BARTHが選ばれる理由:消費者心理を魅了する高級バスタブレットの成功戦略 - 勝手にマーケティング分析
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BARTHが選ばれる理由:消費者心理を魅了する高級バスタブレットの成功戦略

BARTHが選ばれる理由: 消費者心理を魅了する高級バスタブレットの成功戦略 商品を勝手に分析
この記事は約26分で読めます。

はじめに

マーケティング担当者として、あなたは常に「なぜ消費者は特定の商品やサービスを選ぶのか」という疑問と向き合っているのではないでしょうか。消費者の選択理由を深く理解することは、自社製品やサービスが市場で選ばれる確率を高めるための重要な鍵となります。

本記事では、高級バスタブレット市場で独自のポジションを確立している「BARTH(バース)」を例に、このブランドが消費者から選ばれる理由を多角的に分析していきます。この分析を通じて、以下のメリットを得ることができるでしょう:

  1. 高価格帯でも支持される商品の本質的な価値提案の方法論を学べる
  2. 顧客の深層心理に訴求する効果的なブランディング戦略を理解できる
  3. 競合ひしめく既存市場での差別化ポジショニングを強化するための具体的な施策を発見できる

高価格ながら急速に成長を続けるBARTHの成功要因を紐解きながら、あなたのビジネスにも応用できる実践的な知見を提供していきます。

1. BARTHの基本情報

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ブランド概要

BARTH(バース)は、アース製薬の中性重炭酸入浴剤ブランドです。独自の技術によりお湯を中性に保ち、重炭酸イオンを多く溶け込ませることで、温浴効果を高める点に特徴があります。この技術により、血行促進や疲労回復、肩こりや冷え性の改善が期待できるとされています。

ブランド名の「BARTH」は健康と美を両立させる入浴文化を提案しています。2023年にはリブランディングを行い、「なりたいジブンは、夜につくる。」という新しいタグラインを掲げ、ナイトウェルネスブランドとしての位置づけを強化しています。

企業情報

  • 企業名:株式会社TWO(2022年にアース製薬に譲渡)
  • 設立年:2012年
  • 本社所在地:東京都港区南青山
  • URL:https://www.barth.jp/

主要製品ラインナップ

  • 薬用BARTH中性重炭酸入浴剤(定番商品)
  • 薬用BARTH中性重炭酸入浴剤 BEAUTY(美容成分配合)
  • BARTHフェイシャルクレンジングパウダー
  • BARTHボディケアシリーズ(ナイトルーティン向け)
  • トライアルサイズ商品(新規顧客獲得向け)

業績データ

BARTHは、高価格帯の入浴剤として位置づけられており、1袋900円(3回分)という価格設定は、一般的な入浴剤の約3倍です。しかし、立ち上げから3年で売上は10倍に達し、年平均300%の成長を続けています。特にSNSを活用したマーケティング戦略が功を奏し、オーガニックな拡散による認知度向上が売上増に大きく貢献しています。

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具体的な売上額は非公開ですが、アース製薬の2024年度の日用品セグメントの売上が約560億円であり、その中の主要ブランドの1つであることから、数十億円の売上と推定できます。また直近の伸び率も昨対比120%であり、順調にシェアを伸ばしていることがわかります。このように中性重炭酸入浴剤市場における主要ブランドとして急速にシェアを拡大しているBARTHはなぜ選ばれるのかを探っていきましょう。

2. 市場環境分析

まずはBARTHが所属している市場カテゴリーは顧客の何を解決しているのかを考えてみましょう。

市場定義:消費者のジョブ(Jobs to be Done)

入浴剤市場、特に中性重炭酸入浴剤が解決する主な消費者ジョブは以下の通りです:

  1. 日々の疲れを効果的に癒したい(機能的ジョブ):仕事や家事の疲れを解消し、心身をリセットしたいという強いニーズがあります。
  2. 自宅で高級スパ体験を味わいたい(感情的ジョブ):高級スパに行く時間やコストをかけずに、自宅で贅沢な入浴体験を得たいという欲求があります。
  3. 健康や美容を日常的にケアしたい(機能的・社会的ジョブ):継続的な健康維持や美容効果を手軽に得たいという願望があります。
  4. 睡眠の質を向上させたい(機能的ジョブ):良質な睡眠につながる入浴習慣を確立したいというニーズがあります。

これらのジョブは、現代の忙しいライフスタイルの中で、「自分への投資」や「セルフケア」として優先度が高まっています。特に、健康意識の高まりやストレス社会の中で、入浴を通じた健康管理の重要性は増しています。

競合状況

中性重炭酸入浴剤市場における主要競合ブランドには以下があります:

  • HOT TAB:炭酸入浴剤の先駆的存在
  • バブ(花王):大手メーカーの炭酸入浴剤
  • 温泡(アース製薬):炭酸の泡で温浴効果を高める入浴剤
  • 炭酸力(バスクリン):ライオングループの炭酸入浴剤

これらの競合ブランドと比較した場合、BARTHは高級入浴剤セグメントにポジショニングしており、品質と効果を重視するプレミアム層をターゲットとしています。

POP/POD/POF分析

次に、このカテゴリーで戦って勝っていくために必要な要素を整理していきましょう。

Points of Parity(業界標準として必須の要素)

  • 入浴時の快適さと温まり効果
  • 心地よい使用感(泡立ちや香り)
  • 基本的な肌への優しさ
  • 利便性の高いパッケージ
  • 適切な使用方法の説明

Points of Difference(差別化要素)

  • 独自の中性重炭酸技術による高い温浴効果
  • 長時間持続する重炭酸イオンの効果
  • 無添加・無香料による敏感肌対応
  • 美容成分の配合による付加価値
  • ブランドストーリーとナイトウェルネス訴求
  • プレミアム感のあるデザインと高級感

Points of Failure(市場参入の失敗要因)

  • 効果実感の欠如
  • 過度な高価格による費用対効果の悪さ
  • 添加物による肌トラブル
  • 使用の煩雑さ
  • ターゲット層のニーズとの不一致
  • 信頼性・安全性への疑念

BARTHは、POPを十分に満たしながら、中性重炭酸技術とブランドの世界観という強力なPODを確立することで、競合との差別化に成功しています。特に、肌への優しさと高い効果という一見相反する価値を両立させた点が、消費者の信頼獲得につながっています。

PESTEL分析

次に、入浴剤市場は各視点で見たときに追い風なのか、向かい風なのかを見ていきましょう。

Political(政治的要因)

  • 機会:健康促進政策による予防医療の重視
  • 脅威:輸入材料への関税や規制強化

Economic(経済的要因)

  • 機会:健康投資に対する消費意欲の高まり
  • 脅威:原材料価格の上昇、景気後退時の高級品消費減少

Social(社会的要因)

  • 機会:セルフケア志向の高まり、睡眠の質への注目度上昇
  • 機会:SNSでの美容・健康情報共有の活発化
  • 機会:在宅時間の増加によるバスタイム重視傾向

Technological(技術的要因)

  • 機会:新たな有効成分開発、効果測定技術の進化
  • 脅威:競合他社による類似技術の開発

Environmental(環境的要因)

  • 機会:環境に配慮した製品開発への評価
  • 脅威:資源保護や水質保全に関する規制強化

Legal(法的要因)

  • 機会:品質表示の厳格化による高品質製品の差別化
  • 脅威:薬機法など表示規制の厳格化

入浴剤市場、特に高機能入浴剤セグメントは、健康志向の高まりやセルフケア意識の向上といった社会的要因から大きな追い風を受けています。特に高品質でプレミアムな入浴剤の需要は、コロナ禍以降の「おうち時間の充実」というトレンドとも相まって拡大傾向にあります。

日本の入浴剤市場全体は約700億円規模で、そのうち機能性入浴剤は成長率が高く、特に炭酸系入浴剤も高い成長率で成長しているとされています。BARTHが属する中性重炭酸入浴剤の市場規模は明確なデータはありませんが、プレミアム価格帯として拡大傾向にあると推察されます。

3. ブランド競争力分析

続いて、BARTH自体の強み、弱みは何で、それらが今の外部環境の中でどう活かしていけるのか、いくべきなのかを見ていきましょう。

SWOT分析

Strengths(強み)

  • 独自の中性重炭酸技術による差別化
  • 無添加・無香料による敏感肌対応
  • 美容成分の配合による付加価値
  • SNSを中心とした口コミ拡散力
  • 高級感のあるブランドイメージ
  • ナイトウェルネスというコンセプトの明確さ

Weaknesses(弱み)

  • 高価格帯による購入ハードルの高さ
  • 効果に対する初回利用者の懐疑心
  • 認知度が競合大手ブランドと比較して低い
  • 販売チャネルの限定性
  • 継続利用を促すためのロイヤルティプログラムの弱さ

Opportunities(機会)

  • セルフケア・ウェルネス市場の拡大
  • ナイトルーティン(就寝前の習慣)への関心向上
  • SNS上での美容・健康情報共有の活発化
  • 健康投資に対する消費者の意識向上
  • 在宅時間の増加によるバスタイム重視の傾向

Threats(脅威)

  • 大手メーカーによる類似製品の開発
  • 競合の価格戦略による価格競争
  • 新興ブランドの市場参入
  • 経済情勢の悪化による高級品消費の減少
  • 消費者の新たな代替品(入浴以外のリラックス方法)への移行

クロスSWOT戦略

SO戦略(強みを活かして機会を最大化)

  • ナイトルーティンの重要性を訴求するコンテンツマーケティングの強化
  • SNSを活用した美容効果や使用体験の共有促進
  • 健康投資としての価値を明確にしたブランドメッセージの展開

WO戦略(弱みを克服して機会を活用)

  • トライアルサイズの提供による購入ハードルの低減
  • 効果実感を高めるための使用方法の詳細なガイド提供
  • セルフケア習慣化を促すサブスクリプションモデルの導入

ST戦略(強みを活かして脅威に対抗)

  • 独自技術と効果の科学的根拠の強調による差別化
  • ロイヤルカスタマーを活用した口コミマーケティングの強化
  • 製品ラインの拡充による顧客囲い込み

WT戦略(弱みと脅威の両方を最小化)

  • 品質と効果に見合った価格設定の合理的説明の強化
  • 販売チャネルの拡大と認知度向上施策
  • 顧客体験の継続的改善によるブランドロイヤルティの構築
graph TD A[BARTH SWOT戦略] --> B[SO戦略] A --> C[WO戦略] A --> D[ST戦略] A --> E[WT戦略] B --> B1[ナイトルーティン訴求強化] B --> B2[SNS活用の体験共有促進] B --> B3[健康投資価値の明確化] C --> C1[トライアルサイズ提供] C --> C2[効果実感向上ガイド] C --> C3[サブスクリプション導入] D --> D1[独自技術の科学的訴求] D --> D2[口コミマーケティング強化] D --> D3[製品ライン拡充] E --> E1[価格設定の合理的説明] E --> E2[販売チャネル拡大] E --> E3[顧客体験の継続的改善]

BARTHのSWOT分析から見えてくるのは、独自技術と明確なブランドコンセプトという強みを活かしながら、高価格帯という弱みを克服するための戦略的アプローチの重要性です。セルフケア市場の拡大という追い風を最大限に活用し、効果実感と顧客体験の向上に注力することで、競争優位性を維持・強化できる可能性が高いと言えます。

4. 消費者心理と購買意思決定プロセス

続いて、BARTHの顧客はなぜこのブランドを選ぶのか、その購買行動の構造を複数パターンで見ていきましょう。

オルタネイトモデル分析

パターン1:疲労回復と睡眠の質を重視する働く女性

  • 行動:BARTHを購入し、仕事帰りの夜に入浴剤として使用する
  • きっかけ:仕事のストレスや身体的疲労の蓄積、睡眠の質の低下を感じている
  • 欲求:効果的に疲れを癒し、質の高い睡眠を得たい
  • 抑圧:高価格への躊躇、効果への懐疑心、自分へのご褒美を許容できるか
  • 報酬:疲労感の軽減、睡眠の質向上、自分を大切にしているという満足感

このパターンでは、忙しい生活の中で「自分への投資」として入浴時間を確保し、その効果を最大化したいという欲求がBARTHの機能的価値と合致しています。高価格も「健康投資」という文脈では許容されやすくなります。

パターン2:美容効果を求める美意識の高い消費者

  • 行動:BARTHを定期的に使用し、SNSで体験や効果を共有する
  • きっかけ:SNSでの口コミや美容情報との接触、肌質改善の願望
  • 欲求:自宅で手軽に美容効果を得たい、トレンドに敏感な自分を表現したい
  • 抑圧:費用対効果への不安、継続使用の経済的負担
  • 報酬:肌の調子向上、美意識の高さの自己確認、SNSでの共有による承認

このパターンでは、「美容投資」としての価値とSNSでの共有価値が重要な購買動機となっています。BARTHの美容成分配合商品がこうしたニーズに応え、高価格帯であることがむしろブランド価値の証明となることもあります。

パターン3:健康意識の高い30代以上の消費者

  • 行動:BARTHを健康習慣の一部として定期的に使用する
  • きっかけ:加齢に伴う健康への意識向上、予防医療への関心
  • 欲求:自宅で手軽に健康ケアを行いたい、科学的根拠のある方法を選びたい
  • 抑圧:高額な健康投資の妥当性への疑問、効果の不確実性
  • 報酬:健康維持への安心感、自己管理ができている充実感

このパターンでは、「科学的根拠に基づく健康法」としてのBARTHの価値が重視されます。独自技術や効果のメカニズムを理解することで、高価格への抵抗感が軽減され、継続的な購入につながります。

オルタネイトモデル分析から、BARTHは単なる入浴剤ではなく、「自己投資」「美容効果」「健康習慣」という文脈で消費者に選ばれていることがわかります。これらの文脈では、価格よりも効果や体験価値が重視され、高価格という障壁を乗り越える心理的メカニズムが働いています。

本能的動機

BARTHが刺激する本能的動機を分析すると、以下のような要素に訴求していることがわかります。

生存本能に関連する訴求

  • 回復と休息:疲労回復や睡眠の質向上は、身体の回復能力を高め、生存に有利に働く
  • 健康維持:血行促進や代謝向上は、身体の健康状態を改善し、病気のリスクを低減
  • ストレス解消:リラックス効果によるストレス軽減は、免疫力維持に寄与

生殖本能に関連する訴求

  • 美容効果:肌の調子や見た目の改善は、生物学的な魅力向上につながる
  • 自己投資:自分を大切にするという行為は、自己価値の向上として認識される
  • 社会的シグナル:高級ブランドの使用による社会的地位の表現

8つの欲望への訴求

  1. 安らぐ:BARTHは入浴によるリラックス効果を高め、日々の疲れを癒す安らぎを提供
  2. 進める:自己ケアの習慣化による健康・美容の向上という自己改善を促進
  3. 決する:様々な入浴剤の中から選ぶという意思決定と自己決定感の満足
  4. 有する:プレミアムな商品を所有する満足感とステータス
  5. 属する:BARTHユーザーという美意識・健康意識の高いグループへの帰属意識
  6. 高める:自己投資による健康・美容レベルの向上という自己価値の高揚
  7. 伝える:SNSでの体験共有を通じた自己表現と他者とのコミュニケーション
  8. 物語る:ナイトルーティンという日常の物語の中に自分を位置づける満足感

BARTHは特に「安らぐ」「進める」「高める」の3つの欲望に強く訴求しています。忙しい現代人の「休息と回復」への欲求に応えながら、同時に「自己改善」や「自己価値の向上」という進化的に重要な欲望を刺激することで、単なる機能的価値を超えた情緒的つながりを構築しています。

この分析から、BARTHは表面的な「炭酸入浴剤」という製品カテゴリーを超えて、より根源的な「自己回復と向上のための儀式」という文脈で消費者の心に響いていることがわかります。

5. ブランド戦略の解剖

これまで整理した情報をもとに、BARTHはどういう人のどういうジョブに対して、なぜ選ばれているのか、そしてどうその価値を届けているのかをまとめていきます。

Who/What/How分析

パターン1:疲労回復と睡眠改善を求める30代働く女性

Who(誰に)

  • 30代前後の仕事や家事で忙しい女性
  • 疲労感や睡眠の質の低下に悩んでいる
  • 自分へのご褒美として質の高いケアを求めている

What(便益)

  • 効果的な疲労回復と質の高い睡眠
  • リラックス効果による心身のリセット
  • 入浴を通じた心地よい日常習慣の確立

What(独自性)

  • 独自の中性重炭酸技術による高い温浴効果
  • 無添加・無香料による肌への優しさ
  • ナイトウェルネスという明確なコンセプト

What(RTB)

  • 重炭酸イオンの温浴効果に関する科学的根拠
  • 使用者の高い満足度と口コミ評価
  • 多くのメディアでの紹介実績

How(プロダクト)

  • 使いやすいタブレット形状の入浴剤
  • 美容成分を配合した高機能製品
  • シンプルかつ高級感のあるパッケージデザイン

How(コミュニケーション)

  • 「なりたいジブンは、夜につくる。」というタグライン
  • SNSを中心とした口コミ拡散戦略
  • ナイトルーティンの提案と効果の訴求

How(場所)

  • 高級感のあるバラエティショップやドラッグストア
  • 公式オンラインストアやECサイト
  • SNSやメディアを通じた情報接点

How(価格)

  • プレミアム価格帯(1回あたり約300円)
  • トライアルサイズの提供による試用ハードル低減
  • 効果に見合った価値提案(投資としての捉え方)

このセグメントに対してBARTHは、「忙しくても自分を大切にできる時間」という価値提案を行っています。高価格という障壁を、「自分への投資」という文脈で乗り越えさせることに成功しています。

パターン2:美容効果を重視する20代SNS世代

Who(誰に)

  • 20代前後の美容・トレンドに敏感な若年層
  • SNSを積極的に活用する情報発信者
  • 新しい美容法や話題の商品に興味がある

What(便益)

  • 入浴を通じた美容効果の向上
  • 話題性のある体験とSNS発信素材
  • 肌質改善と美容知識の獲得

What(独自性)

  • 美容成分を配合した中性重炭酸入浴剤
  • インスタ映えするデザインと体験
  • トレンド感のあるブランド世界観

What(RTB)

  • インフルエンサーや美容専門家からの推奨
  • 口コミサイトでの高評価
  • 美容メディアでの掲載実績

How(プロダクト)

  • 美容成分強化タイプの製品ラインナップ
  • フォトジェニックなパッケージと使用体験
  • 複数の美容効果を訴求した商品設計

How(コミュニケーション)

  • インフルエンサーとのコラボレーション
  • ビジュアル重視のSNSマーケティング
  • 美容効果の科学的説明と体験共有促進

How(場所)

  • 若年層が利用する都市部のバラエティショップ
  • インスタグラムなどのSNSプラットフォーム
  • 美容系ECサイトや公式オンラインストア

How(価格)

  • トレンド商品としてのプレミアム価格帯
  • 「一度は試したい話題の商品」としてのポジショニング
  • 美容投資としての価値提案

このセグメントでは、「話題性のある美容体験」という価値提案が効果的です。SNSでの共有価値や美容トレンドへの参加意識が、高価格への抵抗感を軽減する要因となっています。

成功要因の分解

ブランドのポジショニングと独自価値

  • 「中性重炭酸技術」という明確な技術的差別化
  • 「ナイトウェルネス」というブランドコンセプトの確立
  • 入浴剤を超えた「セルフケアブランド」としての位置づけ
  • 価格プレミアムを正当化する品質と効果の追求
  • 「自分への投資」という価値文脈の創造

コミュニケーション戦略の特徴

  • SNSを核とした拡散型マーケティング
  • 「なりたいジブンは、夜につくる。」という明確なメッセージ
  • 使用者の体験談とビフォーアフターの見える化
  • 科学的根拠と感情的訴求のバランス
  • インフルエンサー活用による信頼性と拡散力の強化

価格戦略と価値提案の整合性

  • プレミアム価格設定(一般的な入浴剤の約3倍)
  • 「効果に見合った価値」という説得力ある価格正当化
  • トライアルサイズによる購入ハードルの低減
  • 「1回あたり300円」という投資単位の細分化
  • 長期的効果を強調した「コスパの再定義」

カスタマージャーニー上の差別化ポイント

  • 認知段階:SNSやメディア露出での科学的根拠と高級感の訴求
  • 検討段階:口コミや使用体験の可視化による信頼性向上
  • 購入段階:トライアルサイズの提供と購入アクセスの多様化
  • 使用段階:効果実感を高める使用ガイドの充実
  • 継続段階:ナイトルーティンとしての習慣化促進と関連製品の提案
  • 推奨段階:SNSでの体験共有を促す仕掛けと共有しやすいコンテンツ提供

顧客体験(CX)設計の特徴

  • 開封から使用までの体験の高級感と満足度の追求
  • 入浴中の感覚的体験(泡立ち、温かさ、肌触り)の最適化
  • バスタイム後の効果実感を高める使用タイミングや方法の提案
  • ナイトルーティンとして継続使用の価値を訴求
  • 顧客コミュニティによる体験の共有と共感醸成
graph TD A[BARTHの価値提供プロセス] --> B[ターゲット顧客の特定] B --> B1[疲労回復・睡眠を求める30代女性] B --> B2[美容効果を重視する20代SNS世代] B --> B3[健康意識の高い30代以上] A --> C[価値提案の構築] C --> C1[中性重炭酸技術による効果] C --> C2[ナイトウェルネスというコンセプト] C --> C3[自分への投資としての文脈創造] A --> D[価値提供手段] D --> D1[SNSを核とした体験共有] D --> D2[科学的根拠と感情的訴求の両立] D --> D3[トライアルからの習慣化促進]

見えてきた課題

外部環境からくる課題と対策

  1. 競合の追随と市場の飽和
    • 課題:大手メーカーや新興ブランドによる類似製品の増加
    • 対策:独自技術の進化と特許保護、ブランド体験の強化による差別化
  2. 新型コロナ禍後の生活様式変化
    • 課題:在宅時間の減少による入浴時間の確保難易度上昇
    • 対策:短時間でも効果的な入浴法の提案、効率的なナイトルーティンの訴求
  3. 経済環境の悪化と消費者心理の変化
    • 課題:プレミアム価格帯商品への支出抑制傾向
    • 対策:長期的な健康投資としての価値訴求強化、コストパフォーマンスの可視化

内部環境からくる課題と対策

  1. 製品ラインナップの拡充と複雑化
    • 課題:製品増加による顧客の選択難易度上昇とブランドメッセージの拡散
    • 対策:製品体系の明確化、パーソナライズド推奨システムの導入
  2. ブランド成長に伴う品質管理とサプライチェーン
    • 課題:急速な成長による品質の不安定さや供給の遅延リスク
    • 対策:品質管理体制の強化、生産・供給体制の拡充
  3. 初回ユーザーの効果実感とリピート率向上
    • 課題:初回使用での効果実感が得られないユーザーのロイヤルティ獲得難易度
    • 対策:効果的な使用方法の詳細ガイド提供、初回〜数回使用のフォローアップ強化

これらの課題に対応しながら、BARTHは「中性重炭酸入浴剤」という狭いカテゴリーを超えて、「ナイトウェルネスブランド」としての進化を続けることが重要です。特に、単一製品から総合的なナイトルーティン提案ブランドへの拡張は、今後の成長戦略の核となるでしょう。

6. 結論:選ばれる理由の統合的理解

総合的に見て、競合や代替手段がある中でBARTHはなぜ選ばれるのでしょうか。

消費者にとっての選択理由

機能的側面

  • 独自の中性重炭酸技術による高い温浴効果と疲労回復
  • 無添加・無香料による肌への優しさと安全性
  • 美容成分の配合による付加的な美容効果
  • 効果が長続きする技術的優位性

感情的側面

  • 「自分を大切にしている」という自己肯定感
  • 日常の中での「特別な時間」の創出感
  • 高級ブランド使用による満足感と充実感
  • ナイトルーティンの一部としての安心感と習慣化

社会的側面

  • 美容・健康意識の高さを示す社会的シグナル
  • SNSでの共有価値と他者からの承認
  • トレンドに敏感な自己イメージの強化
  • 「よき自分」への投資としての自己表現

市場構造におけるブランドの独自ポジション

BARTHは入浴剤市場において、以下のような独自のポジションを確立しています:

  1. 機能と体験の同時満足:一般的な入浴剤よりも機能性が高く、高級スパよりも手軽に体験できるという「手の届く贅沢」のポジション
  2. 美容と健康の融合:単なるリラックスや疲労回復だけでなく、美容効果も提供するという複合的な価値の実現
  3. ナイトルーティンの中核:入浴剤から始まり、ナイトルーティン全体を提案するライフスタイルブランドとしての位置づけ
  4. 科学と感性の両立:科学的根拠に基づく効果と、感性に訴える体験価値の両方を提供

この独自ポジションは、低価格大量生産型の大手メーカー製品と、美容専門の高価格スパブランドの間のブルーオーシャンを開拓したものと言えます。

競合や代替手段との明確な差別化要素

BARTHが持つ明確な差別化要素は以下の通りです:

  1. 中性重炭酸技術:独自の技術による長時間持続する重炭酸イオン効果が、他の炭酸入浴剤との大きな違いを生み出しています。この技術は顧客にとって価値があり(効果が長続き)、トレードオフを伴い(開発コストと価格の上昇)、模倣が難しい(技術特許)という持続的競争優位の3要素を満たしています。
  2. ブランドストーリーとコンセプト:「なりたいジブンは、夜につくる。」というタグラインに象徴されるナイトウェルネスというコンセプトは、単なる製品カテゴリーを超えた情緒的つながりを構築しています。
  3. 口コミとSNS戦略:大規模広告に頼らず、実際のユーザー体験を中心としたSNS拡散戦略は、信頼性と親近感を同時に実現しています。
  4. 体験設計の一貫性:パッケージデザインから使用体験、効果実感までの一連の顧客体験が一貫して高品質であり、ブランドの約束を裏切らない設計となっています。

持続的な競争優位性の源泉

BARTHの持続的な競争優位性は、以下の要素から生まれています:

  1. 技術的優位性:中性重炭酸技術とその継続的な進化は、簡単には模倣できない差別化要素となっています。
  2. ブランド資産の蓄積:高級感、信頼性、効果への期待といったブランド資産が、新規参入障壁として機能しています。
  3. 顧客理解の深さ:ターゲット顧客のニーズと潜在的欲求に対する深い理解が、的確な製品開発とコミュニケーションを可能にしています。
  4. SNSを中心とした顧客コミュニティ:実際のユーザーによる自発的な推奨と体験共有が、信頼性の高いマーケティング資産となっています。
  5. 製品体験と効果の一貫性:使用体験の質が安定して高いことが、リピート購入とロイヤルティにつながっています。
graph TD A[BARTHが選ばれる理由] --> B[機能的価値] A --> C[感情的価値] A --> D[社会的価値] B --> B1[中性重炭酸技術] B --> B2[肌への優しさ] B --> B3[美容成分効果] C --> C1[自己投資感] C --> C2[特別な時間] C --> C3[習慣化の安心感] D --> D1[社会的シグナル] D --> D2[SNS共有価値] D --> D3[トレンド参加感]

BARTHが選ばれる本質的な理由は、単なる製品性能や価格以上の価値を提供している点にあります。「入浴剤」という製品カテゴリーを超えて、「自分を大切にする時間」「なりたい自分への一歩」という文脈を創造し、日常の中の小さな贅沢として位置づけることに成功しています。この文脈創造こそが、高価格という障壁を乗り越えて選ばれ続ける根本的な理由と言えるでしょう。

7. マーケターへの示唆

我々マーケターはBARTHの成功例から何を学べるのでしょうか。

再現可能な成功パターン

  1. 「日常の中の贅沢」戦略
    • BARTHは一般消費者でも手が届く価格帯で「スペシャル感」を提供することで、「贅沢なのに毎日使える」というポジショニングに成功しています。
    • 応用例:コーヒー業界のスターバックス、スキンケア業界のSK-II、食品業界のプレミアムアイスなど
  2. 「自己投資」の文脈創造
    • 高価格を「無駄遣い」ではなく「自分への投資」として再定義することで、価格抵抗感を低減させる戦略です。
    • 応用例:フィットネス業界のヨガスタジオ、教育業界のオンライン講座、家電業界の高機能家電など
  3. 「科学×感性」の両立アプローチ
    • 科学的根拠による信頼性と、感性に訴える体験価値の両方を提供することで、理性と感情の双方に訴える戦略です。
    • 応用例:化粧品業界、健康食品業界、家具・インテリア業界など
  4. 段階的購入ハードル低減法
    • トライアルサイズの提供や使用方法の詳細ガイドなど、初回購入から継続利用までのハードルを段階的に下げる戦略です。
    • 応用例:サブスクリプションサービス、高級食品、専門化粧品など

業界・カテゴリーを超えて応用できる原則

  1. ライフスタイル提案型ブランディング
    • 製品単体の機能や効果を超えて、ライフスタイルや価値観を提案するブランディングは、多くの業界で応用可能です。
    • BARTHの「ナイトルーティン」提案のように、顧客の日常生活の中での位置づけを明確にすることが鍵となります。
  2. 「なぜ高いのか」の明確化原則
    • 高価格帯製品の場合、なぜその価格が正当化されるのかを明確に説明することが信頼獲得につながります。
    • 技術、原材料、効果などの観点から、価格に見合う価値を具体的に示すことが重要です。
  3. SNS時代の口コミ設計
    • 単に製品を認知してもらうだけでなく、ユーザーが自発的に共有したくなる体験や要素を設計することが重要です。
    • 「発見→体験→共有→影響」というサイクルを意識したマーケティング設計が効果的です。
  4. 顧客体験の一貫性確保
    • 認知から購入、使用、継続までの全過程で一貫したブランド体験を提供することが、長期的なブランド構築には不可欠です。
    • パッケージデザイン、使用感、効果実感、アフターフォローなど、すべての接点での品質管理が重要です。
  5. ニッチからのメインストリーム化戦略
    • BARTHのように、最初は特定の層をターゲットにした後、徐々に市場を拡大していく戦略は、多くのカテゴリーで応用できます。
    • コアなファン層の熱量を活かしながら、段階的に市場を広げていくアプローチが効果的です。

BARTHの事例から学べる最も重要な点は、「製品」を売るのではなく「体験」や「文脈」を売ることの重要性です。機能や効能だけでなく、その製品が顧客の生活や自己認識にどのような意味をもたらすかを設計し、伝えることが、持続的な差別化と高付加価値化の鍵となります。

8. まとめ

BARTHの成功事例から学ぶキーポイントは以下の通りです:

  1. 独自技術と効果の科学的説明:中性重炭酸技術という独自性と、その効果の科学的根拠を明確に示すことで、高価格の正当化と差別化に成功しています。
  2. 「自己投資」という価値文脈の創造:単なるコストではなく、自分への投資という文脈を創り出すことで、価格抵抗感を軽減し、むしろ価値の証明として高価格を活用しています。
  3. ナイトルーティンというライフスタイル提案:製品単体ではなく、生活習慣の一部としてのポジショニングにより、日常に組み込まれる持続的な価値を創出しています。
  4. SNSを活用した口コミ拡散戦略:高額な広告費をかけずとも、実際のユーザー体験を中心とした信頼性の高い情報拡散を実現しています。
  5. 顧客心理の深層理解と本能への訴求:「安らぐ」「進める」「高める」という人間の根源的欲望に訴えかけることで、表面的な製品比較を超えた情緒的つながりを構築しています。
  6. 体験設計の一貫性と総合的品質管理:パッケージから使用体験、効果までの全過程での高品質と一貫性が、ブランド全体への信頼を支えています。
  7. 明確なターゲット設定と段階的拡大:当初は美容健康意識の高い女性層をターゲットとし、そこからの口コミを通じて徐々に市場を拡大する戦略が奏功しています。

これらの成功要因を自社のマーケティング戦略に応用する際は、まず自社製品・サービスが解決する本質的な顧客ジョブ(課題)を特定し、それに対する独自の解決方法を明確化することから始めるとよいでしょう。価格や機能の競争ではなく、顧客の生活や自己認識にどのような意味や価値をもたらすかという視点でブランドを再構築することが、持続的な競争優位性につながります。

最終的に、BARTHの事例が示すのは、「製品カテゴリーの境界を超える」ことの重要性です。入浴剤という従来のカテゴリーの枠を超えて、「ナイトウェルネス」「自己投資」という新たな文脈を創造することで、競合との差別化と高付加価値化に成功しています。自社製品についても、今一度その本質的な価値と顧客の深層心理を見つめ直し、新たな価値文脈を創造する可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

出典:アース製薬 公式サイト

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tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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