世界の小売トレンド2025年版を読み解く:成長を導くリテール改革の本質とは? - 勝手にマーケティング分析
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世界の小売トレンド2025年版を読み解く:成長を導くリテール改革の本質とは?

世界の小売トレンド2025年版を読み解く: 成長を導くリテール改革の本質とは? マーケの応用を学ぶ
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はじめに:変革の時代に問われる「小売業の存在価値」

リテールの世界は今、大きな転換期を迎えています。景気の先行き不透明感、デジタル化、インフレやライフスタイルの変化…。これらは単なる外部環境の変化ではなく、消費者の価値観や購買行動そのものを根底から揺るがす波です。

パンデミック以降、消費者の支出習慣や価値観は大きく変化しました。一昔前まで「ブランド信頼性」や「利便性」が重視されていたのに対し、今では「価格対価性」や「倫理性」「透明性」など、より多面的な視点で評価されるようになっています。

本記事では、ユーロモニターインターナショナルが発表した『Global Retail Trends 2025』をもとに、小売業が生き残り、成長していくために何をすべきか、どのような改革が求められるのかを詳しく紐解いていきます。特に、マーケターが注目すべき戦略視点と顧客行動の読み解き方に焦点を当てて解説していきます。

実際の、レポートはこちらからダウンロードいただけます。


世界の小売トレンド概況:変化の本質を理解する

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「賢い消費者(Wiser Wallets)」の登場

ユーロモニターの調査によると、2024年には世界の消費者のうち57%が「自分が消費する製品やサービスを念入りに調査する」と回答。この慎重な姿勢は、一時的な節約思考ではなく、新しい常識として根付きつつあります。

この背景には、インフレや所得格差の拡大、サブスク疲れなど、個人の購買判断を抑制する複数の要因が重なっています。単に「価格が安い」だけでは選ばれない一方で、「高くても納得感のある体験」を選ぶ消費者も確実に増えています。

消費者の行動変化傾向
ブランドより価格を優先プライベートブランドやディスカウント型への流入
安易な衝動買いの減少レビュー・比較サイト・SNSを経由した意思決定
メディア接点の変化インフルエンサー経由の購買やライブ配信経由の購入増加
購入後の満足度を重視商品評価や返品保証制度の確認、持続可能性の視点

つまり、今後のマーケティングでは「価格・便益・価値」のバランスが一層求められ、かつ価値訴求の精度が成否を分けるカギになります。ブランドは“なぜこれが必要なのか”を語り、信頼と選ばれる理由を作らなければいけません。

小売業の未来を決める「リテール改革4つのポイント」

ユーロモニターは、小売業が次の成長フェーズに進むための「4つの変革ドライバー」を提示しています。これらはすべて、消費者を中心に置いた構造転換であり、単なる流行対応ではなく、中長期的な競争力を築くための本質的な視点です。

graph TD A[デジタル化から生まれる購買行動の変化] --> B[チャネルの複雑化] A --> C[収益源の多様化] B --> D[パーソナライゼーションの要求] C --> E[リテールメディア、D2C、サブスク化] D --> F[消費者期待の高まり]

① デジタル化から生まれる新たな購買の形

デジタル化は、購買チャネルの単なる「オンライン化」にとどまらず、消費者の意思決定プロセス自体を変容させるインパクトをもたらしています。

たとえば、SNSや動画プラットフォームを通じた「予期せぬ出会い」や「インフルエンサーの紹介」が購入のきっかけになるケースが急増。そこでは従来の「ニーズがあって検索する」購買行動から、「興味を持たされて比較する」態度変容型の行動が増えているのです。

この背景には、ユーザー主導でコントロールできるデバイス環境(スマホ・アプリ)や、即時購入への障壁が低くなったUX設計(ワンクリック購入など)が存在します。購買は行動の延長であり、体験の一部であるという理解が、現代のマーケターに求められています。

② 収益源の多様化

小売業は今、「モノを売る」だけでなく、「空間・データ・接点・体験」すべてを価値に変えるビジネスモデルを構築し始めています。以下はその代表例です:

  • リテールメディア:店頭・アプリ・ECサイトなどの“接点”に広告価値を持たせ、メーカーから広告収益を得るモデル
  • サブスクリプション:定期配送・プレミアム会員制などで、LTV(生涯顧客価値)を向上
  • プライベートブランド(PB):ブランドロイヤルティを軸に価格訴求と粗利確保を両立

これらはすべて、単に利益を増やすだけでなく、企業としての顧客接点やブランド世界観を拡張する手段でもあります。今後の小売は、「モノ」より「エンゲージメント」を軸に成長を描く必要があるのです。

③ チャネル拡大によるショッピングの複雑化

現代の購買は、もはや「EC vs 実店舗」といった二項対立では語れません。消費者は以下のようにシーンと目的に応じてチャネルを自在に使い分けるようになりました:

  • SNSで見た商品を店舗で確認し、帰宅後ECで購入
  • アプリで注文→駅ナカ店舗でピックアップ
  • ECで定期購入→足りないときだけコンビニで補充

このような環境下では、ブランド体験をどのチャネルでも一貫性を保って提供すること(OMO戦略)が求められます。

また、チャネルごとに顧客体験や販促アプローチを最適化する「マルチチャネル最適化」も重要です。配送スピード、在庫可視化、レビュー統合など、裏側のシステム連携も競争力を左右します。

④ 進化し続ける消費者期待

Z世代を中心に、消費者の期待は「価格」「品質」だけでは測れません。彼らは以下のような新たな価値基準でブランドを選択しています:

新しい期待軸内容例
意義ある消費社会貢献性・サステナビリティ・エシカル消費の実現
自分らしさの尊重カスタマイズ・個別対応・趣味嗜好への最適化
即時性・シームレスさストレスのないUX、すぐ届く・すぐ使える・すぐ返品できる設計
一貫性のある世界観オンライン/オフライン問わず「同じストーリー」が感じられるブランド体験

つまり、今の消費者は「モノ」よりも「ブランドとの関係性」や「価値観の一致」によって選択行動を決定しています。

そのため、ブランドは自社が“誰の”、“どんな価値”を実現し、その証拠にどんな行動をしているかを、顧客目線で語る必要があります。ここでいうマーケティングは、「モノを売る行為」ではなく「世界観を届ける行為」なのです。


今後の小売業に求められる3つの視点

1. 顧客理解とパーソナライズの深化

「誰が」「なぜ」「どこで」「何を求めて」買うのかを再定義し、One to One戦略の実装が急務です。定量的なデータ(RFM分析、LTV分析)と、定性的な感情(オルタネイトモデルなど)の掛け合わせがカギとなります。

特に「未顧客の理解」や「きっかけと抑圧」を把握し、ニーズ顕在化の前段階から接点を作るオルタネイトモデルの考え方は、今後の顧客体験設計において重要なツールになります。

2. リテールメディアの活用と広告収益の最大化

店舗やアプリ内をメディアとして活用する発想が不可欠です。小売はもはや「広告枠を売るメディア企業」にもなりつつあります。

たとえばWalmartやイオンなどが展開する「小売×広告」の取り組みは、メーカーにとっても新たなタッチポイントを提供するだけでなく、小売業自身が新たな収益源を得る手段となっています。

3. 「体験設計」への投資

商品を売るのではなく、「体験を売る」視点が鍵です。ストーリーテリング、限定イベント、コミュニティ形成など、ブランドの"ファン化"を意識する必要があります。

特に、ユーザーがブランドを選び続けるには、「このブランドと関わっていることが楽しい」と感じさせる一連の体験設計が重要。オフラインとオンラインを連動させたシームレスなエクスペリエンスが、今後の成長のカギです。

まとめ:マーケターが今こそ意識すべき5つのポイント

2025年に向けて、マーケターが優先して取り組むべき要点を以下に整理します。トレンドの表層を追うのではなく、変化の根底にある「生活者の合理性」「購買行動の多様化」「体験価値の重視」に本質的に向き合う必要があります。

ポイント解説
節約志向=価格志向ではない「安ければ売れる」時代は終わり。価格以上の価値を感じさせるストーリーとベネフィットが重要。
デジタル×リアルの融合(OMO)チャネルごとにUXが断絶していてはNG。一貫したブランド体験設計が信頼とロイヤルティを生む。
収益構造の再構築商品販売だけでなく、広告、会員制、PB、定期便などLTV最大化を見据えたマルチソース化を目指す。
店舗・アプリの「メディア化」小売業は広告メディアにもなり得る。顧客接点を「広告枠」として再定義し、企業と共創する視点が必要。
顧客理解の深化と体験投資ジャーニー上のタッチポイントごとに感情・行動を可視化し、パーソナライズとCX最適化を繰り返す。

これらの潮流を見据えた上で、自社にとって本当に注力すべき戦略を見極め、実行・検証・改善をスピーディに繰り返す“リテール・アジャイル”な姿勢が2025年の勝敗を分けるでしょう。

ぜひマーケターの皆さんは学んでいきましょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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