KPOPブームの裏側：マーケティング担当者が知るべき成功の法則

はじめに
KPOPの世界的な売上規模
なぜKPOPは世界でヒットを連発できるのか
KPOPの躍進から日本が学べること
まとめ
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はじめに

近年、KPOPの世界的な人気は目覚ましいものがあります。音楽業界だけでなく、ファッションやビューティー業界にまで影響を与え、韓国の文化輸出の大きな柱となっています。しかし、この成功の裏には緻密に計算されたマーケティング戦略があります。

多くのマーケティング担当者が直面している課題は、自社のビジネスをどのようにして世界規模で展開し、持続的な成功を収めるかということです。KPOPの成功事例から学ぶことで、自社のマーケティング戦略を見直し、グローバル市場での競争力を高めることができるでしょう。

本記事では、KPOPの世界的な売上規模、その成功要因、そして日本企業が学べる点について詳しく解説していきます。

KPOPの世界的な売上規模

KPOPの世界的な人気を数字で見てみましょう。

アルバム売上

国際レコード産業連盟（IFPI）の発表によると、2023年の世界で最も売れたアルバム20枚のうち19枚がK-POPミュージシャンによるものでした。

順位	アーティスト	アルバム名	売上枚数
1位	SEVENTEEN	『FML』	640万枚
2位	Stray Kids	『5-Star』	530万枚
3位	NCT DREAM	『ISTJ』	460万枚
4位	SEVENTEEN	『SEVENTEENTH HEAVEN』	450万枚
5位	Stray Kids	『ROCK-STAR』	420万枚

この数字からも、KPOPアーティストの圧倒的な人気が伺えます。特に注目すべきは、SEVENTEENが2作品でトップ5入りを果たしていることです。これは、ファンの強い支持と継続的な人気を示しています。

海外売上高

韓国文化観光研究院の発表によると、2023年のK-POPの海外売上高は1兆2377億ウォン（約1,300億円）に達し、前年比34.3%増加しました。

分野	売上高	割合
海外公演	5885億ウォン	47.5%
フィジカルアルバム販売	3889億ウォン	31.4%
ストリーミングサービス	2603億ウォン	21.0%

この数字は、KPOPが単なる音楽ジャンルを超えて、総合的なエンターテインメント産業として成長していることを示しています。特に海外公演の売上が全体の約半分を占めていることから、KPOPアーティストのライブパフォーマンスの人気の高さが伺えます。

YouTube視聴回数

KPOPの人気は、デジタルプラットフォームでも顕著です。2023年5月の時点で、YouTubeの世界楽曲チャート「music charts TOP 100 songs Global」にKPOP楽曲が10曲もランクインしています。これは、KPOPの音楽が言語の壁を超えて、世界中のリスナーに受け入れられていることを示しています。

なぜKPOPは世界でヒットを連発できるのか

KPOPの世界的成功の背景には、綿密に計画されたマーケティング戦略があります。以下に、その主要な要因を詳しく見ていきましょう。

1. 強力なオンラインプレゼンス

KPOPアーティストは、ソーシャルメディアを活用して常にファンとの接点を持ち続けています。YouTube、Instagram、Twitter、Facebookなどのプラットフォームを使って、コンサート情報、新曲リリース、スケジュール、グッズ情報などをリアルタイムで発信しています。

さらに、KPOPレーベルは独自のアプリケーションも開発しています。例えば、BubbleやV LIVEといったアプリを通じて、アーティストがファンに直接メッセージを送ることができます。これにより、ファンはアーティストとより親密なつながりを感じることができます。

プラットフォーム	主な用途
YouTube	ミュージックビデオ、パフォーマンス映像の公開
Instagram	日常的な写真や短い動画の共有
Twitter	リアルタイムな情報発信、ファンとの対話
Facebook	詳細な情報発信、ファンコミュニティの形成
Bubble	アーティストからファンへの直接メッセージ
V LIVE	ライブストリーミング、ファンとのリアルタイム交流

この戦略により、アーティストは音楽活動をしていない期間でも常にファンの注目を集め続けることができます。また、ファンとの双方向のコミュニケーションを通じて、強い絆を築くことができます。

2. 独自のブランドコンセプト

KPOPグループやアーティストは、デビュー時のコンセプトに固執せず、常に新しいイメージや音楽スタイルに挑戦し続けています。これは「カムバック」と呼ばれる新曲発表の度に、ファンに新鮮な驚きと期待を与える効果があります。

例えば、SMエンターテインメント所属のガールグループaespaは、キャッチーな楽曲に加えて、「KWANGYA（クァンヤ）」と呼ばれる独自の世界観を展開しています。この「共有宇宙」は、SMエンターテインメントのすべてのアーティストの楽曲のテーマやメッセージの基盤となっています。新しいアルバムがリリースされるたびに、この世界観の新たな層が明らかになり、ファンの期待と投資を高めています。

グループ名	ブランドコンセプト	特徴
aespa	KWANGYA宇宙	現実世界とバーチャル世界を融合させた独自の世界観
BTS	Love Yourself	自己愛と社会的メッセージを融合させたコンセプト
BLACKPINK	Girl Crush	強さと美しさを兼ね備えた新しい女性像

このような独自のブランドストーリーを確立することは、競合他社との差別化を図り、消費者の記憶に残るブランドを作る上で非常に重要です。また、業界内での信頼関係を築き、ビジネスの継続的な成長を促進する効果もあります。

3. 高品質なコンテンツの一貫した制作

KPOPの成功は、音楽だけでなく、高品質なコンテンツ制作にも起因しています。トップレベルのプロダクションハウスによって制作される一連のミュージックビデオや、細部まで丁寧に作り込まれたファングッズなどが、ファンの興味を引き付け、リピーターを生み出しています。

例えば、BTSのミュージックビデオは、その高い制作品質と深い象徴性で知られています。「Blood Sweat & Tears」のミュージックビデオは、美術史的な要素を取り入れ、視聴者に深い解釈の余地を与えています。また、BLACKPINKの「DDU-DU DDU-DU」は、メンバーそれぞれの個性を際立たせる華やかな映像美で、世界中のファンを魅了しました。

コンテンツ種類	特徴	効果
ミュージックビデオ	高品質な映像、深い象徴性	視聴回数の増加、ファンの解釈を促進
ファングッズ	デザイン性の高さ、限定性	コレクター心理を刺激、ブランドロイヤリティの向上
リアリティ番組	アーティストの素顔を見せる	ファンとの距離感を縮める、親近感の醸成

このように、一貫して高品質なコンテンツを制作することは、あらゆる業界のマーケターにとって重要です。専門家と協力して新しい戦略を開発することで、常に変化する消費者の需要に対応し、高いコンバージョン率、リテンション率、ブランド認知度を実現することができます。

4. ロイヤルなコミュニティの構築

KPOPアーティストの成功には、「ファンダム」や「スタン」と呼ばれる熱心なファンコミュニティの存在が不可欠です。アーティストは、ユニークで質の高い音楽とパフォーマンスを提供するだけでなく、ソーシャルメディア、ファンミーティング、その他の特別なイベントを通じて、ファンと継続的に交流しています。

これらの献身的なファンベースは、音楽番組の投票、ストリーミング数、グッズやアルバムの売上など、様々な形で影響力を示します。2021年には、韓国のトップ400アルバムが世界で5,709万枚を売り上げ、パンデミックにもかかわらず36.9%の増加を記録しました。

ファンダムの活動	効果
音楽番組投票	アーティストの順位向上、露出増加
ストリーミング	チャート順位の上昇、収益増加
グッズ購入	ブランド価値の向上、収益増加
SNS拡散	無料の宣伝効果、新規ファンの獲得

アーティストの成功におけるコミュニティの投資は、彼らの背後にあるマーケティングマシンと同じくらい重要です。これは、顧客エンゲージメントが全体的なビジネス戦略の不可欠な部分であることを示しています。顧客エンゲージメント戦略を見直すことで、オーディエンスを献身的で高度にエンゲージメントの高い顧客に変えることができます。

5. インクルージョンに焦点を当てたグローバルリーチの確立

韓国の音楽レーベルは、国際的なオーディエンスを十分に意識しています。現在、多くのグループが韓国語以外の言語で楽曲をリリースし、非韓国語話者のオーディエンスも一緒に歌って楽しめるようにしています。

例えば、ポップロックバンドDAY6の「Stop The Rain」は日本語と英語の歌詞で構成されています。また、13人組のK-POPボーイグループSEVENTEENは、最新のスタジオアルバムの前奏曲として、初の全編英語シングル「Darl+ing」をリリースしました。

グループ名	多言語戦略の例
BTS	「Dynamite」「Butter」など全編英語の楽曲をリリース
TWICE	日本語、英語版のアルバムを別途リリース
BLACKPINK	「Ice Cream」でセレーナ・ゴメスとコラボ、英語歌詞を多用

マーケターにとって、このようなインクルーシブな戦略は、新しいオーディエンスを歓迎し、特定のデモグラフィックにより簡単に浸透するのに役立ちます。これは、食品・飲料業界での特定の顧客層に訴求する商品開発や、サービスページに多言語翻訳を提供するなど、市場に共感を呼ぶ製品を作ることで達成できます。

KPOPの躍進から日本が学べること

KPOPの世界的な成功から、日本の企業やマーケターが学べる点は多岐にわたります。以下に主要な学びを挙げていきます。

1. 戦略的なコンテンツリリース

KPOPの「カムバック」戦略は、新製品や新サービスの発表に応用できます。

段階的な情報公開: ティーザー、予告、本編という流れで情報を小出しにすることで、顧客の期待感を高めます。
SNSの活用: 各段階でSNSを効果的に使い、話題性を維持します。

フェーズ	内容	目的
ティーザー	製品の一部や雰囲気を示唆	興味喚起
予告	具体的な特徴や発売日の公開	期待感醸成
本編	製品の全容公開	購買意欲の最大化

2. グローバル戦略の再考

KPOPの多言語・多国籍戦略は、日本企業のグローバル展開に示唆を与えます。

多言語コンテンツ: 製品説明や広告を複数言語で展開し、各市場に適応させます。
現地人材の活用: 進出先の文化や言語に精通した人材を積極的に登用します。

3. ファンコミュニティの構築

KPOPのファンダム戦略は、顧客ロイヤリティ向上に応用できます。

双方向コミュニケーション: SNSやイベントを通じて顧客と直接対話する機会を増やします。
ファン参加型コンテンツ: 顧客が主体的に参加できるキャンペーンやイベントを企画します。

4. 高品質コンテンツへの投資

KPOPの高品質な楽曲やミュージックビデオは、製品やサービスの品質向上に通じます。

品質への徹底的なこだわり: 製品やサービスの品質向上に継続的に投資します。
視覚的魅力の重視: パッケージデザインや広告ビジュアルの質を高めます。

5. デジタルプラットフォームの最大活用

KPOPのSNS戦略は、デジタルマーケティングの重要性を示唆しています。

プラットフォーム特性の理解: 各SNSの特性を理解し、適切なコンテンツを展開します。
トレンドへの即応: 流行りのハッシュタグやチャレンジに素早く対応します。

まとめ

KPOPの成功から日本のマーケターが学べる主要なポイントは以下の通りです。

戦略的な情報公開とSNSを活用した期待感の醸成
グローバル市場を見据えた多言語・多文化戦略
熱心なファンコミュニティの構築と維持
高品質なコンテンツ制作への継続的な投資
デジタルプラットフォームの特性を活かしたマーケティング

これらの戦略を適切に自社のビジネスモデルに適用することで、日本企業も国内外での競争力を高めることができるでしょう。重要なのは、単なる模倣ではなく、自社の強みや市場特性を考慮しながら、これらの戦略を柔軟に取り入れていくことです。

KPOPの成功は、グローバル化とデジタル化が進む現代のマーケティングにおいて、顧客との強い絆づくりと継続的な価値提供の重要性を改めて示しています。日本企業がこれらの教訓を活かし、独自の強みを生かしたマーケティング戦略を展開することで、新たな成功の可能性が開けるでしょう。

出典元

[1] https://forbesjapan.com/articles/detail/69990
[2] https://www.maximizemarketresearch.com/market-report/k-pop-events-market/186929/
[3] https://www.webdew.com/blog/must-know-marketing-strategies
[4] https://flypaper.soundfly.com/hustle/5-ingenious-k-pop-marketing-strategies/
[5] https://www.reddit.com/r/kpophelp/comments/1bkwb7o/why_do_groups_promote_in_japan/
[6] https://asia.nikkei.com/Business/Education/K-pop-and-job-pressures-connect-students-in-Japan-and-South-Korea
[7] https://www.asahi.com/ajw/articles/14788900
[8] https://alliedinsight.com/blog/dancing-to-the-tune-of-k-pop-marketing-7-key-takeaways-for-staffing-firms/
[9] https://hbswk.hbs.edu/item/building-an-army-of-fans-marketing-lessons-from-kpop-sensation-bts
[10] https://japan.ajunews.com/view/20240724094536289
[11] https://www.threegirlsmedia.com/2023/05/14/k-pop-marketing-strategies-10-ways-marketers-can-learn-from-successful-campaigns/
[12] https://japannews.yomiuri.co.jp/world/asia-pacific/20230209-90228/
[13] https://www.spiralytics.com/blog/learn-from-k-pop-marketing-strategies/