カスタマージャーニーマップとは?基本概念から作り方・活用方法まで徹底解説 - 勝手にマーケティング分析
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カスタマージャーニーマップとは?基本概念から作り方・活用方法まで徹底解説

カスタマージャーニーマップの作り方 基礎を学ぶ
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はじめに

現代のビジネス環境において、顧客中心のアプローチはますます重要になっています。多くのマーケターが、自社の製品やサービスを改善し、顧客満足度を向上させたいと考えていますが、どこから手をつければよいのか悩んでいるのが現状です。そんな中で、カスタマージャーニーマップが注目を集めています。

このガイドでは、カスタマージャーニーマップの基本から応用まで、詳細に解説していきます。マップの作成方法、活用法、最新のトレンドまで網羅的に紹介することで、あなたのビジネスを次のレベルに引き上げるための実践的な知識を提供します。

カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、顧客が製品やサービスと初めて接触してから購入後のサポートまで、全ての段階における顧客の体験を視覚化したものです。これは単なる図表ではなく、顧客の感情、行動、ニーズを深く理解するための戦略的ツールです。

カスタマージャーニーマップの重要性

カスタマージャーニーマップが重要である理由は多岐にわたります:

  1. 顧客視点の獲得:企業が顧客の立場に立って考えることを可能にします。
  2. 部門間の連携強化:異なる部門が同じ顧客体験を共有することで、協力体制が強化されます。
  3. ギャップの特定:理想の顧客体験と現実のギャップを明確にします。
  4. 戦略的意思決定:リソースの適切な配分や優先順位付けに役立ちます。
  5. 顧客満足度の向上:顧客のニーズに合わせたサービス改善につながります。

カスタマージャーニーマップの構成要素

効果的なカスタマージャーニーマップには、以下の主要な構成要素が含まれます:

構成要素説明
ペルソナ典型的な顧客像30代、都市部在住、テクノロジー好きの会社員
ステージ顧客体験の主要な段階認知、検討、購入、使用、推奨
タッチポイント顧客と企業の接点ウェブサイト、店舗、カスタマーサポート
行動各ステージでの顧客の行動情報検索、商品比較、購入決定
感情顧客の感情状態期待、不安、満足、失望
ペインポイント顧客が感じる不満や障害複雑な注文プロセス、遅い配送
機会改善や革新の可能性プロセスの簡素化、パーソナライズされたサービス
チャネル顧客とのコミュニケーション手段SNS、メール、電話、対面
内部プロセス企業内部の関連プロセス在庫管理、品質管理、マーケティング戦略

これらの要素を組み合わせることで、包括的で洞察に富んだカスタマージャーニーマップを作成することができます。

実際の行と列に直すと例えば下記のようなマップになります。

ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動情報検索製品比較購入決定製品利用感想共有
感情興味、期待不安、期待緊張、興奮満足/不満喜び/失望
ペインポイント情報不足選択肢が多すぎる決済の複雑さ使い方がわからないフィードバック方法不明
内部プロセスコンテンツ戦略製品開発在庫管理品質管理カスタマーサポート
機会コンテンツ充実比較ツール提供決済プロセス簡素化チュートリアル改善フィードバックシステム構築
KPI認知度商品ページ滞在時間コンバージョン率使用頻度NPS

カスタマージャーニーマップの構築プロセス

カスタマージャーニーマップの構築は、以下のステップに従って行います:

ステップ1:目的の明確化

まず、カスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にします。例えば:

  • 新製品のローンチに向けた顧客体験の最適化
  • 既存サービスの改善点の特定
  • 顧客離れの原因究明

目的が明確になれば、マップの焦点や詳細度を決定できます。

ステップ2:ペルソナの作成

ペルソナとは、製品やサービスの理想的な顧客像を具体化したものです。架空の人物プロフィールを作成することで、ターゲット顧客の特徴、行動パターン、ニーズ、価値観などを明確化します。これには以下の情報が含まれます:

項目
基本情報年齢、性別、職業、居住地
行動パターン購買習慣、情報収集方法
価値観重視する製品特性、ブランドへの態度
課題日常生活や仕事での悩み
目標短期的・長期的な目標

ステップ3:顧客調査の実施

実際の顧客データを収集します。方法には以下があります:

  • アンケート調査
  • インタビュー
  • ウェブサイト分析
  • ソーシャルメディアの分析
  • カスタマーサポートログの確認

ステップ4:ジャーニーステージの定義

顧客体験を主要なステージに分割します。一般的なステージには以下があります。これはビジネスの内容によって異なるため、自社ビジネスに合ったステージをご用意ください。

  • 認知:顧客が問題や需要を認識する段階
  • 検討:解決策を探り、比較検討する段階
  • 購入:製品やサービスを選択し、購入する段階
  • 使用:実際に製品やサービスを利用する段階
  • 推奨:他者に推奨するかどうかを決める段階

ステップ5:タッチポイントの特定

各ステージにおける顧客と企業の接点(タッチポイント)を特定します。

ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動
感情
ペインポイント
内部プロセス
機会
KPI

ステップ6:顧客の行動、感情、ペインポイントの記録

各タッチポイントにおける顧客の行動、感情、直面する課題を記録します。

ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動情報検索製品比較購入決定製品利用感想共有
感情興味、期待不安、期待緊張、興奮満足/不満喜び/失望
ペインポイント情報不足選択肢が多すぎる決済の複雑さ使い方がわからないフィードバック方法不明
内部プロセス
機会
KPI

ステップ7:内部プロセスとの連携

顧客体験に影響を与える内部プロセスや責任部署を特定し、マップに追加します。

ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動情報検索製品比較購入決定製品利用感想共有
感情興味、期待不安、期待緊張、興奮満足/不満喜び/失望
ペインポイント情報不足選択肢が多すぎる決済の複雑さ使い方がわからないフィードバック方法不明
内部プロセスコンテンツ戦略製品開発在庫管理品質管理カスタマーサポート
機会
KPI

ステップ8:機会の特定、KPIの設定

顧客体験を改善できる機会を特定し、行動のKPIをマップに記載します。

ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動情報検索製品比較購入決定製品利用感想共有
感情興味、期待不安、期待緊張、興奮満足/不満喜び/失望
ペインポイント情報不足選択肢が多すぎる決済の複雑さ使い方がわからないフィードバック方法不明
内部プロセスコンテンツ戦略製品開発在庫管理品質管理カスタマーサポート
機会コンテンツ充実比較ツール提供決済プロセス簡素化チュートリアル改善フィードバックシステム構築
KPI認知度商品ページ滞在時間コンバージョン率使用頻度NPS

ステップ9:ビジュアル化

収集した情報を視覚的に表現します。一般的には時系列に沿った図表形式を用います。CanvaなどのデザインテンプレートがDLできるサービスを利用すると良いでしょう。

ステップ10:検証と更新

作成したマップを関係者と共有し、フィードバックを得て改善します。また、定期的に更新することで、変化する顧客ニーズに対応します。

カスタマージャーニーマップの活用法

作成したカスタマージャーニーマップは、以下のように活用できます:

1. 顧客体験の改善

ペインポイントを特定し、それらを解決するための施策を立案します。例えば:

ペインポイント改善施策
複雑な注文プロセスチェックアウトプロセスの簡素化
遅い配送物流パートナーの見直し、在庫管理の最適化
わかりにくい製品説明製品ページの改善、動画コンテンツの追加

2. 新製品・サービスの開発

顧客ニーズや未解決の課題から、新たな製品やサービスのアイデアを生み出します。

3. マーケティング戦略、施策の最適化

各ステージに適したマーケティング施策を立案します。

ステージマーケティング施策
認知ターゲットを絞ったSNS広告
検討詳細な製品比較ページの作成
購入限定オファーやクーポンの提供
使用ハウツービデオやTipsの配信
推奨レビュー投稿キャンペーンの実施

4. 組織の連携強化

カスタマージャーニーマップを通じて、異なる部門が顧客体験に与える影響を理解し、協力体制を強化します。部門をまたがる会議などでは共通のペルソナ、カスタマージャーニーマップをもとに顧客体験の改善の議論ができると良いでしょう。

5. リソース配分の最適化

顧客体験に大きな影響を与えるタッチポイントに重点的にリソースを配分します。各ステージにKPIを設定したり、そのステージにいる顧客の数を可視化することで最適なリソース配分ができるでしょう。

6. KPIの設定と測定

各ステージやタッチポイントにおけるKPIを設定し、継続的に測定・改善します。

ステージKPI例
認知ブランド認知度、ウェブサイト訪問数
検討商品ページの滞在時間、資料請求数
購入コンバージョン率、平均注文額
使用製品使用頻度、サポート問い合わせ数
推奨NPS(Net Promoter Score)、リピート率

カスタマージャーニーマップのテンプレート

効果的なカスタマージャーニーマップを作成するためのテンプレート例を以下に示します:

カスタマージャーニーマップ
ステージ認知検討購入使用推奨
タッチポイントSNS広告、ブログ製品ページ、レビューオンラインショップ製品、アプリサポート、SNS
顧客の行動情報検索製品比較購入決定製品利用感想共有
感情興味、期待不安、期待緊張、興奮満足/不満喜び/失望
ペインポイント情報不足選択肢が多すぎる決済の複雑さ使い方がわからないフィードバック方法不明
機会コンテンツ充実比較ツール提供決済プロセス簡素化チュートリアル改善フィードバックシステム構築
内部プロセスコンテンツ戦略製品開発在庫管理品質管理カスタマーサポート
KPI認知度商品ページ滞在時間コンバージョン率使用頻度NPS

これらのテンプレートを基に、自社の状況に合わせてカスタマイズすることで、効果的なカスタマージャーニーマップを作成できます。さらにテンプレートを探している方はCanvaやMiroからダウンロードしてください。

おすすめツール

カスタマージャーニーマップの作成や分析に役立つツールを紹介します:

ツール名特徴用途
Canva非デザイナーでも使えるデザインツール、多くのテンプレ有簡単に誰でもデザインが作れる
Lucidchart柔軟なカスタマイズ、豊富な図形ライブラリ詳細なプロセス図作成、データ連携
Microsoft Visio高度な図表作成機能、Officeとの連携企業レベルのマップ作成、データ分析
MiroUIUXに優れた仮想ホワイトボート、様々なテンプレ有複雑なジャーニーの可視化と更新
Excel誰でもいつでも編集可能複雑なジャーニーの可視化と更新

これらのツールを活用することで、効率的にカスタマージャーニーマップを作成し、チーム内で共有・編集することができます。筆者のおすすめはCanvaとMiroです。

最新のカスタマージャーニーマップのトレンド

カスタマージャーニーマップの分野では、常に新しい手法やアプローチが登場しています。以下に、最新のトレンドをいくつか紹介します:

1. オムニチャネル統合

顧客は複数のチャネルを横断して行動するため、オムニチャネルアプローチが重要になっています。最新のカスタマージャーニーマップでは、オンラインとオフラインの接点を統合し、シームレスな顧客体験を設計することが求められています。

オムニチャネル要素説明
チャネル間の一貫性すべてのチャネルで一貫したブランドメッセージと顧客体験を提供
データ統合各チャネルのデータを統合し、360度の顧客ビューを構築
パーソナライゼーションチャネルを跨いだ顧客行動に基づいて、個別化されたコンテンツやオファーを提供

2. AIと機械学習の活用

人工知能(AI)と機械学習技術の進歩により、カスタマージャーニーマップの作成と分析が高度化しています。

AI活用領域具体例
予測分析顧客行動の予測、次のベストアクションの提案
リアルタイム最適化顧客の行動に応じて、リアルタイムでジャーニーを調整
感情分析テキストや音声データから顧客の感情を分析し、マップに反映

3. マイクロモーメントの重視

Googleが提唱する「マイクロモーメント」の概念が、カスタマージャーニーマップにも影響を与えています。これは、顧客が瞬間的に情報を求めたり、決定を下したりする小さな機会を指します。

マイクロモーメントの種類説明マップへの反映方法
I-want-to-know moments(知りたい)情報を探している瞬間情報提供のタイミングと内容の最適化
I-want-to-go moments(行きたい)地域の店舗やサービスを探している瞬間ローカルSEOやジオターゲティングの強化
I-want-to-do moments(したい)何かを実行したい瞬間ハウツーコンテンツの提供タイミングの最適化
I-want-to-buy moments(買いたい)購入の準備ができた瞬間スムーズな購買プロセスの設計

4. カスタマーライフタイムバリュー(CLV)の統合

単一の購買サイクルだけでなく、顧客の生涯価値を考慮したカスタマージャーニーマップが注目されています。つまり購買後の再購入や再利用のためのカスタマージャーニーマップです。

CLV要素マップへの反映方法
長期的な顧客関係リピート購入、アップセル、クロスセルの機会を可視化
ロイヤルティプログラム顧客維持策をジャーニーに組み込む
顧客育成顧客の成長段階に応じたコミュニケーション戦略の設計

5. サステナビリティの考慮

環境や社会への配慮が重要視される中、サステナビリティの観点をカスタマージャーニーマップに取り入れる企業が増えています。

サステナビリティ要素マップへの反映例
環境負荷製品使用時のエネルギー消費、廃棄時の環境影響を可視化
社会的責任倫理的な調達、公正な労働慣行に関する情報提供のタイミング
循環型経済製品のリサイクル、再利用プロセスをジャーニーに組み込む

まずは何をすればいい?

カスタマージャーニーマップの作成と活用を始めるための最初のステップを以下に示します:

  1. 目的の明確化
    • まず、カスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にします。例えば、「新規顧客獲得プロセスの改善」や「既存顧客の満足度向上」などが考えられます。
  2. 主要ステークホルダーの特定と巻き込み
    • マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、顧客接点に関わる部門の代表者を特定し、プロジェクトに巻き込みます。
  3. データ収集計画の立案
    • 顧客データの収集方法を計画します。既存の顧客調査、アナリティクスデータ、インタビューなど、利用可能なデータソースを特定します。
  4. シンプルなプロトタイプの作成
    • 複雑な分析を行う前に、まずは簡単なプロトタイプを作成します。基本的な顧客ジャーニーの段階とタッチポイントを図示します。
  5. 検証とイテレーション
    • 作成したプロトタイプを関係者と共有し、フィードバックを得ます。そのフィードバックを基に改善を重ねます。
  6. 詳細なマップの作成
    • プロトタイプを基に、より詳細なカスタマージャーニーマップを作成します。顧客の感情、ペインポイント、機会などを追加します。
  7. アクションプランの策定
    • マップから得られた洞察を基に、具体的な改善アクションを策定します。優先順位をつけ、実行計画を立てます。
  8. 定期的な見直しと更新
    • カスタマージャーニーマップは静的なものではありません。定期的に見直し、新しい洞察や変化を反映させます。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客中心のビジネス戦略を実現するための強力なツールです。以下に、本記事の主要なポイントをまとめます:

  • カスタマージャーニーマップは、顧客体験を可視化し、改善機会を特定するための戦略的ツールです。
  • 効果的なマップには、ペルソナ、ステージ、タッチポイント、感情、ペインポイントなどの要素が含まれます。
  • マップの作成プロセスには、目的の明確化、データ収集、ビジュアル化、検証などのステップがあります。
  • 作成したマップは、顧客体験の改善、新製品開発、マーケティング戦略の最適化などに活用できます。
  • 最新のトレンドとして、オムニチャネル統合、AIの活用、マイクロモーメントの重視などがあります。
  • カスタマージャーニーマップの取り組みを始めるには、まずシンプルなプロトタイプから始め、徐々に詳細化していくアプローチが効果的です。

カスタマージャーニーマップは、顧客理解を深め、ビジネスの成長を促進する強力なツールです。本記事の内容を参考に、自社の状況に合わせたカスタマージャーニーマップの作成と活用を始めてみてください。顧客中心のアプローチを通じて、競争力の向上と持続可能な成長を実現することができるでしょう。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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