楽天カードの3C分析とWho/What/Howの詳細整理 - 勝手にマーケティング分析
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楽天カードの3C分析とWho/What/Howの詳細整理

楽天カード 企業を勝手に分析
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楽天カードは、楽天グループが提供するクレジットカードサービスで、日本の消費者向けクレジットカード市場で主要なプレイヤーの一つです。本記事では、楽天カードの3C分析(顧客、競合、自社)を行い、その戦略的ポジショニングを詳細に探ります。さらに、楽天カードのWho/What/How分析を通じて、その成功の秘訣を明らかにします。最後に、楽天カードのマーケティング戦略から学べる重要な洞察を提供します。

楽天カードの顧客分析:オンラインショッピング愛好家から日常的な利用者まで

市場規模と成長性

  1. 日本のクレジットカード市場の規模と成長率:
  • 2022年度のクレジットカード市場規模は約89兆円まで拡大しました。
  • 2028年度には約158兆円に達すると予測されています。
  • 2024年から2029年にかけて、年平均成長率(CAGR)7.36%で成長し、2029年には9,299億7,000万米ドル(約139兆円)に達すると予想されています。

出典:
https://webtan.impress.co.jp/n/2024/02/09/46485
https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/japan-credit-cards-market

  1. 楽天カードの市場シェア:
  • 楽天カードのショッピング取扱高国内シェアは23.5%(2024年度第1四半期)です。
  • 楽天カードは、2022年度国内クレジットカード発行元(自社発行)のショッピング取扱高ベースでNo.1の地位を獲得しています。
  • 2023年度のショッピング取扱高は21.1兆円でした。

出典:
https://www.rakuten-card.co.jp/corporate/info/data/

これらの情報から、日本のクレジットカード市場は着実に成長を続けており、楽天カードはその中で主要なプレイヤーとして大きなシェアを持っていることがわかります。

プロダクトライフサイクル

楽天カードは成長期から成熟期への移行段階にあり、新規会員獲得と既存会員の利用促進を同時に進めています。

顧客セグメント

  1. オンラインショッピング愛好家:楽天市場を中心にeコマースを頻繁に利用する層
  2. ポイント重視派:ポイント還元率の高さを重視する消費者
  3. 若年層(20代~30代前半):初めてのクレジットカードとして選択する層
  4. 多様なサービス利用者:楽天エコシステム内の複数サービスを利用する顧客

顧客のJOB(解決したい課題)

機能的課題情緒的課題社会的課題
便利な決済手段が欲しいお得な買い物をしたいデジタル社会に適応したい
ポイントを効率的に貯めたい特別感を味わいたい環境に配慮した消費をしたい
多様な支払い方法を選択したい安心・安全な取引をしたいキャッシュレス社会に貢献したい
簡単に家計管理をしたいステータスを感じたいテクノロジーを活用した生活をしたい

楽天カード市場のPLESTE分析

要因機会脅威
政治的(Political)・キャッシュレス決済推進政策・個人情報保護規制の強化
法的(Legal)・フィンテック関連法整備・貸金業法の規制
経済的(Economic)・消費者の可処分所得増加・景気後退によるカード利用減少
社会的(Social)・キャッシュレス決済の普及・セキュリティ意識の高まり
技術的(Technological)・AI・ビッグデータ活用の進展・新たな決済技術の台頭
環境的(Environmental)・環境配慮型カードの需要増加・プラスチック使用削減の圧力

楽天カードの競合分析:日本市場における差別化戦略

主要競合(日本国内)

  1. 三井住友カード
  2. JCBカード
  3. イオンカード

競合のSWOT分析と Who/What/How

三井住友カード

SWOT内容
強み(S)・大手銀行グループの信頼性
・幅広い年齢層への浸透
弱み(W)・オンライン特化サービスの不足
・若年層へのアピール力不足
機会(O)・法人カード市場の拡大
・国際ブランドとの提携強化
脅威(T)・フィンテック企業の台頭
・他業種からの参入

Who/What/How:

  • Who:幅広い年齢層の消費者
  • What:信頼性と安全性
  • How:銀行窓口での勧誘、多様な提携カード

JCBカード

SWOT内容
強み(S)・国内唯一の国際ブランド
・海外での知名度
弱み(W)・国内専業カード会社としての限界
・デジタル戦略の遅れ
機会(O)・インバウンド需要の回復
・アジア市場での展開
脅威(T)・他国際ブランドとの競争激化
・為替リスク

Who/What/How:

  • Who:海外旅行者、国際的なビジネスパーソン
  • What:グローバルでの利用のしやすさ
  • How:空港ラウンジサービス、海外特典の充実

イオンカード

SWOT内容
強み(S)・大手小売グループとの連携
・日常的な利用シーンの多さ
弱み(W)・オンラインサービスの遅れ
・高額消費者層へのアピール不足
機会(O)・地方都市での顧客基盤拡大
・食品スーパー利用者の取り込み
脅威(T)・eコマースの台頭による実店舗離れ
・競合他社のポイント還元率競争

Who/What/How:

  • Who:主婦層、家族連れ
  • What:日常の買い物でのお得感
  • How:イオングループ店舗での高還元率、食品中心の特典

楽天カードの自社分析:エコシステムを活かした戦略

SWOT分析

  • 強み(Strengths)
    • 楽天エコシステムとの強力な連携(楽天市場、楽天ポイント等)
    • 高いポイント還元率(最大3%)
    • オンライン申込みの簡便性と迅速な審査
    • 豊富なデジタルマーケティングノウハウ
    • 若年層を中心とした強固な顧客基盤
    • AIとビッグデータを活用した顧客分析能力
    • 無年会費の永年無料カード
  • 弱み(Weaknesses)
    • 実店舗でのブランド認知度が競合他社に劣る
    • 高額所得者向けのプレミアムサービスの不足
    • 法人カード事業の規模が小さい
    • 海外での利用に関する特典が限定的
    • カスタマーサポートの質に関する課題
    • セキュリティに対する一部ユーザーの不安
    • 楽天エコシステム外での利用インセンティブの弱さ
  • 機会(Opportunities)
    • キャッシュレス決済の更なる普及
    • フィンテック技術の進化によるサービス拡充
    • 若年層のクレジットカード利用増加
    • eコマース市場の継続的成長
    • 楽天グループの新規サービス展開との連携
    • グローバル展開の可能性
    • 環境配慮型カードへの需要増加
  • 脅威(Threats)
    • 競合他社によるポイント還元率の引き上げ
    • 新興フィンテック企業の台頭
    • 個人情報保護規制の強化
    • 景気後退によるカード利用の減少
    • 他の決済手段(QRコード決済等)の普及
    • サイバーセキュリティリスクの増大
    • 楽天グループ全体の業績変動の影響

戦略提案

  • SO戦略(強みを活かして機会を最大限に活用する戦略)
    • 楽天エコシステムとの連携を強化し、新規サービスとのクロスセルを促進
    • AIとビッグデータを活用したパーソナライズドマーケティングの更なる強化
    • 若年層向けの特化型サービス(学生カード、新社会人カード等)の開発
  • WO戦略(弱みを克服して機会を活かす戦略)
    • 実店舗での認知度向上のため、オフライン広告やイベントスポンサーシップの強化
    • プレミアムカードラインの拡充と高額所得者向けの特別サービスの開発
    • 環境配慮型カードの導入によるブランドイメージの向上
  • ST戦略(強みを活かして脅威に対抗する戦略)
    • 楽天ポイントの価値向上(使途の拡大、交換レートの改善等)による顧客ロイヤルティの強化
    • セキュリティ技術への投資強化とユーザー教育の実施
    • 楽天グループ全体のシナジーを活かした独自の付加価値サービスの開発
  • WT戦略(弱みと脅威の最小化を図る戦略)
    • カスタマーサポートの品質向上とAI活用による効率化
    • 法人カード事業の強化と中小企業向けサービスの拡充
    • 他の決済手段との連携(QRコード決済機能の追加等)によるユーザビリティの向上

楽天カードのWho/What/How分析

パターン1:オンラインショッピング愛好家向け

項目内容
Who(誰)20-40代のeコマース利用頻度の高い消費者
Who(JOB)お得にオンラインショッピングを楽しみたい
What(便益)高いポイント還元率、楽天市場での特典
What(独自性)楽天エコシステムとの完全統合
How(プロダクト)楽天カード(通常版、プレミアムカード)
How(コミュニケーション)オンライン広告、楽天市場内でのプロモーション
How(場所)オンライン申込み、楽天アプリ内
How(価格)年会費無料(一部カードを除く)

一言で言うと:「楽天経済圏のヘビーユーザー」

パターン2:ポイント重視派

項目内容
Who(誰)30-50代のポイント収集に熱心な消費者
Who(JOB)日常の支出でポイントを最大化したい
What(便益)高還元率、多様なポイント交換オプション
What(独自性)楽天ポイントの柔軟な利用性
How(プロダクト)楽天カード(ゴールドカード、プレミアムカード)
How(コミュニケーション)ポイントプログラムの詳細説明、活用事例の紹介
How(場所)オンライン・オフライン両方での利用促進
How(価格)年会費有料(特典でカバー)

一言で言うと:「ポイントマイレージのプロフェッショナル」

パターン3:若年層・初めてのクレジットカード利用者

項目内容
Who(誰)18-25歳の学生・新社会人
Who(JOB)安心して使える初めてのクレジットカードが欲しい
What(便益)簡単な申込み、利用制限機能、家計管理サポート
What(独自性)若年層向けの教育コンテンツ、段階的な利用枠拡大
How(プロダクト)楽天カード(学生カード、新社会人向けカード)
How(コミュニケーション)SNSマーケティング、インフルエンサー活用
How(場所)スマートフォンアプリ中心
How(価格)年会費無料、低い利用枠からスタート

一言で言うと:「クレジットカードデビューの入門者」

ここがすごいよ楽天カードのマーケティング

楽天カードは、競合や代替手段がある中で、以下の独自性により顧客から選ばれています:

  1. エコシステムの力を最大限に活用:楽天市場、楽天ポイント、楽天銀行など、楽天グループの多様なサービスとの緊密な連携により、顧客に統合的な価値を提供しています。
  2. 高いポイント還元率:最大3%の還元率は業界トップクラスであり、顧客の継続的な利用を促進しています。
  3. デジタルファーストのアプローチ:オンライン申込みの簡便性、スマートフォンアプリの使いやすさ、AIを活用したパーソナライズドサービスなど、デジタル技術を積極的に活用しています。
  4. 柔軟なターゲティング:若年層から熟年層まで、多様な顧客セグメントに対応したカードラインナップと特典を提供しています。
  5. データ駆動型マーケティング:楽天エコシステム内の豊富なデータを活用し、顧客のニーズに合わせたタイムリーなオファーや推奨を行っています。

マーケターがここから学べる重要な洞察:

  1. エコシステム戦略の重要性:単一のサービスではなく、相互に連携した複数のサービスを提供することで、顧客のロイヤルティを高め、競合からの差別化を図ることができます。
  2. カスタマージャーニーの最適化:オンラインからオフラインまで、顧客との接点を一貫して設計し、シームレスな体験を提供することが重要です。
  3. データの戦略的活用:顧客データを収集・分析し、パーソナライズされたサービスや提案を行うことで、顧客満足度と利用頻度を向上させることができます。
  4. セグメンテーションとターゲティングの精緻化:顧客を細分化し、それぞれのニーズに合わせた商品やコミュニケーション戦略を展開することで、より効果的なマーケティングが可能になります。
  5. テクノロジーとヒューマンタッチの融合:AIやビッグデータなどの最新技術を活用しつつ、人間的な温かみや信頼感を失わないバランスを取ることが重要です。
  6. 継続的なイノベーション:市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、常に新しい機能やサービスを開発・提供し続けることが、長期的な競争力の維持につながります。
  7. ブランドの一貫性と進化:核となるブランド価値を維持しつつ、時代のニーズに合わせてブランドイメージを進化させていくことが重要です。
  8. 社会的責任の統合:環境配慮型カードの導入や社会貢献活動など、企業の社会的責任(CSR)をマーケティング戦略に統合することで、ブランド価値を高めることができます。

これらの戦略と洞察を自社のコンテキストに適用することで、強力なブランドポジションと持続可能なビジネスモデルを構築することができるでしょう。楽天カードの成功は、デジタル技術の活用と顧客中心主義の融合が鍵となっており、これは多くの業界で応用可能な重要な教訓となっています。

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記からWEBサイト、Xをご確認ください。

https://user-in.co.jp/
https://x.com/tomiheyhey

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