魅力的なブランドを作る7つの要素と3ステップを解説 - 勝手にマーケティング分析
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魅力的なブランドを作る7つの要素と3ステップを解説

魅力的なブランドを作る 7つの要素と3ステップを解説 マーケの基礎を学ぶ
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はじめに:ブランドってロゴや名前だけだと思っていませんか?

「ブランド」と聞いてロゴや商品名を思い浮かべる方は多いはず。でも、実際に消費者が商品を選ぶ理由は「名前」だけではありません。たとえばAppleの製品をなぜ多くの人が選び続けるのか?それはロゴではなく「期待以上の体験」と「信頼」が根底にあるからです。

ブランドは「企業の発信物」ではなく、「消費者の頭の中にあるもの」。この出発点を理解することこそが、マーケティングにおいて非常に重要な前提となります。

本記事では、ブランドの定義を明確にしたうえで、魅力的なブランドに欠かせない構成要素、作り方のステップ、社内外への浸透方法までを徹底解説します。

ブランドとは何か?

ブランドとは、企業や商品に対して消費者が抱くすべての印象や経験の総体です。つまり、

ブランド = 消費者の頭の中にある企業や商品に対しての「イメージ」や「記憶の塊」

であり、企業が「こう思われたい」と発信しているメッセージそのものではないという点が重要です。

ブランドはロゴやスローガンだけでは成り立たず、実際に消費者が触れるすべての体験、情報、コミュニケーションによって形成される「信頼の蓄積」と言えるでしょう。

このようなブランドの捉え方は、カプフェレのブランド・プリズムや、サイモン・シネックの「Whyから始めよ」などの理論とも通じる部分があります。

魅力的なブランドを構成する7つの要素

魅力的なブランドは、見た目やキャッチコピーだけでは成立しません。顧客が一貫した「信頼」と「期待」を持ち続けられるよう、以下の7つの要素が精緻に設計され、相互に補完し合っている必要があります。

構成要素説明
ブランド・アイデンティティ企業の本質的な「らしさ」や「人格」にあたる部分。理念・価値観・文化・歴史から導かれるもので、ブランドの核。たとえば Patagonia の「環境保護志向」や、Apple の「革新性」が該当する。ブランドプリズム(Kapferer)で整理すると、外的・内的要素の統合が重要。
ミッション・ビジョン・バリュー企業の存在意義(なぜこの世にあるのか)、目指す未来、行動指針を示す。社内外に向けて「何のために存在するか」を明確にし、共感と行動の軸を提供。全社員が同じ方向を向くための羅針盤になる。
ビジュアル要素ロゴ、カラー、フォント、パッケージデザインなど。視覚的な統一感を生むことで、ブランドの認知・記憶・信頼を高める。Consistency(統一性)は認識率と信頼形成に直結するため、ブランドガイドラインの整備が必須。例:コカ・コーラの赤と曲線ボトル。
言語的要素ブランド名、スローガン、トーン&マナー、広告コピー、SNS発言など。ブランドの「声(Voice)」や「口調(Tone)」として、人格や価値観を伝える媒体。例:スターバックスのトーンは温かく共感的、Dysonは論理的で科学的。
ブランド体験顧客がブランドと出会い、触れ、利用し、アフターサービスを受けるまでの一連の体験。すべてのタッチポイントが一貫した体験を提供することで、ブランドの信頼性と魅力を向上させる。UX、店舗、EC、広告、カスタマーサポートまでが対象範囲。
ブランド戦略市場でのポジション、ターゲット層、差別化ポイント(USP)を明確にする設計図。POP/POD/POFやSTP分析を用いて、自社が「誰に、何を、なぜ提供するか」を明文化する。戦略が不明瞭なブランドは選ばれない。
ブランド文化社員一人ひとりがブランドの価値観を体現し、日々の行動に落とし込んでいる状態。インナーブランディングによって育成される。文化は外部にも伝播し、結果としてブランド信頼を形成する重要要素。例:ZapposのWOW文化や、ディズニーの「オンステージ」精神。

ブランドの成功は、これら7要素が“矛盾なく”、“一貫して”、“体験として伝わる”状態にあることが条件です。表面だけの戦略ではなく、内側(社員、文化)と外側(顧客、体験)の両面から設計されるべきものです。

魅力的なブランドを作るための3ステップ

魅力的なブランドは偶然では生まれません。計画的かつ戦略的にブランドの基盤をつくり、日々の実行で体験に落とし込んでいくことが大切です。以下の3ステップは、ブランド構築において特に重要なプロセスです。

ステップ1:ブランドの「らしさ」を言語化する

ブランドづくりの出発点は、「自社の本質的な価値観・存在意義・目指す未来」を明確にすることです。

  • ミッション、ビジョン、バリューの定義:Why(存在理由)・Where(目指す未来)・How(価値観)を言葉にする。
  • ブランド・パーソナリティの設定:5つの性格特性(真面目、情熱的、洗練、有能、ワイルドなど)から自社の人格像を明確化。
  • カスタマージャーニーやペルソナの設計:誰にどういうシーンで選ばれるかを具体化することで、「誰に向けたらしさ」かが定まる。

このフェーズは社内の合意形成にもつながるため、経営陣・現場・顧客の声を交えて設計することが望ましいです。

ステップ2:体験・表現に一貫性を持たせる

ブランドは「認識」ではなく「体験」によって形成されます。そのため、以下の観点で一貫性を整える必要があります。

  • ブランドガイドラインの整備:ロゴの使い方、トーン&マナー、言葉遣い、対応方針、フォントや写真素材などを体系化。
  • チャネルごとのトーンの最適化:SNSではカジュアルでも、店舗では丁寧など、文脈に合わせつつもブランドの本質は変えない工夫が必要。
  • CX設計(カスタマーエクスペリエンス):Web・店頭・サポートなどあらゆる接点でのブランド体験が一貫して「らしさ」を伝えているかを検証・改善。
  • 従業員向けトレーニング:CSや営業がブランドに沿った対応ができるように、具体的な行動事例やロールプレイを通じて浸透させる。

ステップ3:社内にもブランドを浸透させる

外向けの戦略やデザインが整っていても、社内の理解と共感がなければ「実行」が伴いません。

  • インナーブランディングの仕組み化:ブランドブック配布、社内ワークショップ、月例共有会などを通じて理念と日常を結びつける。
  • 評価制度や採用への反映:ブランドバリューに沿った行動が報酬や昇進に影響する仕組みにすることで、ブランド文化が内在化。
  • 成功事例の共有:ブランドらしい行動が実際の成果につながったケース(例:顧客の感動体験)を社内で称賛・共有する。
  • ロールモデルの明示:ブランド価値を体現する社員を「ブランドアンバサダー」として社内外で認知させる。

最終的には、「社員が自然にブランドらしく振る舞っている状態」こそが最も強いブランドです。

ブランドエクイティとは?構造・測定・活用の視点

ブランド構成要素が“設計”や“仕組み”だとすれば、ブランドエクイティはそれらの積み重ねによって得られる「成果」としての“価値”です。ブランドに対する信頼や好意、価格プレミアムを支える無形資産とも言えます。

ブランドエクイティの定義

ブランドエクイティとは、消費者の頭の中にあるブランドに対する知覚価値や感情的結びつきの強さを表す概念です。簡単に言えば「このブランドだから選ぶ」という状態そのもの。

KellerのCBBEモデル:ブランドエクイティの構造

ブランドエクイティを構造的に整理した代表的なモデルに、Kellerの「CBBE(Customer-Based Brand Equity)」ピラミッドがあります。

flowchart TD A[ブランド認知<br>Brand Salience] --> B[意味づけ<br>Brand Meaning] B --> C[感情的反応<br>Brand Response] C --> D[ブランド共感・忠誠<br>Brand Resonance]
階層意味
ブランド認知消費者がブランドを認識できるか「名前は聞いたことがある」
ブランド意味ブランドの性能・イメージが伝わっているか「高品質で洗練されている」
ブランド反応感情的な評価・共感があるか「好き・信頼できる」
ブランド共鳴ブランドと深く結びついているか「このブランドしか買わない」

Aakerのブランド資産モデル:5つの構成要素

デービッド・アーカーはブランドエクイティを以下の5つの資産によって説明しています:

ブランド資産説明
ブランド認知消費者がどれだけそのブランドを知っているか
ブランド連想ブランドに対してどのようなイメージが結びついているか
知覚品質競合と比べてどれだけ良いと感じられているか
ブランド・ロイヤルティ同じブランドを繰り返し選ぶ傾向があるか
その他のブランド資産商標、チャネル、独自技術など競争優位を支える無形資産

ブランド構成要素との関係性

ブランドエクイティは、前述の7つのブランド構成要素が統一的に設計され、体験として機能した結果生まれます。

flowchart LR A[ブランド構成要素(7つ)] --> B[一貫したブランド体験] B --> C[ブランドエクイティ(知覚価値・信頼・忠誠)] C --> D[価格プレミアム、売上増、LTV向上、株主価値]

つまり、ブランドエクイティは“結果”であり、“資産”であり、“成果指標”です。

ブランドエクイティを測定するには?

  • 認知率(例:ブランド想起率、助成・非助成)
  • 好意度・信頼度調査
  • NPS(ネット・プロモーター・スコア)
  • 価格プレミアムの受容度(価格弾力性)
  • 顧客LTVやロイヤルティ指標

数値化しづらい要素も多いですが、ブランド診断サーベイやパネル調査、ソーシャルリスニング、再購入率分析などを組み合わせることで可視化が可能です。

ブランドエクイティが高まるとどうなる?

効果内容
価格プレミアムの獲得同じ商品でも高く売れる
顧客の再購入・紹介ロイヤルティが高まり、LTVが向上
広告費効率の改善認知や信頼があるため、CPAが下がる
採用や社員エンゲージメントにも波及ブランド価値がある企業に人が集まりやすくなる

補足:ブランドエクイティ ≠ 単なるブランド力

「有名=ブランドエクイティが高い」ではありません。知っていても「好きでない」「信頼していない」ブランドはエクイティが低いことになります。

よって、“認知されていて、かつ好意・信頼・購入意向が伴っているか”を常にチェックする必要があるのです。

ブランドとは「消費者の頭の中にある印象」そのもの

ブランドとは「企業が発信するもの」ではなく、「顧客が受け取り、記憶し、感情として蓄積したもの」です。この考え方は、マーケティングにおける根本的な認識の転換を求めます。ロゴやスローガン、広告だけではブランドは成立しません。顧客が実際に接触するすべての体験——商品を手に取る、広告を見る、サポートを受ける、店舗に行く——その一つひとつがブランドの“記憶”として積み重なり、最終的に「印象」や「信頼」となって蓄積されていきます。

たとえば、スターバックスを「くつろげる場所」と認識するのは、カフェの空間デザイン、バリスタの対応、商品パッケージ、音楽、コミュニケーションのすべてが一貫しているからです。顧客は“印象の一貫性”を無意識に検出しています。この一貫性が揃っているとき、ブランドは「信頼される存在」になります。

逆に、広告ではプレミアムブランドを謳っていながら実際のサービスが安っぽかったり、社員がブランドらしく振る舞っていなかったりすると、ブランドへの疑念が生まれ、信頼を失います。この“ズレ”が消費者の認知のゆがみを生み、エクイティの毀損につながります。

つまり、ブランドとはロゴでも広告でもなく、顧客の中にある“記憶の地層”。そこに蓄積されたものこそがブランドの正体であり、その“記憶の質”を整えることがマーケティングにおける究極の仕事なのです。

まとめ|Key Takeaways

ポイント内容
ブランドの本質ブランドとは、消費者の頭の中にある印象・記憶・感情の集合体
重要な前提ブランドは「企業の発信物」ではなく「顧客の認識によって決まる」もの
一貫性の重要性どの接点でも同じ“らしさ”を伝え続けることで、信頼が生まれる
7つの構成要素アイデンティティ、ミッション、ビジュアル、言語、体験、戦略、文化が連動
構築ステップ言語化 → 表現と体験の統一 → 社内浸透 の3段階で設計する
ブランドエクイティ一貫したブランド体験が蓄積された結果として「信頼・好意・プレミアム」へ
成功の定義広告なしでも「自然と選ばれる」状態がつくられていること

ブランドは、単なる「装飾」ではありません。それは、顧客との間に築かれた信頼と共感の橋であり、持続的な売上や支持の源泉となる“企業の最大の無形資産”です。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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