失敗する事業計画の7つの特徴と対策法 - 勝手にマーケティング分析
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失敗する事業計画の7つの特徴と対策法

失敗する事業計画の7つの特徴と対策法 マーケの応用を学ぶ
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はじめに

あなたは会社で事業計画を見る機会がありますか?きっと多くの若手マーケターが、上司から「この事業計画どう思う?」と聞かれたり、自分でも新規プロジェクトの計画を立てたりする場面に遭遇しているでしょう。

でも、正直なところ「数字目標の計画だけ降りてきてどう達成するのかの道筋がない」「上から降りてきたこの数字は現実的なの?」と感じることはありませんか?実は、失敗する事業計画には共通した特徴があります。これらのパターンを知っておくことで、あなたは上司からの相談にも的確に答えられるようになりますし、自分自身が計画を立てる際の大きなヒントにもなります。

本記事では、実際のマーケティング現場で見かける「失敗しがちな事業計画」の特徴を詳しく解説し、どうすれば改善できるのかも併せてお伝えします。明日から使える実践的な知識をぜひ身につけてください。

失敗する事業計画の7つの特徴

特徴1:市場規模を無視した過大な売上目標

「市場に100万人しかいないのに、200万人に売る計画を立てている」

これは失敗する事業計画で最もよく見かけるパターンです。例えば、ある企業が新しいダイエットサプリメントを発売する際、「1年目で売上10億円を目指す」という計画を立てたとします。しかし、実際にその商品のターゲット層(30-50代の女性で、ダイエットに関心があり、サプリメントを購入する層)を分析すると、市場規模はせいぜい3億円程度しかなかったというケースがあります。

計画要素失敗例改善案
売上目標市場規模を超えた数値TAM/SAM/SOM分析に基づく現実的な数値
根拠希望的観測実際の市場調査データ
検証方法なし段階的な検証とピボット計画

対策:TAM/SAM/SOM分析の活用

市場規模を正しく把握するためには、以下の3つの指標を使いましょう。

  • TAM(Total Addressable Market):理論上の最大市場規模
  • SAM(Serviceable Addressable Market):実際にアプローチ可能な市場規模
  • SOM(Serviceable Obtainable Market):現実的に獲得可能な市場規模

特徴2:投資家や上層部からの圧力で作られた根拠のない目標

「とりあえず前年比150%で作っておいて」

多くの企業で見られるのが、トップダウンで降りてきた数字をそのまま事業計画に落とし込むパターンです。投資家から「成長率を上げろ」と言われたり、前年実績から機械的に倍率をかけたりした数字が、現場の実態とかけ離れているケースが頻発します。

この問題の根本は、戦略(ゴールへの道筋)がないまま数字だけが先行していることです。「どのような顧客に、どのような価値を提供して、どのように届けて振り向いてもらい、お金を払ってもらうのか」という基本的なマーケティング戦略(Who/What/How)が不明確なまま、売上目標だけが設定されてしまいます。

graph TD A[投資家/上層部のプレッシャー] --> B[根拠のない売上目標] B --> C[現場への一方的な指示] C --> D[戦略不在の事業計画] D --> E[実行時の混乱と失敗] E --> F[目標未達成]

対策:ボトムアップでの戦略構築

まず市場分析と顧客理解から始めて、現場から提案があった現実的な計画と戦略を構築した上で売上予測を立てることが重要です。

特徴3:競合分析の甘さと差別化戦略の欠如

「うちの商品は他にはない」という思い込み

失敗する事業計画でよく見かけるのが、競合分析が表面的で、自社の独自性を社内だけで過大評価しているケースです。例えば、「AIを活用した新しいサービス」と謳っていても、実際には既に多数の競合が同様のサービスを提供していたり、顧客にとって意味のある差別化になっていなかったりします。

分析項目失敗する計画の特徴成功する計画の特徴
競合特定直接競合のみ間接競合・代替手段も含める
差別化要素機能的な違いのみ顧客価値と結びついた違い
参入障壁楽観的すぎる想定現実的なリスク評価
競合対応考慮されていない競合の反応を想定した戦略

対策:包括的な競合分析

競合分析では、直接競合だけでなく、顧客が同じ課題を解決するために使う可能性のあるすべての選択肢を検討する必要があります。

特徴4:顧客理解の浅さとペルソナ設定の曖昧さ

「多くの人が使いたがる商品です」

成功するマーケティングには深い顧客理解が不可欠ですが、失敗する事業計画では顧客像が曖昧で、「競合や代替手段がある中で、なぜその顧客がその商品を買うのか」という根本的な理由が不明確です。

消費者の選択は「カテゴリー選択 → ブランド選択 → プロダクト選択」の順序で行われ、プレファレンス(選好度)を高めることが売上向上の鍵となります。しかし、失敗する計画ではこの消費者心理や行動が十分に考慮されていません。

顧客理解で重要な3つの要素:

  1. 顧客のJOB(解決したい課題):なぜその商品カテゴリーを選ぶのか
  2. 購買の意思決定プロセス:どのように比較検討するのか
  3. プレファレンスの源泉:なぜその商品を選ぶのか

特徴5:マネタイズモデルの不透明さ

「とりあえずユーザーを集めてから考える」

特にスタートアップや新規事業でよく見られるのが、「まずはユーザー数を増やして、後から収益化を考える」という計画です。確かに一部のプラットフォーム事業では有効な戦略ですが、多くの場合、収益化の道筋が不明確なまま進めると資金ショートのリスクが高まります。

収益モデルメリットデメリット適用条件
広告モデル初期ハードル低大量のユーザーが必要エンゲージメント高い媒体
サブスクリプション安定収益継続価値の提供が必要定期利用されるサービス
取引手数料スケールしやすいプラットフォーム構築が必要マッチング系サービス
一回購入収益化が早いリピート施策が重要明確な価値のある商品

特徴6:リソース配分の現実性の欠如

「予算も人員も何とかなる」

事業計画では売上目標ばかりに注目しがちですが、その目標を達成するために必要なリソース(人員、予算、時間)の見積もりが甘いケースが多くあります。

よくあるリソース配分の失敗例:

リソース失敗例現実的な配分
マーケティング予算売上の1-2%新規事業なら売上の20-30%
人員計画現在の延長線上事業フェーズに応じた専門性
開発期間楽観的すぎる見積もりバッファを含めた現実的な期間
運転資金売上立ち上がりまでの資金不足キャッシュフロー分析に基づく必要資金

また、必要なリソースを見積もるためには、戦略、戦術が明確になっている必要があります。それなしにリソースは計算できません。

特徴7:KPIとマイルストーンの設定ミス

「売上だけを追いかける」

失敗する事業計画では、売上や利益といったKGIしか設定されておらず、その達成に向けたKPIやKAIが不明確です。

例えば、一般的な売上の方程式で考えると、売上は以下の要素に分解できます:

売上 = 人口 × 認知率 × 配荷率 × 過去購入率 × エボークトセット率 × 年間購入率 × 購入個数 × 購入頻度 × 購入単価

この各要素をKPIとして設定し、定期的にモニタリングすることが重要です。

graph LR A[人口] --> B[認知率] B --> C[配荷率] C --> D[過去購入率] D --> E[エボークトセット率] E --> F[年間購入率] F --> G[購入個数] G --> H[購入頻度] H --> I[購入単価] I --> J[売上]

成功する事業計画の作り方

では、成功する事業計画はどのように作成すれば良いのでしょうか。

1. 市場分析から始める

事業計画の第一歩は、徹底した市場分析です。単に市場規模を調べるだけでなく、以下の観点から分析を行います。

市場分析の5つのポイント:

分析項目具体的な調査内容活用する手法
市場規模TAM/SAM/SOM分析政府統計、業界レポート
成長性市場の成長率とトレンド時系列データ分析
顧客セグメント詳細なペルソナ分析インタビュー、アンケート
競合状況直接・間接競合の分析競合調査、SWOT分析
参入障壁新規参入の難易度専門家ヒアリング

2. 顧客理解を深める

顧客理解は、マーケティング戦略の核心です。森岡毅氏が強調するように、消費者の脳内で「そのブランドを選ぶ理由」を形成することが重要です。

顧客理解の3ステップ:

  1. 消費者理解:なぜそのカテゴリーを選ぶのか、なぜそのブランドを選ぶのかを解き明かす
  2. ブランド設計の仮説構築:Who/What/Howで構成されるブランドエクイティピラミッドを仮説で作る
  3. マーケティングコンセプトの策定:プレファレンスを最大化する便益を設定

Who/What/Howについて、どなたでも活用できるテンプレートをご用意しています。ご興味ある方は下記からダウンロードください。

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3. 段階的な検証プロセスの設計

成功する事業計画では、大きなリスクを取る前に小さく検証するプロセスが組み込まれています。

検証段階目的手法判断基準
コンセプト検証アイデアの妥当性確認インタビュー、アンケートターゲット顧客の反応
プロトタイプ検証商品・サービスの有効性確認MVP、β版テスト使用継続率、満足度
市場検証収益性の確認限定販売、テストマーケティング購入率、LTV/CAC
スケール検証拡大可能性の確認段階的拡大成長率、オペレーション効率

4. 現実的なリソース計画

事業計画の実行可能性を高めるためには、必要なリソースを現実的に見積もることが重要です。

リソース計画の要素:

リソース種別計画のポイント注意点
人員事業フェーズに応じたスキル設計採用難易度と教育期間を考慮
予算マーケティング、開発、運営費の詳細積算想定の1.5倍のバッファを確保
時間各マイルストーンまでの現実的な期間設定外部要因による遅延リスクを考慮
パートナー必要な外部リソースの特定契約条件と依存度リスクの評価

実際の失敗事例から学ぶ教訓

事例1:フードデリバリーサービスの失敗

ある企業が新しいフードデリバリーサービスを開始する際、以下のような問題のある事業計画を立てました。

失敗した計画の内容:

  • 1年目で月間50万オーダーを目標設定
  • 配送エリアは全国47都道府県
  • 差別化要素は「30分以内配送」のみ

問題点:

  • 既存大手(Uber Eats、出前館など)の市場シェアを過小評価
  • 配送ネットワーク構築に必要な投資額を大幅に過小見積もり
  • 30分配送を実現するオペレーション設計が不十分

結果: サービス開始から6ヶ月で撤退。初期投資の大部分を回収できず。

事例2:BtoB SaaSツールの失敗

中小企業向けの業務効率化SaaSツールを開発した企業の事例です。

失敗した計画の内容:

  • 「中小企業は業務効率化に困っている」という仮説のみで開発開始
  • 年間売上目標3億円(月額1万円×2,500社)
  • マーケティング予算は売上の5%のみ

問題点:

  • 実際の顧客ニーズ調査、解像度が不十分
  • 既存の競合ツールとの差別化が不明確
  • BtoB営業に必要なマーケティング投資を過小評価

結果: 年間契約企業数は目標の10%程度にとどまり、事業縮小。

まとめ:成功する事業計画を作るためのkey takeaways

失敗する事業計画の特徴を理解し、対策を講じることで、あなたのマーケティング戦略はより現実的で実行可能なものになります。以下のポイントを常に意識してください。

重要なポイント:

  • 市場規模を正確に把握し、現実的な売上目標を設定する
  • 投資家や上層部からの圧力に屈せず、戦略に基づいた計画を立てる
  • 競合分析を徹底し、明確な差別化戦略を構築する
  • 深い顧客理解に基づき、プレファレンス向上の施策を設計する
  • マネタイズモデルを明確化し、収益の道筋を具体的に描く
  • 必要なリソースを現実的に見積もり、段階的な投資計画を立てる
  • 売上だけでなく、プロセス指標も含めたKPI設計を行う

これらの要素を組み合わせることで、失敗リスクを大幅に減らし、成功確率の高い事業計画を作ることができます。明日からあなたのマーケティング業務に活かしてみてください。

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この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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