費用対効果が示しにくいSaaSの営業提案で成功するための実践手法 - 勝手にマーケティング分析
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費用対効果が示しにくいSaaSの営業提案で成功するための実践手法

費用対効果が示しにくいSaaSの営業提案のコツ 応用を学ぶ
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はじめに

BtoB向けのSaaSプロダクトを営業する際、提案の最大の障壁は「費用対効果が明確に示しにくい」という点にあります。実際悩まれている営業の方は多いのではないでしょうか?特に、ROI(投資対効果)が直接的に数字で示せないサービスは、多くの営業担当者にとって、顧客を納得させるのが難しい壁となることが多いです。費用対効果が曖昧な場合、顧客に具体的なメリットを伝えることが難しく、顧客企業内で導入に対する決断を後押しするのが難しくなります。本記事では、SaaSプロダクトの費用対効果が示しにくい場合に営業提案の成功率を高める方法について、具体的な手法やツールを交えて解説します。

商品の費用対効果の明確化はそもそも必要か

費用対効果(ROI)は、BtoBおよびBtoCの商品でその価値を評価する重要な要素です。特にBtoBの顧客は、サービスの導入に対するコストとその便益(売上向上やコスト削減など)を明確にしたいというニーズが強いです。しかしながら、SaaSの中には直接的な利益向上に繋がりにくいものも存在し、ROIを示すのが難しい場合があります。費用対効果を明確にすることは、営業提案の中で顧客を納得させるための強力な武器となりますが、それが難しいケースも多々あるため、代替手法を活用することが重要です。

BtoB vs BtoCにおける費用対効果の評価

商品カテゴリ費用対効果の評価方法具体例費用対効果の具体例
BtoB投資対効果(ROI)、効率化効果CRMツール、勤怠管理ツール、ERPシステム、営業支援システムCRMツール:顧客管理の効率化により成約率向上、勤怠管理ツール:時間短縮と人件費削減、ERPシステム:運用コスト削減、営業支援システム:営業プロセスの短縮と効果的なリード管理
BtoC顧客の生活向上度、満足度音楽ストリーミング、動画配信サービス、フィットネスアプリ、メンタルヘルスアプリ音楽ストリーミング:エンタメ利用時間の充実、動画配信サービス:顧客満足度の向上、フィットネスアプリ:健康管理の継続促進、メンタルヘルスアプリ:ストレス軽減と生活の質向上

費用対効果を明確化しやすい商品と明確化しにくい商品の特徴

費用対効果を示しやすい商品には、売上やコスト削減など直接的な指標に結びつけられるものがあります。例えば、ERP(基幹業務システム)は企業の運用コスト削減を具体的に数値化できます。しかし、従業員のモチベーションを上げるためのツールや創造的プロセスを支援するツールは、直接的な指標で効果を示すのが難しいことが多いです。これにより、営業担当者は「効果をどう伝えるか」という課題に直面することになります。

費用対効果が明確化しやすい商品

  • ERPシステム:コスト削減が明確に示せるため、投資に対するリターンを説明しやすい
    • 例:ERPシステムの導入により在庫管理の効率化が進み、結果として在庫コストが30%削減される。
  • 勤怠管理システム:労働時間短縮やミスの削減を数値化することが可能で、具体的な改善効果を伝えられる
    • 例:勤怠管理システムにより手作業での記録が不要になり、社員一人当たりの勤怠処理時間が週に2時間削減。
  • セールス支援ツール:営業プロセスの可視化と自動化により、効率化を実現
    • 例:営業支援ツールを利用することで、リードフォローアップの自動化により営業機会を20%増加。
  • サプライチェーン管理システム:物流や供給プロセスの最適化に寄与する
    • 例:サプライチェーン管理の改善により、物流コストを15%削減し、納期短縮も達成。

費用対効果が明確化しにくい商品

  • チームコラボレーションツール:モチベーションや協力関係の向上は定性的なものであり、数値化が難しいため効果を伝えるのが難しい
    • 例:チームコラボレーションツールの導入により、社員同士のコミュニケーションが改善し、プロジェクトの満足度が向上したが、それを直接的に数値で示すのは困難。
  • インサイト分析ツール:意思決定をサポートする間接的な効果が多く、利益に繋がるまでのタイムラグが存在することから、即時的な効果を示すのが難しい
    • 例:データ分析ツールを活用してマーケティング戦略を改善し、半年後にリード数が増加したが、短期的には効果が見えにくい。
  • 社員エンゲージメント向上ツール:社員の満足度や会社へのコミットメントを高める目的で使用される
    • 例:エンゲージメントツールを導入した結果、社員満足度が上昇したものの、それが売上にどう寄与したかを数値化するのが難しい。

なぜ明確化しにくい商品があるのか

費用対効果が示しにくい商品には以下の特徴があります。

  1. 間接的な効果が多い:利用によって得られる効果が間接的である場合、明確な数値での評価が難しいです。例えば、従業員のエンゲージメント向上や社内文化の改善などは、直接的に売上に結びつかないことが多く、その効果を数値で示すのは容易ではありません。
    • 例:社内のコミュニケーション改善によって業務効率は上がったが、それが具体的な売上にどう影響したかを測定するのが難しい。
  2. 導入から効果までの期間が長い:効果が長期的に現れる場合、即時的なROIが示せません。例えば、企業文化の改善や人材育成など、導入から成果が見えるまでに時間がかかるプロジェクトは、その効果を早期に示すのが難しいです。
    • 例:人材育成プログラムの導入後、従業員のスキル向上に数年かかり、その効果が業績に反映されるのはさらに後のタイミング。
  3. 定性的な効果:モチベーション向上やブランド価値の強化など、定性的な価値は測定が難しいです。定量的な指標がないため、顧客に対して効果を論理的に説明するのが難しく、説得力を欠くことがあります。
    • 例:ブランド価値の向上により顧客の信頼度が高まったが、それをどのように数値で示すかが明確でない。

費用対効果を明確化しにくい商品が売れる理由

明確化しにくい商品がそれでも売れる理由として、以下の点が挙げられます。

  1. 感情的価値の提供:顧客にとって製品やサービスが「必要」と感じられる場合、費用対効果が明確でなくても購入されます。例えば、コラボレーションツールがチームの働きやすさを向上させたり、社員のエンゲージメントを高めたりすることにより、顧客は感情的な満足感を得られます。
  2. ブランド力と信頼:強いブランドを持つ企業の商品は、その信頼性やブランドの価値が効果を直接示さなくても顧客を引き寄せる要因となります。ブランドの信頼は定量的な効果よりも、むしろ顧客の安心感や信頼感に基づいて購入の決断を支えます。
  3. 顧客体験の向上:直接的な数値に基づかなくても、顧客体験の向上が効果的な販売の要素となります。たとえば、操作性が良く、使いやすいインターフェースが提供されることで顧客満足度が向上し、それにより継続利用の意思が高まることがあります。
  4. 業界のスタンダード化:ある商品が業界のスタンダードになっている場合、他社が使用しているからという理由で顧客も導入することがあります。具体的には、コミュニケーションツールなどは多くの企業で導入されていることで、業界内での安心感が生まれ、選ばれやすくなります。
  5. 導入リスクの低さ:初期費用が安価、もしくはフリーミアムモデルで提供されることにより、導入リスクが低い場合、費用対効果の明確さがなくても顧客は試しに導入してみるという決断がしやすくなります。このようなモデルでは、まず顧客に実際に使ってもらい、その後に有料サービスへと誘導することが可能です。

費用対効果を明確化しにくい商品が取るべき15策

営業提案時に費用対効果を直接示しにくいSaaS企業が取るべき戦略は以下のとおりです。

  1. 顧客事例と成功事例の提示:実際の顧客がどのように製品を活用し、どのような成果を得たかを具体的にストーリーとして示します。これにより、潜在顧客は製品の実用性と価値を理解しやすくなります。
  2. 定性的なメリットの強調:効率性の向上、ユーザーエクスペリエンスの改善、データセキュリティの強化、顧客満足度の向上など、直接的な費用対効果以外の価値を強調します。
  3. 無料トライアルやパイロットプログラムの提供:製品を実際に体験してもらうことで、その価値を直接感じてもらうことができます。
  4. 独自の機能と競合優位性のアピール:他社製品にはない独自の機能や特長を強調し、顧客の課題解決にどう貢献できるかを示します。
  5. 業界ベンチマークの活用:業界全体のデータやトレンドを示し、同様のソリューションがどのように役立っているかを説明します。
  6. 顧客のニーズに合わせた提案:提案をカスタマイズし、顧客固有の課題やニーズに直接対応することを示します。
  7. 将来性とスケーラビリティの強調:製品が将来的なニーズにも対応できることを示し、長期的な価値を提供することをアピールします。
  8. リスク軽減の強調:データ漏洩やコンプライアンス違反など、潜在的なリスクを減らす方法を示します。
  9. 第三者からの認証や評価の活用:信頼性を高めるために、製品が業界標準に準拠していることや、第三者からの高評価を示します。
  10. 視覚的なデモンストレーション:デモやビデオ、インタラクティブなプレゼンテーションを活用して、製品の機能とメリットを具体的に示します。
  11. 強力なブランドストーリーの構築:企業の使命やビジョン、価値観を共有し、顧客との共感を生み出します。
  12. 柔軟な価格モデルの提供:サブスクリプションのレベル分けや従量課金制、成果ベースの価格設定など、顧客が導入しやすい価格モデルを提供します。
  13. ユーザーエンゲージメントの指標を共有:直接的な費用対効果が示しにくい場合でも、高い利用率や時間の節約など、間接的な価値を示す指標を活用します。
  14. リファレンスの提供:既存の顧客と直接話してもらう機会を提供し、製品の価値を第三者から伝えてもらいます。
  15. 総所有コスト(TCO)の説明:長期的には他のソリューションよりもコストが低くなることを説明し、長期的な投資価値を強調します。

これらの戦略を組み合わせることで、直接的な費用対効果を示すことが難しい場合でも、製品の総合的な価値を効果的に伝えることができます。重要なのは、顧客のニーズに合わせて価値を提示し、信頼関係を構築することです。

費用対効果を明確化しにくい商品が使うべきチェックシート

すぐに使えるチェックシートを表形式でまとめました。各項目には具体的な例も示しています。

チェック項目アクション内容具体例チェック
1. 顧客事例と成功事例の提示- 実際の顧客の成功事例を収集する
- ケーススタディを作成する
- 大手企業が自社のSaaSを導入して業務効率を20%向上させた事例を紹介◯/△/×
2. 定性的なメリットの強調- 製品がもたらす定性的な価値を明確化する
- それをプレゼン資料に組み込む
- ユーザーエクスペリエンスの改善により顧客満足度が向上することを強調◯/△/×
3. 無料トライアルやパイロットプログラムの提供- 一定期間の無料トライアルを設定する
- パイロットプログラムの参加企業を募集する
- 30日間の無料トライアルを提供し、実際の使用感を体験してもらう◯/△/×
4. 独自の機能と競合優位性のアピール- 他社にはない機能をリストアップする
- それを強調した資料を作成する
- AI機能を搭載し、自動でレポート作成が可能である点をアピール◯/△/×
5. 業界ベンチマークの活用- 業界のデータやトレンドを調査する
- それを資料や提案書に含める
- 「同業他社の70%が同様のソリューションを導入しています」と説明◯/△/×
6. 顧客のニーズに合わせた提案- 顧客の課題をヒアリングする
- カスタマイズした提案書を作成する
- 顧客の特定の業務プロセスに対応した機能を重点的に提案◯/△/×
7. 将来性とスケーラビリティの強調- 製品のロードマップを提示する
- スケーラビリティの具体例を示す
- 将来的な機能追加計画を共有し、ビジネス拡大に対応できることを説明◯/△/×
8. リスク軽減の強調- リスク軽減策を明確にする
- セキュリティ対策を詳細に説明する
- データ暗号化や二要素認証によりセキュリティリスクを低減することを強調◯/△/×
9. 第三者からの認証や評価の活用- 取得している認証や受賞歴を整理する
- それを資料に含める
- 「ISO 27001を取得しています」や「〇〇アワード受賞」と記載◯/△/×
10. 視覚的なデモンストレーション- 製品デモや動画を準備する
- インタラクティブなプレゼンを計画する
- 実際の画面操作をライブデモで紹介◯/△/×
11. 強力なブランドストーリーの構築- 企業の使命やビジョンを明文化する
- ストーリーとして語る準備をする
- 「私たちは○○を実現するために、この製品を開発しました」と共有◯/△/×
12. 柔軟な価格モデルの提供- 価格プランを複数用意する
- 顧客に最適なプランを提案する
- 「従量課金制プラン」と「固定料金プラン」の両方を提供◯/△/×
13. ユーザーエンゲージメントの指標を共有- 利用率や満足度のデータを収集する
- それを共有できるよう準備する
- 「平均で業務時間を15%削減しています」といったデータを提示◯/△/×
14. リファレンスの提供- 既存顧客に協力を依頼する
- リファレンスリストを作成する
- 「○○社の担当者とお話しいただけます」と提案◯/△/×
15. 総所有コスト(TCO)の説明- 長期的なコストメリットを計算する
- TCO比較表を作成する
- 「5年間で従来システムよりも30%コスト削減可能です」と説明◯/△/×

ぜひこのチェックシートを活用して、営業提案の準備や見直しを行ってください。

まとめ

  • SaaSの費用対効果が明確に示しにくい場合、代替的な手法を用いて効果を示すことが重要です。
  • 15の策を用いて提案の成功率を高めましょう。
  • 中でも明確な数値に基づかない場合でも、ストーリーや具体例を用いて納得感を高める工夫が必要です。
  • 複数の手法や指標を組み合わせて、顧客に対して多角的にメリットを伝えられるようにすることが重要です。

この記事が、費用対効果を示しにくいSaaSの営業提案において役立つ参考となれば幸いです。具体的な手法についてさらに深掘りしたい方は、是非お問い合わせください。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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