はじめに
現代のデジタルマーケティングにおいて、メールマガジン(メルマガ)は顧客との関係構築や情報提供の重要な手段として位置づけられています。しかし、効果的なメルマガ施策を展開するためには、その役割を正確に理解し、適切なKPI(重要業績評価指標)を設定・分析することが不可欠です。本記事では、メルマガ施策の本来の役割、追うべきKPI、施策実行のステップについて詳しく解説します。
メルマガ施策の本来の役割
メルマガの主な役割は、顧客との継続的なコミュニケーションを通じて、ブランドや製品を想起してもらうことです。具体的には、以下の目的があります。
役割 | 説明 |
---|---|
情報提供 | 新商品やサービス、キャンペーン情報をタイムリーに伝達。 |
関係構築 | 定期的な接触により、顧客との信頼関係を強化。 |
ブランド想起 | 顧客が必要なときに真っ先に思い浮かべてもらうための認知向上。 |
購買促進 | 特典や限定情報を提供し、購買意欲を喚起。 |
特にブランド想起をさせることを念頭に適切な頻度、内容でメルマガを配信することは企業の持続的な成長にとって欠かせません。これらの役割を果たすことで、顧客のロイヤルティを高め、長期的な売上向上につなげることが期待できます。
またメルマガの最大の特徴としては広告費がかからないことです。適切なリスト、メール文章、コンテンツがあればすぐにでも実施ができ、それを繰り返し行うことも可能です。他のマーケティング施策と比べても非常に費用対効果の良い施策ではないでしょうか。
メルマガで追うべきKPI
メルマガの効果を測定し、改善を図るためには、以下のKPIを定期的にモニタリングすることが重要です。
KPI | 説明 | 計算方法 | 平均値の目安 |
---|---|---|---|
開封率 | 配信したメールが開封された割合。 | 開封数 ÷ 配信成功数 × 100 | 20%~30% |
クリック率(CTR) | メール内のリンクがクリックされた割合。 | クリック数 ÷ 配信成功数 × 100 | 1%~2% |
コンバージョン率(CVR) | メールからの最終的な成果(購入、登録など)の達成割合。 | コンバージョン数 ÷ 配信成功数 × 100 | 0.1%~0.2% |
解除率 | メルマガの購読を解除した割合。 | 解除数 ÷ 配信成功数 × 100 | 0.1%~0.5% |
これらの指標を定期的に分析し、改善点を特定することで、メルマガの効果を最大化できます。
メルマガ施策を行う際のステップ
メルマガ施策を行う前にすること
自社商品のWho/What/Howを言語化しましょう。商品のWho/What/Howとはこちらです。
Who:誰のどんなJOB(叶えたい欲求)に対して、
What:企業はどんな便益と独自性を、
How:どのようなプロダクト、顧客コミュニケーション、場所、価格で提供するのか
具体的にはこのようなところまで言語化した上で、定めたWhoとWhatに沿ったメルマガ施策を計画していくことが最重要です。
上記を定めた上で効果的なメルマガ施策を実施するための基本的なステップは以下の通りです。
- 目的設定:メルマガの配信目的を明確にする(例:新商品の告知、顧客関係の強化)。
- ターゲット選定:配信対象となる顧客セグメントを特定する。
- コンテンツ作成:ターゲットに合わせた価値あるコンテンツを作成する。
- 配信スケジュール設定:ターゲットに合わせた最適な配信頻度と配信の時間帯を決定する。
- 配信:計画に基づき、メルマガ配信を実行する。
- 効果測定:前述のKPIを用いて、配信結果を分析する。
- 改善:分析結果を基に、次回配信の内容や戦略を修正する。
これらのステップを繰り返し行うことで、メルマガ施策の精度と効果を高めることが可能です。以下で詳しく解説してまいります。
1. 目的・目標設定
まず、メルマガ配信の明確な目的と具体的な目標を設定します。
- 目的:
- 例)新商品の告知、顧客関係の強化、ブランド認知度の向上、購買促進など
- 目標:
- 例)開封率30%以上、クリック率5%以上、コンバージョン率2%以上、メルマガ開封者のユニーク数を◯%増などの具体的な数値
これにより、メルマガの効果を測定しやすくなります。目標については過去データがない時は、かかる工数に対して最低限のリターンが望める数値を目標として設定するか、一旦近い業界の平均値などを参考にするのが良いでしょう。
2. ターゲット選定
次に、配信対象となる顧客セグメントを特定します。事前に定めたWho/What/Howから、優先的なWhoを指定し、CRMやMA上にある属性データを活用し、ターゲットを絞り込みます。下記のように最低限、顕在層と潜在層でそれぞれでターゲットを選定できると、ターゲットにとって価値のある情報を提供しやすくなるため、開封率やクリック率の向上が期待できます。
■属性情報
属性情報の例 | |
BtoC | 性別、年齢、居住地、家族構成、価値観、購買履歴など |
BtoB | 企業規模、上場区分、業種、アクセス履歴など |
属性情報は各業界によって様々です。また上記のような一般的な属性情報以外に、その業界独自の因子が存在することが多いです。その因子を明らかにしてCRM上で情報を蓄積させていくことこそデータを使ったマーケティングとなります。
■4象限で整理
ターゲット1 | ターゲット2 | |
顕在層 | 例)属性A,B、購買因子1,2,3に該当する有効リード | 例)属性B,C、購買因子1,2,4,5に該当する有効リード |
潜在層 | 例)上記以外で属性A,Bに該当する有効リード | 例)上記以外で属性B,Cに該当する有効リード |
3. コンテンツ作成
この工程ではターゲットに合わせた価値あるコンテンツを作成します。そのためにWho/What/Howの言語化の際に、ターゲットである潜在層、顕在層がそれぞれ抱えているJOB(困っていることや達成したいこと)を明らかにしていくことが求められます。どんな情報があると役立つのかは、実際にISやマーケターが顧客にヒアリングしていくなどして、その情報をCRM上に蓄積していく運用が組めるとコンテンツ作成に活用しやすいでしょう。
テクニックとして、件名やリード文で読者の興味を引く工夫も重要です。例えば、限定オファーや最新情報を強調することで、開封率を高めることができます。ただし本質はターゲットのJOBを解決できる役立つ情報を提供するということを念頭において計画してみてください。
さらにコンテンツといっても様々な型があります。そしてそのコンテンツはどういった構成、訴求、着地で作成するべきなのかはターゲットとそのJOBは何かにかかってきます。こちらも実際のターゲットにヒントをもらい仮説を立てて計画していくのが理想的でしょう。
コンテンツの種類 | 詳細 |
---|---|
テキスト情報型 | テキスト+画像のみで有益な情報を提供する |
ブログ誘導型 | テキストとブログ導線を配置し情報を提供する |
資料ダウンロード型 | ホワイトペーパーや商品資料の情報を提供する |
イベント案内型 | イベントの案内を提供する |
購入オファー型 | 新商品や現商品のキャンペーンや購入オファー |
商談や体験会オファー型 | 商品購入検討のための商談、体験会オファー |
4. 配信スケジュール設定
コンテンツが作成できればあとは配信の設定です。ターゲットに合わせた最適な配信頻度と配信の時間帯を決定します。一般的に、B2C向けでは昼休みや帰宅後、B2B向けでは平日の午前中が効果的とされています。ただし、業界やターゲット層によるため、A/Bテストで最適な時間を探るのがベストです。
5. 配信
計画に基づき、メルマガ配信を実行します。配信前には、テストメールを送信し、表示崩れやリンク切れがないかを必ず確認しましょう。また、配信リストの最新化や、迷惑メールと判断されないようなDNSレコードタイプの設定(DKIM、SPF、DMARC)も重要です。
6. 効果測定
前述のKPI(開封率、クリック率、コンバージョン率、解除率など)を用いて、CRM上で配信結果を分析します。これにより、メルマガの効果を数値的に把握し、改善点を特定できます。例えば、開封率が低い場合は件名の見直し、クリック率が低い場合はコンテンツやCTAの改善が考えられます。一覧で各メールの結果が比較できるようCRMでレポートを作ることをお勧めします。
7. 改善
分析結果を基に、次回配信の内容や戦略を修正します。例えば、特定のターゲットセグメントで効果が高かったコンテンツを他のセグメントにも展開する、配信時間を変更する、件名やデザインを改善するなどの施策が考えられます。このPDCAサイクルを繰り返すことで、メルマガの効果を継続的に向上させることができます。
これらのステップを順に実行し、定期的に見直すことで、効果的なメルマガ施策を展開できます。
メルマガ施策のよくある疑問
メルマガ施策におけるよくある疑問とその回答をまとめました。マーケティング担当者がメルマガ施策を成功させるためのヒントとして活用いただけます。
疑問 | 回答 |
---|---|
1. メルマガの最適な配信頻度は? | 最適な配信頻度はターゲットや業界によりますが、一般的に週1-2回が推奨されます。頻度が高すぎると購読解除率が上がり、低すぎると顧客の記憶から忘れられるリスクがあるため、顧客の反応を観察しながら調整することが重要です。 |
2. 配信時間や曜日のベストタイミングは? | B2Cでは、昼休みや帰宅後(12時〜13時、18時〜20時)が開封率が高く、B2Bでは平日の午前中が有効です。実際には、業界やターゲット層によるため、A/Bテストで最適な時間を探るのがベストです。 |
3. メルマガの開封率を上げるには? | 開封率を上げるためには、魅力的でわかりやすい件名の工夫が重要です。さらに、名前を入れるなどターゲットに適した内容を提供し、定期的に見直すことで、開封率の向上が期待できます。 |
4. メルマガに画像を使用するべきか? | 画像は視覚的なインパクトを与えますが、受信者のメール環境によっては表示されない場合もあります。画像とテキストをバランスよく組み合わせ、画像の代替テキスト(altタグ)を設定することが効果的です。 |
5. メルマガでのKPIは何を追えば良いか? | 代表的なKPIには開封率、クリック率、コンバージョン率、解除率があります。それぞれの指標が示す意味を理解し、目標を設定することで、効果的な施策改善が行えます。 |
6. メルマガの内容はどのくらいの長さが理想か? | 理想の長さはターゲット層と内容によりますが、短めで要点がはっきりしていると効果的です。概要だけ伝え、詳細はリンク先で補完するスタイルも有効です。 |
7. メルマガの購読解除率を下げる方法は? | 解除率を下げるには、ターゲットに合った内容を提供することが最も重要です。リストの定期的な見直しや、購読者が興味のあるテーマに基づいた配信も効果的です。 |
8. メルマガのA/Bテストはどのように行えば良いか? | A/Bテストでは、件名、送信時間、配信内容のパターンを変え、各バージョンの開封率やクリック率を比較します。1度に1つの要素を変えると、どの変更が効果をもたらしたかが明確になります。 |
9. メルマガの配信リストを増やすにはどうすれば良いか? | ウェブサイトやSNSでの購読フォームの設置、キャンペーンや特典の提供が有効です。既存顧客の満足度を高めることで自然にリストが増えることもあります。 |
10. 配信リストのクリーニングは必要か? | 配信リストのクリーニングは必要です。長期間開封していないアドレスや、解除を希望するユーザーを定期的に除外することで、配信効果を高めることができます。 |
これらの疑問に対する回答を参考に、メルマガ施策の改善に役立ててください。
まとめ
メルマガ施策の成功には、以下のポイントが重要です。
- メルマガの役割を正確に理解し、顧客との関係構築やブランド想起を促進する。
- 適切なKPIを設定し、定期的に効果測定を行う。
- 明確な目的/目標設定から効果測定・改善までのステップを着実に実行する。
これらを実践することで、メルマガ施策の効果を最大化し、ビジネスの成長につなげることが期待できます。ぜひ一度試してみてください。