ガラガラなのに潰れない店の秘密:店舗は本業じゃない?業種別・裏ビジネスモデル大解剖 - 勝手にマーケティング分析
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ガラガラなのに潰れない店の秘密:店舗は本業じゃない?業種別・裏ビジネスモデル大解剖

ガラガラなお店の正体 商品を勝手に分析
この記事は約12分で読めます。

はじめに

「あの店、いつ行っても客がいないのに、なぜ何年も営業してるんだろう?」

街を歩いていて、こんな疑問を持ったことはありませんか? ランチタイムなのに客が1-2組、夜も誰もいない、それでも5年、10年、時には何十年も同じ場所で営業を続けている不思議な店たち。

実はその答えはシンプルです。その店は、あなたが思っている「店舗での販売」を本業にしていないのです。

ガラガラでも潰れない店には共通する秘密があります。それは店舗での対面販売は本業ではなく、本当の収益源は別にあるということ。

本記事では、よく見かける業種ごとに「店舗がガラガラでも潰れない本当の理由」を、具体的なビジネスモデルとともに解説します。あなたが普段見ている店舗の「裏側」が見えてくるはずです。


業種別ケーススタディ:本当の収益源はどこにあるのか

1. 飲食店:店頭販売は「看板」、本業は別にある

ケース1-1:卸売業者が経営する定食屋

表向き: 昼だけ営業の小さな定食屋、客は1日10人程度
本当の姿: 業務用食材の卸売業者

収入源月間売上利益率備考
法人向け食材卸売800万円15%本業・120万円の利益
店頭定食販売15万円20%3万円の利益
合計利益--123万円

ビジネスモデルの仕組み:

  • 飲食店への卸売が本業だが、取引先から「あなたの店で食べてみたい」と言われる
  • 信用獲得のため小さな店舗を構えているだけ
  • 店舗は「私たちもプロの料理人です」という証明ツール
  • 仕入れは卸売用と共通なので、店舗分の食材コストはほぼゼロ

リピーター客が多い店舗は、少ないながらも定期的に通う顧客がいるため、見た目ほど売上が低くないというより、そもそも店舗売上に依存していないのです。

ケース1-2:ケータリング業者の「ショールーム店舗」

表向き: 閑散としたレストラン
本当の姿: 企業向けケータリング・パーティー料理専門業者

【月間収益構造】
本業(ケータリング):
- 企業パーティー: 20万円 × 8件 = 160万円
- 冠婚葬祭: 30万円 × 4件 = 120万円
- 合計: 280万円

店舗営業:
- 日商5,000円 × 25日 = 12.5万円

→店舗売上は全体の4.5%に過ぎない

なぜ店舗が必要か:

  • 味見をしてもらう場所として
  • 「実店舗があります」という信用のため
  • 会員制やサブスクリプションモデルで固定収入を確保する法人顧客がメイン
  • 店舗はほぼ「モデルルーム」

ケース1-3:不動産オーナーの「生きがい喫茶店」

表向き: 高齢夫婦が営む喫茶店
本当の姿: 賃貸ビルオーナー

項目内容
ビル所有5階建て自己所有
1階自分たちの喫茶店(趣味)
2-5階テナント賃貸
喫茶店売上月8万円
賃貸収入月120万円
喫茶店は年金+α程度の収入源、実質的な趣味

ポイント:

  • 5棟10室基準を超えない範囲であれば、家賃収入は副業とみなされない
  • 店舗家賃ゼロ(自己所有)、人件費ゼロ(夫婦で運営)
  • 喫茶店は「社会との接点」「生きがい」が主目的
  • ガラガラでも全く問題なし

2. 小売店:実店舗は「ショールーム」、本業はオンライン販売

ケース2-1:ネット通販業者の「リアル店舗」

表向き: 品揃えの多い雑貨店だが客は少ない
本当の姿: 年商3億円のEC事業者

販売チャネル月間売上比率
楽天・Amazon等2,400万円96%
実店舗100万円4%

実店舗の役割:

  • 商品撮影スタジオ
  • 在庫保管場所
  • 「実店舗あります」という信用構築
  • 返品・交換窓口
  • たまに来る近所の客は「ついで」

収益源の多様化として、店舗以外からの売上を確保するどころか、完全に主客が逆転しているケースです。

ケース2-2:古本屋に見える「プレミア本専門ネット業者」

表向き: ホコリっぽい古本屋
本当の姿: 希少本のオンライン販売専門業者

【収益構造】
オンライン販売(国内外のコレクター向け):
- 月間20-30冊販売
- 平均単価5万円
- 月商100-150万円
- 利益率50% → 月間利益50-75万円

店頭販売:
- 月間50冊販売
- 平均単価500円
- 月商2.5万円
- 利益5,000円程度

なぜ店舗が必要か:

  • 「古物商許可」の営業所として
  • 買取窓口として
  • 在庫の保管・整理場所
  • 店頭の客は「たまたま」で、本業とは無関係

ケース2-3:アパレル店の「在庫管理倉庫兼ショールーム」

表向き: セレクトショップ風の服屋
本当の姿: インスタ販売・メルカリ販売業者

項目内容
Instagram販売月商200万円
メルカリ・ラクマ月商150万円
自社EC月商100万円
店頭販売月商20万円
店舗の役割撮影場所、試着対応、在庫置き場

店舗は「バーチャル背景」ではなく「リアルな背景」として機能しています。

3. サービス業:店舗は「窓口」、本業は訪問・B2B

ケース3-1:美容室という看板の「美容商材卸売業者」

表向き: 予約が少ない美容室
本当の姿: 美容商材の卸売・美容師向け講師

収入源月間収入
美容商材卸売80万円
美容師向けセミナー講師40万円
店舗での美容業務30万円
合計150万円

ビジネスモデル:

  • 美容師仲間への商材卸売が主収入
  • 技術セミナーの講師料
  • 店舗は「現役美容師です」という信用のため
  • 経営的観念を持った発想で店舗作りを行うことで、バランスの良い店が作れる

ケース3-2:花屋の「法人配達専門業者」

表向き: 小さな花屋
本当の姿: 企業・式場向け花卉配達業者

【収益内訳】
法人向け定期配達:
- オフィス装花: 15社 × 月4回 × 8,000円 = 48万円
- 式場提携: 月10件 × 5万円 = 50万円
- 葬儀場提携: 月15件 × 3万円 = 45万円
合計: 143万円

店頭販売:
- 月商12万円

→店頭は全体の8%

店舗の必要性:

  • 配達の拠点
  • 作業場
  • 「ちゃんとした花屋です」という看板
  • 店頭の客は「ついで」

ケース3-3:整体院という名の「企業向け訪問マッサージ業者」

表向き: 閑散とした整体院
本当の姿: 法人向け訪問健康指導サービス

サービス月間収入
企業向け訪問(5社契約)100万円
セミナー・講演30万円
店舗での施術15万円

店舗は「開業届の住所」「信用の証」として必要なだけで、ほぼ不在です。

4. 製造小売:店舗は「工房の販売窓口」、本業は卸売

ケース4-1:パン屋という「業務用パン工場」

表向き: 小さなパン屋
本当の姿: ホテル・レストラン向けパン製造業者

販路月間売上比率
ホテル・レストラン卸280万円87.5%
学校給食30万円9.4%
店頭販売10万円3.1%

構造:

  • 深夜〜早朝に大量生産
  • 配達メイン
  • 店頭は「余り」と「看板」
  • 固定費削減のため営業時間を短縮し、店頭は10-14時のみ

ケース4-2:ケーキ屋の「OEM製造工場」

表向き: ショーケースにケーキが並ぶ店
本当の姿: 他店ブランドのケーキ製造受託業者

【収益構造】
OEM製造(他店ブランドで製造):
- A百貨店向け: 月100万円
- Bホテル向け: 月80万円
- Cレストラン向け: 月60万円
合計: 240万円

自社ブランド店頭販売:
- 月20万円

→自社店頭は8.3%のみ

店舗は「製造技術の証明」「品質の可視化」のためのショールーム。

5. その他業種の意外な収益構造

ケース5-1:クリーニング店の「工場経営者」

表向き: 小さなクリーニング取次店
本当の姿: 大型クリーニング工場の経営者

項目内容
自社工場他店10店舗分のクリーニング受託
工場収入月500万円
自店舗月30万円
比率自店舗は5.7%

店舗は「工場への入口」の一つに過ぎません。

ケース5-2:文房具店の「学校・法人向け卸売業者」

表向き: 古めかしい文房具店
本当の姿: 教育機関・企業向け事務用品卸売業者

【売上内訳】
学校向け一括納品: 月200万円
企業向け定期配達: 月150万円
店頭販売: 月15万円

→店頭は4%

サブスクリプションモデルで固定収入を確保している法人顧客がメインで、店舗は「信用」と「緊急時の窓口」。

ケース5-3:酒屋の「業務用酒類卸売業者」

表向き: 昔ながらの酒屋
本当の姿: 飲食店向け酒類配達業者

取引先月間売上
飲食店20店舗400万円
イベント・宴会100万円
一般客店頭販売20万円

店舗は「酒類販売免許」の営業所と配達拠点。一般客はほぼ来ない。


共通パターン:「店舗ビジネスが本業でない」店の7つの特徴

1. 営業時間が極端に短い、または不規則

業種表向き営業時間実態
定食屋11:00-14:00卸売の合間
雑貨店12:00-17:00EC発送の合間
花屋10:00-15:00配達の合間

営業時間を短縮して光熱費を節約するというより、そもそも店舗営業が主業務ではないため。

2. 店主が不在がち、または常に電話中

よくある光景:

  • 「少々お待ちください」と言って奥で長電話
  • 「今日は配達で不在です」の貼り紙
  • 予約制・要事前連絡

理由: 本業(訪問・配達・卸売)で忙しく、店舗対応は二の次

3. 品揃えが妙に専門的、または逆に極端に少ない

パターン理由
専門的すぎるB2B向けの商品が並んでいる
極端に少ないショールーム的な展示のみ
値札がない一般販売を想定していない

4. 価格が妙に高い(または安い)

高い場合: 店舗販売を積極的にしたくない(本業に専念したい)

安い場合: 在庫処分、本業の「おまけ」

5. 常連客しか来ない、新規客が入りにくい雰囲気

リピーター客が多い店舗は、少ないながらも定期的に通う顧客がいるというより、新規客獲得に興味がない。

典型例:

  • 入口に「会員制」
  • メニュー・価格表示なし
  • 「紹介制」

6. 立地が悪いのに長年営業

立地条件通常なら実態
駅から遠い集客困難配達業務には支障なし
人通りゼロ売上立たず工房・倉庫として最適
住宅街の奥認知されない法人取引には無関係

固定費削減として家賃を低く抑えることが重要で、一等地である必要がない。

7. 改装しない、最新設備を入れない

理由:

  • 店舗への投資意欲がない
  • 本業の方にリソースを投下
  • 現状で十分(店舗は看板機能のみ)

なぜこのビジネスモデルが成立するのか:3つの経営メリット

メリット1:リスク分散

項目店舗販売依存複数収益源
客数減少のリスク致命的影響限定的
経済変動の影響小(B2Bは契約ベース)
天候の影響小(配達・卸売は関係薄)

収益源の多様化により、売上の波を緩和できるどころか、店舗売上への依存度がそもそも低い。

メリット2:固定費の圧縮

【一般的な店舗】
家賃: 50万円
人件費: 80万円
広告費: 20万円
合計固定費: 150万円

【本業が別にある店舗】
家賃: 15万円(郊外・自己所有)
人件費: 0円(本業の合間)
広告費: 0円(不要)
合計固定費: 15万円

→10分の1の固定費

オーナーシェフやワンオペを実践することで、人件費を最小限に抑えるを超えて、ほぼゼロ。

メリット3:信用構築ツールとしての店舗

目的効果
取引先への信用「実店舗あります」
許認可の要件営業所が必要な業種
ブランディングECだけより信頼感
顧客の安心感「会社がある」証明

店舗はコストセンターではなく信用獲得ツールとして機能。


「店舗が本業でない」ビジネスの見分け方チェックリスト

あなたの近所の店が「本当は何で稼いでいるか」を見抜く10のポイント:

チェック項目当てはまれば「店舗は副業」の可能性大
☐ 営業時間が極端に短い11-14時のみ、など
☐ 定休日が多い週3-4日休み
☐ 店主が不在がち「配達中」の貼り紙
☐ 客がほとんどいないでも潰れない
☐ 商品が専門的すぎる一般客向けでない
☐ 価格表示がない卸売メイン
☐ 配達車両が目立つ配達業務がメイン
☐ 倉庫のような店内在庫保管場所
☐ ECサイトがあるネット販売メイン
☐ 「業者様歓迎」の表示B2B志向

3個以上該当: 店舗は副業の可能性
6個以上該当: ほぼ確実に本業は別


あなたのビジネスへの応用:「店舗+α」戦略の設計図

ステップ1:自分の業種で「本業にできる別収益源」を探す

あなたの業種可能性のある本業候補
飲食店経営ケータリング、卸売、料理教室、レシピ販売
小売店経営EC、卸売、コンサル、セミナー講師
サービス業訪問型、法人向け、オンライン化、講師業
製造業OEM受託、卸売専業、B2B特化

ステップ2:店舗の役割を再定義する

従来の定義新しい定義
売上を上げる場所信用を獲得する場所
多くの客を集める質の高い取引先を獲得
長時間営業必要最小限の営業
一等地が必須機能優先で立地選定

ステップ3:損益分岐点を劇的に下げる

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率) を意識し:

【現状】
店舗売上依存: 月商300万円必要

【店舗を副業化】
本業収入: 月200万円
店舗売上: 月50万円で十分
→必要売上が6分の1に

ステップ4:3年計画で段階的移行

フェーズ期間施策
準備期1-6ヶ月本業候補の市場調査、テスト営業
移行期7-18ヶ月本業を育てつつ店舗営業継続
安定期19ヶ月-本業メイン、店舗は看板・窓口化

まとめ:「ガラガラでも潰れない」の本質

Key Takeaways

ポイント内容
本業は店舗販売ではない卸売、配達、B2B、EC、不動産など、別の収益源がメイン
店舗は看板・信用ツール売上を上げる場所ではなく、信用を獲得する場所
固定費が極端に低い自己所有、ワンオペ、短時間営業で損益分岐点が劇的に低い
B2C→B2B転換一般消費者より法人取引の方が安定・高収益
EC・配達への転換実店舗より効率的な販路がメイン
不動産収入との複合店舗家賃ゼロ+賃貸収入で店舗は「おまけ」
専門性の深化ニッチな専門分野でB2B・卸売に特化

最後に:見た目に騙されるな

ビジネスとして成り立たせるために、どのような商品を出すべきか、どのような価格帯の商品を作るべきかをトータルに考えることが重要ですが、さらに重要なのはどこで稼ぐかを再定義することです。

街で見かける「ガラガラなのに潰れない店」の大半は:

  • 店舗での一般消費者向け販売を本業にしていない
  • 別の収益源(卸売・配達・B2B・EC・不動産など)がメイン
  • 店舗は信用獲得・窓口・ショールーム的な役割

という構造になっています。

あなたが今日からできること

  1. 自分の業種で「店舗以外の収益源」を5つリストアップする
  2. 既存顧客の中で「法人・大口顧客」になり得る先を探す
  3. 店舗の役割を「売上獲得」から「信用構築」に再定義してみる
  4. 営業時間を減らして本業開拓の時間を作れないか検討する
  5. EC・配達・訪問など、店舗以外のチャネルをテストする

「ガラガラでも潰れない店」は、失敗している店ではありません。むしろ、店舗ビジネスの本質を理解し、最適な収益構造を構築している店なのです。

あなたのビジネスも、「店舗での対面販売」という枠を超えることで、新しい可能性が開けるかもしれません。


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この記事を書いた人
tomihey

本ブログの著者のtomiheyです。失敗から学び続けてきたマーケターです。
BtoB、BtoC問わず、デジタルマーケティング×ブランド戦略の領域で14年間約200ブランド(分析数のみなら500ブランド以上)のマーケティングに関わり、「なぜあの商品は売れて、この商品は売れないのか」の再現性を見抜くスキルが身につきました。
本ブログでは「理論は知ってるけど、実際どうやるの?」というマーケターの悩みを解決するノウハウや、実際のブランド分析事例を紹介しています。
現在はマーケティング戦略/戦術の支援も実施していますので、詳しくは下記リンクからご確認ください。一緒に「売れる理由」を解明していきましょう!

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