日本のマーケティング組織の問題点と理想の姿、改革の方向性 - 勝手にマーケティング分析
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日本のマーケティング組織の問題点と理想の姿、改革の方向性

日本のマーケティング組織の問題点と理想 応用を学ぶ
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はじめに

日本のマーケティング組織は、 「新規顧客獲得向けのプロモーション組織」 であることが多く、これは企業の成長を持続的に支えるには不十分と筆者は捉えています。本記事では、日本のマーケティング組織の現状の課題、理想的なマーケティング組織の形、そしてその実現に向けた組織改革のステップについて解説します。現状の組織の改善のヒントになれば幸いです。

日本のマーケティング組織の現状と課題

日本の企業におけるマーケティング組織は、 短期的なプロモーションや広告施策 に重点を置きすぎており、戦略的なマーケティング思考が不足しています。その背景には以下のような課題が存在します。

① 売上至上主義と短期的視点

  • 企業の評価指標が 短期の売上 に依存しており、プロモーション効果を測ることが目的化している。
  • 顧客の購買行動を中長期で分析し、ブランドのプレファランス(選好度)を高める視点が欠けている。
  • マーケティング部門が 「広告運用チーム」 のようになり、施策の本質的な評価やブランド構築に注力できていない。

② 組織がサイロ化し、マーケティングが一部門の役割になっている

  • 営業、開発、CS(カスタマーサポート)との連携が弱く、 マーケティングが集客のみ に終始する。
  • 商品開発とマーケティングが分離 しており、製品設計段階からマーケティング戦略が組み込まれていない。(Who/WhatとHowの分断)
  • 企業全体の戦略においてマーケティングの影響力が弱く、 経営判断にマーケティングの視点が反映されにくい。

③ 顧客理解の不足

  • Who(誰に)、What(何を)、How(どうやって)のフレームワークを活用せず、ターゲット設定が曖昧なまま集客をしている。
  • 顧客データの収集や分析が弱く、 直感や過去の経験に基づくマーケティング施策 が多い。
  • オンラインとオフラインの統合的な顧客理解が不十分。

理想的なマーケティング組織とは?

日本の企業が目指すべきマーケティング組織は、 「プロモーション部門」ではなく、「需要創造型マーケティング組織」 です。理想的なマーケティング組織の特徴をまとめてみましたのでぜひ参考にしてください。

① 顧客中心のマーケティング

  • Who/What/Howを徹底的に整理し、 ターゲット顧客の課題を起点としたマーケティング戦略 を策定し、社内の共通認識をとる。
  • 定期的にPESTEL分析やSWOT分析を活用し、 環境変化に応じた柔軟な戦略策定 を行う。
  • 顧客のライフタイムバリュー(LTV)を最大化 するため、短期的な販促ではなく、長期的な関係構築を重視。

② ブランドエクイティを構築できるマーケティング

  • プロモーションだけでなく、 ブランドの認知・選好度(プレファランス)を高める施策 を重視。
  • 短期の売上向上 だけでなく、長期的なブランド価値向上を目的とする。
  • 企業の独自性を明確にし、 POP(業界標準)、POD(差別化要素)、POF(失敗要因) のフレームワークを活用。

③ マーケティング組織が全社横断的に機能

  • 営業・開発・CS・経営層と連携し、組織全体でマーケティングを推進 する。
  • マーケティングを 「支援部門」ではなく「経営の中核」 として位置づける。
  • 「販売チャネルの最適化」ではなく、「市場を創る」視点 で戦略を策定する。

④ データドリブンな意思決定

  • 顧客データや市場データを活用 し、マーケティング施策の効果を測定・改善する。
  • NBDモデル(負の二項分布モデル)を活用し、消費者の認知・配荷・プレファランスを最大化する。
  • デジタルマーケティングとオフライン施策を統合し、360度の顧客データを活用 する。

⑤ アジャイルなマーケティング組織

  • 環境変化に迅速に対応できるよう、 マーケティング組織をアジャイル型に設計 する。
  • PDCAを高速で回し、リアルタイムでのマーケティング最適化を実施 する。
  • テストマーケティングと仮説検証を繰り返し、最適なマーケティング施策を見つける文化を醸成。

組織改革のステップ

では、具体的にマーケティング組織を変革するために取るべきステップもご紹介します。

ステップ⓪:組織が追うべき目標

  1. 市場での圧倒的な認知獲得:ターゲット顧客におけるブランド想起率を50%以上にする。
  2. データ活用によるマーケティング施策の精緻化:データ分析を基にROIが1.5倍以上向上する施策を実施する。
  3. リピート顧客の増加:LTV(ライフタイムバリュー)を3年間で20%向上させる。
  4. 全社マーケティングの統合:マーケティングと営業のKPIを統一し、部門横断のプロジェクト数を倍増させる。

ステップ①:マーケティングの役割を「販売促進」から「市場創造」に転換

  • 企業のマーケティング部門の役割を 「短期の販売支援」ではなく「長期的な市場創造」 に変更。
  • 既存顧客のリテンション(継続率)向上施策を強化し、年間の解約率を5%削減。
  • KPIを 短期売上から、顧客の購買頻度・継続率・ブランド認知率 へと変更。

ステップ②:マーケティング組織を全社横断型に再構築

  • 営業、開発、CS、経営陣と連携 し、各部門と共通のデータ基盤を作成。
  • マーケティング戦略に 商品の開発・設計段階から関与 し、最適なプロダクトマーケットフィットを追求。
  • 全社でマーケティングの考え方を理解し、部門間のシナジーを強化する研修を実施。

ステップ③:データドリブンなマーケティングの実装

  • 購買データ、Web行動データ、SNS反応データ を統合し、一元管理できるマーケティングダッシュボードを構築。
  • A/Bテストを徹底し、施策ごとのコンバージョン率を可視化 し、最も効果の高い手法をスケールさせる。
  • AIを活用したパーソナライズドマーケティング を導入し、ユーザーごとに最適な広告配信・コンテンツ提供を実施。

ステップ④:ブランドの持続的な価値向上を実現

  • ブランド価値を 「顧客の購入意欲を継続的に高める要因」 と定義し、顧客アンケート・NPS(ネットプロモータースコア)を活用。
  • ブランドの「独自価値」を 市場調査と顧客インサイトの分析 に基づき特定し、すべての施策に反映。
  • 3年間で ブランド推奨意向を20%向上させる ための施策を実施し、定点観測。

マーケティング組織のチェックリスト

現状のマーケティング組織が理想的かを評価するためのチェック表

以下の表に 「はい」または「いいえ」 で回答してください。 「いいえ」が多い場合、組織改革が必要です。

Noチェック項目はいいいえ
1自社のマーケティング戦略は 短期の売上向上 ではなく 長期的な市場創造(持続的に市場で価値を提供し続ける戦略) を目指しているか?
2マーケティング部門は 営業・開発・CSと密接に連携 し、部門間で統一されたKPIを持っているか?
3顧客の 購買データ、Web行動データ、SNS反応データ を活用した施策を実施しているか?
4ブランドの認知度・選好度・リピート率 を主要なKPIとして追跡・改善しているか?
5A/Bテストやデータ分析を活用 し、マーケティング施策のROIを可視化・最適化しているか?
6AIや自動化ツール を活用し、パーソナライズドマーケティングを実践しているか?
7NPS(ネットプロモータースコア)や 顧客アンケートのフィードバック を定期的に収集し、改善につなげているか?
8マーケティングの施策は 組織全体の目標と整合性 を持ち、経営戦略に組み込まれているか?

スコア判定基準

  • 7~8個「はい」 → 理想的なマーケティング組織です。
  • 4~6個「はい」 → 一部改善が必要です。
  • 0~3個「はい」 → 組織改革を強く推奨します。

このチェックリストを活用し、自社のマーケティング組織の現状を評価し、理想的な形へと進化させていただくこととおすすめします。

まとめ

日本企業のマーケティング組織は、 短期的な売上向上に偏り、戦略的なマーケティング思考が不足 しているという課題を抱えています。その解決策として、 長期的なブランド成長、データドリブンな戦略、全社横断的なマーケティング への転換が必要です。

これを実現することで、 単発のプロモーションではなく、持続可能な事業成長 につながります。日本企業が 「売るためのマーケティング」から「選ばれるためのマーケティング」 へと転換できるかどうかが、今後の競争力のカギとなるでしょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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