ニールセンの2025年アニュアルマーケティングレポートの概要を解説|逆境に強い戦略と測定の最前線 - 勝手にマーケティング分析
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ニールセンの2025年アニュアルマーケティングレポートの概要を解説|逆境に強い戦略と測定の最前線

ニールセンの2025年アニュアルマーケティング レポートの概要を解説 マーケの応用を学ぶ
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はじめに ― 読者の課題をクリアに

「上司から“予算は3割カット、でもKPIは維持”と言われた…」
「新チャネルが乱立しすぎて、どれが自社に効くのか判断できない」
「結局“うちの業界”で成功しているベンチマークが見つからない」

もしあなたがこんな悩みを抱える若手〜中堅マーケターなら、本記事はまさに “処方箋” となるかもしれません。
本記事では、Nielsen Annual Marketing Report 2025 を解説します。本レポートは、世界33業種・1,400名超のCMO/ブランド責任者に対して、「予算配分」「チャネル選定」「測定アプローチ」「AI活用度」について網羅的にヒアリングした年次レポートです。

本記事で得られる3つの収穫

  1. 予算縮小でも成果を伸ばした企業の“再配分シナリオ” がわかる
  2. CTV(コネクテッドTV)とRMN(リテールメディアネットワーク)がファネル全域をカバー できる理由と導入の勘所がつかめる
  3. MMM(マーケティングミックスモデリング)でもMTA(マルチタッチアトリビューション)でもないハイブリッド測定+AI最適化 の実践ステップが学べる

読み終える頃には 自社の“次の一手”を決める地図 が手に入るでしょう。

本レポートはどなたでもこちらからダウンロード可能です。

レポート概要 — 1分で掴む全体像

  1. 2025年調査は“予算縮小×成果維持”が前提となり、各社は 高効率チャネルへの再配分 を加速。
  2. 勝ち組は CTV と RMN を軸に視聴データと購買データを統合し、フルファネルROI を可視化。
  3. その裏側で クロスメディア測定+AI最適化 が標準化フェーズへ――71 % が導入・検討中。
項目内容
調査期間2024年11月〜2025年1月
調査対象世界14ヵ国・1,407名のマーケティング責任者(売上規模1億〜100億USD)
業種内訳CPG 18%、小売 15%、IT/通信 12%、金融 9% ほか計33業種
主要トピック① 予算動向 ② チャネル別ROI ③ クロスメディア測定 ④ AI活用度 ⑤ 今後12か月の優先課題
キーハイライト広告費「削減」回答54%CTV投資増56%RMN重要度増65%71%がAI最適化に関心

セクション1 逆境への対応力

1.1 グローバル広告投資の現状

指標2024→2025の変化ポイント
広告費“純増”回答率18 % → 15 % (▼3pt)インフレ・為替不安で保守化が加速
広告費“削減”回答率49 % → 54 % (▲5pt)半数超が“ダウンサイジング”を選択
平均削減幅−12 %1ドル当たりの効率が厳しく検証

Insight:"削減=停止"ではなく ROI最大化へ投資再配分 が鍵。特にCTVと屋外(OOH)が“伸びコスパ枠”として浮上しています。

1.2 再配分シナリオ3型

厳しい予算環境のなかで“どこを削り、どこに投じるか” は企業規模や業界特性で異なります。下表は回答企業を三つの戦略タイプに分類し、主要チャネルとKPIの違いを整理したものです。まずは自社がどの型に近いかを確認し、次章の事例やアクションへつなげてください。

主な採用業界投下TOPチャネル主要KPI
パフォーマンス集中型SaaS・Fintech検索連動・リタゲ・ウェビナーCAC/RoAS
ブランド維持型飲料・日用品CTV・スポンサード動画GRP×購買率
ミックス最適型小売・旅行RMN+SNSライブコマースCVR/客単価

1.3 業界別「勝ちチャネル」マトリクス

次に、業界ごとに“投下すべきチャネル”を矢印で可視化したマトリクスを示します。IT/SaaSはCAC最適化、消費財はブランド指標、小売は在庫連動——といったように、成果指標によってメディア選択が変わる様子が一目でわかります。

flowchart LR classDef b fill:#FEEBC8,stroke:#F6AD55,color:#000 classDef g fill:#C6F6D5,stroke:#48BB78,color:#000 A((IT / SaaS)):::b -->|CAC厳格| B[Search & Performance] C((消費財)):::g -->|ブランド好意度| D[CTV & OOH] E((小売)):::g -->|在庫連動| F[Retail Media Net]

1.4 逆境下で成果を伸ばしたケース

  • US D2Cアパレル:検索費用−20 %でも利益+8 %。メール/ウェビナー比率を40 → 65 %へシフト。
  • EU飲料メーカー:マスTVCM削減分をCTV+OOHへ転換し、若年層リーチ+12 %を実現。

1.5 マーケターが学べること & 次のアクション

学び推奨アクション
削減フェーズは“選択と集中”の好機既存デジタル費用の10 %をCTV/OOHのテスト枠へパフォーマンス広告を週次で棚卸しし、低ROIクリエイティブを即停止
業界ごとにKPIが異なる自社と近しいトップ企業3社を選び、CAC・GRPなどをベンチマークKPIダッシュボードに「業界中央値」を追加
ミックス最適型で平均CVRを底上げRMN×SNSライブコマースのシーケンシャル広告を実験“検索→ウェビナー”などファネル横断シナリオを設計

セクション2 スイートスポットの見極め

2.0 現状とトレンドハイライト

  • CTV投資増加率:世界56 %/北米68 %
  • RMN重要度上昇:世界65 %/北米74 %

2.1 CTVがもたらすテレビ革命

CTV(Connected TV)とは?

flowchart LR %% 従来テレビ側 subgraph 従来テレビ direction TB Broad[放送局] --> Signal[電波送信] Signal --> HomeTV[家庭用テレビ] HomeTV --> Rating[視聴率パネル(推定計測)] end %% コネクテッドTV側 subgraph コネクテッドTV direction TB Adv[広告主] --> DSP[DSP / SSP] DSP --> Stream[配信サーバー] Stream --> CTV[CTV端末] CTV --> ACR[ACRデータ(個別計測)] end

インターネットに接続されたテレビおよびストリーミングデバイスで視聴される広告枠の総称。従来の放送波・ケーブル TV と異なり、個別端末ID を用いた精緻なターゲティングと視聴完了データが取得できることが最大のメリットです。

なぜ今 CTV なのか
  1. コスト効率の改善 – 同一リーチを得るのに必要な CPM がケーブル比で最大▲30 %(北米調べ)。
  2. 世帯 × 個人レベルの測定 – スマートTV の ACR(自動コンテンツ認識)により、誰がどの広告を何秒見たかを把握。
  3. 拡張可能なクリエイティブ – 動的に商品差し替え・地域最適化が可能(例:天候連動で傘広告)。
実践ベストプラクティス
ステップ具体策期待効果
① テスト予算設定月予算の5–10 %をCTV専用に確保学習コストを最小化し検証速度を向上
② シーケンス設計15秒スキップ不可 → 6秒バンパーの順で配信認知想起率+18 %
③ 重複除去 & 統合計測TV GRP と CTV インプレッションを同一指標へ変換オン/オフ横断の最適出稿に寄与

失敗あるある

  • 従来 TV の30秒素材を流用し尺オーバー → 視聴完了率低下
  • リーチ拡張が目的なのにターゲティングを狭めすぎる

2.2 リテールメディアネットワーク(RMN)は“フルファネル”へ

RMNとは?

flowchart TD Adv[広告主] --> RMN[リテールメディアネットワーク基盤] RMN -->|1stパーティオーディエンス生成| DSP_RMN[小売DSP] DSP_RMN --> Onsite[オンサイト広告] DSP_RMN --> Offsite[オフサイト広告] Shopper((購買者)) -->|購買 / 閲覧| RetailerDB[購買&閲覧データ] RetailerDB --> RMN Onsite --> Shopper Offsite --> Shopper classDef node fill:#FEEBC8,stroke:#DD6B20,color:#000; class Adv,RMN,DSP_RMN,Onsite,Offsite,RetailerDB,Shopper node;

Amazon, Walmart, 楽天など小売事業者が保有するEC・店舗購買データを活用し、DSP や自社メディア面で広告を販売するプラットフォーム群。ファーストパーティデータで クッキーレス時代 のターゲティング精度を担保できるのが最大のメリットです。

RMN 活用が伸びる理由
  • 購買データで即時ROAS計測 – クリック後24h の実売上と広告を紐付け可。
  • 在庫・価格連動広告 – リアルタイム在庫が潤沢なSKUを優先配信し欠品リスクを回避。
  • 上流指標にも活用 – 動画・ネイティブ面でのブランドリフト計測が解禁。
代表的な RMN フォーマット
フォーマット配信面主なKPI
スポンサープロダクト検索結果・商品詳細ROAS / 貢献売上
ストリーミング動画広告AVOD サービスブランドリフト / CVR
インストアデジタルサイネージ店舗エンドキャップ来店率 / 棚前滞在時間
成功へのロードマップ
  1. 商品×オーディエンスマッピング – SKU を粗利別にセグメントし、高マージン商品の広告比率を高める。
  2. クリエイティブ統合 – オンラインバナーと店舗POPを同一ビジュアルで統一しブランド想起を最大化。
  3. マルチタッチアトリビューション – RMN 経由購入をタッチポイント単位で分解し LTV を算出。

注意点:手数料が15–30 %と高め。常に純利益ベースでの最適化が必要。

RMNは従来“販促色の強い下流チャネル”と見なされがちでした。しかし調査では 65 % の企業が「ブランド構築にも有効」と回答。特に北米では、店頭・ECの購買データを活かし 認知→検討→購入 のプロセスを一気通貫で測定する動きが進んでいます。

エリアRMNの重要度が「増す」割合
世界平均65 %
北米74 %
欧州48 %

Tip
RMN=“販促だけ”の時代は終了。上流のブランド認知獲得に使う先進ブランドが台頭。
📌 施策例: 動画+決済データ連動で認知→購買を一気通貫計測。

2.3 マーケターが学べること & 次のアクション

学び推奨アクション
CTVは“テレビ+デジタル”のハイブリッド30秒CMではなく15秒スキッパブル動画でABテスト従来GRPレポートにCTV視聴完了率を統合
RMNはフルファネルに進化“ブランド動画+商品リスティング”の同時出稿を試行小売POSデータと連携しROASを算出
チャネルの“噛み合わせ”が重要CTVで認知→RMNで購買のタッチポイント地図を作成クリエイティブ規格を統一し一貫性担保

セクション3 明瞭な視野 ― 測定とAI

「羅針盤なくしては霧を抜け出せない」

3.0 クロスメディア測定の3ステップ

“テレビ vs デジタル”といった縦割り測定では、もはやROIを正しく把握できません。本レポートは 「MMM+実験データ+AIシミュレーション」の三層構造 を推奨しています。下表のフレームで自社の測定ギャップを確認し、どの層から手を付けるべきか判断しましょう。

ステップ目的推奨ツール例
① アトリビューション統合オン/オフ同一指標化MMM+マイクロ実験
② ファネル横断KPIブランドと成果の両立Ad Stock × コンバージョン率
③ AIシミュレーション予算最適配分ベイズ最適化エンジン

AIは「メディアプランナーの相棒」

  • 予算1 B$超の企業の71 %が AIによる最適化 に注目
  • 小規模ブランドは “本物志向とインフルエンサー活用” で差別化

3.1 マーケターが学べること & 次のアクション

学び推奨アクション
MMM×マイクロ実験で全体像を掴む主要10チャネルをMMMモデルに統合週次で50ドル規模のマイクロテストを仕込む
KPIは“ブランド+売上”の二刀流Ad Stock指標をダッシュボードに追加し広告消耗を可視化ブランドリフト調査を四半期に一度実施
AIで予算シミュレーションが民主化無料のBayesian optimizerツールを試用来期予算の10シナリオを自動生成し経営会議に提示

まとめ ― Key Takeaways

本レポートが示す潮流を 5 つの核心テーマ行動指針 に落とし込みました。以下を自社のメディアプランニングや予算配分ワークショップにそのまま転用してください。

1. 広告費は“縮小”が新常態 ── 再配分で成果を守る

インフレと為替変動で 54 % の企業が削減を検討中。ただし“コストカット”ではなく 高効率チャネルへのリバランス が勝敗を分ける。過去12か月のチャネル別 CPA を棚卸しし、下位 10 % を実験枠に振り替えるのが第一歩。

2. CTV × 屋外が割安リーチの二本柱

CTV は世帯単位の視聴データを活かし 若年層到達単価を TV 比 30 % 削減。屋外 (OOH) はオフライン回帰で再評価され、DOOH(Digital Out of Home) 連携によりオンライン指名検索を 1.4 倍に引き上げた事例も。都市圏ターゲットなら CTV+DOOH の同時フリークエンシー管理 が鍵。

3. RMN が“販促メディア”から“ブランドメディア”へ

小売・CPG 企業は決済データを武器に RMN を上流ファネルに拡張。動画枠とレコメンド広告のハイブリッド配信で、未認知層のブランド想起を +9pt 押し上げたケースが報告された。DSP から RMN へ ID 連携 する体制整備が急務。

4. クロスメディア測定+AI最適化がデフォルトに

MMM(マーケティングミックスモデリング) と MTA (マルチタッチアトリビューション)の“あいだ”を埋める 実験データ × 機械学習シミュレーション が台頭。予算 1 億 USD 超企業の 71 % が導入済/検討中で、週次で最適配分を再計算する運用 が一般化しつつある。まずは β版でも良いので AI ダッシュボードをテスト し、社内に学習データを蓄積せよ。

5. 業界別に KPI を差別化せよ

  • IT/SaaS:CAC と ARR 回収期間を最重視。検索・ウェビナー・コミュニティ強化。
  • 消費財:ブランド好意度と店頭シェアを同時管理。CTV+OOH で情緒訴求を維持。
  • 小売/旅行:リアル在庫・ダイナミック価格と連動した RMN/ライブコマースで CVR 最大化。

実践アクション早見表

核心テーマ今すぐやること指標チェック推奨ツール例
広告費の再配分低 ROI 施策を月次で棚卸しし、10 % を実験枠に転用CPA / GRPGoogle Ads, Meta A/B
CTV & OOH予算の 5 % を CTV に試験投入、DOOH と重複管理リーチ単価The Trade Desk, Vistar
RMN 拡張DSP のオーディエンス ID を RMN に連携想起率 / 買上率Amazon Ads, Walmart Connect
測定 & AIMMM+実験データを AI で統合シミュレーションROI / RoASNielsen One, EDO, Bayesian optimizer
業界別 KPI業界トップ 3 社の公開指標をダッシュボード化CAC / 粗利率 などSimilarWeb, Earnest Analytics

まとめると、予算が減るほど“選択と集中”が効き、CTV・RMN・AI測定 を組み込む企業が次の勝者になると言えるでしょう。本レポートを詳しく読むとさらにアクションが明確になってくるでしょう。参考に本レポートを実際にダウンロードいただき、理解を深め、ぜひ今日から行動を変えていきましょう。

出典:Nielsen 2025 Annual Marketing Report

この記事を書いた人
tomihey

14年以上のマーケティング経験をもとにWho/What/Howの構築支援と啓蒙活動中です。詳しくは下記リンクからWEBサイト、Xをご確認ください。

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