はじめに ― “売れない”本当の理由は「WHY不足」
- 機能も価格も悪くないのに、なぜ売れない?
- 部下が指示待ち・数字疲れでモチベーションが上がらない?
- 値引き・限定キャンペーンに頼るほど利益率が圧迫されている?
これらはすべて WHY(存在意義) が曖昧なまま WHAT(製品・施策) ばかりを語る “外側発信” が原因――というのがサイモン・シネックの問題提起です。
人は WHAT ではなく WHY に動かされる。
― Simon Sinek, Start With Why
WHY不足が招く 3 つの負のスパイラル
症状 | 直接的な原因 | 長期的リスク |
---|---|---|
広告反応率の低下 | WHAT先行の機能説明に終始 | 価格競争・ブランド希薄化 |
社員エンゲージメント低下 | 数字KPIだけの評価 | 離職・ノウハウ流出 |
“割引頼み”の販売促進 | WHY不在で差別化できず | 利益率低下・値下げスパイラル |
WHYではなく WHAT から話し始めると――
①顧客はスペック比較へ流れ、最終的に 価格でしか選べなく なります。
②社員は「何のための仕事か」が見えず、 数字ノルマだけ が残ります。
③結果として短期売上は立っても、 ブランドも人も疲弊 していく――これが“売れない”真因です。
一方で、Apple や Patagonia のように WHY → HOW → WHAT の順で語る企業は、価格競争を超えた 熱狂的ファン と 高い従業員ロイヤルティ を獲得しています。本記事ではそのロジックと実践方法を、あなたの企業で今日から試せるようにテンプレート付きで解説します。
『WHYから始めよ』書籍概要
まず、サイモン・シネックの『WHYから始めよ』で書かれていることの全体像を理解していきましょう。
項目 | データ |
---|---|
著者 | サイモン・シネック(Simon Sinek) |
初版 | 2009年(日本語版2010年、日本経済新聞出版) |
ページ数 | 256ページ(原書ハードカバー) |
主要概念 | ゴールデンサークル理論 / セロリ・テスト / WHY型リーダーシップ |
一言でいうと ─ 「優れたリーダーや企業は“何を”より“なぜ”から語り、人の心を動かす」。
本書は13章構成で、①WHYの脳科学的必然性 → ②成功企業の事例 → ③自社・自分のWHYを発見し行動へ落とし込むワーク までをガイドを解説する書です。シンプルながら普遍性が高く、時代を超えてマーケター・経営者必読の一冊と言えます。
ゴールデンサークル理論とは?
まずは本書のメイン主張であるゴールデンサークル理論について理解していきましょう。ゴールデンサークル理論とは、「なぜ(Why)」→「どうやって(How)」→「何を(What)」の順番で相手に情報を伝えることで、相手の共感を得られやすくなり、熱狂的な支持を獲得できるいう理論です。
なぜ内側から語ると響くのか?

レイヤー | 担当する脳領域 | 処理内容 | 伝え方のキーワード |
---|---|---|---|
WHY | 辺縁系(感情・本能) | 意味づけ、信頼 | 使命・ビジョン・物語 |
HOW | 部分的に辺縁系+新皮質 | 習慣化・差別化 | 手法・プロセス・文化 |
WHAT | 新皮質(論理・言語) | 機能・比較 | スペック・価格・実績 |
Inside–Out(WHY→HOW→WHAT)で語ると、まず感情スイッチが入り→理性で正当化→購入行動へという"脳の自然な流れ"に乗ります。つまり人間の本能に訴求できるやり方がこの順番なのです。
Outside–Inとの比較
アプローチ | 伝える順序 | 顧客の反応 | 典型アウトカム |
---|---|---|---|
Outside–In | WHAT→HOW→WHY | 比較・値引き待ち | 短期売上・低LTV |
Inside–Out | WHY→HOW→WHAT | 共感・自分ゴト化 | 高ロイヤルティ・口コミ |
シネックによれば、WHYを語れば語るほど、顧客は製品ではなく世界観を買うようになると言われています。
また、ほとんどの企業や人は「WHAT→HOW→WHY」の順、つまり外側から内側に向かって自分たちを説明しがちです。「我々の製品はこんなに素晴らしい(WHAT)。最新技術や優れた手法で作っています(HOW)。ぜひ買ってください。」という具合です。
さらに、WHYから語ったブランドは模倣されにくく、価格競争にも巻き込まれにくくなり、結果として利益率の向上、従業員の離職低下にもつながります。
にもあなたが関わっている商品はどちらのやり方で伝えているでしょうか。
WHY・HOW・WHATを発見する4ステップ
続いて、本書で語られているWHY・HOW・WHATを
ステップ | ゴール | 主要質問 | 推奨ワーク | つまずきポイント |
---|---|---|---|---|
1. 過去を棚卸し | 感情が高ぶった瞬間を可視化 | どの出来事で 自分/自社 はワクワク or 憤りを覚えたか? | ライフライン年表 / 創業ストーリーインタビュー | 時系列がバラバラで抜け漏れする |
2. 共通テーマ抽出 | 真の価値観を発見 | その瞬間に共通する "なぜそれが大事?" | 付箋グルーピング→KJ法→命名 | 抽象度が高すぎて誰もピンと来ない |
3. WHY文に言語化 | 15語以内の宣言文 | We exist to ___ so that ___. | 1.迭代で削る 2.第三者フィードバック | スローガン化(耳触りは良いが行動に落ちない) |
4. HOW/WHAT整合 | 施策の取捨選択 | この活動はWHYを強めるか?弱めるか? | ●セロリ・テスト ●施策マッピング表 | 成功施策の“聖域化”で捨てきれない |
推奨ワーク解説
- ライフライン年表 : 人生や事業のハイライト・ローライトを年表化し、感情のピークを視覚化してWHYの原体験を探る。
例 : ホワイトボードに「創業」「シリーズA調達」「大失注」「新製品ヒット」などを年軸に貼り、各イベントのワクワク度・ストレス度を ±10 で書き込む。 - 創業ストーリーインタビュー : 共同創業者や古参社員に第三者が 5W1H でヒアリングし、情熱が生まれた背景を抽出する。
例 : 外部ファシリテーターが Zoom で 60 分インタビューし、Notion に「当時一番こだわったことは?」「最初の顧客は誰?」と QA 形式で書き起こす。 - 付箋グルーピング→KJ 法 : 感情エピソードを付箋に書き出し、類似テーマで束ねてカテゴリー命名する発想整理法。
例 : Miro で黄色付箋に出来事、ピンクに理由を入力→自動クラスタリング。最終的に「挑戦」「公平」「創造性」など 3〜5 の価値観に収束。 - 言語化→削ぎ落とし反復 : 初稿の WHY 文から不要語を削ぎ、3 回以上調整して 15 語以内の力強い一文にする。
例 : 「誰もが学び続けられる社会を作る」→「Learning for everyone, forever.」へブラッシュアップ。 - 第三者フィードバック : 顧客やメンターに WHY 文を読んでもらい、刺さるか/曖昧かを率直に評価してもらう。
例 : メールで 3 案を送り「共感度を 1‑5 で評価+理由」を Google フォームで回収。 - セロリ・テスト : 「WHY=健康」の軸を持っていれば、お菓子ではなくセロリを選ぶだろう、という寓話から考えられたテスト。施策やアイデアを WHY フィルターで ○× 判定し、WHY と無関係なものを切り捨てる。
例 : スプレッドシートに施策一覧を並べ、WHY 貢献度を ◎○△× で色付け。× は削除候補として自動フィルタ。 - 施策マッピング表 : 施策を WHY 貢献度 × ROI の 2 軸で散布図に置き、優先順位を可視化する。
例 : Google スプレッドシートのチャート機能で散布図を作成し、右上(貢献◎ × ROI 高)の施策から実行。
ケーススタディ:スタートアップA(サブスク珈琲)
- 創業者2名のライフラインを重ね、共通テーマ「朝一杯で人生を整える」を抽出。
- WHY文:Create calm mornings so that people own the rest of their day.
- HOW:脱プラ容器・5分で届くIoTドリッパー。
- WHAT:個別焙煎サブスク+朝のミニ音声講座。 → “朝需要”に絞った広告がCVR 3.1→7.4% に。
成功企業に学ぶ「WHY経営」
業界のリーディングカンパニーはWHYを中心に経営の全レイヤーを設計しています。 ここでは、その共通パターンと成果を俯瞰し、再現ポイントを抽出します。
代表3社 Deep Dive(WHY/HOW/WHAT)
企業 | WHY(存在意義) | HOW(独自の方法) | WHAT(主力商材) |
---|---|---|---|
Apple | "Think Different" ─ 個の創造性解放 | 垂直統合/美学徹底/直営店体験 | iPhone, Mac, Vision Pro |
Patagonia | "Save Our Home Planet" ─ 地球環境の保護 | 製品長寿命設計、Worn Wear再販、1% for Planet寄付 | Alpine Down衣類、Wetsuits |
LEGO | "Inspire and Develop the Builders of Tomorrow" | システムインプレイ哲学、ユーザー共創(LEGO Ideas)、クロスIP提携 | ブロックセット、LEGO Education |
サウスウエスト航空 | "空の旅の大衆化" | 「安く・楽しく・簡単に」 料金を徹底的に安く設定、 予約や搭乗手続きも簡素化し、運航の効率化、 フレンドリーでユーモアのあるサービス | 飛行機を使った旅行 |
共通パターン(5段階フロー)
- Mission Articulation ― 創業ストーリーを再言語化し15語以内のWHY文に。
- Signature Moves ― WHYを象徴する行動規範を3〜5個に絞り儀式化。
- Product & CX Alignment ― 既存ポートフォリオをWHYフィルターで棚卸し。矛盾点は改廃。
- Story Loop ― WHY→HOW→WHATの順で全タッチポイントを脚本化。
- Scorecard ― 数字KPI+パーパスKPI(例:CO₂削減量、共創案件数)をダッシュボード化。
失敗例から学ぶ — Starbucks(ʼ07)やWeWork(ʼ19)は急拡大フェーズでWHYより店舗/稼働率(WHAT)を優先し顧客体験が毀損。WHY指標をモニタリングせず“成長の罠”に陥った典型と言えます。
リーダーシップと組織文化
シネックは著書で「世の中には“肩書上のリーダー”と“本物のリーダー”がいる」と述べ権力や地位によって人を動かすのではなく人々を奮い立たせる(Inspire)ことのできる人物こそ本物のリーダーだと強調して述べています。それがWHYを発信するリーダーです。このリーダーがいるからこそWHYで顧客から選ばれる組織、商品が作れると言えるでしょう。
WHY型リーダーシップ ― 5原則
- Purpose First Communication:常にWHY⇒HOW⇒WHATで語り、会議の冒頭30秒で存在意義をリマインド。
- Circle of Safety:メンバーが失敗を恐れず挑戦できる“安全圏”を創る。心理的安全性スコアを四半期評価に組み込む。
- Values‑Fit Hiring:面接の50%を価値観ディスカッションに割き、オンボーディング初日は創業ストーリーを共有。
- Storytelling Cadence:月次All‑Handsで顧客の成功ストーリーを紹介し、WHYの実証を文化化。
- Measure What You Preach:WHYに紐づく指標(例:社会インパクトCO2削減量)をトップラインKPIに昇格。
文化を回す“Flywheel”
マーケティングへの具体応用
WHYの戦略やWHY型組織が定まったら、顧客接点での実装フェーズへいきます。 WHY起点のメッセージとKPI設計を具体プロセスに落とし込みますが、ここで重要なのが、競合と戦うより自社の過去と戦う発想をシネックは提唱しています。「昨日の自分たちより良くなること」を目標に掲げ、他社との差異化よりも自社のWHYをより完全に実現することにフォーカスせよという考え方です。
1. ビジョン主導の戦略マップ
- フレーム:最上位にWHYを固定 → 財務・顧客・プロセス・学習の各視点にブレークダウン。
- 実装例:FinTech S社は WHY = “誰もが金融を理解し、自由に選択できる世界” → 顧客視点KPIを「初回貯蓄契約率」に設定し、広告とプロダクト改良を一本化。
2. コミュニケーション設計
フェーズ | 主コンテンツ | メッセージ階層 | タッチポイント |
---|---|---|---|
Awareness | WHYストーリービデオ(90秒) | WHY70% / HOW20% / WHAT10% | YouTube・セミナー冒頭 |
Consideration | HOW証拠資料(導入事例・デモ) | WHY20 / HOW60 / WHAT20 | ウェビナー・WEBサイト |
Purchase | WHAT詳細(プラン比較表) | WHY10 / HOW20 / WHAT70 | 決済画面・営業資料 |
Post‑purchase | WHY再確認(コミュニティ、CSR参加) | WHY60 / HOW30 / WHAT10 | 会員誌・イベント |
3. 顧客ジャーニー×WHYの施策マッピング
4. KPIダッシュボード例
カテゴリ | 指標 | 目標例 | データソース |
---|---|---|---|
WHY指標 | ブランドパーパス浸透率(社員) | 80% | Pulse Survey |
HOW指標 | 証拠付きコンテンツCTR | 6% | GA4 |
WHAT指標 | 有料転換率 | 12% | Product Analytics |
エコー指標 | Advocacy Posts/月 | 200件 | Social Listening |
WHY指標→HOW指標→WHAT指標が左から右へ“連鎖”しているかを毎月チェックしていきましょう。
よくある落とし穴
実践段階でつまずくポイントを事前に知っておけば、致命傷を避けられます。 以下のリストで“転びやすい石”を先回りで取り除きましょう。 実行段階で陥りがちな壁を事前に知っておけば、軌道修正は迅速です。 頻出パターンと対策をチェックして“WHYブレ”を防ぎましょう。
カテゴリ | 典型シナリオ | 潜在ダメージ例 | 早期発見サイン | 是正アクション |
---|---|---|---|---|
成長フェーズ迷走 | 資金調達後にKPIが売上一辺倒になりWHYスライドを削除 | 社員エンゲージメント▼15pt、口コミ率▲ | "最近の施策にワクワクしない"というSlack投稿 | ①四半期ごとにWHYレビュー会 ②OKRにPurpose指標追加 |
数値至上主義 | ダッシュボードがCPA・ROASのみでWHY指標ゼロ | 価格訴求比率60%超、平均単価▼ | クリエイティブが“%OFF”で埋まる | ダッシュボード上段にBrand Advocacy Rate追加 |
抽象WHY | 「世界をより良く」など誰でも言える表現 | 社員がWHY暗唱テストで正答率30%未満 | 採用面接で候補者がWHYを語れない | 顧客インサイトを引用し15語以内に再定義 |
文化の二枚舌 | WHYは「挑戦」なのに上層部がリスク回避指示 | イノベーション案件成功率▲40% | 失敗共有会がゼロ開催 | 役員KPIに“チャレンジ施策率”を組み込む |
外部委託ブレ | 代理店がWHYを理解せずWHAT訴求広告を量産 | CTR初月増→3ヶ月後CVR▲ | マーケ資料でWHY言及0回 | 代理店キックオフでWHYワークショップ実施 |
TIP: 落とし穴を四半期レビュー議題に固定し、対策アクションをOKRに落とすと定着率が高まります。
実践チェックシート(Yes / No)
施策を動かす前に現状をセルフ診断。 次の10項目でYOUR社のWHY浸透度をクイックチェックしましょう。 施策前に現状のWHY浸透度を数値で可視化しましょう。 以下のセルフテストで組織の現在地を診断できます。
# | 質問 | Yes | No |
---|---|---|---|
1 | 社内Slackの固定メッセージはWHY文で始まっているか? | □ | □ |
2 | 月次レポートの1ページ目にWHY指標(Brand Advocacy Rateなど)が掲載されているか? | □ | □ |
3 | 採用プロセスで価値観適合インタビューを必ず実施しているか? | □ | □ |
4 | 主要LPのヒーローコピーがWHYを語っているか? | □ | □ |
5 | 社員の70%以上がWHYを15語以内で暗唱できるか? | □ | □ |
6 | 施策立案時に「セロリ・テスト」でチェックする運用があるか? | □ | □ |
7 | 直近プロダクトロードマップにWHYと紐づく評価軸が含まれるか? | □ | □ |
8 | 顧客アンケートに“ブランドの使命に共感する”項目を入れているか? | □ | □ |
9 | 半期に1度、成功失敗事例をWHY視点で内省する社内イベントがあるか? | □ | □ |
10 | 経営層が過去6ヶ月以内にWHYを対外発信した実績があるか? | □ | □ |
診断方法
Yes=1点、No=0点で合計8点以上なら“WHY浸透度・良好”。5〜7点は改善余地大、4点以下は緊急テコ入れ推奨。
「選ばれるWHY」を組み立てる7ステップ
ここまで解説してきた「WHYから始めよ」ですが、もし自社のWHYを標榜したとしても、それが顧客や従業員に刺さらないものだとしたら全く意味がありません。では、選ばれるWHYはどのように組み立てたら良いのでしょうか。筆者が考える7ステップを簡単に解説します。
失敗しがちな WHY= “社内だけが納得しているスローガン”。
成功する WHY= 「Authentic(本物)× Relevant(顧客課題に直結)× Impactful(社会的意義)」 が重なる一点。※Authentic(本物)とは、「自称」ではなく “他者が感じる真実味”
ステップ | 目的 | 具体的なやり方 | 成功のチェックポイント |
---|---|---|---|
① 外向きリサーチ | 顧客・社会が求める真の課題を特定 | - JTBD/ペインインタビュー - SNS・レビュー徹底傾聴 - 業界外トレンド・ESG要請の棚卸し | 顧客が自社を推薦する理由が入手・言語化できたか |
② 内向きリサーチ | 自社の情熱・強み・歴史を掘り起こす | - 創業ストーリー/ターニングポイントを5Whysで深掘り - 幹部&現場の「誇りの瞬間」を100件集める | 10年以上語れる“原体験”が抽出できたか |
③ “3円滑”マッピング | Authentic × Relevant × Impact を重ねる | - ベン図で重なる領域を可視化- 被らない要素は思い切って捨てる | 3つとも○になる簡潔な一文に絞られたか |
④ WHYステートメント試作 | 感情を揺さぶるワンセンテンス化 | 公式:「We exist to _____, so that _____」※動詞は“change/empower/save…”など能動形で | 15秒で暗唱できる長さ・語感か |
⑤ 小規模テスト | 共感度を定量・定性で検証 | - 社員・ロイヤル顧客にABテスト- ストーリー動画 or LPでCTR/感想測定 | 「私も手伝いたい」が自然発生すれば合格 |
⑥ フィードバックで磨く | 言葉・スコープを微調整 | - 意味が重複する語を削除- メタファー置換で視覚的に | 不要語を削って13語以内に |
⑦ 組織へ埋め込む | WHY≠ポスター → 行動基準へ | - OKR/KPIをWHY起点に再設計- 採用・評価・新規PJの承認チェックにWHYゲート | 四半期ごとに“WHYレビュー”をルーティン化 |
まとめると、
- WHYは“自社が信じること”と“顧客が望む変化”の交差点**で見つかる。
- Authenticity・Relevance・Impactの3円滑が全て○かセルフチェック。
- 言語化後にすぐテストし、反応が弱いなら繰り返し磨く。
- WHYをKPI・採用・投資判断に組み込み「行動のフィルター」に。
- 成功や拡大はWHYを埋もれさせる最大の敵。四半期ごとに再点検せよ。
💡 今のWHYが刺さらない理由と対処
典型的なズレ | 症状 | 処方箋 |
---|---|---|
内向き過ぎ | 「高品質を届ける」など機能言語 | 顧客が得る“変化”に言い換える |
小さ過ぎ | 市場ニッチには響くが拡張困難 | 社会課題(SDGs/DEIなど)と接合点を探す |
抽象過ぎ | 「世界をより良く」だけで空虚 | Who/Whatが瞬時に浮かぶ具体単語を追加 |
過去遺産 | 創業期は有効でも今の事業と齟齬 | ②内向きリサーチで“現在の誇り”を再発掘 |
もし言語化したWHYが刺さらないものであった場合、すぐできるアクションは、今週中に ①顧客インタビュー3件 + ②社員ヒアリング3件 を行い、重なり合うキーワードをポストイットで壁に貼り出してください。その重なりこそが、次の“選ばれるWHY”の原石と言えるでしょう。
まとめ|Key Takeaways
WHYから始めることは、単なるスローガンではなく 経営・マーケ・組織開発を貫く設計原則 です。Inside‑Outで語り、測り、改善することでマーケティングでは顧客の共感を得て熱狂的な支持を生み、組織運営では社員の主体性と忠誠心を引き出し、リーダーシップにおいては人々を心から突き動かす原動力となることを、本書の数々の例が示しています。
視点 | 核心ポイント | すぐできる一手 |
---|---|---|
戦略 | WHY→HOW→WHATの順でロードマップを逆算 | OKRの最上段をWHY文に書き換える |
マーケ | WHYをファネル全体の物語軸に | LPヒーロー部をWHYコピーに差し替え |
プロダクト | セロリ・テストで機能追加を選別 | “WHYと整合”欄をPRDに追加 |
組織 | WHY共有→儀式→評価の“文化フライホイール” | 月次All‑Handsで顧客ストーリーを紹介 |
測定 | 数値+Purpose指標のダブルスコアカード | Brand Advocacy Rateをダッシュボード最上段に |
最後に:WHYを問うのは1回きりの作業ではありません。 成功するほどWHYは形骸化しやすいもの。四半期ごとにチェックシートを回し、施策が"Inside‑Out"で語れているかを点検し続けましょう。