はじめに

かつて「カキフライ専用」のようなイメージが強かったタルタルソースが、近年新たな活用シーンを開拓し、家庭用市場で急成長を遂げています。特に唐揚げやチキン南蛮、さらには地域ごとの特色を活かしたご当地タルタルが増加し、スーパーの売り場でも存在感を増しています。
このトレンドは、食品業界やマーケターにとって重要な示唆を与えます。本記事では、タルタルソースの活用シーン拡大をマーケティング視点で分析し、今後の可能性を探ります。
さらに、マーケターにとってカテゴリの活用シーンをいかに作るかは、商品の成長戦略において極めて重要な要素です。活用シーンの拡大は、単に販売数を伸ばすだけでなく、ブランドの価値向上や市場全体の活性化にもつながります。本記事では、タルタルソースの成功事例をもとに、戦略的にカテゴリを拡張する手法についても考察します。
タルタルソース市場の拡大とその背景
1. 急成長する家庭用タルタルソース市場
- 販売額は5年間で70%増加
- マヨネーズカテゴリー内の構成比が6.8%に成長
- 2024年の販売額は前年比12.7%増
タルタルソースは、マヨネーズカテゴリーのサブカテゴリとして、長らく安定した需要を維持してきました。しかし、近年はその市場が急拡大。スーパーの販売データによると、2024年の売上は2019年比で約1.7倍に増加しています。
出典:Yahoo!ニュース タルタルソース、5年で7割強増加 コロナ禍の内食回帰が契機
活用シーンの広がり:カキフライから唐揚げへ
これまで、タルタルソースの活用シーンは主にカキフライやエビフライに限られていました。しかし、最近では以下のような食品との組み合わせが増えています。
タルタルソースの新たな活用シーン
活用シーン | 説明 |
---|---|
唐揚げ | 外食チェーンで「唐揚げ×タルタル」が流行し、家庭でも浸透 |
チキン南蛮 | 宮崎発祥の人気料理が全国的に定着 |
ポテトフライ | ケチャップやマヨネーズの代替として使用 |
サンドイッチ | 具だくさんのタルタルを使用したボリューム感あるメニュー |
お好み焼き | 関西圏を中心に、ソース+マヨの組み合わせに変化 |
特に「唐揚げ×タルタル」の組み合わせがヒットし、キユーピーは2023年に「具だくさんレモンタルタル」を発売し、唐揚げとの相性を強調しました。この影響で、外食でのトレンドが家庭内にも波及し、市場を押し上げました。


企業のマーケティング施策が市場拡大を後押し
(1)ブランドの積極的な提案
- キユーピーの戦略:唐揚げ向けタルタルソースを開発
- ヤマエ食品工業:「宮崎タルタルソース」でチキン南蛮需要を拡大
- 伊藤漬物本舗:「いぶりがっこのタルタルソース」がテレビで話題に
各社がターゲット市場を広げるために、新しい用途提案を積極的に行っており、特にご当地タルタルが注目されています。
(2)テレビやSNSによる影響
- 「マツコの知らない世界」で紹介され、一部の商品が爆発的に売上増加
- SNSでのシェア拡大:「#タルタルアレンジ」「#唐揚げタルタル」が人気化
メディア露出と消費者のSNS投稿が相乗効果を生み、一気に市場を押し上げる要因となっています。
マーケティングにおいては、上記のように、商品の多様な活用法を提案することで、消費者の興味を引き、購買意欲を高めることができます。
商品を多様なシーンで活用できるようにすることは、マーケティング戦略の一環として非常に重要であり、売上拡大に直結する要素となります。マーケターは、商品の特性を活かし、消費者に新たな価値を提供することが求められます。
マーケティング視点で見るタルタルソースの成長戦略
活用シーンを拡大するためのマーケティング戦略
カテゴリ商品の成長には、活用シーンの開発が不可欠です。タルタルソースの成長戦略を踏まえ、マーケターが実施できる施策を整理します。
- 新しいターゲット層の開拓
- 健康志向の消費者向けに低脂肪タルタルを開発
- ヴィーガン向けの植物由来タルタルの投入
- 食シーンの拡張
- 朝食(パンや卵料理)に適した商品訴求
- スナック用途(ディップソース)への展開
- ブランドストーリーとトレンド活用
- ご当地タルタルの地域性を活かしたプロモーション
- 外食トレンドとの連動施策(人気店とのコラボ)
- SNS・インフルエンサー戦略
- 料理系インフルエンサーとのコラボでレシピ発信
- 消費者参加型のSNSキャンペーン(#タルタルアレンジ)
これらの施策を組み合わせることで、カテゴリ全体の活性化と新たな市場創出が可能となるのではないでしょうか。
まとめ
タルタルソース市場は、従来の「カキフライ専用調味料」から「揚げ物全般+α」の汎用ソースへと進化を遂げています。特に唐揚げとの相性を前面に打ち出したマーケティング戦略が成功し、家庭での利用率が拡大。
このトレンドは、単なる調味料市場の変化にとどまらず、「食文化の変化をマーケティングがどう加速するか」という好例でもあります。今後も、タルタルソースの用途開発やプロモーション戦略の変化に注目しながら、新たな市場を創出していく動きに期待したいところです。