なぜ伊勢の電柱には「赤福」の広告が多いのか?広告戦略をマーケティング視点で解析 - 勝手にマーケティング分析
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なぜ伊勢の電柱には「赤福」の広告が多いのか?広告戦略をマーケティング視点で解析

なぜ赤福は 電柱に広告を出すのか 企業を勝手に分析
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はじめに

伊勢地方を訪れると、多くの電柱に「赤福」の広告が掲示されていることに気がつくでしょう。この広告手法は観光地ならではの戦略とも言えますが、実際にどのような効果をもたらしているのでしょうか?本記事では、「赤福」が展開する電柱広告のマーケティング効果を、ブランド認知、プレファレンス(好意度)、購買行動の観点から考察し、その成功要因を分析します。

赤福の電柱広告

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まず赤福とは、伊勢地方の名物土産で、お餅が餡子で包まれた和菓子です。一度は食べたことがある人が多いのではないでしょうか。この赤福は、名古屋地方、そして伊勢地方に行くと駅、電柱、看板など多数の広告を見ることになります。筆者も伊勢に行った時にこの光景が非常に印象的でした。中でも電柱の広告がとんでもない頻度で出現し、いやでも赤福という文字や色が目に入るようになっています。

Xでもよく話題になっていますので掲載します。

なぜ「赤福」は電柱広告を選んだのか?

① 圧倒的な露出による認知向上

  • 電柱広告は、通行する人々の視界に入りやすく、特に車移動が主流の観光地では高い視認性を持つ。
  • 繰り返し目にすることで、エビングハウスの忘却曲線(早く復習をするほど、短時間で記憶を取り戻せること)の理論に基づき、消費者の記憶に残りやすい。

② 電柱広告は「パッシブな刷り込み効果」を生む

  • 「赤福」の電柱広告は、訪問者に意識させることなく、無意識のうちにブランド想起を強化する。
  • 「あれ?そういえば赤福ってよく見かけるな」と思わせることで、消費者の頭の中で「伊勢土産=赤福」という強固なイメージを作り出す。

③ 地域一体型のブランディング

  • 電柱広告は、伊勢地方の街並みに溶け込む形で配置され、**「地域の顔」**としてブランドの地位を確立。
  • これにより、「赤福=伊勢の象徴」というポジショニングを確立し、伊勢に来たら「買わなければならない」という心理を醸成する。

「赤福」広告が消費者心理に与える影響

マーケティングにおいて、消費者の購買行動は 「認知 → 興味 → 欲求 → 購入」 のプロセスを経るとされています。この流れを電柱広告がどのように後押ししているのかを見ていきます。

① 「助成想起」を高める

  • 「助成想起」とは、「伊勢土産といえば?」と聞かれた際に、「赤福」と思い出せる状態を指します。
  • 電柱広告は、その土地に密着した連続的な露出により、消費者の脳内に「赤福」の情報をストックし、助成想起を高める。

② 「プレファレンス(好意度)」の向上

  • 「プレファレンス」とは、ブランドに対する好意のこと。
  • 観光客は「伊勢に来たなら、やっぱり赤福だよね」という感情を持つようになり、土産としての購入確率が向上する。

③ 「選択の容易さ」を作る

  • 人間の脳は、選択肢が多いと決定を先延ばしにする傾向がある(ジャムの法則)。
  • しかし、電柱広告の大量掲出により、「伊勢土産なら赤福」というデフォルト選択を作り、購入決定を容易にする。

他の広告手法との比較:「赤福」の選択が最適な理由

「赤福」はなぜ電柱広告という手法を重点的に実施しているのでしょうか?他の広告手法と比較し、そのメリットを考察します。

広告手法メリットデメリット
電柱広告・継続的な露出で記憶に残りやすい・ローカルな印象を強化・低コストで長期間掲示可能・訴求内容の変更がしにくい
駅や観光案内所でのポスター・観光客の目に留まりやすい・デザインの自由度が高い・設置場所が限られる・広告枠の競争が激しい
SNS広告・若年層にリーチしやすい・ターゲティングが可能・観光地特化のローカル性が弱い
テレビCM・広範囲に認知を広げられる・高コスト・視聴者層が限定的

この比較からもわかるように、「赤福」にとって電柱広告はローカル性、コスト、露出頻度の観点で最適な手法と言えます。ただし、もちろん他の広告も複合的に実施しているためその相乗効果が出ていると言えるでしょう。

まとめ

伊勢地方における「赤福」の電柱広告は、単なるローカル広告ではなく、ブランド認知の強化、購買意欲の向上、選択の容易化といったマーケティングの本質を突いた戦略といえます。特に、観光地特有の購買行動にマッチした広告手法として、高い効果を発揮しています。

このように、広告は単に「露出させればいい」ものではなく、「どこで、誰に、どのように届けるか」が重要です。「赤福」の電柱広告は、ローカルマーケティングの成功事例として、多くの企業が参考にすべきポイントを含んでいるのではないでしょうか?

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

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