行、効果測定 | 施策実行力、データ分析 | 社内異動or中途採用 |
| オペレーター | コンテンツ制作、広告運用 | 実務スキル | 外部パートナー活用も可 |
ただし、この立ち上げフェーズでは明確な役割分担に拘らず、全員で施策を推し進めることが重要です。また、人的リソース確保の主な選択肢は、「社内異動」「採用」「外部リソースの活用」です。社内異動や採用の状況に応じて、外部リソースの活用を検討することをおすすめします。
外部パートナー活用の判断基準:
【内製すべき領域】
- 戦略立案
- KPI管理
- 営業との連携
- 顧客理解
【できれば内製したいが、人材が確保できない場合外部委託を検討すべき領域】
- Web制作
- コンテンツライティング
- 広告運用
- デザイン制作
4. 営業との連携体制づくり
マーケティング組織の成否は、営業との連携にかかっています。立ち上げ当初から密な協力体制を構築しましょう。
連携のための3つの仕組み:
| 仕組み | 内容 | 実施頻度 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 定例MTG | リードの質、商談化状況の共有 | 週1回 | 認識のズレを早期発見 |
| リード定義の合意 | MQL/SQLの定義を明文化 | 初期に1回 | リードの質に関する不満を防止 |
| フィードバックループ | 商談結果をマーケに共有 | 都度 | 施策の精度向上 |
リード定義の具体例:
【MQL(Marketing Qualified Lead)の定義】
- 企業規模: 従業員50名以上
- 役職: 部長職以上
- 課題: ○○の課題を抱えている
- アクション: 資料DL or ウェビナー参加
【SQL(Sales Qualified Lead)の定義】
- MQLの条件を満たし、かつ
- 6ヶ月以内の導入意向あり
- 予算確保済み or 確保見込み
5. 最低限必要なツールの選定・導入
成果を数値的に可視化するため、必要なデータが1つのデータベース上で繋がっている環境が重要です。
立ち上げ期の必須ツール(優先順位順):
| ツールカテゴリ | 目的 | 推奨ツール例 | 月額予算目安 |
|---|---|---|---|
| Webサイト・LP作成 | 情報発信の土台 | WordPress、ferret One、Studio | 数万円〜 |
| Web解析 | サイト訪問者の行動分析 | Google Analytics 4(無料)、Google Search Console(無料)、Microsoft Clarity、Ptengine(有料) | 0円 |
| MA(マーケティングオートメーション) | リード管理、育成 | HubSpot、Marketo | 5-20万円 |
| SFA/CRM | 営業との連携、商談管理 | Salesforce、HubSpot CRM | 5-20万円 |
導入の優先順位の考え方:
- Webサイト・GA4: 最優先(情報発信とデータ取得の基盤)
- MA: 毎月のリード獲得が安定してきたら導入 ※2,000〜3,000のハウスリードがあれば導入
- SFA/CRM: 営業が既に使用していれば連携、なければ最初はExcelやGoogleスプレッドシートでも可
このフェーズのチェックリスト
このチェックリストぜひ活用してみてください。
| 項目 | 確認ポイント | 完了 |
|---|---|---|
| 戦略 | Who/What/Howが1枚のシートにまとまっている | □ |
| 戦略 | 経営層・営業責任者とのWho/What/Howの認識が合っている | □ |
| 目標 | KGI/KPIが定義され、各チームの目標値が設定されている | □ |
| 体制 | 戦略と戦術の両方を考案/実行できるマーケターが最低1名いる | □ |
| 連携 | 営業との定例MTGが設定されている | □ |
| 連携 | MQL/SQLの定義が文書化され、営業と合意されている | □ |
| ツール | Webサイトとアクセス解析ツールが用意されている | □ |
| 測定 | 施策を実施後にKGI、KPIの進捗がウォッチできる管理表が用意されている | □ |
フェーズ1: 立ち上げ期(3-12ヶ月)
フェーズ0で立ち上げの準備ができたら、次はマーケティングの基礎となる施策の企画/実行のフェーズです。
このフェーズのミッション
「リード獲得の勝ちパターンを見つける」
できるだけ早く成果を出して、社内に認めてもらわなければ、組織を大きくできません。少人数でも実行力の高いメンバーを優先的にアサインしていく必要があります。
このフェーズでは、様々な施策を小さく試し、自社に合った「勝ち筋」を見つけることに集中します。
体制とリソース配分
推奨体制: 1-3名 + 外部パートナー

リソース配分の目安:
- 戦略・企画: 30%
- 施策実行: 50%
- 分析・改善: 20%
この時に、施策の実行だけにこだわることは非常に危険です。施策の実行前に全体の戦略に沿っているか、施策の実行後にきちんと振り返れているか、この2点を必ず伴わせていきましょう。
優先的にやるべき施策 TOP7
1. Webサイト・LPの整備
最優先で作るべきページ:
| ページ種別 | 目的 | 必須コンテンツ | 優先度 |
|---|---|---|---|
| トップページ | サービス理解の入口 | Who/What/Howが明確に伝わる構成 | ★★★ |
| サービス紹介ページ | 詳細情報の提供 | 機能、価格、導入事例 | ★★★ |
| 資料DL/問い合わせフォーム | リード獲得 | 最低限の入力項目とDLへの期待 | ★★★ |
| 導入事例ページ | 信頼性の醸成 | 具体的な成果、顧客の声 | ★★☆ |
| お役立ちコンテンツ | SEO・リード育成 | ホワイトペーパー、ブログ | ★☆☆ |
LP制作のポイント
【構成の黄金パターン】
1. WHO: 誰のどんな課題を解決するのか(課題提起)
2. WHAT: どんな便益と独自性を提供するのか(価値)
3. HOW: どのような機能、サービスで実現するのか(機能・特徴)
4. PROOF: なぜ信頼できるのか(実績・事例)
5. CTA: 次のアクションを促す
2. リード獲得施策の実行と検証
「どんな訴求/どのチャネルによるリード獲得が自社に合っているのか」勝ち筋を見つけることが重要です。
試すべき施策マトリクス:
| 施策 | 実施難易度 | 効果発現速度 | 初期予算 | 優先順位 |
|---|---|---|---|---|
| リスティング広告 | 低 | 即効性あり | 月10-30万円 | ★★★ |
| コンテンツSEO | 中 | 3-6ヶ月 | 月5-20万円 | ★★★ |
| 共催ウェビナー | 中 | 即効性あり | 月5-15万円 | ★★☆ |
| ホワイトペーパー | 中 | 1-3ヶ月 | 制作費10-30万円 | ★★☆ |
| SNS(LinkedIn等) | 低 | 中期的 | 0-10万円 | ★☆☆ |
| 展示会 | 高 | 即効性あり | 50-200万円 | ★☆☆ |
施策選定の判断基準:
- ターゲット顧客がその施策に接触しているか
- 実施に必要なリソースが確保できるか
- 効果測定が可能か
- 短期間でリターンが望めて仮説検証できるか
実践ステップ(最初の3ヶ月):
Month 1-2:
- リスティング広告(指名キーワード、顕在一般キーワードに限定)
- LP制作(資料DL用1本)
→ CV数、CPAを測定
Month 2-3:
- コンテンツSEO(顕在キーワードの記事2-3本/月)
- ウェビナー(テーマ1本)
→ 流入数、CV率を測定
Month 3:
- 効果の高い施策に予算を集中
- 効果の低い施策は改善or撤退
3. コンテンツ戦略の構築
BtoBマーケティングでは、顧客の購買プロセスに沿ったコンテンツ提供が重要です。
カスタマージャーニーマップ:
| 購買フェーズ | 顧客の状態 | 最適なコンテンツ | KPI |
|---|---|---|---|
| 認知段階 | 課題に気づいていない | ブログ記事、SNS投稿 | PV、SNSエンゲージメント |
| 情報収集段階 | 解決策を探している | ホワイトペーパー、比較記事 | DL数、滞在時間 |
| 比較検討段階 | 複数のサービスを比較 | 導入事例、製品資料 | 資料DL数 |
| 決定段階 | 最終判断をしようとしている | 無料トライアル、デモ | 商談化率 |
コンテンツ制作の優先順位:
優先度1: 商談につながりやすいコンテンツ
→ サービス資料、導入事例、料金表
優先度2: リード獲得につながるコンテンツ
→ ホワイトペーパー、比較資料、チェックリスト
優先度3: SEOで流入を増やすコンテンツ
→ ハウツー記事、用語解説記事
4. リードナーチャリング(育成)の開始
獲得したリードをすぐに営業に渡すのではなく、適切なタイミングまで育成する仕組みを作ります。
シンプルなナーチャリング設計:
| ステップ | タイミング | アクション | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1. サンクス | リード獲得直後 | 自動メール送信(資料添付) | 関係構築 |
| 2. フォロー | 3日後 | 追加情報の提供 | 興味喚起 |
| 3. 事例紹介 | 1週間後 | 類似企業の導入事例送付 | 具体的イメージ喚起 |
| 4. 商談打診 | 2週間後 | インサイドセールスから連絡 | 商談化 |
スコアリングの簡易設計:
【属性スコア】
企業規模: 50名以上 +10点、100名以上 +20点
役職: 部長以上 +20点、役員 +30点
業種: ターゲット業種 +15点
【行動スコア】
資料DL: +10点
ウェビナー参加: +15点
料金ページ閲覧: +20点
事例ページ閲覧: +15点
→ 合計50点以上でSQLとして営業にパス
5. 効果測定とPDCA
マーケティング活動の成果の効果検証や、分析・評価も重要な役割です。組織全体のPDCAサイクルを構築し、業務効率化や課題解決に向けて改善を続けます。
週次で見るべきKPI:
| カテゴリ | 指標 | 見方のポイント |
|---|---|---|
| 流入 | セッション数、新規訪問者数 | 週次の増減トレンド |
| 転換 | CV数、CVR | 施策別・LP別の比較 |
| コスト | CPA、広告費 | 予算消化ペースと効率 |
| 質 | MQL数、SQL数 | リードの質のトレンド |
月次で見るべきKPI:
| カテゴリ | 指標 | アクション |
|---|---|---|
| リード | リード獲得数、目標達成率 | 未達なら施策追加 |
| 商談 | 商談化数、商談化率 | 低ければリード定義見直し |
| 受注 | 受注数、受注率 | 営業プロセスの改善検討 |
改善サイクルの回し方:
【週次】
- KPIダッシュボードの確認
- 異常値の原因調査
- 小さな改善実施
【月次】
- 月次レポート作成
- 営業との定例MTG
- 次月の施策計画立案
【四半期】
- 戦略の見直し
- 予算配分の最適化
- チーム体制の調整
6. 営業へのリードパスとフィードバック収集
マーケティングと営業の連携を強化し、リードの質を継続的に改善します。
リードパスの運用ルール:
| ルール項目 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| パス基準 | SQLスコア50点以上 | 基準の明確化 |
| パス方法 | SFA/CRM経由で自動通知 | 漏れ防止 |
| パス頻度 | 毎日自動 | タイムリーな対応 |
| フォロー期限 | 2営業日以内に初回コンタクト | 温度感維持 |
営業からのフィードバック収集:
【週次MTGでの確認事項】
1. 今週パスしたリードの状況
- 商談化したリード数
- 商談化しなかった理由
2. リードの質についての評価
- 「質が良かったリード」の特徴
- 「質が悪かったリード」の特徴
3. 顧客からのよくある質問
- マーケティングコンテンツで補完すべき情報
7. クイックウィンの創出
できるだけ早く成果を出して、社内に認めてもらわなければ、組織を大きくできません。
立ち上げ期には、小さくても確実な成果を示すことで、組織の存在価値を証明する必要があります。
クイックウィンの戦略:
| 期間 | 目標 | 施策例 | 社内への示し方 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 初リード獲得 | リスティング広告 | 「マーケ経由で○件のリード獲得」 |
| 3ヶ月目 | 初商談創出 | ウェビナー開催 | 「マーケ経由で初の商談化」 |
| 6ヶ月目 | 初受注 | 質の高いリード育成 | 「マーケ経由で初受注、売上○○万円」 |
このフェーズで陥りやすい罠と対策
| 罠 | 症状 | 対策 |
|---|---|---|
| 施策の分散 | あれもこれも手を出して成果が出ない | 2-3施策に絞り込む |
| リードの質問題 | 営業から「リードの質が低い」と不満 | MQL/SQL定義の再確認と調整 |
| 成果の焦り | すぐに結果を求められプレッシャー | クイックウィンを意識的に設計 |
| データ不足 | 改善の判断材料がない | 最低限のツール導入とKPI設定 |
このフェーズのチェックリスト
| 項目 | 確認ポイント | 完了 |
|---|---|---|
| Web基盤 | サービスサイト・LPが公開されている | □ |
| 施策 | 2-3つの施策を実行中 | □ |
| リード | 月次でリード獲得できている | □ |
| 連携 | 営業にリードをパスする仕組みがある | □ |
| 測定 | KPIを週次で確認できている | □ |
| 成果 | 何らかのクイックウィンを示せている | □ |
フェーズ2: 成長期(1-2年)
続いて、マーケティング組織が立ち上がって1-2年の時期に実施するべきことを解説します。
このフェーズのミッション
「勝ちパターンを拡大し、施策の幅を広げる」
ある程度のリードを獲得できるようになったら、さらに施策の幅を広げていく成長フェーズになります。マーケティング手法別に専任のメンバーを増やしましょう。各施策に専門の担当者を配置し、それぞれの成果を最大化することが重要です。
体制とリソース配分
推奨体制: 4-6名 + 外部パートナー

この段階での役割追加:
| 役割 | 主な責任 | 必要性 |
|---|---|---|
| コンテンツマーケター | SEO記事、ホワイトペーパー制作 | 継続的なリード獲得に必須 |
| 広告運用担当 | リスティング、ディスプレイ広告の運用 | 即効性のあるリード獲得 |
| インサイドセールス | リードナーチャリング、初期商談 | リード→商談化率の向上 |
やるべきこと TOP6
1. 効果の高い施策への予算集中
立ち上げ期の検証結果をもとに、ROIの高い施策に予算を集中投下します。
施策評価のフレームワーク:
| 施策 | リード獲得数 | CPA目安 | 商談化率 | 投資判断 |
|---|---|---|---|---|
| リスティング広告(指名) | 30件/月 | 8,000円 | 25% | ★★★ 拡大 |
| リスティング広告(一般) | 50件/月 | 15,000円 | 10% | ★★☆ 最適化継続 |
| コンテンツSEO | 20件/月 | 5,000円 | 20% | ★★★ 拡大 |
| ウェビナー | 40件/月 | 12,000円 | 30% | ★★★ 拡大 |
| SNS | 5件/月 | 20,000円 | 5% | ★☆☆ 縮小or撤退 |
予算配分の再設計:
【Before(立ち上げ期)】
施策A: 20%, 施策B: 20%, 施策C: 20%, 施策D: 20%, 施策E: 20%
→ 均等に配分して検証
【After(成長期)】
効果の高い施策A: 40%
効果の高い施策B: 30%
新規テスト予算: 20%
その他: 10%
→ 実績をもとに傾斜配分
2. コンテンツマーケティングの本格化
最も手が回っていない施策は「SEOコンテンツ・ブログ」。リソースが限られる中、人的制約で重要施策が停滞する実態があります。
この段階で、継続的なリード獲得のためにコンテンツマーケティングを強化します。
コンテンツ制作体制の構築:
| 体制要素 | 内容 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| コンテンツカレンダー | 3ヶ月先までの制作計画 | 月次更新 |
| 制作体制 | 社内ディレクター + 外部ライター | - |
| 品質管理 | レビュープロセスの確立 | 記事ごと |
| 効果測定 | 流入数、CV数、順位の定点観測 | 月次 |
SEO記事の制作目標:
【年間目標】
- SEO記事: 月4-6本(年間50-70本)
- ホワイトペーパー: 四半期1本(年間4本)
- 導入事例: 四半期2本(年間8本)
記事テーマの選定フレームワーク:
| 評価軸 | 高得点の基準 | 重み |
|---|---|---|
| 検索ボリューム | 月間1,000回以上 | ★★★ |
| 競合性 | 上位表示が現実的 | ★★☆ |
| 商材との関連性 | 記事からCVにつながりやすい | ★★★ |
| 購買フェーズ | 比較検討段階のキーワード | ★★★ |
3. MA(マーケティングオートメーション)の高度活用
基本的なリード管理から、より高度なナーチャリングとスコアリングへ進化させます。
MAの活用レベル:
| レベル | 実施内容 | このフェーズでの到達目標 |
|---|---|---|
| Level 1 | 基本的なリード管理 | ✓ 完了済み |
| Level 2 | メールシナリオの自動化 | ★ このフェーズで実装 |
| Level 3 | 高度なスコアリング | ★ このフェーズで実装 |
| Level 4 | ABMの実装 | 次フェーズ |
実装すべきシナリオ例:
| シナリオ名 | トリガー | アクション | 目的 |
|---|---|---|---|
| ウェルカム | 資料DL | 5通のステップメール | 関係構築 |
| 再エンゲージ | 30日間ノーアクション | リマインドメール | 離脱防止 |
| ホットリード | 料金ページ3回閲覧 | ISから即電話 | 商談化 |
| 成約後 | 成約情報連携 | オンボーディングシリーズ | 活用促進 |
スコアリングモデルの精緻化:
【属性スコア(固定)】
企業規模、役職、業種など
【行動スコア(加算)】
+15: 料金ページ閲覧
+20: デモ動画視聴
+25: 導入事例DL
+30: 問い合わせフォーム訪問
【減点スコア】
-10: 30日間アクション無し
-20: 競合メールドメイン判明
4. インサイドセールス(IS)の立ち上げ
BtoBマーケティング組織立ち上げフェーズで求められる組織横断での顧客理解ワークショップの実施や、インサイドセールス部門の立ち上げ支援が重要です。
マーケティングと営業の間に、リードを温める役割としてISを配置します。
ISの役割定義:
| 役割 | 具体的な業務 | マーケとの違い | 営業との違い |
|---|---|---|---|
| リード育成 | ナーチャリング電話・メール | より個別対応 | 訪問しない |
| 初期商談 | ニーズヒアリング | 対話形式 | クロージングしない |
| フィードバック | リードの質を評価 | 顧客の声を直接収集 | より包括的な情報 |
IS立ち上げのステップ:
STEP1: ISの役割とKPIを定義(1-2週間)
STEP2: IS担当者の採用・育成(1-2ヶ月)
STEP3: トークスクリプト・FAQの整備(2-4週間)
STEP4: 少量のリードでテスト運用(1ヶ月)
STEP5: 本格運用開始・継続改善
5. データ基盤の強化
属人的な顧客データ管理体制を脱するべく、全社規模でシステムを導入し、活用促進をしました。案件情報を可視化できるSFAを導入し、マーケティング施策の成果も可視化できるようになりました。
マーケティング施策の効果を正確に測定するため、データ連携を強化します。
構築すべきデータフロー:
Webサイト(GA4)
↓
MA(HubSpot/Marketo等)
↓
SFA/CRM(HubSpot/Salesforce等)
↓
BIツール(Tableau/LookerStudio等)
↓
ダッシュボード(経営報告用)
統合ダッシュボードで見える化すべき指標:
| レイヤー | 指標 | 更新頻度 | 閲覧者 |
|---|---|---|---|
| 経営層向け | 商談数、受注数、ROI | 月次 | 経営層 |
| マネージャー向け | リード数、CPA、商談化率 | 週次 | マーケ・営業マネージャー |
| 実務者向け | 施策別CV数、CVR、滞在時間 | 日次 | マーケター |
6. チーム文化とナレッジの構築
組織が大きくなる前に、チームの文化とナレッジ共有の仕組みを作ります。
ナレッジマネジメントの仕組み:
| 要素 | 内容 | ツール例 |
|---|---|---|
| ドキュメント | 戦略書、施策マニュアル、分析レポート | Notion、Confluence |
| 定例MTG | 週次の進捗共有、月次の振り返り | - |
| ナレッジ共有会 | 成功事例・失敗事例の共有 | 月1回 |
| 1on1 | メンバーの育成とフィードバック | 週1回 |
このフェーズのチェックリスト
| 項目 | 確認ポイント | 完了 |
|---|---|---|
| 体制 | 4名以上の体制になっている | □ |
| 施策 | 効果の高い施策に予算が集中している | □ |
| コンテンツ | 月4本以上の記事を継続公開できている | □ |
| MA | ナーチャリングシナリオが稼働している | □ |
| IS | インサイドセールスが立ち上がっている | □ |
| データ | 施策のROIが可視化されている | □ |
フェーズ3: 拡大・最適化期(2年以降)
最後に、組織の拡大フェーズです。持続的な成長をするために組織を拡大、最適化していきます。
このフェーズのミッション
「組織として成熟し、持続的な成長を実現する」
このフェーズでは、組織としての完成度を高め、マーケティングが事業成長のエンジンとして機能する状態を目指します。
体制とリソース配分
推奨体制: 7名以上 + 外部パートナー
中規模の企業のマーケティング組織では、マーケター・プランナーの2名がリーダーとなり、オペレーター4名のリソースを活用して、施策を推進しています。マーケティングマネージャーは、施策に口出しせず、組織マネジメントに従事しています。

やるべきこと TOP5
1. ABM(アカウントベースドマーケティング)の導入
大型案件や戦略顧客に対して、個別最適化されたアプローチを実施します。
ABM実施のフレームワーク:
| ステップ | アクション | 使用データ | 責任者 |
|---|---|---|---|
| ターゲットアカウント選定 | 売上規模・業種で50-100社を選定 | SFA/CRM | マーケ+営業 |
| アカウント理解 | 組織図、課題、意思決定者を調査 | 企業DB、営業情報 | IS+営業 |
| パーソナライズド施策 | 個別コンテンツ・DM・イベント | MA、広告プラットフォーム | マーケ |
| 営業との連携 | アカウント単位での進捗共有 | SFA/CRM | 営業 |
ABMで実施する施策例:
- ターゲット企業のみに表示されるディスプレイ広告
- 企業ごとにパーソナライズされたLP
- VIP向けのエグゼクティブセミナー
- 個別のお役立ち資料送付
2. マーケティングROIの最大化
費用対効果をより深く検証していく段階になります。広告やコンテンツマーケティングなどの施策費用対効果を計算し、効果的なところに予算・人員を投下していくことができます。
全施策のROIを精緻に測定し、投資配分を最適化します。
ROI測定の高度化:
| 施策 | 投資額(月) | リード数 | 商談数 | 受注数 | 売上 | ROI |
|---|---|---|---|---|---|---|
| リスティング | 50万円 | 80件 | 20件 | 5件 | 2,500万円 | 50倍 |
| SEO | 30万円 | 50件 | 15件 | 4件 | 2,000万円 | 67倍 |
| ウェビナー | 40万円 | 100件 | 30件 | 8件 | 4,000万円 | 100倍 |
アトリビューション分析の導入:
【従来】
ラストタッチ(最後の接点のみ評価)
→ 初期認知施策が過小評価される
【改善】
マルチタッチアトリビューション
→ すべてのタッチポイントに貢献度を配分
3. カスタマーマーケティングの強化
既存顧客への施策を強化し、LTV(顧客生涯価値)を最大化します。
カスタマーマーケティングの領域:
| 領域 | 目的 | 主な施策 | KPI |
|---|---|---|---|
| オンボーディング | 早期活用促進 | ステップメール、個別サポート | アクティブ率 |
| アップセル | 上位プラン誘導 | 機能紹介、活用事例 | アップセル率 |
| クロスセル | 関連商品販売 | レコメンド、バンドル提案 | クロスセル率 |
| リファラル | 紹介獲得 | 紹介プログラム、コミュニティ | 紹介件数 |
4. ブランドマーケティングの展開
短期的なリード獲得だけでなく、中長期的なブランド構築に投資します。
ブランド施策の例:
| 施策カテゴリ | 具体例 | 効果測定 |
|---|---|---|
| 認知拡大 | 業界メディアへの記事寄稿、プレスリリース | メディア露出数 |
| 権威性構築 | 調査レポート発表、業界イベント登壇 | 指名検索数 |
| コミュニティ | ユーザー会、オンラインコミュニティ運営 | エンゲージメント |
| ソートリーダーシップ | 書籍出版、定期的な情報発信 | フォロワー数 |
5. 組織としての成熟
マーケティング組織が持続的に成果を出し続けるための仕組みを整えます。
組織成熟度の指標:
| 要素 | Level 1(立ち上げ期) | Level 2(成長期) | Level 3(成熟期) |
|---|---|---|---|
| 戦略 | マネージャーの頭の中 | ドキュメント化済み | 全社戦略と統合 |
| KPI | 基本指標のみ | 施策別に詳細 | リアルタイム可視化 |
| 人材 | 少数精鋭 | 役割分担明確 | 育成・キャリアパス整備 |
| プロセス | 属人的 | 一部標準化 | 完全に標準化 |
| ナレッジ | 個人に蓄積 | ドキュメント化 | 組織資産として活用 |
人材育成の仕組み:
【キャリアパス】
Jr.マーケター → マーケター → Sr.マーケター → マネージャー
↓ ↓ ↓
専門スキル習得 リーダーシップ 戦略・管理スキル
【育成施策】
- OJT: 実務を通じた学習
- 外部研修: 年間予算を確保
- 資格取得支援: Google広告、HubSpot等
- 1on1: 週次での個別フィードバック
このフェーズのチェックリスト
| 項目 | 確認ポイント | 完了 |
|---|---|---|
| 組織 | 7名以上の体制で役割分担が明確 | □ |
| ROI | 全施策のROIが測定・可視化されている | □ |
| ABM | 戦略顧客への個別施策が稼働している | □ |
| 既存顧客 | カスタマーマーケティング施策がある | □ |
| ブランド | 認知・権威性向上の施策がある | □ |
| 組織成熟度 | プロセスが標準化され、ナレッジが蓄積されている | □ |
よくある失敗パターンと対策
BtoBマーケティング組織の立ち上げでは、多くの企業が同じような失敗を繰り返しています。代表的な失敗パターンとその対策を紹介します。
失敗パターン1: 戦略なき施策乱発
Doばかりを実施し、Doをやり続けることが評価される組織になってしまうことが最も多い失敗の原因です。
症状:
- 「とりあえず広告を出してみよう」「とりあえずSEOをやってみよう」
- Who/What/Howが不明確なまま施策をスタート
- 効果測定の基準がない
なぜ起こるのか:
- 経営層からの「早く成果を」というプレッシャー
- マーケティング=広告という固定観念
- 戦略立案のスキル不足
対策:
| 対策 | 具体的アクション | 効果 |
|---|---|---|
| 戦略ファースト | Who/What/Howを必ず文書化してから施策開始 | 方向性の統一 |
| 仮説の明文化 | 「この施策でXXを達成する」を明記 | 検証可能に |
| 段階的実行 | 小さくテスト→検証→拡大の順守 | リスク低減 |
失敗パターン2: 営業との分断
症状: 営業側は「リードの質が低い」と不満を持ち、マーケティング側は「せっかく獲得したリードが活用されていない」と不満を持つ状態に陥ります。
なぜ起こるのか:
- MQL/SQLの定義が曖昧
- 互いの業務理解が不足
- コミュニケーション不足
対策:
| 対策 | 具体的アクション | 頻度 |
|---|---|---|
| 定例MTG | リードの質・商談状況を共有 | 週1回 |
| リード定義の合意 | MQL/SQLの基準を文書化し合意 | 初期に1回、見直しは四半期ごと |
| 同席営業 | マーケターが商談に同席して顧客理解 | 月2-3回 |
| 相互理解 | 営業はマーケ施策を、マーケは営業プロセスを学ぶ | - |
失敗パターン3: ツールへの過度な依存
症状:
- MAを導入したが使いこなせていない
- ツールの機能の10%も活用できていない
- ツール導入=成果という誤解
なぜ起こるのか:
- ベンダーの営業トークを鵜呑み
- 運用設計が不十分
- スキル不足
対策:
| 対策 | 具体的アクション | タイミング |
|---|---|---|
| 目的ファースト | ツールありきではなく、何を実現したいかから考える | 導入前 |
| スモールスタート | まず基本機能のみ使いこなす | 導入直後 |
| 運用設計 | ツール導入前に運用フローを設計 | 導入前 |
| 研修 | ベンダー研修を必ず受講 | 導入直後 |
失敗パターン4: 短期的成果への過度な期待
症状:
- 1-2ヶ月で成果が出ないと施策を打ち切る
- すぐに結果が出ないと「マーケティングは効果がない」と判断される
- PDCAを回す前に諦める
なぜ起こるのか:
- 経営層のマーケティングへの理解不足
- 適切な期待値設定の失敗
- クイックウィンの設計不足
対策:
| 対策 | 具体的アクション | タイミング |
|---|---|---|
| 期待値設定 | 施策ごとの成果発現時期を明示 | 立ち上げ時 |
| 段階的目標 | 3ヶ月・6ヶ月・1年の目標を設定 | 立ち上げ時 |
| クイックウィン | 早期に小さな成果を示す施策を意図的に設計 | 最初の3ヶ月 |
| 啓蒙活動 | 経営層へのマーケティング教育 | 定期的 |
失敗パターン5: リソース不足の放置
症状: リソースが限られる中、人的制約で重要施策が停滞する実態があります。
- マーケター1人に全てを押し付ける
- 外部リソースの活用を検討しない
- 優先順位をつけずに全てをやろうとする
なぜ起こるのか:
- マーケティング予算が限定的
- 外部パートナー活用への抵抗
- やるべきことの多さへの認識不足
対策:
| 対策 | 具体的アクション | 効果 |
|---|---|---|
| 優先順位づけ | 施策を重要度×緊急度で評価し取捨選択 | リソース集中 |
| 外部活用 | 制作系業務は積極的に外注 | 社内リソースを戦略に集中 |
| 自動化 | ツールで自動化できる業務は自動化 | 工数削減 |
| 段階的拡大 | 成果を示してから増員要求 | 予算獲得 |
あなたの所属する組織がこれらの失敗パターンに該当するようでしたら必ず対策を実施してみてください。
BtoBマーケティング組織立ち上げチェックリスト
上記で解説した各フェーズで確認すべき項目を一覧にまとめました。自社の現在地を確認し、次に何をすべきかの指針にしてください。
全体チェックリスト
| カテゴリ | チェック項目 | フェーズ0 | フェーズ1 | フェーズ2 | フェーズ3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戦略 | Who/What/Howが明確に定義されている | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| 戦略 | 経営層・営業との認識が合っている | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| 目標 | KGI/KPIが設定されている | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| 目標 | 目標達成のための逆算ができている | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| 体制 | 必要な人員が確保されている | 1-2名 | 2-3名 | 4-6名 | 7名以上 |
| 体制 | 役割分担が明確になっている | - | ✓ | ✓ | ✓ |
| 連携 | 営業との定例MTGがある | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| 連携 | MQL/SQL定義が合意されている | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| ツール | Webサイト・解析ツールがある | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
| ツール | MAが導入されている | - | ✓ | ✓ | ✓ |
| ツール | SFA/CRMとMAが連携している | - | - | ✓ | ✓ |
| 施策 | 2-3の主要施策が稼働している | - | ✓ | ✓ | ✓ |
| 施策 | 月次でリード獲得できている | - | ✓ | ✓ | ✓ |
| 施策 | コンテンツを継続的に公開している | - | - | ✓ | ✓ |
| 測定 | 週次でKPIを確認している | - | ✓ | ✓ | ✓ |
| 測定 | 施策のROIが測定できている | - | - | ✓ | ✓ |
| 改善 | PDCAサイクルが回っている | - | ✓ | ✓ | ✓ |
セルフ診断: あなたの組織は今どのフェーズ?
以下の質問に答えて、自社の現在地を確認しましょう。
フェーズ0該当度チェック:
□ BtoBマーケティング組織がまだない、または立ち上げたばかり
□ Who/What/Howが明確になっていない
□ KPI設定ができていない
□ マーケティング専任者が1名以下
フェーズ1該当度チェック:
□ 組織ができて3-12ヶ月程度
□ いくつかの施策を試している最中
□ 月次でリード獲得はできている
□ ただし勝ちパターンがまだ見えていない
フェーズ2該当度チェック:
□ 組織ができて1-2年程度
□ 効果の高い施策がわかってきた
□ リード獲得が安定してきた
□ 体制を拡大していきたい
フェーズ3該当度チェック:
□ 組織ができて2年以上
□ 各施策が安定稼働している
□ マーケティングROIが可視化されている
□ さらなる成長・最適化を目指している
まとめ: Key Takeaways
BtoBマーケティング組織の立ち上げは、一朝一夕にはいきません。フェーズごとに適切な目標を設定し、着実にステップを踏むことが成功の鍵です。
| フェーズ | 期間 | 最重要ミッション | 具体的な成果指標 |
|---|---|---|---|
| フェーズ0 | 0-3ヶ月 | 戦略の土台を固める | Who/What/How文書化、KPI設定完了 |
| フェーズ1 | 3-12ヶ月 | リード獲得の勝ちパターンを見つける | 月次リード獲得、初商談創出 |
| フェーズ2 | 1-2年 | 勝ちパターンを拡大する | 施策の幅拡大、商談数の安定 |
| フェーズ3 | 2年以降 | 持続的な成長を実現する | ROI最大化、組織の成熟 |
明日から取るべき5つのアクション
本記事を読み終えたあなたが、明日から取るべき具体的なアクションをフェーズ別にまとめました。
フェーズ0の方(これから立ち上げる方):
- 営業・CS・経営層へのヒアリング日程を設定する(各3名以上)
- Who/What/Howのテンプレートを用意し、仮説を書き出す
- 必要なKPI項目をリストアップする
- マーケティング組織の必要性を経営層にプレゼンする資料を作る
- 外部パートナー候補をリストアップする
フェーズ1の方(立ち上げ期の方):
- 現在実施中の施策の効果測定結果をまとめる
- 営業との定例MTGで「リードの質」についてヒアリングする
- 効果の低い施策を1つ特定し、改善or撤退を決める
- クイックウィンとして示せる成果を洗い出す
- 次の四半期の施策計画を立案する
フェーズ2の方(成長期の方):
- 各施策のROIを計算し、予算配分を見直す
- コンテンツカレンダーを3ヶ月分作成する
- インサイドセールスの役割定義とKPIを設計する
- MAのナーチャリングシナリオを1本追加する
- チーム内でのナレッジ共有の仕組みを作る
フェーズ3の方(拡大期の方):
- ABM対象アカウントを50-100社選定する
- 全施策のマルチタッチアトリビューション分析を実施する
- カスタマーマーケティング施策を1つ立ち上げる
- 組織のキャリアパスを設計する
- ブランドマーケティング施策を1つ追加する
最後に: 成功の本質は「顧客理解」にある
どのフェーズにおいても、BtoBマーケティングの本質は変わりません。それは**「顧客を深く理解し、その課題解決に全力を尽くすこと」**です。
顧客理解ができていなければ、何をすべきかといったことは考えられません。組織で顧客理解を深め、お客様の購買プロセスを理解することが最初の目標とすべきです。
施策やツールはあくまで手段です。Who/What/Howを明確にし、顧客のJOB(欲求)を理解し、それに応える価値を提供し続けることが、持続的な成長を実現する唯一の道です。
本記事で紹介したフレームワークとステップを参考に、あなたの会社に最適なBtoBマーケティング組織を構築してください。成功を心から応援しています。













