はじめに
トヨタイムズは、トヨタ自動車が展開する独自の情報発信メディアとして、マーケティングの成功事例として注目を集めています。企業が自らメディアを持ち、従来の広告ではなく、情報発信を通じてブランド価値を高める手法は、現代のマーケティング戦略において重要な要素となっていますが、TOYOTAのようなグローバル大企業がここに力を入れていることが重要です。本記事では、トヨタイムズの現状と成功要因をマーケティングツールを使い分析し、トヨタイムズのマーケティング戦略を徹底解説します。
トヨタイムズとは?

公式サイト:https://toyotatimes.jp/
トヨタイムズは、トヨタ自動車が2018年から展開する独自の情報発信メディアです。従来の企業広告とは異なり、ジャーナリズム的なアプローチでトヨタのリアルな姿を伝えることで「トヨタの内側を見せる」というコンセプトのもと、さまざまな視点から情報を発信しています。具体的にはニュースキャスターを起用し、テレビCM・YouTube・SNSなどのプラットフォームを活用して、主に下記のような内容を発信しています。
1. 企業情報
- トヨタ自動車の経営方針や戦略、決算に関する情報
- 社長交代や重要な人事発表に関するニュース
- トヨタのビジョンやミッションに関する記事
2. モビリティと技術
- 自動運転技術や電動車両(BEV、HEV、FCEV)に関する情報
- トヨタの新技術や製品開発に関する記事
- モビリティカンパニーへの移行に関する取り組み
3. 社内活動と労使関係
- 労使交渉や社内コミュニケーションに関する記事
- 社員の取り組みや社内イベントの紹介
- 社内の改善活動やプロジェクトに関する情報
4. 環境と社会貢献
- 環境保護や持続可能な開発に関する取り組み
- 地域社会への貢献活動やCSR(企業の社会的責任)に関する情報
5. モータースポーツ
- トヨタのモータースポーツ活動やイベントに関する記事
- GAZOO Racingに関連する情報やレース結果
6. インタビューと対談
- トヨタの経営陣や関係者へのインタビュー記事
- 業界の専門家や著名人との対談内容
トヨタイムズは、単なる製品情報の提供にとどまらず、企業文化や社会的責任についても広く取り上げている自社メディアです。
トヨタイムズの現状
現在、トヨタイムズはトヨタのブランド戦略の中核として機能していると言えるのでしょうか。客観的に調べられる数字を見ていきましょう。
- ページ数:
- 341ページ ※カテゴリーページなども含むため実質記事や動画は9割ほどだと推定
- ただし、サブドメインでhttps://toyotatimes-sports.toyota/も存在し、そちらも320ページほどある模様。

- 更新頻度:
- 多い時は毎日、少なくとも週1回はなにかしらの更新をしているのが伺えます。

- Googleトレンドの推移:キーワードは「トヨタイムズ」
- 2018年に開始してから意外にもGoogleトレンドの人気度は右肩上がりではないものの、コンスタントに話題になっていることがわかります。ただし、2024年が少し話題となることが少ないことと、数字も下がっているところは気になる点です。

- 検索ボリューム:キーワードは「トヨタイムズ」
- 22,300回/月
- 「トヨタイムズ」は企業の作り出した造語であるにも関わらず、万を超える月間検索回数になっていること自体は素晴らしいと思いますが、あのトヨタのメディアにしては少し少ないようにも感じます。

- 月刊流入数の推移:ドメイン全体
- 89,098アクセス/月
- グラフを見るとアクセスの推移は開始から右肩上がりで増えていることがわかります。ここからは順調にメディアが成長していることが伺えます。
- 被リンクの数も1.1Mと膨大な数なのでWEBサイト自体の評価が非常に高いようです。

- 流入ワード
- 情報目的KWを中心に幅広い目的にリーチしていることがわかります。

Semrushでは、下記のように設定
[I]Informational(情報目的):事実や情報、知識、疑問への回答を求めるクエリ
[N]Navigational(ナビゲート目的):特定のサイトやブランドに直行したい意図のクエリ
[C]Commercial(購入目的):商品やサービスの購入を検討しているユーザーのクエリ
[T]Transactional(行動目的):特定のアクションを実行したい意図のクエリ
- 読者の層:
- 車を持たない選択をしがちなZ世代から40代未満の方も多くみられていることがわかります。
- 男女比率も女性が4割と高い。

以上のデータから、トヨタイムズは認知から取引につながる流入まで幅広く拾えており、メディアとしての規模も年々成長していることがわかります。また、今までトヨタに興味がなかった層にもアプローチができており、多くの人々にとってのハードルの低い情報提供メディアとして機能していると考察できます。
※上記データは実際のデータとは異なる場合がありますので参考程度にご認識ください。
3C分析:トヨタイムズの成功要因を解剖
続いて、3C分析を使ってトヨタイムズを定性的分析してみましょう。
要素 | 分析内容 |
---|---|
顧客(Customer) | - 主なターゲットは、トヨタの製品や活動に関心を持つ一般消費者、投資家、従業員、就職希望者、そして自動車業界の関係者。 - 顧客ニーズとして、トヨタの最新技術、製品情報、企業活動、社会貢献への透明性や信頼性を求めている。 - 特に、環境問題や持続可能性に関心を持つ層が増加している。 - 自動車業界全体の変革期(EV化・自動運転技術の発展) - 企業の透明性や情報開示の重要性が増している |
競合(Competitor) | - 他の自動車メーカーが運営するオウンドメディア(例:ホンダの「Honda Stories」、日産の「Nissan Newsroom」など)が競合に該当。 - 一般的なニュースメディアや自動車専門メディアも間接的な競合となる。 - 差別化ポイントとして、トヨタイムズは「トヨタの内側」を見せる独自性を強調している。 |
自社(Company) | - トヨタ自動車が運営する公式メディアであり、企業の透明性を高める役割を担う。 - トヨタの強みである技術力、環境対応、モビリティ戦略を発信する場として活用。 - 社内外のステークホルダーに向けた情報発信を通じて、ブランドイメージの向上を図っている。 - トヨタ自身が発信者となり、広告ではなく"報道"の形を取る - 動画・記事・SNSを組み合わせたマルチプラットフォーム戦略 - 「トヨタのリアルを伝える」情報の透明性を重視 有名キャスターを起用し、メディアとしての信頼性を確保 |
- 顧客視点では、トヨタイムズはトヨタに関心を持つ幅広い層に向けて、信頼性の高い情報を提供している。
- 競合との差別化として、単なる製品情報にとどまらず、企業文化や社会的責任を深掘りして伝える点が強み。
- 自社の強みを活かし、トヨタのビジョンや戦略を効果的に発信することで、ブランド価値を高めている。
このように、トヨタイムズは「顧客ニーズへの対応」「競合との差別化」「自社の強みの活用」をバランスよく実現していることがわかります。
Who/What/How分析:トヨタイムズのマーケティング戦略
上記をもとにトヨタイムズのWho/What/Howをまとめると、下記のようになります。
要素 | 内容 |
---|---|
Who(誰に) | 車を購入検討している消費者、経営者、ビジネスパーソン、投資家、自動車ファン |
What(提供価値) | 企業広報の枠を超えた独自メディアの発信、トヨタの裏側を見せる透明性、信頼感のある情報提供 |
独自性(トレードオフ) | 一般的な広告とは異なり、「報道スタイル」を採用し、ニュースメディアのように展開 |
RTB(根拠) | トヨタという世界的ブランドの信頼、豊富な開発リソース、幅広いメディア戦略 |
How(どのように届けるか) | オウンドメディア(公式サイト)、動画コンテンツ(YouTube)、SNS(X、Facebook)、テレビCMを活用 |
トヨタイムズのマーケティング成功要因
1. 「広告しない広告」戦略
- 従来のCMのような直接的な宣伝をせず、メディアとして情報を発信
- ユーザーの興味を引き、トヨタのブランド価値を間接的に高める
2. マルチプラットフォーム活用
- YouTube、SNS、テレビ、Webサイトを組み合わせた情報発信
- 特にYouTubeでは、深掘りコンテンツやインタビューを活用
3. 企業の透明性を強調
- トヨタの社長が自ら登場し、リアルな意見を発信
- 製造現場や開発の裏側を公開することで、ブランドへの信頼を強化
4. 有名キャスターの起用
- 信頼性の高いニュースキャスターを起用することで、報道としての印象を強化
- 広告色を薄め、視聴者に「情報として価値がある」と感じさせる工夫
5. タイムリーな話題提供
- モータースポーツ、EV技術、企業戦略など、旬の話題を取り上げる
- トヨタが今何を考えているのか、リアルタイムで情報を届ける
まとめ:トヨタイムズの成功から学べること
① 企業は「広告」ではなく「情報発信者」となるべき
トヨタイムズは、トヨタが単なる広告主ではなく、自ら情報発信者として立ち回ることで、信頼性を獲得しました。自動車メーカーは今までTVCMでも売らない、情緒的な広告をよく出していましたが、TVCMには莫大な費用がかかります。そして蓄積するものではなく、流し続けないと人々の目に焼き付きません。一方、自社のオウンドメディアならそれらが効率的に自社の伝えたいことがそのまま伝えられます。
② 透明性とストーリーテリングがブランド価値を高める
企業の舞台裏やリアルなストーリーを見せることで、消費者や投資家の共感と信頼を獲得できます。例えばトヨタ車に対する認証問題についても今何をしているのかを積極的に発信しています。つまりマイナスになりうる情報でも発信をし、それを改善している姿を見せているのです。

③ メディアミックス戦略が重要
テレビ、YouTube、SNS、オウンドメディアを組み合わせることで、幅広い層にリーチし、効果的なブランド認知を生み出しました。
トヨタイムズのような成功を目指す企業向けアクションプラン
✅ 自社メディアを作り、広告から情報発信へシフトする
✅ 透明性を強調し、社長や社員が前面に出るコンテンツを作る
✅ YouTube、SNS、オウンドメディアを活用し、マルチプラットフォーム展開を行う
✅ 有名人や専門家を起用し、信頼感を高める
トヨタイムズのマーケティング戦略は、BtoC企業だけでなく、BtoB企業にも応用可能です。これからの企業は、単に商品を売るだけでなく、「信頼を獲得するメディア」としての視点を持つことが求められます。
今後、企業がどのように独自のオウンドメディアを活用していくのか、その動向に注目が集まるでしょう。