売上最大化の鍵!ダイナミックプライシングのメリット・デメリットと導入ステップ - 勝手にマーケティング分析
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売上最大化の鍵!ダイナミックプライシングのメリット・デメリットと導入ステップ

ダイナミックプライシング 基礎を学ぶ
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はじめに

現在、多くの企業が売上アップや在庫最適化、顧客満足度の向上を目指す中で、「ダイナミックプライシング」という価格戦略が注目を集めています。ダイナミックプライシングとは、需要や供給、競合状況などに応じて価格を変動させる手法のことです。近年では航空券やホテルなどで利用されており、需要が高い時期には価格を上げ、逆に需要が低い時期には割引を行うといった手法が広く知られています。

しかし、いざ自社に導入しようと考えてみると、「どんな仕組みなのか」「メリットとデメリットは何か」「導入にあたっての注意点や具体的なステップはどうすればいいのか」といった疑問が出てくるのではないでしょうか。

この記事を読めば、「そもそもダイナミックプライシングとは何か」という初歩的な疑問から、「自社のビジネスに適用するにはどのようなシステムが必要なのか」という実務的な内容まで理解できるようになります。専門用語の解説や図解、実際の事例も交えながら進めていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングは、需要や供給、利用者の属性、時間帯、在庫状況などに応じて価格を変動させる価格戦略のことです。英語では「Dynamic Pricing」と呼ばれ、近年のデジタル化の進展によって、企業がリアルタイムで価格を変更できる環境が整ったことで注目度が高まっています。

従来の価格設定との違い

従来の価格設定は、商品・サービスの原価や競合の状況、販売計画などを考慮した静的(固定的)な価格を採用することが一般的でした。一度価格を設定すると、長期間にわたり変更しないか、変更する場合でも決算期など限られたタイミングで行われるケースが多かったのです。

しかし、ダイナミックプライシングの場合は、需要が増えるタイミングで価格を引き上げたり、需要が落ち着く時期に価格を下げたりと、マーケットの動向に合わせて柔軟に価格を変動させる点が大きな特徴といえます。たとえば、宿泊施設などでは週末や連休、繁忙期は高めの料金を設定し、平日やオフシーズンには価格を抑えることで、収益を最大化することが可能になります。

ダイナミックプライシングの仕組み

ダイナミックプライシングでは、多種多様なデータを用いて価格を自動的に決定する仕組みを構築します。例えば以下のようなデータが活用されます。

  • 過去の販売実績データ
  • 季節要因やイベントなどの外部要因
  • ウェブサイトへのアクセス数、予約数などのリアルタイムデータ
  • 競合他社の価格動向
  • 在庫や残席、残室数などのリソース情報

需要と供給のバランス

ダイナミックプライシングの根幹にあるのが、需要と供給のバランスです。経済学の基礎理論では、需要が高まれば価格が上昇し、需要が低ければ価格が下がるとされています。これをリアルタイムで可視化し、価格設定に反映させるのがダイナミックプライシングの基本的な考え方です。

アルゴリズムとリアルタイム調整

具体的には、機械学習(AI)や高度なアルゴリズムを活用することで、過去のトレンドや現在の需要動向を予測し、自動的に価格を更新します。オンライン予約サイトやECサイトなど、リアルタイムで多数の取引が発生するプラットフォームでは、以下のような流れで価格が変動します。

flowchart LR A[最新データ収集<br>需要/供給/在庫など] --> B[アルゴリズム解析<br>AI/機械学習] B --> C[価格変動の提案<br>自動 or 担当者承認] C --> D[価格更新<br>顧客への提示価格変更] D --> A

このように常に最新の状況を把握して価格を調整することで、収益最大化や在庫最適化を目指します。
※アルゴリズムの具体的な選定は、ビジネスの特性やシステム要件、データの量・質によって異なります。

企業とユーザーのメリット・デメリット

ダイナミックプライシングを導入することで、企業側とユーザー側の双方にメリットが生まれる一方、注意すべきデメリットも存在します。以下の表は、企業とユーザーのそれぞれにおけるメリット・デメリットをまとめたものです。

視点メリットデメリット
企業・需要に応じた最適価格で販売でき、利益最大化が図れる
・在庫やリソースを効率的に活用できる
・価格設定が複雑化し、導入コストやシステム維持費がかかる
・ユーザーから「価格が不透明」という不満が生じる場合がある
ユーザー・需要が低い時期には割安で商品
・サービスを利用できる
・柔軟な価格設定により選択肢が増える
・繁忙期や人気の高い商品では価格が高騰する可能性がある
・「同じサービスなのに価格が変わる」ことに抵抗を感じるユーザーもいる

価格の不透明感への対策

企業側がダイナミックプライシングを導入する際、ユーザーが価格の変動に対して不満を持つリスクがあります。そのため、価格の変動要因をわかりやすく説明したり、割引や付加価値を提供するなどの工夫が求められます。たとえば「早期予約割引」や「連泊割引」など、ユーザーに納得感を与える仕組みを組み合わせると効果的です。

どんな業界で使われているのか

ダイナミックプライシングが活用される代表的な業界としては、以下のようなものが挙げられます。各業界とも、需要が急増するタイミングや在庫(座席数・客室数など)の管理が収益に大きな影響を与えるため、ダイナミックプライシングの導入が進んでいます。

業界主な活用例
航空航空券の価格は予約状況や時期によって変動。繁忙期や休日は高値になる。
旅館週末や連休など、予約が集中する日を高めに設定。平日は割安にして稼働率向上。
ホテルイベント開催や観光シーズン、天候などの要因を考慮し、客室の価格を調整。
高速高速道路のETC割引や深夜割引など、利用時間帯によって料金が変化。
スポーツスタジアムのチケット価格を相手チームの人気や試合日によって変動させる。

航空券の価格変動は、ダイナミックプライシングの代表例としてメディアなどでも取り上げられます。また、国内でもプロ野球やサッカーなどスポーツ観戦のチケット販売に導入事例が増えているため、参考になるケースが多く存在します。

導入するために踏むべきステップ

ダイナミックプライシングを自社に導入するには、以下のステップを踏むのが一般的です。各ステップをしっかりと計画・実行することで、企業は導入失敗のリスクを軽減できます。

  1. 目的・目標の設定
    • まずはダイナミックプライシングによって何を達成したいのか、明確な目的・目標を定めます。たとえば、「売上を年○%アップさせる」「在庫を○%削減する」といったKPI(重要業績評価指標)を設定しておくと、後々の評価がスムーズになります。
      • 例:宿泊施設であれば、繁忙期に客室単価を○%増やして売上アップを狙うなど。
  2. データの収集と分析体制の構築
    • ダイナミックプライシングの肝となるのが、どれだけ高品質なデータを収集し、どう分析するかです。
      • 過去の販売実績や需要の傾向、競合価格、天候やイベントといった外部要因のデータを収集し、それらを総合的に分析できる体制を整えます。
      • 分析にはBI(ビジネスインテリジェンス)ツールやデータ分析プラットフォームを活用します(要問い合わせ:ツール選定には専門家への相談を推奨)。
  3. 価格変動システム・ツールの導入
    • ダイナミックプライシングを実行するには、価格を自動的に変動させるシステムやアルゴリズムが必要です。
      • 既製のSaaS型ソリューションを導入する場合、比較的短期間で運用を始められます。
      • 自社開発する場合は、エンジニアリングリソースやAI・アルゴリズムの知見が必要となります。
      • 代表的な海外の動的価格設定サービスには要問い合わせ(具体的なURLを公式サイトで要確認)があり、日本国内でも同様のサービスを提供しているベンダーが増えています。
  4. テスト運用とフィードバック
    • 新システムを導入したら、実際にテスト運用を行い、仮説と結果に齟齬がないかを検証します。ユーザーが価格変動にどのような反応を示すのか、SNSなども含めて顧客の声を収集・分析することが大切です。
      • テスト期間中は値上げ・値下げの幅やタイミングを細かく調整しながら、最適な価格帯を探っていきます。
      • 顧客満足度を下げすぎないように、プロモーション施策やクーポンなどと併用することも検討が必要です。
  5. 本格導入と継続的な改善
    • テストで得られたデータや顧客の声を踏まえ、問題点や改善点を洗い出して本格導入に移行します。ダイナミックプライシングは一度導入したら終わりではなく、継続的なPDCAサイクルを回しながら最適化を行っていくことが重要です。
      • 季節やイベントに合わせた価格変動の調整
      • 新しいデータソースや外部環境の変化に対応
      • 社内体制の見直しや価格戦略の再検討

まとめ

・ダイナミックプライシングは需要と供給、競合など多くの要因をリアルタイムで分析し、最適な価格を設定する手法である
・企業側には収益最大化や在庫効率化といったメリットがある一方、価格の不透明性などがデメリットになる可能性がある
・ユーザー側にはオフピーク時の割安価格などの恩恵がある反面、繁忙期の価格高騰や価格変動の納得感が課題になる
・導入する業界は航空、ホテル、宿泊施設、スポーツチケットなど多岐にわたる
・導入時は明確な目標設定、データ分析基盤の構築、価格変動システムの導入、テスト運用・検証、継続的な改善といった段階的アプローチが必要となる

まずはダイナミックプライシングの全体像が理解できたかと思います。ダイナミックプライシングは収益の最大化につながるすばらしい仕組みですが、構築には専門知識や慎重なテストが必要になります。導入に興味がある方はぜひ詳しく調べてみてください。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

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