SHIROが選ばれる理由:自然派コスメ市場で愛される秘密を解明 - 勝手にマーケティング分析
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SHIROが選ばれる理由:自然派コスメ市場で愛される秘密を解明

SHIROが選ばれる理由:自然派コスメ市場で愛される秘密を解明 商品を勝手に分析
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はじめに

マーケティング担当者のあなたは、「なぜ消費者は数ある化粧品ブランドの中から特定のブランドを選ぶのか」という疑問を抱いたことはありませんか?特に、激戦区である化粧品業界において、どのような要素が消費者の心を掴み、継続的な支持を得られるのか。これらの答えを知ることは、自社ブランドの競争力向上に直結する重要な知見となります。

本記事では、自然派コスメティックブランド「SHIRO」を例に、このブランドが消費者から選ばれる理由を体系的に分析していきます。この分析を通じて、以下のメリットを得ることができるでしょう。

まず、自然派化粧品市場における差別化戦略の実践的な手法を学ぶことができます。SHIROがどのようにして「ナチュラル」という概念を独自に解釈し、消費者に価値を提供しているのかを詳しく解説します。次に、ブランドストーリーとプロダクトの一貫性がいかに消費者の心理に働きかけているかを理解できます。最後に、他業界でも応用可能な顧客体験設計の原則を発見することができるでしょう。

それでは、SHIROが実践するマーケティング戦略から、あなたのビジネスにも応用できる実践的な知見を探っていきましょう。

1. SHIROの基本情報

Screenshot

ブランド概要

SHIROは、株式会社シロが運営する自然派コスメティックブランドです。1989年に北海道砂川市で土産品製造業として創業した株式会社ローレルを前身とし、2009年に自社ブランド「LAUREL」を立ち上げたのがブランドの始まりです。2015年にブランド名を「shiro」に変更し、2019年には現在の「SHIRO」にリブランディングを行いました。

ブランドの特徴は、素材のこと、製品のことを最も理解している自分たち自身が本当に"毎日使いたい"と思えるものを届けるために、企画から開発、製造、販売に至るまですべての工程を自ら手掛けるプロダクトアウトの姿勢にあります。厳選された天然成分や旬の素材を取り入れたスキンケア、強い香りが苦手な人でも使いやすいフレグランスが特徴で、特にフレグランス分野では日本の香水市場に新しい風を吹き込んだブランドとして評価されています。

企業データ

  • 企業名: 株式会社シロ
  • 本社所在地: 東京都港区
  • 創業: 1989年(株式会社ローレルとして)
  • 現代表取締役社長: 福永敬弘氏(2021年7月就任)
  • 従業員数: 639名(2025年3月現在)
  • 企業サイト: https://hello.shiro-shiro.jp/

主要製品・サービスラインナップ

SHIROは現在、フレグランス、スキンケア、メイクの3カテゴリー、260SKUを展開しています。特徴的なのは、売り上げの過半数を占めるフレグランス分野で、代表的な「サボン」をはじめとする日本人の繊細な感性に合わせた香りの商品群を提供しています。

  • フレグランス: オードパルファン、ボディミスト、ルームフレグランス
  • スキンケア: 化粧水、乳液、美容液、クレンジング
  • メイク: ファンデーション、リップ、アイシャドウ、チーク

特に注目すべきは、顧客層が10~60代以上と幅広く、店によっては売上高の3割近くが男性客による購買という点で、これは一般的な化粧品ブランドでは珍しい現象と言えるでしょう。

業績データ

SHIROの成長ぶりは目覚ましく、2014年の売上は7億7,000万円、営業利益が1,000万円だったのが、2024年は年商180億円強と、10年間で20倍に成長しております。これは化粧品業界の中でも特筆すべき成長率です。

店舗展開についても積極的で、国内28店舗、海外3店舗(台湾、韓国、英国)を展開し、ECでは国内と海外4カ国・1地域(米国、台湾、韓国、中国、英国)で販売しています。

これほどSHIROが選ばれている理由について、以下で明らかにしていきましょう。

2. 市場環境分析

市場定義:顧客のジョブ(Jobs to be Done)

まずはSHIROが所属している市場カテゴリーが顧客の何を解決しているのかを考えてみましょう。

自然派化粧品市場が解決する主な顧客のジョブは以下の通りです:

  1. 安全で肌に優しい美容ケアを実現したい: 敏感肌や肌トラブルに悩む消費者が、化学合成成分による刺激を避けながら美容効果を得たいという欲求
  2. 自分らしさを表現しながら美しくありたい: 画一的な美の基準ではなく、個性や価値観を反映した美容選択をしたいという欲求
  3. 環境や社会に配慮した消費行動を取りたい: サステナブルな生活を送りたい、地球環境に優しい選択をしたいという価値観に基づく欲求
  4. 日常に上質で心地よい体験を取り入れたい: 毎日のルーティンに五感を満たす豊かな体験を求める欲求

自然派・オーガニック化粧品市場は、コロナ禍の2020年度にあっても、前年度比100.8%で微増という力強さを示し、社会におけるサステナブルやウェルビーイングへの関心の高まりが追い風となっています。特に近年は、これらのジョブの優先度が全世代で高まっており、市場拡大の原動力となっています。

矢野経済研究所

競合状況

自然派化粧品市場における主要プレイヤーとその特徴を整理すると以下のようになります:

  • 海外高級ナチュラルブランド(イソップ、ジュリーク、ヴェレダなど):確立されたブランド力と専門性
  • 国内大手の自然派ライン(ファンケル、ちふれ、無印良品など):安定した品質とアクセシビリティ
  • 新興D2Cブランド(ビープル バイ コスメキッチン、エトヴォスなど):デジタルネイティブなアプローチ
  • 百貨店系セレクトブランド:キュレーション力とプレミアム体験

この中でSHIROは、「北海道発の自然派ブランド」という独自のルーツと、「フレグランスを軸とした総合ブランド」という位置づけで差別化を図っています。

POP/POD/POF分析

次に、このカテゴリーで戦って勝っていくために必要な要素を整理していきましょう。

Points of Parity(業界標準として必須の要素)

  • 自然由来成分の使用と安全性の担保
  • 肌への優しさと基本的なスキンケア効果
  • 環境配慮に関する最低限の取り組み
  • 品質管理と製造工程の透明性
  • ブランドストーリーと価値観の明示

Points of Difference(差別化要素)

  • 北海道という明確な原産地ブランディング
  • フレグランスを主軸とした感性的アプローチ
  • 自社工場での一貫製造による品質コントロール
  • 性別や年代を超越した幅広い支持層
  • 観光施設との融合によるブランド体験の提供

Points of Failure(市場参入の失敗要因)

  • 自然派という訴求だけでの差別化不足
  • 製造コストの高さによる価格競争力の欠如
  • ブランドストーリーの希薄さや一貫性の欠如
  • 流通チャネルの確保困難
  • 継続的な商品開発力の不足

SHIROは、これらのPOPを確実に押さえながら、北海道という土地性と感性的な商品体験という独自のPODを最大限に活用する戦略を展開しています。

PESTEL分析

次に、このカテゴリーは各視点で見たときに追い風なのか、向かい風なのかを見ていきましょう。

Political(政治的要因)

  • 機会:化粧品の安全性規制強化による自然派への注目、地方創生政策による地域ブランド支援
  • 脅威:輸入規制や成分規制の変更による調達コスト増

Economic(経済的要因)

  • 機会:プレミアム消費への回帰、2023年度の国内化粧品市場規模が前年度比104.6%の2兆4,780億円と回復基調
  • 脅威:原材料価格の高騰、円安による輸入コスト増

Social(社会的要因)

  • 機会:サステナブルやウェルビーイングへの関心の高まり、男性美容市場の拡大
  • 脅威:韓国コスメなどアジア系ブランドとの競争激化

Technological(技術的要因)

  • 機会:SNSマーケティングの浸透、ECプラットフォームの進化
  • 脅威:新技術による代替品の出現、デジタル化対応の遅れ

Environmental(環境的要因)

  • 機会:環境意識の高まりによる自然派化粧品への追い風
  • 脅威:気候変動による原料調達の不安定化

Legal(法的要因)

  • 機会:オーガニック認証制度の整備による市場の信頼性向上
  • 脅威:化粧品表示規制の厳格化によるコンプライアンス負担増

この分析から、SHIROは社会的・環境的要因から大きな追い風を受けていることがわかります。特に、2024年度の自然派・オーガニック化粧品市場規模が前年度比104.9%の1,867億円と予測される中、社会の価値観変化がSHIROのビジネスモデルを強力に後押ししているのです。

graph TB A[化粧品市場全体<br/>2兆4,780億円] --> B[自然派/オーガニック<br/>1,867億円<br/>約7.5%] A --> C[一般化粧品<br/>約2兆3,000億円] B --> D[SHIRO<br/>フレグランス中心<br/>年平均成長率120%] B --> E[競合ブランド群] F[追い風要因] --> B F --> G[サステナブル志向] F --> H[ウェルビーイング意識] F --> I[男性美容市場拡大] F --> J[体験価値重視]

3. ブランド競争力分析

続いて、SHIRO自体の強み、弱みは何で、それらが今の外部環境の中でどう活かしていけるのか、いくべきなのかを見ていきましょう。

SWOT分析

Strengths(強み)

  • 北海道という明確な原産地ブランディングと自社工場での一貫製造
  • フレグランスを軸とした独自の商品開発力と感性的アプローチ
  • 年平均成長率約120%という高い成長実績とブランド認知度
  • 男女・年代を超えた幅広い顧客層の獲得
  • 百貨店での若年層や男性の集客力の高さ
  • 創業者のビジョンと一貫したプロダクトアウトの哲学

Weaknesses(弱み)

  • 自然派化粧品市場内での限定的な市場規模(全体の約7.5%)
  • 製造コストの高さによる価格帯の制約
  • 地方拠点による物流・人材確保の課題
  • ECチャネルでの競合との差別化不足
  • 2019年のリブランディング時の炎上に見られるブランドコミュニケーションのリスク

Opportunities(機会)

  • サステナブルやウェルビーイングへの関心の高まりによる市場拡大
  • 男性美容市場の成長とジェンダーレス美容トレンド
  • インバウンド需要の回復と海外展開の加速
  • 「みんなの工場」のような体験型施設による新たな顧客接点創出
  • デジタルマーケティングとD2C戦略の強化機会

Threats(脅威)

  • 韓国コスメをはじめとするアジア系ブランドの急成長
  • 大手化粧品メーカーの自然派ライン強化
  • 原材料価格高騰による収益性圧迫
  • 海外と比較した日本の自然派化粧品市場の成長スピードの緩やかさ
  • 新興D2Cブランドとの競争激化

クロスSWOT戦略

SO戦略(強みを活かして機会を最大化)

  • フレグランスの強みを活かして男性・ジェンダーレス市場での存在感を拡大
  • 北海道ブランドと体験型施設を連携させたインバウンド需要の取り込み
  • 一貫製造による品質の高さをサステナビリティ訴求に活用

WO戦略(弱みを克服して機会を活用)

  • デジタルマーケティング強化によりEC での差別化と認知拡大を実現
  • 海外展開加速により限定的な国内市場規模の制約を突破
  • ブランドコミュニケーション戦略の洗練化によりリスク管理を強化

ST戦略(強みを活かして脅威に対抗)

  • 独自の原産地ブランディングによりアジア系ブランドとの差別化を強化
  • 高い成長実績と顧客ロイヤルティで大手の参入に対抗
  • プロダクトアウトの哲学を貫くことで価格競争を回避

WT戦略(弱みと脅威の両方を最小化)

  • 製造効率化とサプライチェーン最適化によりコスト競争力を向上
  • 海外市場での成長モデル確立により国内市場の成長鈍化に対応
  • ブランドコミュニケーションの透明性向上により競合の参入圧力に対抗
graph LR subgraph SO戦略 A[フレグランス / 男性市場] B[北海道 / インバウンド] C[製造力 / サステナブル] end subgraph WO戦略 D[デジタル / 認知拡大] E[海外展開 / 市場拡大] F[コミュニケーション改善] end subgraph ST戦略 G[原産地 / 差別化] H[成長実績 / 対抗力] I[哲学 / 価格回避] end subgraph WT戦略 J[効率化 / コスト改善] K[海外 / 成長補完] L[透明性 / 競争対抗] end

この分析から、SHIROは強みである「北海道ブランド」と「フレグランス軸」を活かしながら、デジタル化と海外展開という方向性で弱みを克服していくことが有効だと考えられます。特に、サステナブル志向の高まりという環境変化は、SHIROの製造哲学と非常に親和性が高く、大きな成長機会となっているのではないでしょうか。

4. 消費者心理と購買意思決定プロセス

続いて、SHIROの顧客はなぜこのブランドを選ぶのか、その購買行動の構造を複数パターンで見ていきましょう。

オルタネイトモデル分析

パターン1:敏感肌に悩む20〜30代女性

  • 行動: SHIROの店舗でスキンケアやメイク製品をカウンセリングを受けながら購入する
  • きっかけ: 既存の化粧品による肌荒れ、友人やSNSでのSHIRO使用体験の情報
  • 欲求: 肌に優しく安全な化粧品で美しくなりたい、肌トラブルを改善したい
  • 抑圧: 自然派化粧品は効果が薄いのではないかという不安、価格の高さへの懸念
  • 報酬: 肌状態の改善という実感、安心して使えるという心理的安全感

パターン2:香りに特別なこだわりを持つ幅広い年代の消費者

  • 行動: SHIROのフレグランス商品を定期的にリピート購入し、季節や気分に合わせて使い分ける
  • きっかけ: 店舗での香りとの偶然の出会い、「サボン」など定番商品の口コミ
  • 欲求: 自分らしさを表現できる香りを見つけたい、日常に上質な香りの体験を取り入れたい
  • 抑圧: 強すぎる香りへの周囲の目、高価格帯への躊躇
  • 報酬: 性別関係なく、香水初心者のような方にも好評な使いやすさ、自己表現としての満足感

パターン3:価値観重視の消費を行う環境意識の高い消費者

  • 行動: SHIROの環境配慮やストーリーに共感してブランド全体を支持し、長期的な愛用者となる
  • きっかけ: ブランドの製造哲学や北海道での取り組みについての情報接触
  • 欲求: 自分の消費行動を通じて環境や社会に良い影響を与えたい
  • 抑圧: 自然派化粧品は偽善的なマーケティングではないかという疑念
  • 報酬: 価値観に一致した消費行動による自己肯定感、「シロ エコシステム」のような取り組みへの参加感

このオルタネイトモデル分析からわかることは、SHIROの顧客は単に「自然派化粧品が欲しい」のではなく、「安心」「自己表現」「価値観の実現」という深層的な欲求を満たす手段としてSHIROを選択しているということです。特に香りという感性的な要素が、理性的な判断を超えた情緒的な結びつきを生み出していることが特徴的ですね。

本能的動機

続いて、このブランドが人間のどの本能に刺さっているのかも整理していきます。

ドーパミン回路を刺激する要素

  • 期待と発見: 季節限定商品や新商品への期待感、店舗での香りとの新しい出会い
  • 達成感: 肌状態の改善という目に見える結果、理想的な香りとの出会い
  • 社会的承認: 洗練されたブランド選択による周囲からの評価、価値観の共有

生存本能への訴求

  • 安全確保: 肌に優しい成分による安全性の担保、化学合成成分からの回避
  • 健康維持: スキンケア効果による肌の健康状態向上
  • リスク回避: 信頼できるブランドの選択による失敗回避

生殖本能(社会的・魅力的)への訴求

  • 魅力向上: 香りやメイクによる自己魅力の増大
  • 社会的地位: 洗練されたブランド選択による社会的ステータスの表現
  • 個性表現: 香りを通じた独自性の演出

8つの欲望への訴求分析

SHIROは特に以下の欲望に強く訴求しています:

  • 安らぐ: 自然由来成分による安心感、優しい香りによるリラクゼーション効果
  • 決する: 豊富な香りの選択肢から自分好みを選ぶ自律性、価値観に基づく消費選択
  • 高める: 洗練されたブランド選択による自己価値の向上、美容への投資による自己成長
  • 伝える: 香りを通じた感情や個性の表現、ブランドストーリーへの共感の共有
  • 物語る: 北海道という土地の物語、ブランドの成長ストーリーへの参加感

結論として、SHIROは単なる化粧品ブランドを超えて、顧客の「安全性への欲求」「自己表現への欲求」「物語への参加欲求」という複数の本能に同時に訴求するブランドとして機能していると筆者は考えます。特に香りという要素が、理性的判断を超えた感情的な結びつきを生み出し、継続的な愛用につながっているのではないでしょうか。

5. ブランド戦略の解剖

これまで整理した情報をもとに結局、SHIROはどういう人のどういうジョブに対して、なぜ選ばれているのか、そしてどうその価値を届けているのかをまとめていきます。

Who/What/How分析

パターン1:フレグランス愛好家向け戦略

  • Who(誰に): 香りに特別なこだわりを持つ10〜60代の幅広い層(男女問わず)
  • Who(JOB): 自分らしさを表現できる香りで日常に上質な体験を取り入れたい
  • What(便益): 強い香りが苦手な人でも使いやすい、そこはかとなく香る使いやすさ
  • What(独自性): 日本人の繊細な感性に合わせた香りの設計、フレグランス初心者でも使いやすい処方
  • What(RTB): 自社工場での一貫製造による品質管理、天然成分を活用した優しい処方
  • How(プロダクト): 「サボン」をはじめとする定番香りから季節限定まで多様なラインナップ
  • How(コミュニケーション): 店舗での体験重視、香りの試用を中心とした接客
  • How(場所): 百貨店を中心とした上質な店舗展開、表参道本店などのフラッグシップ
  • How(価格): プレミアム価格帯での価値提供、品質に見合った価格設定

この戦略により、SHIROは「SHIROは日本の香水市場に風穴を開けた」と評価されるまでの独自のポジションを確立しました。

パターン2:自然派志向の美容意識層向け戦略

  • Who(誰に): 肌の安全性と美容効果を両立したい20〜40代女性
  • Who(JOB): 敏感肌でも安心して使える化粧品で美しくなりたい
  • What(便益): 自然由来成分による肌への優しさと確かな美容効果の両立
  • What(独自性): 北海道の自然素材を活用した独自の商品開発、製造から販売まで一貫した品質管理
  • What(RTB): 素材の知識や製造の技術を身につけていく中で培った「私たちが毎日使いたいものをつくりたい」という想い
  • How(プロダクト): スキンケアからメイクまでトータルな商品展開
  • How(コミュニケーション): 成分や製造プロセスの透明性を重視した情報発信
  • How(場所): カウンセリング重視の店舗展開、専門的なアドバイス提供
  • How(価格): 品質に対する適正価格、長期的な肌への投資という価値提案

パターン3:価値観共感型の体験重視層向け戦略

  • Who(誰に): サステナブルな消費と地域貢献を重視する全年代の価値観意識層
  • Who(JOB): 自分の消費行動を通じて社会や環境に良い影響を与えたい
  • What(便益): 廃棄物ゼロを目指す方針とストーリーのある消費体験
  • What(独自性): 創業の地・北海道砂川市でのまちづくりプロジェクト「みんなのすながわ」
  • What(RTB): 実際の地域貢献活動と工場と観光要素を併せ持つ施設「みんなの工場」
  • How(プロダクト): 「エシカル割」など環境配慮オプション
  • How(コミュニケーション): ブランドストーリーと地域との関係性を重視した発信
  • How(場所): 観光施設との融合による体験価値の提供
  • How(価格): 価値観に見合った投資という位置づけ

この Who/What/How分析からわかることは、SHIROが単一のターゲットに向けたブランドではなく、複数の異なる顧客ニーズに対して一貫したブランド哲学のもとで価値提供を行っているということです。

こちらで活用しているWho/What/Howについて、どなたでも活用できるテンプレートをご用意しています。ご興味ある方は下記からダウンロードください。

WhoWhatHowテンプレバナー (800 x 300 px)

成功要因の分解

このブランドが成功する要因を整理します。

競合や代替手段がある中での独自性

SHIROの最大の独自性は、「北海道という明確な地域性」と「フレグランスを軸とした感性的アプローチ」の組み合わせにあります。多くの自然派ブランドが機能性や安全性を前面に押し出す中で、SHIROは感性や体験を重視することで差別化を図っています。「自分たちが毎日使いたいものを作る」というプロダクトアウトの姿勢も、マーケットインが主流の化粧品業界では独特な存在感を放っています。

コミュニケーション戦略の特徴

SHIROのコミュニケーション戦略は、「透明性」と「体験重視」が特徴的です。2019年のリブランディング時の炎上を受けて「情報は早く丁寧に伝えるようにしている」ことからもわかるように、ブランドの背景や想いを率直に伝える姿勢を貫いています。また、「みんなの工場」に年間30万人が訪れるように、実際の体験を通じたブランド理解を重視しています。

価格戦略と価値提案の整合性

SHIROは決して安価なブランドではありませんが、「プレミアム価格に見合った価値提供」という整合性を保っています。自社工場での一貫製造、厳選された原料の使用、丁寧な接客サービスなど、価格に見合った価値要素を明確に提示しています。また、2021年から始めたSHIRO Membership Programでは、ポイント還元などの値引きは行わないが、限定製品や体験型プログラムに参加できる特典を提供するなど、価格競争を避けた価値提案を行っています。

カスタマージャーニー上の差別化ポイント

  1. 認知段階: 店舗での香りとの偶然の出会い、口コミによる評判の拡散
  2. 検討段階: 実際の試用体験、スタッフによるカウンセリング
  3. 購入段階: 百貨店という上質な購買環境、ギフト需要への対応
  4. 使用段階: 使用感と効果による満足度の向上
  5. 共有段階: SNSでの体験シェア、他者への推奨行動

顧客体験(CX)設計の特徴

SHIROの顧客体験設計は、「五感に訴える体験」と「ストーリーへの参加感」を軸としています。特に香りという要素を通じて、他のブランドでは提供できない独特な体験価値を創出しています。「みんなの工場」では製造プロセスを見学できるなど、ブランドの背景を体感できる仕掛けも特徴的です。

graph TD A[SHIROの成功要因] --> B[独自性] A --> C[コミュニケーション] A --> D[価格戦略] A --> E[CX設計] B --> F[北海道/フレグランス] B --> G[プロダクトアウト哲学] C --> H[透明性重視] C --> I[体験重視] D --> J[プレミアム価値提案] D --> K[価格競争回避] E --> L[五感体験] E --> M[ストーリー参加]

見えてきた課題

同時に外的内的要因からくる課題も見えてきます。

外部環境からくる課題と対策

  1. アジア系ブランドとの競争激化
    • 課題:韓国コスメなどの価格競争力と認知度の高さ
    • 対策:日本発ブランドとしての独自性強化、体験価値での差別化
  2. 自然派市場の成長鈍化
    • 課題:海外と比較した日本の自然派化粧品市場の成長スピードの緩やかさ
    • 対策:海外展開の加速、新たな市場セグメントの開拓

内部環境からくる課題と対策

  1. 製造コストの高さ
    • 課題:自社工場での一貫製造によるコスト構造の重さ
    • 対策:生産効率の向上、海外展開による規模の経済効果
  2. ブランドコミュニケーションのリスク
    • 課題:リブランディング時の炎上に見られる情報発信のリスク
    • 対策:情報は早く丁寧に伝える体制の強化、ステークホルダーとの対話促進

これらの成功要因と課題の分析から見えてくるのは、SHIROが単なる化粧品ブランドを超えて、「ライフスタイルブランド」として機能しているということです。そして、この独自のポジショニングこそが、激戦の化粧品市場での持続的な競争優位性の源泉となっているのではないでしょうか。

6. 結論:選ばれる理由の総合的理解

総合的に見て、競合や代替手段がある中でSHIROはなぜ選ばれるのでしょうか。

消費者にとっての選択理由

機能的側面

  • 安全性と効果の両立: 自然由来成分による肌への優しさと確かな美容効果
  • 使いやすい香りの設計: 強い香りが苦手な人でも使いやすく、そこはかとなく香る日本人の感性に合った処方
  • 一貫した品質管理: 自社工場での製造による安定した品質提供
  • 幅広い商品展開: フレグランスからスキンケア、メイクまでトータルなラインナップ

感情的側面

  • 香りによる自己表現: 個性や気分に合わせた香りの選択による自己実現
  • 安心感と信頼感: 透明性の高い製造プロセスとブランドストーリーによる心理的安全性
  • 上質な体験価値: 百貨店での丁寧な接客サービスと購買体験
  • 発見と驚きの喜び: 季節限定商品や新しい香りとの出会いによる感動体験

社会的側面

  • 価値観の表現: サステナブルな消費行動による社会貢献の実感
  • 洗練されたブランド選択: 百貨店での若年層や男性の集客力に見られる社会的評価
  • 地域との関係性: 北海道砂川市のまちづくりプロジェクトへの参加感
  • コミュニティへの帰属: ブランドファンとしてのアイデンティティと仲間意識

市場の中でのブランドの独自ポジション

SHIROは自然派化粧品市場において、以下のような独自のポジションを確立しています:

  1. 「感性×機能」の融合ブランド: 多くの自然派ブランドが安全性や機能性を前面に出す中、感性的な体験価値を軸とした差別化
  2. 「地域性×グローバル」の両立: 北海道という明確な地域アイデンティティを持ちながら、国際展開も進める独特なアプローチ
  3. 「プレミアム×アクセシブル」の中間領域: 高級ブランドほど敷居が高くなく、大衆ブランドほど特別感が薄くない絶妙な位置づけ
  4. 「専門性×総合性」のバランス: フレグランスという専門領域を軸としながら、トータルビューティーも提供する包括性

競合や代替手段との明確な独自性

SHIROの独自性が競合との決定的な差別化要因となっているのは以下の点です:

顧客に求められている要素

  • 安全で効果的な自然派化粧品への需要
  • 自己表現や感性に訴える香りの体験
  • ブランドストーリーや価値観への共感
  • 上質でパーソナライズされた購買体験

トレードオフで実現している要素

  • プロダクトアウトの姿勢による独自性 vs 市場ニーズへの対応
  • 自社工場での一貫製造による品質 vs 製造コストの効率化
  • プレミアム価格設定 vs 市場拡大のためのアクセシビリティ
  • 日本発ブランドとしてのアイデンティティ vs グローバル展開への適応

模倣されにくい要素

  • 北海道という土地に根ざしたブランドストーリーと実際の施設
  • 創業から培われた素材の知識や製造の技術
  • 年平均成長率約120%という実績に基づく市場での信頼性
  • 顧客層の幅広さと深いブランドロイヤルティ

持続的な競争優位性の源泉

SHIROの持続的な競争優位性は、以下の要素の相互作用から生まれています:

  1. 統合型価値創造システム: 原料調達から製造、販売、アフターサービスまでの一貫した価値提供
  2. 感性的差別化: 理性的な判断を超えた感情的なブランド結びつきの創出
  3. 地域密着型グローバル戦略: ローカルアイデンティティを活かしたグローバル展開
  4. 体験価値の積層: 商品の使用体験、店舗体験、ブランドストーリー体験の重ね合わせ
  5. 顧客共創型ブランド発展: 「SHIROは自分たちだけではなく、ユーザーも含めたみんなのブランド」という考えに基づく関係性構築
graph TB A[SHIRO選択の理由] --> B[機能的価値] A --> C[感情的価値] A --> D[社会的価値] B --> E[安全性/効果] B --> F[使いやすい香り] B --> G[一貫品質] C --> H[自己表現] C --> I[安心感] C --> J[上質体験] D --> K[価値観表現] D --> L[社会的評価] D --> M[地域貢献] N[競争優位性] --> O[統合型システム] N --> P[感性的差別化] N --> Q[地域/グローバル] N --> R[体験価値積層]

結論として、SHIROが選ばれる理由は、単一の要素ではなく、「安全性」「感性」「ストーリー」「体験」という複数の価値次元を統合的に提供している点にあると筆者は考えます。特に、化粧品という機能的商品を「感性的体験」「社会的意味」「個人的価値」の領域まで拡張して捉え直すことで、競合とは全く異なる土俵での競争を実現していることが、持続的な成功の鍵となっているのです。

7. マーケターへの示唆

我々マーケターはSHIROの成功例から何を学べるのでしょうか。

再現可能な成功パターン

1. 「機能×感性」の統合アプローチ SHIROの成功の核心は、機能的価値と感性的価値を対立させるのではなく、統合的に提供している点にあります。多くのブランドが「安全か効果か」「理性か感性か」という二者択一的なアプローチを取る中、SHIROは「安全で効果的でありながら、感性にも訴える」という包括的な価値提案を実現しています。

応用ポイント:自社の商品やサービスにおいて、機能的ベネフィットと感情的ベネフィットを対立させるのではなく、両方を同時に満たす方法を模索することが重要です。

2. 地域性をグローバル展開の差別化要素として活用 北海道という明確な地域アイデンティティは、国内では親しみやすさを、海外では日本らしさの象徴として機能しています。地域性をハンディキャップではなく、アセットとして活用する視点が参考になります。

応用ポイント:自社の地域的特性や歴史的背景を、グローバル市場でも通用する独自性の源泉として再定義することで、単なるローカルブランドを超えた存在感を獲得できます。

3. プロダクトアウトとマーケットインの絶妙なバランス 「自分たちが毎日使いたいものを作る」というプロダクトアウトの姿勢を貫きながらも、顧客層の幅広さを実現している点は、両者の絶妙なバランスを示しています。

応用ポイント:強い商品哲学を持ちながらも、市場の反応を敏感に感じ取り、顧客との対話を通じてブランドを進化させる柔軟性が求められます。

業界・カテゴリーを超えて応用できる原則

1. 五感体験の戦略的活用 SHIROが香りという要素を通じて強い感情的結びつきを生み出しているように、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のどれかを戦略的に強化することで、競合との差別化を図ることができます。

2. 透明性の競争優位化 リブランディング時の炎上を機に「情報は早く丁寧に伝える」体制を構築したように、透明性そのものを競争優位の源泉とする発想は、様々な業界で応用可能です。

3. 体験施設による顧客関係の深化 「みんなの工場」に年間30万人が訪れるように、製造現場や企業活動を顧客が体験できる場として開放することで、単なる商品取引を超えた関係性を構築できます。

4. 価格競争回避の価値提案設計 SHIRO Membership Programでポイント還元などの値引きは行わない方針のように、価格以外の要素で顧客価値を創出することで、価格競争から脱却する道筋を示しています。

5. ステークホルダー共創型ブランド発展 「ユーザーも含めたみんなのブランド」という考え方は、一方的な情報発信ではなく、顧客や地域との双方向的な関係性を通じてブランドを育てるアプローチとして、多くの業界で応用できます。

筆者が当ブランドのマーケターだったらやること

もし筆者がSHIROのマーケターだとしたら、以下の施策を優先的に実行します:

1. デジタル体験の強化 現在のSHIROの強みである「店舗での香り体験」をデジタル空間でも再現する仕組みを構築します。AR技術を活用した「バーチャル香り体験」や、AIを活用した「パーソナル香り診断」などにより、オンラインでも感性的な体験を提供します。

2. 男性市場での存在感拡大 店舗売上の3割近くが男性客という強みを活かし、男性向けの独立したライン開発やマーケティング施策を展開します。ジェンダーレス美容という社会トレンドも追い風となるでしょう。

3. 海外展開の戦略的加速 海外と比較した日本の自然派化粧品市場の成長スピードの緩やかさを考慮し、成長性の高いアジア太平洋地域での展開を優先します。北海道ブランドとしての独自性は、特にアジア市場では強い訴求力を持つと考えられます。

4. サステナビリティ訴求の強化シロ エコシステム」の取り組みをさらに発展させ、循環型経済やカーボンニュートラルへの具体的なロードマップを策定・公表します。これにより、価値観重視の消費者層での存在感をさらに高めます。

5. コミュニティプラットフォームの構築 SHIROファンのためのデジタルコミュニティを構築し、香りの体験談シェア、新商品の先行体験、地域貢献活動への参加などを通じて、顧客との関係性をより深化させます。

これらの施策を通じて、SHIROの既存の強みを活かしながら、デジタル時代の新しい顧客体験と価値創造を実現していきたいと考えます。

8. まとめ

SHIROが自然派化粧品市場で選ばれ続ける理由を分析した結果、以下のキーポイントが明らかになりました:

  • 統合的価値提案の実現: 機能性と感性を対立させるのではなく、安全性、効果、感性体験を統合的に提供することで、競合との決定的な差別化を実現している
  • 地域性をグローバル競争力に転換: 北海道という地域アイデンティティを、国内では親しみやすさ、海外では日本らしさの象徴として戦略的に活用し、スケーラブルな差別化要素として機能させている
  • 五感体験による深い顧客関係の構築: 香りという感性的要素を軸に、理性的判断を超えた感情的なブランド結びつきを創出し、年平均成長率約120%という高い成長とロイヤルティを実現している
  • 透明性とストーリーテリングの戦略的活用: 製造プロセスから企業理念まで一貫した透明性により信頼を構築し、「みんなの工場」のような体験施設を通じてブランドストーリーへの参加感を提供している
  • 価格競争を回避する価値設計: ポイント還元などの値引きは行わない方針で価格競争を避け、体験価値や限定性による差別化により、プレミアム価格での持続的な成長を実現している
  • ステークホルダー共創型のブランド発展: 「ユーザーも含めたみんなのブランド」という考えのもと、顧客、地域、従業員との協創によりブランド価値を向上させている

これらの分析から、マーケターが次にとるべきアクションとして、自社ブランドにおいても「機能と感性の統合」「地域性の戦略的活用」「五感体験の設計」「透明性による信頼構築」「価値観共創の仕組み化」を検討することをお勧めします。特に重要なのは、単一の要素ではなく、複数の価値次元を統合的に提供することで、競合とは異なる土俵での競争を実現することです。

SHIROの成功は、化粧品という成熟市場においても、顧客の潜在的な欲求を深く理解し、一貫したブランド哲学のもとで価値提供を行うことで、持続的な成長と差別化が可能であることを示しています。あなたのビジネスにおいても、表面的な機能競争ではなく、顧客の感性や価値観に訴える深いレベルでの価値創造を追求することが、長期的な成功の鍵となるのではないでしょうか。

出典:SHIRO 公式サイトSHIRO note

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この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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