はじめに
電通が2024年の日本の広告費について最新数字を公表されました。日本の広告市場は引き続き成長を続け、総広告費は7兆6,730億円(前年比104.9%)に達しました。特に、インターネット広告費が3兆6,517億円(前年比109.6%)と急成長し、総広告費に占める割合が47.6%に達しています。このような動向は、広告のデジタルシフトがますます進んでいることを示しています。本記事では、広告市場の主要トレンドを整理し、マーケターが取るべき戦略について考察していきます。ぜひ参考にしていただければ幸いです。

2024年 日本の広告費の概要
日本の総広告費の推移
日本の広告市場はここ数年、安定的な成長を続けています。特にインターネット広告が市場全体を牽引する形で拡大しており、2024年には総広告費が3年連続で過去最高を更新しました。

2020年にはパンデミックの影響で市場が一時縮小しましたが、その後の回復とデジタル広告の成長により、再び上昇基調に戻りました。特に2024年は、世界的なイベントやインバウンド需要の高まりが市場を押し上げる要因となりました。
広告費カテゴリー別の内訳
広告費カテゴリー | 費用(億円) | 前年比(%) | 主な要因 |
---|---|---|---|
総広告費 | 76,730 | 104.9% | インバウンド需要の増加、世界的イベント |
インターネット広告費 | 36,517 | 109.6% | 縦型動画広告、コネクテッドTV(CTV)の成長 |
マスコミ四媒体広告費 | 23,363 | 100.9% | ラジオ・テレビ広告の回復 |
プロモーションメディア広告費 | 16,850 | 101.0% | 人流回復によるリアル広告の増加 |
特にインターネット広告は急成長し、動画広告の需要が拡大。コネクテッドTV(CTV)やSNSの縦型動画広告が大きな役割を果たしました。
メディア別広告費の動向とトレンド
さらにメディア別の広告費を深掘りをしていきましょう。

(1) インターネット広告費の成長
- 3兆6,517億円(前年比109.6%) と大幅に成長
- SNSの縦型動画広告が市場の拡大を牽引
- CTV広告の需要が拡大し、「テレビ×デジタル」の融合が進む
- ECプラットフォーム広告も堅調に推移(2,172億円、前年比103.4%)
- AIを活用した広告配信の進化(パーソナライズド広告、リターゲティング強化)
(2) マスコミ四媒体広告の動向
- 新聞広告費:3,417億円(前年比97.3%) → 減少傾向が続くが、一部の高齢者層向け広告は依然として有効
- 雑誌広告費:1,179億円(前年比101.4%) → ニッチ市場向けの専門誌広告が回復傾向
- ラジオ広告費:1,162億円(前年比102.0%) → デジタルオーディオ広告の成長、Podcast広告の需要拡大
- テレビメディア広告費:1兆7,605億円(前年比101.5%) → スポーツイベントの影響で回復、コネクテッドTV(CTV)との統合が進む
(3) プロモーションメディア広告費
- 屋外広告・交通広告の回復(人流回復による増加)
- POP・イベント広告の増加(企業のリアル施策が活発化)
- リテールメディア広告の成長(小売業の店頭・デジタル連携施策)
マーケターが取るべき戦略的示唆
これらのデータから、マーケターは今後どのような行動を起こしていけば成果に結びつきやすくなるのでしょうか。
① インターネット広告の活用をさらに強化
- 短尺動画・縦型動画広告の重要性が増す → TikTok、Instagram Reels、YouTube Shortsなどの活用
- CTV広告の活用 → YouTube、TVerなどの配信プラットフォームへの出稿
- EC広告の最適化 → Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなどの物販系EC広告を活用し、購買転換率(CVR)を高める
- AI活用による広告最適化 → データドリブンのパーソナライズ広告、リターゲティング施策の強化
② デジタル×マス広告の統合戦略
- テレビCMをSNSやデジタル広告と連携させ、広告効果を最大化
- 「テレビ×デジタル」広告の最適化(例:テレビCMで話題になった商品をSNS広告でリターゲティング)
- クロスメディア戦略の活用 → 同一キャンペーンを複数のメディアで展開し、ブランドリフトを向上
③ OOH(屋外広告)・リアル施策の再評価
- 屋外広告、交通広告の活用(人流回復による影響大)
- リアルイベントのプロモーション強化(展示会・体験型プロモーション)
- 店頭プロモーションのデジタル連携(QRコードやアプリとの連動)
- リテールメディアの活用(小売企業のデータを活かした店内広告施策)
④ ブランドストーリーの強化とエンゲージメント向上
- ストーリーテリング型の広告戦略(感情に訴える動画広告の活用)
- ユーザー参加型コンテンツの増加(SNSキャンペーン、UGCの活用)
- インフルエンサーマーケティングの深化(ターゲット層ごとに適切なインフルエンサーを活用)
- AIによるパーソナライズマーケティング(ターゲットごとに異なる広告体験を提供)
⑤ マーケターへの警鐘:Who/Whatの重要性
ここまで述べてきた施策の多くは、「How(どのように)」の部分に過ぎません。しかし、マーケティング戦略を成功させるためには、Who(誰に)とWhat(何を提供するのか)を明確に定義した上で、適切なHowを選択することが不可欠です。
- Who(ターゲット)を誤ると、最適な広告施策でも効果が出ない
- What(提供価値)が不明確では、ユーザーに響かない
- How(手法)だけに依存すると、一過性の施策に終わる
したがって、マーケターはWho/Whatを先に定義し、それに最適なHowを選択することを常に意識する必要があります。ターゲットは誰?提供価値は何?と社内で聞いて人によって異なる見解であれば、Howの前にWho/Whatを先に明確にしていきましょう。
今後の広告市場の展望
① AIとデータ活用の進化
- AI主導の広告ターゲティングの精度向上
- 機械学習を活用した広告配信の最適化
- ユーザー行動データのリアルタイム分析とパーソナライズ
- プライバシー保護とターゲティングの両立
- クッキー規制の強化に伴い、ファーストパーティデータの活用が不可欠
- 新たな広告IDやコンテクスチュアルターゲティングの台頭
- 広告クリエイティブの自動生成
- 生成AIを活用した動画・画像広告の制作効率化
- A/Bテストの最適化をAIがリアルタイムで実施
② 広告フォーマットの多様化
- 短尺動画広告のさらなる拡大
- TikTok、Instagram Reels、YouTube Shortsを中心に成長
- ユーザーの視聴傾向に応じたストーリーテリングの重要性
- インタラクティブ広告の普及
- 視聴者が選択できる広告体験(クリック可能な動画やゲーム型広告)
- ブランドエンゲージメントの向上と視聴完了率の強化
- 音声広告の新たな展開
- Podcast広告、スマートスピーカー向け広告の成長
- SpotifyやAmazon Musicのプラットフォームでの広告展開が加速
③ 新たな広告プラットフォームの台頭
- メタバース広告の可能性
- バーチャル空間でのブランド体験型広告の拡大
- 仮想店舗、デジタルプロダクトの広告戦略の重要性
- リテールメディア広告の進化
- ECサイトや小売店舗のデータを活用したターゲティング
- 物理店舗とデジタル広告のシームレスな連携
④ コンプライアンスと規制対応の重要性
- データプライバシー規制の強化
- GDPRやCCPAに加え、日本国内のデータ保護法の影響
- 透明性のある広告配信の実現が求められる
- 広告詐欺(Ad Fraud)対策
- フェイクトラフィックやボット対策の強化
- ブランドセーフティを確保するための取り組みが不可欠
マーケターへの提言
① 2024年の広告市場のキーポイント
- デジタル広告のさらなる成長
- インターネット広告費が総広告費の半分近くを占める
- 短尺動画、CTV広告、リテールメディアが市場を牽引
- リアル広告の復活と統合戦略の重要性
- OOH、交通広告、イベント広告が回復傾向
- デジタルとリアルのシナジーを活かしたマーケティングが鍵
② マーケターが注力すべきポイント
✅ 短尺動画・CTV広告を最大限活用する
✅ デジタル×マス広告の統合戦略を強化する
✅ OOH・リアル施策の価値を再評価する
✅ AIやデータ活用でターゲティング精度を高める
✅ プライバシー規制に適応した広告戦略を構築する
③ 広告市場の未来を見据えた戦略的対応
マーケターは、デジタル広告の最適化とリアル施策の融合を軸に、変化する市場環境に柔軟に適応する必要があります。特に、AI活用による広告効果の最大化、ユーザー体験を重視した広告フォーマットの採用が今後の成功の鍵となるでしょう。
2024年の広告市場の変化に適応し、持続的なブランド成長を実現するために、戦略的なマーケティングアプローチを実践していきましょう。
出典:2024年 日本の広告費